著者
西条 寿夫 堀 悦郎 田積 徹 小野 武年
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.125, no.2, pp.68-70, 2005 (Released:2005-04-05)
参考文献数
7
被引用文献数
2 2

扁桃体は,自己の生存にとってそれぞれ有益および有害な刺激に対する快および不快情動の発現(生物学的価値評価)に関与する.一方,ヒトの扁桃体損傷例や自閉症患者の研究から,扁桃体は,これら情動発現だけでなく,表情認知など人間生活に必須な社会的認知機能(相手の情動や意図を理解する精神機能)に中心的な役割を果たしていることが示唆されている.さらに,われわれの神経生理学的研究によると,サル扁桃体には,価値評価に関与するニューロンおよび相手の表情に識別的に応答するニューロンが存在する.以上から,生物学的価値評価と社会的認知の2つのシステムが扁桃体に存在し,2つのシステムが並列的に機能している仮説的神経回路を提唱した.
著者
寺尾 康
出版者
日本失語症学会 (現 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会)
雑誌
失語症研究 (ISSN:02859513)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.193-198, 1999 (Released:2006-04-25)
参考文献数
7

本研究では,ある伝導失語患者の発話例の分析をもとに,それを心理言語学での言い誤り研究の観点からみたらどのようなことが言えるのか,を中心に比較検討を行った。その結果は以下のようにまとめられる。 (1) 健常者の言い誤りでは,誤りの源が文脈中にある転置型の誤りが,源がない置換型の誤りよりも頻度が約3倍の高さだったが,観察した音韻性錯語の例ではこの傾向は逆であった。 (2) 誤りの解釈と発話モデル内の「音韻的レベル」と「音声的レベル」を仮定する際には,弁別素性による誤りと源の類似性の分析だけでなく,音韻的な環境を考慮した分析単位も必要になる。音韻性錯語の付加の誤りが生じる位置はフットの境界と一致すること,同一母音を持つ2モーラ間で子音の誤りが起きやすい,という観察から伝導失語症患者が音韻的枠を準備できる能力を残している可能性が示唆された。
著者
武藤 隆 戸塚 洋史 坪井 俊紀 吉田 大介 松野 靖司 大村 昌伸 高橋 秀和 櫻井 克仁 市川 武史 譲原 浩 井上 俊輔
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 40.12 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
pp.29-32, 2016-03-04 (Released:2017-09-22)

我々は,消費電力の増加を抑制し,AD変換時間の短縮と広ダイナミックレンジ化を実現するデュアルゲインアンプ型シングルスロープ列ADC(SSDG-ADC)を搭載したAPS-Hサイズ2.5億画素CMOSイメージセンサを開発した。SSDG-ADCは,画素の信号レベルがある閾値レベルより低いときは列回路に設けられたアンプのゲインを高ゲインに設定し,閾値レベルより高いときは低ゲインに設定する手法である。その結果,シングルスロープ列AD(SS-ADC)に対して,AD変換時間を75%短縮し,6dBのダイナミックレンジ拡大を実現した.
著者
佐野 昌己
出版者
情報文化学会
雑誌
情報文化学会誌 = Journal of the Japan Information-culture Society (ISSN:13406531)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.88-93, 2006-08-31
参考文献数
17

本稿は,日本製アニメ(以下,日本アニメ)の制作に3次元コンピュータグラフィックス(以下3DCG)技術を持つ人材の育成が重要であることに注目し,次世代の3DCG技術者を生み出す方策を見出すことを目的としている。日本アニメは,国内はもちろん海外から高い評価を得ているだけでなく,有力なビジネスとして政府や経済界からも注目されている。しかし,アニメ産業は深刻な人材難と後継者問題を抱えており,各方面からの期待に応えるどころか自身の改革に迫られているのである。そして,このアニメ産業の諸問題を技術面から変革するのが3DCGであり,今後益々人材が必要となるのである。そこで,本稿において日本アニメの現状を考察し人材不足の要因を示す。そして,3DCGが人材不足という難題を解決するために重要な役割を果たすことができることを明らかにする。さらに,今日の3DCGの普及に大きな影響を与えた日本の商業CG先駆者達が,CG制作に惹きつられた動機を,直接インタビューすることから調査することで,次世代3DCG制作者育成について考察する。
著者
高橋 博之
出版者
中部大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

