著者
原田 小夜
出版者
日本健康医学会
雑誌
日本健康医学会雑誌 (ISSN:13430025)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.26-35, 2013-04-30

本研究は,高齢精神障害者の在宅生活支援においてホームヘルパー(以下,HH)が対応に困った利用者の行動とHHの対処を検討するためにインタビュー調査を行った。対応に困った利用者の行動を抽出し,カテゴリ分類を試みた。HHの対処を4段階のレベル,1「全く対応できなかった」.2「対応できなかった」.3「対応できた」,4「上手く対応できた」に分類し,利用者の行動別に対処レベルの割合を求めた。HHが困った利用者の行動は151件で,7カテゴリ,18サブカテゴリに分類された。《精神症状への対応》51件,《うつ状態への対応》5件,《不安への対応》12件,《拒否・攻撃への対応》17件,《生活障害への対応》36件,《コミュニケーションの取り方》23件,《認知機能を伴う行為》7件であった。対処行動は,レベル1が31.1%,レベル2が29.1%,レベル3が21.9%,レベル4が17.9%であった。《精神症状への対応》,《うつ状態への対応》,《拒否・攻撃への対応》が低く,《不安への対応》,《認知機能を伴う行為》で高かった。《生活障害への対応》,《コミュニケーションの取り方》は,サブカテゴリにより異なった。HHのケア困難感を軽減するためには,(1)精神症状と障害の理解と対処に関する教育プログラムの開発,(2)ケアチームの医療職に相談できる体制づくり,(3)HHの観察情報の多職種ケアチームでの共有とケアモニタリングでの活用の3点の重要性が示唆された。
著者
森 美加 馬渕 麻由子 酒井 佳永 安田(鹿内) 裕恵 岩満 優美 飯嶋 優子 日高 利彦 亀田 秀人 川人 豊 元永 拓郎
出版者
一般社団法人 日本女性心身医学会
雑誌
女性心身医学
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.132-145, 2013

女性が多数を占める疾患である関節リウマチ(Rheumatoid Arthritis : 以下,RAとする)患者がどのような心理的支援を望んでいるのか,そのニーズを調査し,さらに,RA患者に対するサービスのあり方を検討し,ニーズに合わせた支援プログラムを提案することを目的として,2011年2月から8月,RAに罹患し医療機関にて治療を受けているRA患者で,研究参加に同意した20名(女性18名,男性2名)を対象として,調査票および面接による調査を行い,面接の逐語記録の文書データをグラウンデッドセオリーアプローチを参考にして分析した.その結果,電話相談,ホームページ,メール相談,個別心理相談,心理教育,セルフケアグループすべての支援に対してニーズがあり,特に電話相談(必要時),個別心理相談(通院先),心理教育のニーズは顕著であった.そこで,個別心理相談,心理教育を中心とした,チームによる包括的なケアシステムがRA患者のQOLを高めるためには有効なのではないかと考えられる.また,心理教育のテーマとしては,確定診断時においては,(1)病気の具体的な説明,(2)身体的ケア,(3)心理的ケア,(4)療養上の工夫が,生物学的製剤開始時においては,(1)効果と副作用を中心とした具体的説明,(2)自己注射について,(3)費用について,(4)生物学的製剤を使用する上での不安と期待についてが,家族向けとしては,(1)病気の説明,(2)RA患者の心理について,(3)家族へのケアが考えられる.さらに,不安の受容と変化を併せ持った心理療法的チームアプローチであるDBTを参考にした包括的ケアシステムの開発は,不安と安心の間で揺れ動くRA患者の心理的ケアのモデルとして有効であり,また,RA患者の長期的Quality of Lifeを最大にすることを治療目標とするT2T(Treat to Target)の有効性に繋がるのではないかと考えられる.
著者
三宅 亜希子 小沼 聖治 佐藤 光市 杉本 浩章 小松尾 京子 田中 和彦
出版者
日本福祉大学
雑誌
日本福祉大学社会福祉論集 (ISSN:1345174X)
巻号頁・発行日
no.129, pp.107-123, 2013-09-30

