著者
豊川 斎赫
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.84, no.763, pp.1993-2003, 2019 (Released:2019-09-30)
参考文献数
26
被引用文献数
2

This research clarified the following three points on the venue design process for EXPO’70 and five types of Tange’s collaborative design projects. 1. The author ordered the design process of the symbol zone chronologically based on the minutes of official meetings and the construction process chart for EXPO’70. 2. The author visualized the design process of the symbol zone based on the drawings and model photos of the venue plan for EXPO’70. 3. The author classified the collaborative design projects in which Tange participated into five types, and considered the relationship between the design process for the symbol zone and these five types of projects. The author clarified the following three points about the collaborative design for EXPO’70: 3-1. Tange and Uzo Nishiyama were both famous professor-architects, and it was very difficult to put together their different ideas. 3-2. Tange managed the design office for main facilities of EXPO ‘70 as producer. Using his experiences at the laboratory, Tange encouraged the staff members to freely exchange their views. 3-3. Tange and Taro Okamoto previously worked together for the design for the Tokyo Metropolitan Government Office in 1958. Okamoto’s elevated ideals to integrate art and architecture later realized in their proposal for the “Taiyo no tou (Tower of the Sun)” at the Omatsuri Hiroba (Festival Plaza) in 1970.
著者
グエン トゥ ハー 濱岡 佑帆 桐越 舞
出版者
日本実験言語学会
雑誌
実験音声学・言語学研究 (ISSN:18836763)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.1-15, 2022-03-24 (Released:2023-06-15)
参考文献数
24

ベトナム語北部方言と南部方言の代表的な方言差として頭子音のd/gi/r の音価が挙げられる。本稿では、先行研究におけるベトナム語の方言別発音表記を整理した上で、南部方言における頭子音d/gi/r の発音実態調査を行った。その結果、頭子音d/gi では先行研究にはなかった有声硬口蓋破裂音[ɟ]が確認された。また、先行研究で音声的ゆれがみられた頭子音r については、有声そり舌はじき音[ɽ]が比較的安定して確認された。『言語学大辞典』他は南部方言には頭子音d・gi とr の音声的二項対立が保存されているとあったが、具体的なデータが示されていない。本稿では現代の南部方言におけるd・gi とr の二項対立が実態としてあることを、音響音声学的に明らかにした。
著者
香田 洋二
出版者
海人社
雑誌
世界の艦船
巻号頁・発行日
no.750, pp.76-85, 2011-11
著者
大六 一志
出版者
認知神経科学会
雑誌
認知神経科学 (ISSN:13444298)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3+4, pp.239-243, 2009 (Released:2011-06-30)
参考文献数
20

今日の知能検査が何を測定しようとしており、今後どのような方向に発展しようとしているのかについて検討した。21世紀に入ってウェクスラー知能検査は言語性IQ、動作性IQを廃止し、知能因子理論に準拠するようになった。また、数値だけでなく質的情報も考慮したり、課題条件間の比較をしたりすることにより、入力から出力に至る情報処理プロセスのどこに障害があるかを明らかにし、個の状態像を精密に把握するようになっている。現在は、高齢者の知的能力の測定に対するニーズがかつてないほど高まっていることから、今後は高齢者の要素的知的能力の測定に特化した簡便な知能検査が開発されるとよいと考えられる。
著者
伊藤 武治 江崎 功二郎 小谷 二郎 酒井 敦
出版者
日本景観生態学会
雑誌
景観生態学 (ISSN:18800092)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.177-183, 2020 (Released:2021-09-15)
参考文献数
17

塩素酸系除草剤とグリホサート系除草剤を竹林に施用し,土壌や渓流水の残留量や残留期間を調査した.あわせて,竹林内および竹林伐採後に多く見られる植物種の種子発芽への影響,および除草剤使用後の下層植生への影響を調査した.塩素酸系除草剤は,散布後1ヶ月でほとんど分解された.グリホサート系除草剤では,落葉・土壌・細根からわずかな残留成分が検出された.一方,付近の渓流水からは検出されず,処理区外への流出の可能性は極めて低いと考えられた.種子発芽試験においては,塩素酸系除草剤処理区でカラスザンショウの発芽率が有意に低かった.グリホサート系除草剤を施用した試験では,下層植生の種数が約2倍に増え,植被率も急増し,先駆性樹種や草本が多く見られるようになった.竹林の皆伐後も同様な傾向が示されていることから,タケが枯れることにより皆伐と似たような効果が現れたと考えられた.これらのことから,竹林駆除に使用される除草剤の環境への影響は小さいものと考えられた.
著者
田中 皓介 神田 佑亮 藤井 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集H(教育) (ISSN:18847781)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.39-57, 2015 (Released:2015-06-20)
参考文献数
16
被引用文献数
1

