著者
松田 政子
出版者
山形大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2007

本研究は、幼児が意欲的に取り組み表現する楽しさが味わえるような、造形遊びの教材とその提供方法について実践を通し考えていくことを目的とした。そこで、文献や先行事例、各種研修会による素材とその活用方法についての教材研究を積むと共に、3歳児の保育にこれらを取り入れ、その有効性について検証してきた。その結果、以下の1〜3の成果が得られた。1 粘土は、容易に形を作ることが出来、繰り返し楽しめる魅力的な素材である。また、安全な小麦粉粘土、造形のしやすい油粘土、着色できる紙粘土、ダイナミックに活動できる土粘土など色々な種類がある。手作りで楽しめる新聞紙粘土や、糊粘土、石けん粘土などもある。これらの中から、子ども達の育ちに合わせて粘土を選び準備していくことで、のびのびと活動する姿が見られた。素材の特性をよく知る、そして子ども達への願いに応じた提供をしていくことは、保育者の欠かせない役割であるといえる。2 3歳児は、クレヨンであれば、ぐるぐる点々ジグザグをリズム良く描くことに、絵の具であれば色水作りや塗りたくりに喜んで取り組んでいた。偶然の形や変わっていく形を見立て、お話しする様子も多く見られた。これまでは、自分の顔を描くなど保育者側に出来上がりのイメージがあり、描き方など誘導してしまうことが多かった。だがそれ以上に、子ども達が自由にかかわり、試しながら、素材の面白さを見つけていけるような活動が、幼児の興味を引き出すとわかった。3 市販の画材の他、石や木の枝、草花などの自然物、箱やロール芯などの廃材、ストローや毛糸など身のまわりのもの等、実に様々なものが造形の教材となる。また、紙ひとつの素材をとってみても、描く、切る、貼る、組み合わせる、並べるなど、多様な造形遊びが考えられる。幼児期の造形遊びでは、これらの教材との出会いを作り、子どもと共に「色」と「形」の面白さに心を動かしていく保育者の感性と姿勢が、幼児の興味と意欲を引き出すということが成果として得られた。
著者
塩沢 泰子 生田 祐子 Duval Cary A. Ano Koichi Piggin Gabrielle
出版者
文教大学
雑誌
文教大学国際学部紀要 (ISSN:09173072)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.41-58, 2010-07

本研究の目的は、文教大学国際学部が2008 年に設立した外国語学習支援室、Language Garden (LG)について、背景理論、LG の概観、利用者の学習状況調査結果を中心に論じ、英語教育カリキュラムと連携する効果的な自律学習方法を考察することである。言語習得の過程において、対象とする言語を実際に使用する機会(English Reality)の有無が学習成果を大きく左右するため、LG はコミュニケーション手段として英語を使う環境を学習者に提供することを主たる目的として、設立された。同時にLG は授業を補うだけではなく、海外研修や海外ボランティア活動等、学部カリキュラム上のプログラムを補い、統合することに寄与している。LG には習熟度や興味に応じた多様なジャンルの学習教材(書籍、DVD、雑誌、漫画、新聞、ラジオ講座テキスト)に加え、会話を発展させ語彙力を鍛えるゲーム等も設置されている。大型TV スクリーンには常時英語ニュースが流れ、学生の間も英語でのコミュニケーションが原則である。2 名の助手が英語教員とともにLG の運営に関わり、日常的に学生への学習支援や教材の管理を行っている。また学生たちの協力も得て、クリスマスやハロウィーンなどのイベントも定期的に行うなどの雰囲気作りにも配慮している。しかしながら頻繁に利用している学生の数は、ほとんど利用しない学生の数より大幅に少ないことが調査結果から判明した。この背景の原因と学生のニーズを分析しつつ、今後専門カリキュラムとも密接に連動し学習効果を上げていくために、LG での自律学習の単位認定、英語学習ポートフォリオや学習カウンセリングを導入することを提案する。
著者
郭 昌俊(郭沛俊)
出版者
横浜国立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究では繰り返せない一回限りの意思決定問題に対し、ワン・ショット意思決定理論を提案した。期待効用理論など主な意思決定理論は「くじ」を選択する理論に対し、ワン・ショット意思決定理論は「シナリオ」を選ぶ理論であるので、今までにない根本的に新しい理論である。提案した理論を用いて、個人の不動産投資問題、複占市場問題、新聞売り子問題に適用し、分析の結果から、一回限りの意思決定問題に対し、ワン・ショット意思決定理論は有効であることが分かった。ワン・ショット意思決定理論の拡張として、多段階ワン・ショット意思決定理論を提案し、基本的な性質を調べて、最適停止問題および個人の多段階投資・消費問題に適用した。
著者
坪井 陽子
出版者
中央大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