本研究は, 相談援助実習の巡回指導における実習教育スーパービジョンの内容とその課題を明らかにすることを目的としている. 巡回指導における複数回の実習教育スーパービジョンにおいて, それぞれの回で取り上げるべき実習教育スーパービジョン項目があることを仮説とし, 各回の実習教育スーパービジョンの項目を明らかにするための調査を行った. 分析方法は, 新カリキュラム初年度に本学通信教育課程の教員が作成した 『巡回指導ガイドライン』 の分類枠組みを作業仮説とした逐語データの分析である.その結果, (1)それぞれの回の巡回指導を構成する実習教育スーパービジョン項目の位置づけ, (2)実習生の語りから実習教育スーパービジョンの手がかりを得ることの有用性, (3)実習教育スーパービジョンにおける 「実習記録」 活用の有用性が明らかになった.
著者
藤島 達朗
出版者
奈良大学
雑誌
奈良大学紀要 (ISSN:03892204)
巻号頁・発行日
no.3, pp.p75-79, 1974-12

親鸞(1173-1262)を宗祖とする浄土真宗に於ける歴史的反省及びその述作は,本願寺三世覚如(1270-1351) による宗祖親驚の伝記研究(「報恩講私記」,「親鷺伝絵」,「口伝妙」等)にはじまり,8世蓮如(1415-1499)の生涯を,その子実悟(1492-1583)によって回顧記録されたことがこれにつぎ,つづいて蓮如の孫顕誓(1499-1570)により,永禄11年(1568)「反古裏書」が撰せられて,ここにはじめて通史的述作を得た.もっともこれは本願寺の歴史が中心で,8世蓮如,9世実如(1458-1525)10世証如(1516-1554)11世顕如(1543-1592)に,やや詳細ではあるが,全体として簡略,本格的な編述とはなしがたい.江戸時代に入ってその正徳5年(1715)良空(1669-1733)によって「高田開山親鶯聖人伝」が著わされ,伝として一応完成されたものが,はじめてここに出現した.世の泰平とともに信徒の旧跡巡礼が盛んとなり,その機運にうながされて,祖伝研究の一班としての遺跡研究が盛んとなり,「据聚抄」(1700刊),「遺徳法輪集」(1711刊)等を筆頭に,いわゆる「廿四輩記」類が続出したが,これは玄智(1734-1794)編,明和8年(1771)刊の「大谷遺蹟録」で極まった.以上の如き風潮のもとに,祖伝,寺伝をふくむ真宗の通史が,全書的なかたちを以て成就されたのが「大谷本願寺通紀」である.真宗に関する歴史的研究は,明治以前に於て,これに極まるというべきであるが,以下述べる如き事情で,完全に刊行せられず,小異をもつ幾種類かの写本として伝えられ,漸く明治45年の「大日本佛教全書」,大正3年の「真宗全書」中にて,それぞれ活字化された.写本の異動は,それらを底本としたこの二本に直にあらわれている.特にひろく普及している「大日本仏教全書」本(以下「仏全本」という)が,未整理のままである稿本を以てしているので,完成本である「真宗全書」本(以下「真全本」という)其他と比較して,その書誌学的な開明を施こそうというのである.
著者
長友 美穂子 松田 安弘 山下 暢子 吉富 美佐江
出版者
群馬県立県民健康科学大学
雑誌
群馬県立県民健康科学大学紀要 (ISSN:18810691)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.55-75, 2014-03

目的:カンファレンスを運営するチームリーダーの行動を表す概念を創出することにより,その総体を明らかにし,カンファレンスを運営するチームリーダーの行動の特徴を考察する.方法:研究方法論には看護概念創出法を適用し,2病院4病棟におけるカンファレンス時のチームリーダー,チームメンバー,看護師長の相互行為場面を参加観察法(非参加型)によりデータを収集し,持続比較分析を行った.結果:カンファレンスを運営する9名のチームリーダー行動の21現象274相互行為場面を持続比較分析した結果,【業務と討議内容考慮によるカンファレンスの開始と進行】【看護問題の早期解決に向けた他職種への相談】など,12の概念を創出した.結論:カンファレンスを運営するチームリーダーの行動を表す12の概念を明らかにした.また,考察の結果,カンファレンスを運営するチームリーダーの行動を表す12概念は,5つの特徴をもつことを示唆した.
著者
牧 剛史
出版者
佛教大学
雑誌
教育学部論集 (ISSN:09163875)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.25-34, 2014-03-01

