著者
真田 尚剛
出版者
日本政治学会
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.1_163-1_184, 2016 (Released:2019-06-10)

本稿は, 1976年10月に閣議決定された 「防衛計画の大綱」 (防衛大綱) に至る過程について, 1970年代前半における国内環境に着目し, 論じるものである。まず, 世論調査の結果と防衛政策関係者の認識の間に乖離があることを明らかにする。次に, 世界最大の航空機事故である雫石事故, 史上初めての自衛隊違憲判決である長沼裁判, 革新勢力の伸長による保革伯仲, 各地での反自衛隊事件を受けて, 防衛政策関係者が従来にないほどの強い危機感を覚えた点を分析する。最後に, 彼らが国内での個別具体的な事案の発生を受け, 防衛政策や自衛隊の正当化を図るために, 1972年10月の4次防で防衛構想と情勢判断を初めて明示し, 1976年10月にはさらに詳しい内容となる防衛大綱を策定するに至った点について解明する。結論として, 世論調査ではなく, 日本国内での防衛問題に関連する批判的な事案の発生により, 防衛政策関係者が防衛政策や自衛隊の正当化を図るべく, 国民への説明の必要性を認識し, 初めて防衛大綱を策定するに至ったことを立証する。
著者
富田安敬 編
出版者
開進堂
巻号頁・発行日
1887
著者
志田 雅宏
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.93, no.1, pp.75-99, 2019 (Released:2019-09-30)

中世キリスト教世界のユダヤ教文学では、キリスト教文化に対抗する言説がみられる。本論文では、そのなかで中世ユダヤ教の民間伝承に注目する。まず、『トルドート・イェシュ』というユダヤ版イエス伝では、「神の名前の使い手」としてのイエスの姿が描かれる。その物語は、福音書のイエス物語を題材とし、メシアとしてのイエスというキリスト教正典における描写を転覆させることによって、イエスをラビ・ユダヤ教の規範を逸脱する魔術師として語りなおすものである。次に、イエスの弟子たちの物語や中世ユダヤ教の指導者ナフマニデスの聖人伝を取り上げる。これらの民話は、中世ヨーロッパのユダヤ人が直面したキリスト教への改宗という問題と結びついている。そして、ユダヤ人の強制改宗者に対して宗教的な使命を見出し、その改宗を意味づけることや、改宗の歴史を逆転させたもうひとつの「歴史」を語ることをその特徴とする。
著者
田崎 和江 竹原 照明 橋田 由美子 橋田 省三 中村 圭一 横山 明彦 青木 小波 田崎 史江
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科学 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.97-113, 2017-07-25 (Released:2018-01-14)
参考文献数
21
被引用文献数
1

黒柿はカキノキ科の一つであり,幹・枝・根の断面に黒色の部分があり,心材や辺材には縞が美しい孔雀の羽根のような模様(孔雀杢 くじゃくもく)がある.孔雀杢は何百年と樹齢を重ね,かつ,様々な条件を満たした柿の木だけが黒と白の美しい模様を持つようになった希少な銘木である.材質が竪硬で粘りもあり,細かい細工をする指物に適しており和家具,茶道具などが金沢伝統工芸品となっている.しかし,江戸時代に加賀藩が黒柿の栽培を行っていたとされるものの,その科学的な記録はない.なぜ柿の木の幹に黒い色の美しい模様ができるのかを究明するために,石川県金沢市内に生育している黒柿を採取して,IP,XRD,ICP-MS,XRF,SEM-EDS,放射能測定器を用いて物理化学的,鉱物学的,微生物学的特徴を調べた.本研究試料の「黒柿」のXRD 分析では,セルロースの他に低温型α- クリストバライト,生体アパタイト(燐灰石),ハロイサイトなどの粘土鉱物が含まれていた.黒柿の黒色化した幹に形成する孔雀杢は“珪化木”ということができる.本研究結果から,①黒柿が“珪化木”になるには,まず,根の中心の白色部に認められた微生物がCa >>> P,S >> Mg > Si,Fe,Cl,K,Mn を取り込み,生体アパタイトを形成する.②成長するにしたがって,放射能核種やB,Br を伴って, さらにCa,P,S >> K,Mg,Si,Sr > Cl,Mn,Fe などの元素を取り込みながら黒色化する.③そして,年月を経るにしたがって, 幹の辺材部に黒色の縞模様(孔雀杢)を作りながら低温型α- クリストバライト(珪化木)を形成することが明らかになった.
著者
西貝 吉晃 佐藤 健
出版者
情報ネットワーク法学会
雑誌
情報ネットワーク・ローレビュー (ISSN:24350303)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.81-120, 2020-12-20 (Released:2020-12-25)