X線で非常に明るく輝く超高光度X線源はコンパクトな天体を起源とし、ガス降着によって重力エネルギーを解放することで明るく輝いていると考えられる。特筆すべきはその光度で、太陽質量程度の天体におけるエディントン光度を超えて明るく輝くいている。このコンパクトな天体の正体は太陽質量程度の恒星質量ブラックホールか、もしくは太陽質量の1000倍程度の質量を持つ中間質量ブラックホールであると考えられてきた。しかし近年になって明るく輝く超高光度X線源の一部は中性子星を起源に持つことが明らかになってきた。ブラックホールと異なり中性子星は強い磁場を持つために中性子星の磁場に沿ってガス降着が起こり、磁軸付近に堆積したガスが光る。さらに磁軸と回転軸が非平行なために周期的なX線光度変動を示す。観測によって中性子星を起源に持つことが明らかになった超高光度X線源はこのような特性を持つが、磁場が弱い場合や見込み角の違いにより、X線パルスが観測されていない超高光度X線源のリストの中にも中性子星を起源とするものが埋もれていると考えられる。従ってX線パルス以外の方法で超高光度X線源がブラックホールを起源とするか中性子星を起源とするかを判別する手法を構築することは急務である。そこで本研究では光度だけでなくX線スペクトルによる中心天体の同定方法を構築すべく、これまでにない新しい数値計算コード(振動数依存型一般相対論的輻射磁気流体コード)を構築した。この方法は一般相対性理論の枠組みで流体や電磁場を扱うのみならず、光も同時に扱う。そしてこの光は振動数の情報を持つため、光度だけでなくX線スペクトル、さらにそれらの時間変動についても情報を得ることができる。このコードは超高光度X線源のみならず、一般の高エネルギー天体現象に適用できる汎用的なコードである。
著者
大須賀 健 高橋 博之 川島 朋尚
出版者
国立天文台
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

ブラックホールおよび中性子星周囲をターゲットとした大規模数値シミュレーションを実施し、超臨界円盤からは連続光による輻射力で、亜臨界円盤からは束縛ー束縛遷移吸収による輻射力で加速されたアウトフローが噴出することを解明した。また、発生したガス噴出流が流体不安定で小さなガス片に分裂することも突き止めた。強磁場中性子星の場合は、磁極からガスが降着することも示した。活動銀河核やX線連星で観測されるアウトフローや光度変動を説明できる新たな理論モデルを構築したのである。
著者
阪本 真弥 栗和田 しづ子 丸茂 町子
出版者
一般社団法人 日本老年歯科医学会
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.81-87, 1996-11-30 (Released:2014-02-26)
参考文献数
7
被引用文献数
4