現在および将来の日本のために行われる公共事業をはじめとした公共政策を,適切に計画・実施するためには,社会についての適正な現状認識が不可欠である.一方で,政策決定に大きな影響力をもつ国民世論は,教育の影響を受けることが想定される.そのため,適切な事業の円滑な実施に向け,教育の現状を明らかにすることに意義があろう.そうした認識のもと本研究では,日本の現状を巡る認識について,現代社会についての見方や考え方の基礎を養うことを目的とする中学校公民の教科書を対象に,関連する記述を網羅的に抽出し,既存の文献を参考にしつつ,その内容について考察を行った.分析の結果,公共事業に関し,直接的に印象的かつネガティブな内容が掲載されている点,財政についての知識教育が現実と乖離している点などの問題が明らかとなった.
著者
芦田 裕介 市田 知子 松村 和則 望月 美希
出版者
日本村落研究学会
雑誌
村落社会研究ジャーナル (ISSN:18824560)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.13-44, 2021-10-25 (Released:2022-10-03)
参考文献数
50
被引用文献数
1 1

2020 年度の日本村落研究学会大会では、「ジャーナルセッション」を企画した。これまで『村落社会研究ジャーナル』(以下『村研ジャーナル』)が担ってきた意義と役割を検討しながら、今後のジャーナルのあり方、ひいては村落研究のあり方を考えようというのがこのセッションの目的である。 いうまでもないことだが、本学会においては、農林漁業、農村、地域社会といった対象をめぐり学際的に研究が展開されてきた。つまり、研究対象に対する関心そのものは大きなところで共有されながらも、分析手法や問いの設定の仕方には多様性を有してきたということになる。イエ・ムラ論は本学会にとっては大きな意味を持つ理論設定ではあるのだが、必ずしもそれぞれの研究がその枠づけのなかにあったわけではない。そして『村研ジャーナル』では媒体の性質上、既存の議論の方法を超えて、先進的な研究の試みを展開されてきた。 ただ、学会を取り巻く事情は大きく変化している。投稿論文数の減少の要因にもなる大学院生数の減少、類似の研究を展開できる場となるような大小さまざまな学会の存在、大学等の研究機関における独自のプロジェクトや研究枠組みの創出といった動きのなかで、村研とはどのような問題関心や議論を共有する場なのかということを問われるべき時期にさしかかっている。もちろん、これは本学会に限ったことではなく、さまざまな学会や学問分野においても同様の事態に直面しており、少なくとも人文科学の諸領域においてそれぞれが問うていかねばならない問題でもある。 この「ジャーナルセッション」では、「村落研究」が、自明な領域であるかのようにみえながらも、それぞれの時代の要請や、広く学界の動向を背景に、問いの立て方の幅が転位/変容してきたことのたどり直しを試みた。この「問い」の転位/変容は、学がどうあるべきなのか、という問いとつながっている。いくつかの切り口から、これまでの『村研ジャーナル』の掲載論文を検証し、今後、どのような研究の展開があるべきで、そしてどのような関心を共有していくべきなのかを考える礎にしたい。 *日本村落研究学会では、1994 年から『村落社会研究』の刊行を開始し、第14 巻から『村落社会研究ジャーナル』と改題した。 この特集では、叙述が繁雑になることを避けるため、適宜『村研ジャーナル』の略称を用いることとする。
著者
新城 拓也 岡田 雅邦
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.306-310, 2006 (Released:2006-03-31)
参考文献数
12