筆者らは民事訴訟における要件事実論をプログラミングするPROLEGというシステムを研究・開発してきている。民事の要件事実論については、それが持つ形式論理的な観点からの多くの議論が既にあるので、それに沿った開発が可能であった。もっとも、それをプログラミングするだけでは民事訴訟に対応するシステムにしかならない。刑事訴訟も、要件効果モデルを採用する実体法に基づいて、民事における主張立証責任に相当する事柄の分配を考える点では民事訴訟に類似するのであるから、理論的にはプログラミングが可能なはずである。しかし、PROLEGは裁判の結論に至るまでの推論過程を可視化させることができるところ、刑事実体法は、刑法総論の体系の下で分析・研究されてきており、プログラミング過程において刑法固有の解決すべき課題があった。本稿では刑法の体系に即した裁判規範としての刑法のプログラミングを行ったので、問題解決の方法を実際のプログラムを示しながら解説したい。これによりPROLEGが刑事訴訟にも対応し、将来的に、教育用のツールや実務支援のための複雑な規定を有する刑罰規定への応用可能性がみえてきた。
著者
黒田 チカ
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
東京化學會誌 (ISSN:03718409)
巻号頁・発行日
vol.39, no.12, pp.1051-1115, 1918 (Released:2009-02-05)
被引用文献数
1
著者
井畑 真太朗 山口 智 光藤 尚 小内 愛 堀部 豪 久保 亜抄子 山元 敏正
出版者
一般社団法人 日本頭痛学会
雑誌
日本頭痛学会誌 (ISSN:13456547)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.600-603, 2023 (Released:2023-04-20)
参考文献数
15

症例 : 47歳,女性.主訴 : 頭痛.現病歴 : X-1年1月当院脳神経内科を受診,同年5月よりエレヌマブの臨床試験に参加.X年5月臨床試験終了後より片頭痛の日数が増加したため,X年12月鍼外来紹介受診.片頭痛予防と頸肩部の筋緊張緩和を目的に頸肩部に位置する経穴に週1回鍼治療を実施.評価は頭痛ダイアリーを用いた.鍼治療前には1ヵ月の片頭痛日数14日,エレトリプタン服薬数14錠であったが,鍼治療3ヵ月後の片頭痛日数4日,エレトリプタン5錠に減少.鍼治療はcalcitonin gene-related peptide (CGRP) 関連製剤使用後に増加した片頭痛日数とトリプタン服薬数を減少させる可能性がある.
著者
今村 洋介
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.68, no.7, pp.442-449, 2013-07-05 (Released:2019-10-17)
参考文献数
8

M理論は弦理論を統合する基本的な理論と期待されており,M2ブレーンと呼ばれる膜状の物体を基本的構成要素として含む.M理論はいまだその量子論的な定義が知られておらず,M2ブレーンの振る舞いについても理解されていないことが多い.AdS/CFTと呼ばれる双対性を用いることで,N枚重ねたM2ブレーンの自由エネルギーがO(N^<3/2>)に比例することが以前から知られていたが,最近になってようやくこの予言がM2ブレーン上の低エネルギーの励起を表す模型として提案されたABJM模型によって確認された.M2ブレーン,ABJM模型,そして自由エネルギーの計算に用いられる局所化の方法について解説する.
著者
欅田 尚樹
出版者
産業医科大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1995

