著者
味村 俊樹 山名 哲郎 高尾 良彦 積 美保子 遠藤 智美 勝野 秀稔 松岡 弘芳 大毛 宏喜 角田 明良 吉岡 和彦 貞廣 荘太郎 前田 耕太郎
出版者
日本大腸肛門病学会
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.109-117, 2012 (Released:2012-03-27)
参考文献数
30
被引用文献数
2 2

目的:多施設共同による本邦における便失禁診療実態調査に伴って,仙骨神経刺激療法(sacral nerve stimulation,以下SNS)の適応に関して検討した.方法:2009年の1年間に便失禁を主訴に9施設を初診した患者を対象に, SNSの適応に関して調査した.結果:対象症例は293例で,女性214例,初診時平均年齢65歳であった.266例(91%)に何らかの治療が行われ,症状改善率44~93%と,ある程度良好な成績をおさめていた.しかしそれでもSNSの適応に関して,「良い適応」8例,「適応になるかも知れない」73例と合計81例(28%)に,更なる治療としてSNSの適応ありとされていた.適応ありとした理由は,「現在の治療法では症状の改善が不十分だから」が47%,「SNSの効果に期待するから」が38%であった.結語:多くの症例に検査や治療が行われていたが,症状改善が不十分でSNSの効果に期待する症例が28%いた.今後,本邦へのSNSの導入・普及によって便失禁治療の選択肢が拡がることを期待する.
著者
小川 晃一 高田 潤一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.83, no.6, pp.852-865, 2000-06-25
被引用文献数
43

本論文では, ホイップアンテナと板状逆Fアンテナによって構成された携帯電話用ダイバーシチアンテナについて, それを所持する人体の電磁的影響を考慮して求められるブランチ間相関及び実効利得性をπ/4シフトQPSKの相関係数及び不等中央値として使用することにより, アンテナ特性が影響するシステム利得である移動局のダイバーシチ利得とアンテナ実効利得の両者を同時に評価する指標として, ダイバーシチアンテナ利得(DAG:Diversity Antenna Gain)を新たに導入し, 携帯電話用ダイバーシチアンテナの実効性能と外部環境, アンテナ構成パラメータ及び人体の影響を定量的に評価した.ダイバーシチ合成法としては, 現行ディジタル携帯端末(PDC方式)に用いられている高周波段での切換合成の上限特性を与える検波後選択合成受信(遅延検波), 及びより高い性能が期待できる最大比合成受信(同期検波)の2通りについて解析した.900MHz帯において, ホイップ長, 鉛直方向からの傾き角, 人体と端末の距離, 到来波の状況とダイバーシチアンテナ利得の関係を解析し, これにより, 携帯電話用ダイバーシチアンテナの使用状態における実効性能を調べ, 高いアンテナ性能を得るための条件を具体的に示した.
著者
進藤 穣 上新 学 御木 英昌
出版者
日本水産學會
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.726-730, 2000-07-15
被引用文献数
1

魚肉すり身の低温脱水過程で, 魚肉タンパク質の変性による魚肉の平衡含水率の低下が想定される。そこで, 脱水特性曲線より得られる限界含水率(Wc)を指標に, 低温貯蔵中(0℃)の筋原繊維(Mf)タンパク質の変性とWcとの関係を検討した。減率脱水期間内に変曲点を示す第二限界含水率((Wc)<SUB>2</SUB>)が得られた。(Wc)<SUB>2</SUB>は貯蔵日数の経過とともに低下した。また, (Wc)<SUB>2</SUB>はMf Ca<SUP>2+</SUP>-ATPase全活性およびMf溶解度に対して, それぞれ高い正の相関(r=0.94,0.88)を示した。以上より, (Wc)<SUB>2</SUB>はタンパク質の変性状態を知る指標になり得ると考えられた。
著者
秋山 正幸 大屋 真
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