悪性腹水を伴うがん患者に対して, 腹水穿刺は有効な治療法である. 多くの症例は, 腹水の再貯留により頻回の穿刺が必要であり, 処置の苦痛と合併症を軽減する目的にカテーテルを留置する方法がある. 症例は, 73歳男性の膵臓がん患者. 合併した悪性腹水の貯留による症状緩和を目的に, 中心静脈カテーテルを留置した. 留置から死亡まで21日間, 連日1,000mlの腹水をドレナージした. 合併症であるカテーテル閉塞を防止するために複数の穴を加え, 発生した腹水リークに対しては医療用シアノアクリレート系接着剤(アロンアルファA®)を使用し良好な効果を得た. 中心静脈カテーテルを用いた腹水ドレナージは処置の侵襲を軽減させ, 低コストである. またカテーテル留置による合併症に対する工夫を報告した.
著者
竹内 智志 大熊 孝 小野 桂 知野 泰明
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木史研究 (ISSN:09167293)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.89-98, 1999-05-01 (Released:2010-06-15)
参考文献数
45
被引用文献数
1

Furniguruma is a man-powered waterwheel which was invented in the late seventeenth century and which came into nation-wide use in the middle of the Edo era. For a long time, its main function was to irrigate rice fields until steam pumps and electric pumps were finally introduced.And, appropriately placed, Furniguruma proved its great power for helping drain underground water at engineering works in those days. Therefore, Furniguruma should be credited for technical advances in agricultural and civil engineering in the middle of the Edo era. However, there has not been much attention paid to Furniguruma in historical studies on civil engineering so far.In this paper, we describe the Furniguruma's ability to pump water and suggest its influence on Kisyuryu, a school of civil engineering in the Edo era.
著者
粕谷 昌宏 加藤 龍 高木 岳彦 伊藤 寿美夫 高山 真一郎 横井 浩史
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.58, no.12, pp.887-899, 2016-03-01 (Released:2016-03-01)
参考文献数
38
被引用文献数
2

本稿では,身体機能を補完する義手と,身体を拡張する義手について述べる。まず,身体機能を補完する義手として,これまでに用いられてきた義手の種類や構成要素,動作原理を解説する。特に,義手の中でも近年注目されている,筋電義手について詳しく記述する。筋電義手の歴史は半世紀以上前までさかのぼるが,その制御方法は長らく革新されてこなかった。そのため,近年登場してきた多自由度の筋電義手においては,制御が複雑で使用者の負担となっていた。これに対し,多自由度の筋電義手でも,直感的で簡便な制御を可能とする,新たな制御方法が実用化されつつある。その研究動向について解説し,そのうえで,この新たな制御方法が実用化されることにより,身体を拡張する義手として,今後社会がどのように変化していくかを述べる。本稿では,最新の筋電義手の動向を,研究段階のものから実用段階のものまで広く解説する。
著者
菅野 直之 藤井 健志 川本 亜紀 望月 小枝加 伊藤 聖 吉沼 直人
出版者
特定非営利活動法人 日本歯科保存学会
雑誌
日本歯科保存学雑誌 (ISSN:03872343)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.385-389, 2013-08-31 (Released:2017-04-28)

目的:歯周病は歯周病細菌により引き起こされる炎症性疾患であり,発症により唾液中の酸化ストレスマーカーが上昇,治療により減少することから,活性酸素が関与する疾患の一つと考えられている.本研究では,軽度から中等度の歯周病を有するボランティアを対象に,ユビキノール(還元型コエンザイムQ10)の摂取が歯周組織の臨床症状,口臭,唾液の抗酸化能に及ぼす効果を検討することを目的とした.材料と方法:被験者を2群に割り付け,実験群には還元型コエンザイムQ10(50mg)を含むサプリメントを,対照群にはプラセボを毎食後摂取させ,4,8週後に口腔内診査,口臭検査および唾液の採取を行った.成績:投与前後での臨床症状では,実験群でプラークの付着程度およびプロービング時の出血点の割合,対照群でプロービング時の出血点の割合に有意な低下が認められた.抗酸化能は,実験群ではやや増加したが,対照群では有意な低下がみられた.口臭の評価では,実験群で低下する傾向がみられた.結論:本結果から,還元型コエンザイムQ10の服用は歯周病による口腔内の症状改善に有用である可能性が示唆された.
著者
前田 陽次郎
出版者
The Japan Association of Economic Geography
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.69-83, 2021-06-30 (Released:2022-06-30)
参考文献数
19
被引用文献数
1