トリチウム水1回曝露の急性影響に関してはマウスを用いた実験により自由水の代謝を高めることにより体内よりのトリチウムの排泄促進とそれに伴う各種生物学的影響の低減を観察し報告してきた。しかし体内に取り込まれたトリチウム水は有機結合型トリチウムに置き換えられたり、また食物等を介し有機結合型トリチウムの状態で体内に摂取される可能性もある。有機結合型トリチウムはトリチウム水と異なり一度体内に取り込まれると生物学的半減期が長く体内からの排泄が遅いことが知られている。また有機結合型トリチウムによる被曝に関する影響低減法の系統だった研究はほとんどされていない。そこで本研究では自由水トリチウムだけでなく有機結合型トリチウムの体内動態を変化させることにより被曝影響の低減化を検討した。これまでの実験結果を踏まえB6C3F1マウスを使用した。1)マウスに経口的にトリチウムラベルのアミノ酸、脂肪酸、ヌクレオシドすなわち3H-リジン、3H-パルミチン酸、3H-チミジンを投与した。2)排泄促進処理としては治療薬として幅広く使用され安全性の確立している甲状腺ホルモンのサイロキシンあるいはカテコラミンの一種エピネフリンを連日投与した。3)上記マウスを専用ラック内で飼育し、経時的に新鮮尿を採取し、尿中トリチウム濃度を測定した。また10日後に屠殺解剖し、各臓器を摘出、サンプルオキシダイザーで処理し臓器中のトリチウム濃度を比較した。その結果、尿中トリチウム濃度は、軽減化傾向にあったが有意ではなかった。一方、サイロキシン、エピネフリンいずれの処置群でも、脾臓、腎臓、大腿骨、筋肉中などの臓器中のトリチウム濃度が低下していた。したがって、これら代謝亢進剤により有機結合型トリチウム対外排泄の促進が図れる可能性が示唆された。
著者
Ki Youn KIM Yoon Shin KIM Daekeun KIM
出版者
National Institute of Occupational Safety and Health
雑誌
Industrial Health (ISSN:00198366)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.236-243, 2010 (Released:2010-04-15)
参考文献数
30
被引用文献数
59 70

The objective of this study is to provide fundamental data related to size-based characteristics of bioaerosol distributed in the general hospital. Measurement sites are main lobby, ICU, surgical ward and biomedical laboratory and total five times were sampled with six-stage cascade impactor. Mean concentrations of airborne bacteria and fungi were the highest in main lobby as followed by an order of surgical ward, ICU and biomedical laboratory. The predominant genera of airborne bacteria identified in the general hospital were Staphylococcus spp. (50%), Micrococcus spp. (15-20%), Corynebacterium spp. (5-20%), and Bacillus spp. (5-15%). On the other hand, the predominant genera of airborne fungi identified in the general hospital were Cladosporium spp. (30%), Penicillium spp. (20-25%), Aspergillus spp. (15-20%), and Alternaria spp. (10-20%). The detection rate was generally highest on stage 5 (1.1-2.1 μm) for airborne bacteria and on stage 1 (>7.0 μm) for airborne fungi.
著者
上野 陽里
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌 (ISSN:00047120)
巻号頁・発行日
vol.18, no.10, pp.629-633, 1976-10-30 (Released:2009-03-31)
参考文献数
29

トリチウムは主に水として天然にも多量に存在する。生体には呼吸器,皮膚,消化器を経て入り,水の新陳代謝系に沿って分布し,呼吸器,泌尿器,皮膚,消化器を経て排泄される。生体内各部からの排泄速度は等しくない。生体ではトリチウム水の生物学的濃縮はないと考えられている。個体全体からの排泄は,その速度によって3成分に分けられ,それらの半減期の長さは動物の種によって異なる。
著者
中村 大輝 雲財 寛 松浦 拓也
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.183-196, 2018-11-30 (Released:2018-12-05)
参考文献数
64
被引用文献数
2