広視野補償光学を実現するトモグラフィー波面推定の新しいアルゴリズムとして、複タイムステップ・トモグラフィック波面推定の手法を、すばる望遠鏡の持込み装置である多天体補償光学実証機 RAVEN を用いて実証した。RAVEN の波面センサーの解析により、各高さの大気揺らぎが風向きにより時間と共に移動していること、相関のピークの強度は100ms程度までは強く、この時間間隔では大気揺らぎの各層が「凍結して移動している」と見なせることがわかり、複タイムステップ・トモグラフィック波面推定の有効性が実証された。
著者
近藤 純正
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.269-277, 1998-04-30
被引用文献数
6

いろいろな気候域と各種地表面における蒸発散量を比較するために, 新しく導入されたポテンシャル蒸発量(可能蒸発量)で蒸発散量と降水量を無次元化し, それらの気候学的な関係を求めた.裸地面においては, 降水量の少ない乾燥域では年蒸発量は土壌の種類によらず年降水量にほぼ等しいが, 降水量が増加すると年蒸発量は土壌の種類に依存するようになり, さらに降水量が増加すると無次元年蒸発量は土壌の種類によって決まる上限値をもち, 無次元年降水量(気候湿潤度)に依存しなくなる.上限値は保水性のよいローム質土壌で0.6〜0.9, 排水性のよい粗砂地で0.3程度である.森林では, 葉面積指数が大きく雨の日の濡れた樹体からの遮断蒸発量が多く, 蒸発散量は降水量または降水日数と共に増加する.しかし, この傾向は芝生地や牧草地では明瞭ではない.無次元蒸発散量は暖候期の水田や森林では0.7〜0.9, 浅い水面では0.7程度, 芝生など草地では0.5〜0.6, 夏のツンドラや乾燥域のオアシスでは0.5前後である.また, 乾期・雨期の明瞭な地域については, 精度の高い観測資料が少なく確定的ではないが, 無次元蒸発散量の年間値は年降水量の増加と共に大きくなり, その最大値は0.4程度(主として草地)〜0.8程度(主として森林)に収束するように思われる.この値からのばらつきは雨の集中性, つまり雨季・乾期の顕著さに依存すると考えられる.今後の研究では, 蒸発散量は相対誤差10%以内の精度で観測し, これらの数値を確定することが重要である.
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1073, pp.114-118, 2001-01-08

2000年12月5日。沖縄本島の南方に位置する宮古島は、早朝から断続的に小雨が降る空模様だった。 プロゴルファーの福島晋自は、壊れたキャディーバッグを引きずって会場に現れた。プロ40人とアマチュア12人のゴルファーが参加した「宮古クラシックオープン」は最終日を迎え、福島は賞金を取れるかどうか、ボーダーライン上にいた。 この日の朝食は売店で買った菓子パン1個だけ。
著者
城賀本 晶子
出版者
愛媛大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

更年期女性の不定愁訴として、疲労とむくみに焦点をあてて、これらを改善する方策に手掛かりを得ようと本研究を実施した。新たに多次元疲労測定尺度(4要因40項目)を開発し、統計学的な検証の後、既存の自己効力感尺度との関連を正準相関分析にて解析したところ、失敗に対する不安が強い人は、精神面、認知面、対人面の疲労を強く表出することが判明した。疲労の程度は、性格特性とくに対処行動様式と密接な関係をもち、更年期女性の疲労感を予防・改善するには、個々人の自己効力感を高めるような対処行動に沿った方策が必要と考えられる。一方、むくみを測定する方法論を開発し、とくに長時間同じ姿勢を取り続けると脚のふくらはぎ部分にむくみが生じ、伝承的なヒハツの摂取により、下腿のむくみが抑制されることを明らかにした。
著者
徳田 尚之 黄 亮 陳 亮 日下部 誠 永井 明
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.84, no.7, pp.1089-1101, 2001-07-01
被引用文献数
8