1.Chandra衛星でM17 HII領域を観測し、886ものYoung Stellar Objectsを検出した(Broos, et. al. 2007 ApJS)。その40%はAvが10等以上の減光を受けた若い天体であり、IRS5/UC1領域、Kleinmann-Wright天体、M17-Northといった有名な星生成領域や、新たに発見した、2pcの長さの孤状領域、0.1pcスケールの領域にある程度が付随していた。残りの減光を受けた天体は、集団で生まれている星よりも多く、分子雲全体に大きく拡散していた。M17には何百かのClass I原始星候補が存在するとされているが、結局そのうち64個からX線が検出された。2.すざく衛星による銀河中心方向のサーベイで、早期A型星から大きなフレアが受かった(Miura, et. al.2008 PASJ)。強い磁場が存在しないとされるA型星から、原始星と共通する大きなフレアが受かったことは驚きに値する。フレアループの磁場の強さは、50gauss、ループの長さは0.05AUと導けた。最も考えられうる放射機構は、そのA型星は他の星と近接連星系をなしており、相互作用を及ぼしあうことによって磁場が増幅されているという説である。3.すざく衛星を用いてM17 HII領域の拡がったX線成分を検出した。高電離状態の元素からの輝線を複数検出し、この拡がったプラズマは、300万度程度の単一温度の太陽コロナモデルでフィッティングできること、水素に対する元素の組成比は太陽組成比の0.1-0.3倍であること、元素同士の組成比はNeを除いて大体太陽組成と同等で、Neのみが太陽組成の2倍あることを明らかにした。これらの結果は我々の観測した5pc程度の拡がりのどこでも同じ結果であった。4.すざく衛星を用いて、超新星残骸の研究(Bamba, et. al.2008 AdSpR、Takahashi, et. al.2008 PASJ)、および超新星残骸の集合体と考えられているNorth Polar Spur (Miller, et. al. 2008 PASJ)の研究を行った。
著者
榎本 ヒカル 久保 博子 磯田 憲生 梁瀬 度子
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.46, no.11, pp.1091-1100, 1995-11-15
被引用文献数
4 2

This paper aims to analyze the effects of the aging from residential dwellings which are specifically concerned with heating and cooling systems. Also this paper attempts to clarify the characteristics and problems associated with it. For the purpose, we conducted surveys among 900 residents of western Japan during both winter and summer, the residents arranged with three age groups. The main results are as follows : 1) In the summer, the most popular cooling systems are air conditioners among young and middle-aged people, and electric fans among old people over 60. 2) In the winter, the heating mechanism most commonly used are unvented burning heaters among the middle and old people, and "kotatsu"-style heating among those under 40. 3) In the summer, the choice of a cooling system by older people are determined by individual constitution and the body mass index. In the winter, choice of a heating system is affected more by the age of the dwelling or family composition than by constitutional needs.
著者
加藤 博一 片寄 晴弘 真鍋 佳嗣 山口 証 井口 征士
出版者
大阪大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1996