「臨床心理士」は1988 年に資格化され、現在まで右肩上がりに資格取得者数は増加し続けている。対人援助の専門職を資格化する上で大きな課題となるのが、その養成プログラムであろう。「対人援助」の専門家である以上、実践を行なうことが必須になるが、「学生」というアイデンティティに留まっている者をいかに「実践家」に育て上げるのかは避けては通れない重要な問題である。本論文では、現在の臨床心理士養成プログラムについて呈示し、臨床心理士養成プログラムにおける「省察」や「実践知」の重要性を論じることを目的とした。臨床心理士資格を取得するためには、大学院を修了することが基礎要件となっている。現在は指定大学院が認定されており、臨床心理士の専門資質のレベルを一定水準に維持した養成プログラムとなっている。指定校の一つである佛教大学大学院臨床心理学専攻では、特に「臨床心理実習」を重視したカリキュラムを用意している。この実習には、学外機関での実習とグループスーパーヴィジョン、附属相談室での事例担当と個人スーパーヴィジョンおよびケースカンファレンスが含まれている。臨床心理士の養成においては、自分自身の実践について省察する「行為についての省察」だけではなく、臨床実践中に何を感じていたかという「行為の中の省察」が重要である。「臨床心理実習」を通して学ぶのは「実践のマニュアル」ではなく、「個別的・具体的な実践知」であると言えよう。
著者
百瀬 良/越智 眞理子/佐藤 昌子/松永 しのぶ/藤崎 春代 越智 眞理子 佐藤 昌子
出版者
昭和女子大学
雑誌
昭和女子大学生活心理研究所紀要 (ISSN:18800548)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.81-93, 2014-03-31

In 2010, we inaugurated a developmental counseling room as a part of a regional project to support children with developmental disorders. Part 1 of this study examined individual consultations and Part 2, Parent Training conducted in this counseling room. Results of Part 1 indicated that the goal of individual consultations were to accept the awareness and anxieties of such children's caretakers, provide psychological education and assistance based on assessment results, and refer clients to other specialized institutions and regional support programs. Future tasks are (1) improving the accuracy of assessments by using test batteries matched to the children's age and stage of development, and (2) gathering up-to-date information on systems and institutions available to care for such children. Part 2 of this study indicated that Parent Training met parent's needs to learn methods of coping with their children, to ease their sense of isolation, and for psychological support. It is suggested that the future task of Part 2 of this program is to respond to the need for longitudinal care as children mature. In conclusion, results indicated the need to combine individual consultations matched to a child's developmental stage and characteristics, and Parent Training that benefits from mutual interactions.
著者
戸水 吉信
出版者
金沢大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

学習指導要領の改訂に伴い,数学的な活用力を育てる授業のあり方についてこれまで研究をすすめてきた。本研究の目的および意義は,日常生活における身の回りの事象を数学的にモデル化し,数学的手法を用いてそれらの問題を解決する生徒の成功体験モデルを増やし,数学的な活用力を育てる授業モデルとして,データベース化をすすめることである。また,データベース化したものを冊子にまとめ,市内中学校へ配布すると共に,本校ホームページにアップすることで,より多くの数学指導者とそれらを共有し,さらによりよい授業のあり方について検討をすすめることができると考え,実践を行った。その実践内容は以下の通りである。(*)は,研究費で購入した電子黒板を用いた実践である。また,実践全般にわたって,研究費で購入したプリンタ・スキャナ複合機を用いて,生徒が書いたレポートの電子データベース化を行った。(1)6月単元「連立方程式」での実践買い物ゲームと問題づくり(2)8月データベースづくり(昨年度までの研究実践に基づいて)(3)9月単元「1次関数」での実践ダイヤグラムのシミュレーションと問題づくり(*)(4)10月単元「平行と合同」での実践デジタルカメラでの取材と電子データベース(*)(5)11月単元「平行と合同」での実践合同な黄金三角形づくりゲーム(6)1月単元「確率」での実践確率実験とシミュレーション(*)(7)2月単元「資料の活用」での実践問題解決型の課題設定の工夫これらの実践に,昨年度までの次の5つの実践を加えて,研究の成果を「数学的活用力を育てる授業のあり方~指導事例集~」という冊子にまとめた。(8)降雨時のトンネルの点検の必要性を,その降水量から正負の数を用いて解決する(9)等式の変形を利用して,まんじゅうの詰め方を考える(10)2次方程式を利用して条件にあった牛乳パックを作る(11)作図を用いて,鉄道建設の問題を解決する(12)相似な図形の性質を用いて,地図上の所要時間の問題を解決するこの冊子は金沢市内中学校に,5月の中学校数学教育研究会で配布する予定である。また,その冊子をPDF化したファイルを,本校数学科のページにアップした。
著者
石川 幸一郎 谷口 治人 鈴木 宏和 太田 豊 水野 陽二郎
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌B(電力・エネルギー部門誌) (ISSN:03854213)
巻号頁・発行日
vol.134, no.7, pp.568-578, 2014 (Released:2014-07-01)
参考文献数
29
被引用文献数
6