本研究は, 理科の問題解決における仮説設定に関する国内外の研究を収集・整理し, 国内外の差に留意しつつ, 研究の動向や課題を明らかにすることを目的とした。仮説設定に関する研究を, 「仮説の定義」「実態の評価」「思考過程」「指導」の4観点から整理し, 各観点における研究の動向や課題を検討した結果, 主に次の4点が明らかになった。1)仮説の定義の多様性は, 仮説の定義を構成する要素全体に見られるものではなく, 説明する対象の違いに由来するものであること。2)仮説設定の評価方法は, 国内外で用いられる方法に傾向差が存在すること。3)思考過程に関する研究では, 実際の理科授業における仮説を設定する際の思考過程を捉えられるよう改善を図る必要があること。4)国内における指導方法研究はその具体性で国外の研究に勝るものの, 各指導方法には課題も存在すること。
著者
縄手 祥平 壺井 祥史 成清 道久 大橋 聡 長崎 弘和 神林 智作 村山 雄一
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
pp.10886, (Released:2021-07-07)
参考文献数
15

【目的】脳空気塞栓症は潜水病としてダイバーに多く報告される病態である.今回我々は,筋力トレーニング後に脳空気塞栓症を発症した症例を経験したため報告する.【症例】75歳男性.ジムでの筋力トレーニング後,自宅で突然の意識障害を認め,当院へ救急搬送となった.意識レベルは JCS 300,GCS E1V1M1,強直性の痙攣重積状態であった.頭部CTで右前頭葉に散在する低吸収域を認め,空気塞栓症と診断した.痙攣重積状態であったため,高圧酸素療法は施行せず,抗痙攣薬とエダラボンの投与を行った.意識レベルは徐々に改善し,発語が認められ,指示動作に応じられるようになったが,重度の左片麻痺が残存した.発症53日目に modified Rankin Scale 3で回復期リハビリテーション病院へ転院した.【結論】既往歴に間質性肺炎を指摘されていたため,筋力トレーニング中の胸腔内圧上昇により肺胞が破裂したことが空気塞栓症の原因と考えられた.筋力トレーニングに伴う空気塞栓症は脳卒中の一因として認識しておくべきであると思われた.
著者
大森 瑛智 井上 真郷
雑誌
研究報告ゲーム情報学(GI)
巻号頁・発行日
vol.2012-GI-28, no.5, pp.1-6, 2012-07-06

Minesweeper は一人用のパズルゲームであり,プレイヤーが全ての情報を得られる訳ではないという,不完全情報ゲームである.つまり,地雷が設置されていないと分かる安全なマスが常に存在する訳ではなく,勝利できるか否かは運によるところが大きい.ルールが単純であり,多くの人に親しまれている一方,最適戦略,および達成可能な勝率の上限は未だに分かっていない.これは,地雷の有無を判断するのに,難しい場面では,地雷が設置されていたとして矛盾しない全パターンを列挙する必要がある,つまり NP 完全問題となっていることに由来する.我々は本研究で, 1) 二体探索法により,問題が簡単な場合に高速に安全なマスを発見する方法, 2) 地雷設置可能な全パターンを効率よく列挙し,地雷設置確率を算出する方法, および3) 安全なマスがなく,地雷設置確率が最小のマスが複数ある場合の選択方法,の三つを組み合わせた手法を開発したので提案する.本手法は,16×30 マス,地雷 99 個の標準ゲームで勝率 49.4% を達成できた.
著者
虻川 嘉久
出版者
大館郷土博物館
雑誌
火内 (ISSN:24360074)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.86-64, 2023-03-31 (Released:2023-08-16)
参考文献数
14