高齢者の口腔乾燥症の実態を把握し, 口腔乾燥症を適切に診断し, 病因や病態に即した治療を行うための基礎的データを得ることを目的に, 口腔乾燥症の疫学調査を行った.対象は老人ホーム3施設に入居し調査に同意し協力を得ることのできた65歳以上の男性31人, 女性64人, 計95人 (平均年齢78歳) である.調査内容は問診, 視診, 触診唾液分泌量測定などを行い口腔乾燥の症状や程度, 口腔粘膜疾患や残存歯, 義歯の使用状況, 口腔清掃状態などについて調べた.その結果,1.口腔乾燥感は, 95人中23人 (24.2%) にみられ, 測定し得た89人中43人 (48.3%) の患者に唾液分泌量の低下がみられた.また, 高度な唾液分泌低下を示した人は4人 (4.5%) であった.2. 95人中85人 (89.5%) が何らかの慢性の全身疾患を有しており, 降圧剤や利尿剤など副作用として口腔乾燥を起こす薬を服用している人は62人 (65.3%) であった.さらに, このような薬を3種類服用している人は, 服用していない人と比較し, 唾液分泌量低下や口腔乾燥感を自覚する割合が高かった.3.舌乳頭萎縮は22.1%, 溝状舌は24.2%にみられたが, 口角びらんは2.1%で, 白板症, カンジダ, 扁平苔癬, アフタなどの粘膜疾患は認あられなかった.以上, 重篤は身体的および精神的疾患を持たない高齢者には治療を要する高度な口腔乾燥症はみられなかった.
著者
大田 昌樹 小田 絵里佳 片岡 駿友 佐藤 善之 猪股 宏
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.251-258, 2018-05-15 (Released:2018-05-17)
参考文献数
19
被引用文献数
2

本研究では,経口物質に対して安心安全な製造法である超臨界流体を用いて,乳製品副産物に含まれる機能性成分であるphosphatidylcholineとsphingomyelinの効率的分画を目的としてこれら成分の溶解度推定を検討した.まず既往の実験データのある,バターオイルからのtriacylglycerolにおける超臨界CO2中の溶解度と比較を行った結果,本研究で推定した溶解度とほぼ一致することが確認された.次に,PCおよびSMの溶解度の溶媒密度およびエタノール濃度依存性の解析を行った結果,いずれの条件においても実験的な溶解度を推定することができた.PCおよびSMは高価であり標準試薬が入手しにくい状況でこれまで超臨界流体中の溶解度データも報告されていなかったが,本研究で行った抽出モデルによる解析により溶解度を実験的に推定することができた.
著者
桑野 洋輔 古市 格 井上 拓馬 小河 賢司 秋山 隆行 渡邉 航之助 荒木 貴士
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.572-576, 2016-09-25 (Released:2016-12-06)
参考文献数
12
被引用文献数
2

【はじめに】頚椎外傷後に咽頭後間隙血腫を生じ,保存的治療で軽快した5例を経験したので報告する.【症例】年齢は47~89歳(平均63.8歳).男性4例,女性1例.交通外傷によるものが3例,転落外傷によるものが2例であった.全例に頚椎骨折を認め,1例は頚髄損傷を合併していた.抗血小板薬を常用しているものが1例あった.咽頭後間隙の最大値は11~37mmであった.2例に気管挿管を必要とし,1例は受傷後3時間で気道閉塞症状が出現したため行い,1例は予防的に行った.抜管までには12~14日間を要した.3例は気管挿管を施行せずに自然軽快した.【考察】咽頭後間隙血腫は遅発性に気道閉塞を引き起こし致命的となることもあるため,その可能性を念頭に置いた治療が必要である.
著者
武部 孝行 佐伯 悠 升間 主計 二階堂 英城 井手 健太郎 塩澤 聡 間野 伸宏
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.214-218, 2013 (Released:2013-03-22)
参考文献数
18
被引用文献数
1 2

クロマグロ幼魚(ヨコワ)の鰓に寄生していた Didymocystis wedli の消長および伝搬性について調べた。日本海で採捕したヨコワを奄美海域に搬入し,寄生虫検査した結果,搬入直後の全ての検体で本寄生が観察された。その後,寄生率は減少し,搬入から 5 か月以後には確認されなかった。また,同一または隣接生簀網で飼育されていた同虫未寄生のヨコワおよびクロマグロ,周辺海域に生息する他魚種においても寄生は確認されなかったことから,ヨコワの搬入が奄美海域に同虫の感染を伝搬させる可能性は低いものと考えられた。
著者
小此木啓吾 及川卓著
出版者
中山書店
巻号頁・発行日
0000
著者
広田 恵
出版者
防衛技術協会
雑誌
防衛技術ジャ-ナル (ISSN:09198555)
巻号頁・発行日
vol.18, no.11, pp.13-19, 1998-11
著者
文部省 [編]
出版者
東京書籍
巻号頁・発行日
vol.昭和22年度 算数科・数学科編, 1947
著者
田中 克宜 西上 智彦 壬生 彰 井上 ゆう子 余野 聡子 篠原 良和 田辺 曉人
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2016, 2017