Because of global warming, the attention to the photovoltaic generation has increased, and a lot of photovoltaic generations will be installed in the power system. In Japan, most photovoltaic generations will be connected to the distribution system. This will make the power flow in the power system changed. That is to say that the forward power flow (flow from higher voltage system to lower voltage system) reduces, or, moreover, that the reverse power flow occurs. Because of the change in power flow, the voltage characteristics will be also changed. Consequently, it is expected that the penetration of photovoltaic generation has some impacts on voltage stability. In previous study, the voltage characteristics in simple power system model which consists of one infinite bus, one load, and one photovoltaic generation is made clear. It is indicated from the results that there is not only forward power flow limit but also reverse power flow limit (left nose in PV curve), and that, when the output power from photovoltaic generation is very large, left nose sometimes has some impacts on voltage stability. In this paper, the voltage stability in the simple power system model considering the dynamics of an induction motor is discussed.
著者
石川 幸一郎 谷口 治人 鈴木 宏和 太田 豊 水野 陽二郎
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌B(電力・エネルギー部門誌) (ISSN:03854213)
巻号頁・発行日
vol.134, no.1, pp.2-8, 2014-01-01 (Released:2014-01-01)
参考文献数
14
被引用文献数
2 9

Because of global warming, the attention to the photovoltaic generation has increased, and a lot of photovoltaic generations will be installed to the power system in future. In Japan, most photovoltaic generations will be connected to the distribution system. This will make the power flow in the power system changed. That is to say that the forward power flow (flow from higher voltage system to lower voltage system) reduces, or, moreover, that the reverse power flow occurs. Because of the change in power flow, the voltage characteristics will be also changed. Consequently, it is expected that the penetration of photovoltaic generation has some impacts on voltage stability. In this paper, simple power system model which consists of one infinite bus, one load, and one photovoltaic generation is considered, and the fundamental voltage characteristics are discussed by PV curves and phasor diagram. The voltage characteristics considering the current limit by PCS (Power Conditioning System) in the photovoltaic generation are also discussed.
著者
宮崎 眞
出版者
岩手大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究の目的は、(1) 複数の人が役割を分担する共同活動の中で言語行動の始発を促すより効果的なスクリプト・スクリプトフェイディング(以下、S・SF) 法の開発、(2)S・SF 法の特長を生かした新たな般化促進法、(3) スクリプトを自らが管理し活用する自己管理法の開発、である。対象者は5 名の知的障害を伴う自閉症者であった。制作やゲーム等の活動の中で、会話行動を指導した結果、S・SF 法により、会話行動が促進されることと学校において会話の頻度が著しく増加した。スクリプトの新たな提示法としてタブレット端末による提示法を開発し、有効性が確認できた。
著者
土岐 精一 雑賀 啓明
出版者
独立行政法人農業生物資源研究所
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

高等植物における相同組換えを利用した遺伝子ターゲッティングの高効率化をめざし、相同組換えを活性化する化学物質を探索した。相同組換え頻度を計測することができるシロイヌナズナのモデル実験系を用いて237種類の化学物質を評価した結果、相同組換え頻度を向上させると考えられる化学物質が15種類選抜された。また、DNAの二重鎖切断(DSBs)処理で顕著な発現誘導を受けることが知られているRad51遺伝子の発現解析の結果、特に効果が高いと思われる3種類の化学物質はDSBsを誘導しない可能性が示唆された。
著者
池内 了
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.47, no.11, pp.865-872, 1992-11-05

観測された事象を基に宇宙の年齢や平均密度など, この宇宙の基本パラメータを決めようとする観測的宇宙論が急進展している. その一つの重要な目標は, 銀河というこの宇宙を構成する基本単位と, その大規模な分布がいつ形成され, どのように進化してきたかを明らかにすることである. そのためには, より遠くの, 従ってより過去の銀河を見つけ出し, 年齢順に並べてゆくことが必要である. 現在はまだ点の情報で, 全体の進化を論じうる線の情報や, 大スケールの構造を調べうる面の情報にはなっていないが, 宇宙の過去の情報が垣間見えるようになってきた. それらをまとめつつ, どのような宇宙進化のシナリオが構想されるかを考えてみよう.