1)インタラクティブアート作成支援ツールの整備使用可能なジェスチャ情報が多ければ,それだけ,作品を作っていく際の自由度がますわけであるが,そのハンドリングはア-ティストのみならずシステム制作者にとっても煩雑なものである.シンタクスがあっていたとしても,CPUの能力や通信バスの許容量を考慮したプログラミングを行わないと,思い通りに動かなかったり,時にはシステム全体がクラッシュしてしまうことがある.我々は,各シーンのトランディションが明に記述できるMAX上のフレームワークHIATを作成した.HIATでは,音響エフェクトに関するパッチ,音像移動などディジタルミキサに関するパッチ,その他にパターン認識パッチ,トリガー生成不応期パッチ,映像系制御パッチを利用することが出来る.2)VRシステム使用時の緊張状態の生理指標による計測の検討定量的・客観的に心理状態を得る手段として,生理指標を用いた手法が確立されつつある.特に,皮膚電位活動及び心拍活動といった生理指標を用いることで,緊張状態を定量的に評価できることが知られている.本研究では,これらの生理指標を用いて緊張状態に影響を与える要因と生理指標との関係を用いて解析を行い,その結果に基づいて人間の緊張状態をモデル化するという試みを行ってきた.Virtual Performer演奏時における生理指標の計測を行い,演奏時における緊張状態が計測可能であることを確認するとともに,パフォーマ-と観客の生理指標を同時計測し,緊張状態の関連性についての検討を行った.
著者
Endo Motomu Shimizu Hanako Nohales Maria A. Araki Takashi Kay Steve A.
出版者
Nature Publishing Group
雑誌
Nature (ISSN:00280836)
巻号頁・発行日
vol.515, no.7527, pp.419-422, 2014-10-29
被引用文献数
228

植物で組織ごとに異なる体内時計が働いていることを発見. 京都大学プレスリリース. 2014-10-30.
著者
松原 小夜子
出版者
椙山女学園大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、住まいの各所を移動して行われる家事作業の特性に着目して、既存住宅と高断熱住宅の比較も念頭におきながら、家事作業時の暑さ感と防暑行為を捉えた。その結果、両住宅区分ともに、「暑さで困っている」との回答は多いが、作業の性質上、冷房利用の効果はあまり期待できないため、既存住宅はもとより高断熱住宅においても、くつろぎ時に比べると冷房利用は少なく、「窓開放」などの様々な防暑行為を行っていることがわかった。家事作業時の暑さ感を緩和するにあたっては、高断熱高気密化や、自然な方法による防暑の工夫などによって、内部空間全体の温度分布が小さくなるような住まいや住まい方が求められることが示唆された。
著者
都築 伸二 山田 芳郎
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

漏電ブレーカの誤動作問題と従来のN-L (コンセントのN (Neutral)とL (Live)端子を用いる) 伝送時の信号減衰問題の両方を回避できる方式として、PE端子(Protective Earth, コンセントの3番目のアース端子)とN端子間に信号を注入するN-PE伝送方式をまず提案した。しかしこのN-PE方式でも、ビルのフロア間通信は困難であった。そこで、フロア間を縦断するケーブル(1線のみでよく、信号の帰路は大地を用いる)をインダクティブカプラでクランプして、PLC信号をシングルエンド型で伝送する一線式PLC伝送方式も開発した。
著者
若林 幹夫 RYCHLOWSKA Irena Weronika RYCHLOWSKA I.W RYCHLOWSKA I.W.
出版者
早稲田大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2004