長崎県対馬市は韓国との国境地帯に位置する.近年では1999年に対馬釡山間に定期高速船航路が開設されたことを契機に,日韓両国間の人の行き来が増えた.特に韓国からの観光客が多く,2018年には韓国人入国者が年間40万人を越えた.観光客は1999年から2010年までは徐々に増加したものの,年間5~6万人程度で落ち着いていた.その後2011年の原発事故による韓国人の日本旅行客減少を受け,博多釡山間を運航していた会社が,距離が近く運賃が安い対馬に博多から航路を振り替えたことを契機に対馬への入国者が一気に増え,観光関連事業への投資が活発になった.ところが日本政府による韓国への輸出規制厳格化を受け韓国内で起こったボイコットジャパン運動の影響で2019年7月から入国者が激減した.さらに2020年3月にはCOVID-19の感染拡大を受け,韓国から対馬への入国が禁止されたため,入国者数は0になった.対馬の観光業は大きな打撃を受けたが,他産業から観光関連産業への就業者移行は進んでおらず,地元の住民への影響はそれほど大きくなかった.急激な観光客の増大は産業構造の大きな変化は起こさず,観光業を産業の中心に据えたいのであれば,もっと長期的な施策が必要になる.
著者
谷口 将紀
出版者
公益財団法人 NIRA総合研究開発機構
雑誌
NIRAオピニオンペーパー (ISSN:24362212)
巻号頁・発行日
vol.69, pp.1-6, 2023-06-23 (Released:2023-06-28)

NIRA総研が2023年2月4日に開催したNIRAフォーラム2023では、テーマ1として「熟議民主主義」について議論した。考え方に大きな世代間格差が存在する少子化政策について合意に達するには、人びとの間での熟議が不可欠である。どうすれば熟議を経た政策決定の仕組みができるか。1つは、新しい視点からの「アジェンダ設定」である。例えば、子育て支援では「人口減少」に直結する問題を設定し、従来の「現世代内」の問題設定でなく、「将来世代も視野に入れた」設定に変化させることが重要である。アジェンダ設定能力を持つ代表的なアクターとしてメディアがあるが、そこでの人材の成熟も不可欠である。もう1つは、「熟議プラットフォーム」の再構築であり、IT技術の寄与も期待される。兵庫県加古川市では、インターネットプラットフォームを活用した熟議の実践例がある。このような熟議は、国全体レベルの政策課題の場合には難しい面もあるが、地方自治体主導での熟議が国政レベルの議論につながる可能性もある。他方、政治が安定的で政権交代がほぼ起きず、行政が現場から得られる生きた情報を政治にぶつける力が弱まっているといった現状の日本の統治システム自体が、熟議による政策決定を阻んでいる懸念もある。
著者
田中 秀明
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.220-223, 2011-04-20 (Released:2017-06-30)
参考文献数
14

現代社会のエネルギー媒体の主役である化石燃料(石油,石炭,天然ガス)には限りがあり,現状の勢いで消費が続くと早晩逼迫・涸渇する。一方,次世代を担うエネルギー媒体として期待されている水素は,物質としては地球上に大量に存在し,燃焼生成物も水のみである。このため,エネルギー・環境問題の緩和にも繋がるものと期待されるが,太陽光,風力,水力,地熱等,再生可能エネルギーを利用した水電解などにより抽出(製造)していく必要がある。加えて,水素の大量供給には高効率で安全な輸送・貯蔵技術も必要とすることから,経済産業省やNEDOなどの下にこれまでに様々な研究開発が実施され,課題克服や安全性検証が図られてきた。それでもなお「水素は危険」という先入観のために,その大量貯蔵に違和感を覚える向きもある。このような中,水素貯蔵に対する危険性を科学的・客観的な規準に基づいて正しく把握し,適切な安全対策を立て,将来の利用・普及に繋げることは,科学及び教育に携わる者の責務である。本稿では,水素の高効率貯蔵媒体として約半世紀にわたって開発されてきた水素貯蔵材料を採り上げる。そして,その安全に関する数ある性状の中から発火・爆発危険性について,我々が実際に行った新規に開発された当該材料に対する危険性の検証例を示し,他の貯蔵材料との比較についても紹介する。