『下遠家文書』(№五十三)「義宣公様慶長七年七月中当国江御下国被遊候節…」を解読した。それによると、慶長七年、佐竹氏は常陸から出羽へ国替えとなった。その際、阿仁・比内地方の仕置きには赤坂朝光が先発として、押さえには小場義成が命じられた。これに対し在地の土豪や百姓などによる大阿仁・小阿仁・南比内小森の一揆騒動が起こるが、赤坂氏らによって沈静化される。慶長八年、赤坂朝光や家臣団は二井田村に移った。二井田館が比内地方統治の拠点となったことが推測される。慶長十年、赤坂朝光は十二所に移り、慶長十五年には小場義成が檜山から大館に入城した。その経緯については、『大館市史』などの記述とは若干の相違がみられた。また、比内地方に移入してきた多くの家臣団を確認できた。本稿では㈠赤坂朝光とその配下、㈡忍大隅・川井若狭・近藤六郎兵衛・近藤杢左衛門、㈢部垂給人、㈣長倉衆、㈤保内給人、㈥小場義成とその家中、に分類した。二井田村に居住していた部垂給人は大館に、保内給人は十二所に配置されたことが明らかとなった。
著者
奥山 正樹
出版者
「野生生物と社会」学会
雑誌
野生生物と社会 (ISSN:24240877)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.1-10, 2023 (Released:2023-03-07)
参考文献数
18

Transitions of designation categories of the Wildlife Protection Areas and the extent of these designated areas were analyzed using government guidelines and wildlife statistics. A remarkable decrease was observed in the designated area for the “forest habitat type”, which occupies the largest proportion. For all other categories except the “habitat corridor type”, there was an increase in the designated area. As the number of hunters decreases and the damage caused by wildlife becomes serious, the significance of hunting-prohibited areas is declining. Therefore, “forest habitat type”, “large-scale habitat type” and “habitat corridor type” should be designated with a clear intention to secure the original habitat for wildlife, which is supported by science-based management. The categories such as “endangered species habitat type” and “large migration areas type”, whose designation as Special Protection Areas is imperative, are expected to function as true nature conservation areas by effective planning and design of the Special Protection Areas and surrounding buffer zones.
著者
宮本 霧子
出版者
Japan Health Physics Society
雑誌
保健物理 (ISSN:03676110)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.50-59, 2008 (Released:2010-08-05)
参考文献数
9

The international program, known as the EMRAS (Environmental Modeling for Radiation Safety) project was carried out in 2003-2007. “The working group for modelling of tritium and carbon-14 transfer to biota and man” took an active part in the EMRAS by presenting the eight scenarios for the purpose of the validation of the environmental tritium model. Three scenarios were concerned about uptake and depuration of tritium by bivalves and various biological species in a steady state lake. Two scenarios dealt with tritium uptake of soybean and pine tree, other two did pig metabolism and various products from a farm land. One scenario was designed to estimate human dose exposed by a hypothetical shot of tritium release in the atmosphere. OBT definition and revision of parameter values in the Handbook, IAEA-TRS No. 364 were also carried out.
著者
布施 明 奥村 徹 徳野 慎一 齋藤 大蔵 横田 裕行
出版者
一般社団法人 日本外傷学会
雑誌
日本外傷学会雑誌 (ISSN:13406264)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.333-347, 2011-07-20 (Released:2020-09-23)
参考文献数
22

イラク, アフガニスタン戦争において, 米国帰還兵の負傷の受傷機転として, 爆破/爆発が最も多く, その医療対応が注目されている. 市民生活の中でも, テロリズムの脅威が高まるなか, その手段として最も多いのはImprovised explosive devices (IEDs) による爆破である. 爆傷は鈍的, 鋭的外傷に1次爆傷としての爆圧による損傷が加わる病態のため, 爆傷の損傷メカニズムとそれによって引き起こされる病態を理解し, 診療を行う必要がある. 特に, 爆傷肺 (blast lung injury ; BLI), 及び爆傷による頭部外傷 (blast-induced traumatic brain injury ; bTBI) の理解が必要である. また, 現場では安全の確保に最大限の注意を払う必要がある. 本稿で, 欧米を参考に, 日本版「ファーストレスポンダーのための爆傷サバイバルカード」, 「爆傷サバイバルカード」, 及び「爆傷診療録」を試案した. 今後も, 爆傷医療に対する啓発, 爆傷診療指針の確立, 訓練による事前準備が必要である.