本研究は研究分担者がポーランドで着手していた後期資本主義の文化の論理に関する研究の継続として、西欧のポストモダンと日本の伝統思想の類似的な関係と並行現象を対象とするものである。最終年度の研究として、平成18年度にはこれまで継続してきたフィールドワーク、資料収集をさらに進めるとともに、そうした資料の具体的な分析や解釈の作業をおこなった。東京では建物だけでなく、文化的な仕掛けや記号、そして様々な人工物が都市イメージを形作り、さらには主要な建築を支配しており、その結果、都市の中を移動することは場所やランドマークの間を移動するというよりも、様々な経験と視覚の間を移動することになる。したがって得られたデータの分析や解釈も、東京における時間と空間の固有のパターンだけでなく、都市景観から消費財の細部にいたる様々なスケールにわたる事象や経験を対象としておこなわれた。具体的には、東京の現代の都市文化と空間的な秩序について、「かわいい」という擬人化的美学、原宿のコスプレーヤーたちとゴシック・ロリータ文化の広がり、秋葉原の再開発とオタク文化等を、人びとと物、そして空間や場所との相互依存関係という点から分析することを試み、さらに比較社会学的な分析を加えることで、一見すると特殊日本的にも見えるこうした現象が、世界的な規模で広がる後期資本主義的現象とそこでの意識のあり方の一つの現れであるという仮説を得た。東京の都市文化や空間文化のそうした諸側面は、日本の文化、宗教、民間信仰と東京の都市デザインや現代日本の消費財のデザインとの間の一貫性とパラレリズムを示している。それは後期資本主義の文化と、日本の文化、宗教、民間信仰との間に一貫性やパラレリズムが存在するという仮説を示唆するものである。上記の研究成果は研究分担者により1冊の著作としてまとめられ、公表される予定である。
著者
畑井 克彦
出版者
Japan Institute for Group Dynamics
雑誌
集団力学 (ISSN:21872872)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.176-194, 2014

<tt> 筆者(高校教諭)は、</tt>2003 <tt>年から約</tt>10 <tt>年間、兵庫県伊丹市で、地元商店街の地域住民と高校が連携して、高校生を教育する試みを行ってきた。具体的には、高校生に商店街の店舗で活動する機会を与え、「社会人デビュー」をしてもらう活動、すなわち、「商店街学校」の試みである。この活動を通じて、高校生をも含む住民の絆も紡がれていく。本論文の前半では、「商店街学校」が着想されて以来、現在までの経緯を紹介する。</tt><br><tt> 「商店街学校」は、教室で教科書に沿って行われる教育とは大きく異なっている。お定まりの筋書などない。教師と生徒が、商店街を舞台に、筋書を書きながら演じるドラマと言ってもよい。そのドラマの中で、高校生は、主体的に「自ら筋書を書き、演じること」の苦労と喜びを味わい、人間として成長していく。しかし、あくまでも高校教育の一環である限り、「筋書のないドラマ」を生徒とともに演じていくことは、教師にとって大きな挑戦でもある。本論文の後半では、「商店街学校」のハイライトでもある「ハロウィンパーティ」に注目し、その準備段階での生徒の動向と、それに伴う教師の迷いと判断を時系列的に述べる。</tt><br><tt> 「地域が子どもを育てる」とは言うものの、その実例は少ない。本論文は、その貴重な実例を、内部者の苦労をも含めて発信するものである。</tt>
著者
鈴木 桂水
出版者
日経BP社
雑誌
日経レストラン (ISSN:09147845)
巻号頁・発行日
no.344, pp.114-117, 2004-08

約30年間ほぼ価格が変わらないことから、「物価の優等生」と言われる卵。その一方で最近は、1個200〜600円もする高級卵も注目されている。また、飼料に工夫を凝らすことによりビタミン類やヨードなどの成分を高めた栄養強化卵も人気が高い。 卵は、料理からお菓子まで、あらゆる場面で広く使われる食材だけに、どの卵がどんな料理で生きるのかは気になるところ。
著者
境野 健太郎 友清 貴和 高田 光雄
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.78, no.683, pp.45-53, 2013-01-30 (Released:2013-05-30)
参考文献数
23
被引用文献数
2

This study aims at clarifying the changes in facility planning for Hansen's disease sanatoriums under the Leprosy Prevention Law based on a review of the literature. The results are as follows:1) In the late 1940s, the national sanatoriums were planned to accommodate all Hansen's disease patients despite of the unnecessary isolation, as the result of developing effective therapeutic agents. The residents submitted a petition to the authorities to establish the Leprosy Research Center etc.2) The nationwide organization of the residents negotiated improving the medical service and living environment, preparation for aging, income growth and so on, with the government..3) In the fourth stage, the nationwide organization prioritized the serious cases by improving their living environment.4) In the fifth stage, under the limited budgeting resources, an individual facility planning was implemented rather than standardized planning.