<p>【はじめに,目的】</p><p></p><p>中枢性感作(Central Sensitization:CS)は,中枢神経系の過興奮による神経生理学的な状態を示し,慢性疼痛の病態の一つであることが示唆されている。CSは疼痛だけでなく,疲労や睡眠障害,不安,抑うつなどの身体症状を誘発することから,CSが関与する包括的な疾患概念として中枢性感作症候群(Central Sensitivity Syndrome:CSS)が提唱されている。近年,CSおよびCSSのスクリーニングツールとしてCentral Sensitization Inventory(CSI)が開発され,臨床的有用性が報告されている。CSIはCSSに共通する健康関連の症状を問うPart A(CSI score)および,CSSに特徴的な疾患の診断歴の有無を問うPart Bで構成される。我々はこれまでに言語的妥当性の担保された日本語版CSIを作成し,筋骨格系疼痛患者において,CSI scoreと疼痛や健康関連QOLとの関連を報告している。また,人工膝関節置換術前にCSI scoreが高いと3ヶ月後の予後が不良であることも報告されており,CSIが予後を予測するスクリーニング評価として有用であることが報告されている。しかし,保存療法において,CSIが治療効果を予測する評価であるかは不明である。今回,筋骨格系疼痛患者においてCSIを用い,理学療法介入前のCSと介入後の疼痛および健康関連QOLの関連について調査し,CSIがCSのスクリーニング評価として有用であるか検討した。</p><p></p><p></p><p>【方法】</p><p></p><p>外来受診患者を対象に介入前にCSI,Euro QOL 5 Dimension(EQ5D),Brief Pain Inventory(BPI)を評価した。その後,3ヶ月理学療法を継続した46名(男性17名,女性29名,平均年齢55.1±16.3歳,頚部8名,肩部7名,腰部19名,膝部6名,その他6名)を対象に,EQ5D,BPIを再評価した。介入は関節可動域練習,筋力増強運動,動作指導といった標準的な理学療法を行った。CSI scoreと3ヶ月後のEQ5D,BPI(下位項目:Pain intensity,Pain interferenceの平均点を使用)の関連をSpearmanの順位相関係数を用いて検討した。また,CSSに特徴的な疾患の診断歴の有無で2群(CSS群,no CSS群)に分け,3ヶ月後のEQ5D,BPIについてMann WhitneyのU検定を用いて比較検討した。統計学的有意水準は5%とした。</p><p></p><p></p><p>【結果】</p><p></p><p>CSI scoreの中央値は21.5点(範囲:3-48点)であった。CSI scoreと3ヶ月後のEQ5Dは有意な負の相関を認め(EQ5D:r=-0.332,p<0.05),BPIと有意な正の相関を認めた(Pain intensity:r=0.425,p<0.01;Pain interference:r=0.378,p<0.01)。また,CSS群(n=14)における3ヶ月後のEQ5Dはno CSS群(n=32)に比べて有意に低く,Pain interferenceは有意に高かった(p<0.01)。</p><p></p><p></p><p>【結論】</p><p></p><p>介入前のCSI scoreが3ヶ月後のEQ5D,BPIと有意な相関を認めたことから,CSIがスクリーニング評価として有用である可能性が示唆された。また,CSSに関連する疾患の診断歴もリスクとして考慮する必要性が示唆された。これらのことから,CSI scoreが高い症例に対して,早期からCSを考慮した治療戦略を実施する必要性が示唆された。</p>