本論文では, 文字列照合アルゴリズムを使うことにより, システムに全く素人な語学教師でもこれまでの教育経験を容易にシステムに組み込むことができ, しかもロバストで効率の良いテンプレートオートマトンによる対話式英作文(語学)学習支援システム(ILTS:Intelligent Language Tutoring System)を開発することに成功した。本システムの一番の特徴は, 学習者による入力英作文とテンプレートパス間で定義される相似度の最も高い最車共通文字列(Heaviest Common Sequence)探索により学習者の英作文の誤り診断を行い, それに沿って学習戦略を立てたことである。このシステムでは外国語教育では定評のあるFries教授法[1]とも共通する基本的英文熟語の繰返し学習法を採用することにより英語学習教育の効率を高めただけでなく, 自然言語に特有な文章パターン数の指数関数的爆発を避けることにも成功した。テンプレート構築の際に用いた200人程度のモニタ群と学習背景が全く違う100人程度のモニタ群で予備的なシステム性能評価試験を行い, 期待どおりの診断結果が得られたので報告する。
出版者
日経BP社
雑誌
日経Linux (ISSN:13450182)
巻号頁・発行日
vol.11, no.5, pp.34-36, 2009-05

Part4まででサーバーの基本形はほぼ出来上がりました。あとは,実際に運用する際のことなどを考えて,少々"味付け"をすれば完成です。具体的にこのPart5では,ファイアウオールの設定やSSHによる遠隔ログイン,ダイナミックDNSを自動更新させる方法などを解説します。 自作したサーバーは,いつも手元にあって直に触れる状態にあるとは限りません。

1 0 0 0 IR お知らせ

著者
酒井 英行 真行寺 千佳子
出版者
東京大学大学院理学系研究科・理学部
雑誌
東京大学理学系研究科・理学部ニュース
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.19-23, 2005-05

人事異動報告/東京大学大学院理学系研究科・博士学位取得者一覧/理学系研究科・理学部の「学生支援室」が開催されました/あとがき

1 0 0 0 IR お知らせ

著者
酒井 英行 真行寺 千佳子
出版者
東京大学大学院理学系研究科・理学部
雑誌
東京大学理学系研究科・理学部ニュース
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.19-23, 2005-05

人事異動報告/東京大学大学院理学系研究科・博士学位取得者一覧/理学系研究科・理学部の「学生支援室」が開催されました/あとがき
著者
LAGA HAMID
出版者
東京工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究は非剛体形状の理論と時系列的に変化をする表面(Time-varying surface)の3次元モデルの再構築手法に注目する。自然物は複雑な形態を持っている上複雑な変形を受けるからリアルタイム三次元再構成が混乱である。平成21年度には3次元形状データ取得システムを開発し、スキャンデータから3次元モデルの検索手法と非剛体スキャンデータ間のレシズトレーションフレームワークも開発しました。このフレームワークは三次元データ検索に基づいて高レベル知識を再構成プロセスに取り込む。その結果は、カメラの数を最小限度にすることが出来、静止することが出来ない物も3次元取得ことが出来るようになった。平成21年度にも三次元形状データベースと検索ツールを開発しました。あと、次の研究ステップに使用するためにステレオと陰影からの形状の復元と構造化照明に基づいた三次元再構成システムを開発しました。
著者
三宅 勝 小野 斉 大塚 信明 中川 忠昭 千葉 一夫 渡辺 順一 加納 隆
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.4, no.4, pp.394-414, 1967-03-31

著者等は牛舎施設,乳牛管理,牛舎内気象状況と繁殖成績ならびに疾病発生との関連性を究明するため,十勝地方において多頭数飼育を実施している上芽室生産組合共同牛舎,中札内村新生共同畜舎および帯広畜産大学付属第1農場牛舎において実態調査を行なった。調査期間は昭和39年3月から40年2月までの1年間で,これを第I期(春,4月),第II期(夏,7月),第III期(秋,10月),第IV期(冬,1月)に分け,それぞれの期間中1週間ずつ牛舎にとまりこみで上述の調査を行なった結果,次のような成績を得た。1.牛舎施設,乳牛管理,飼養および飲料水について換気施設の不完全,手入れの不充分および運動場の狭隘のほか,上芽室にあっては搾乳前2,3搾りを捨てないこと,ミルカーのかけ過ぎ,および飲料水はアンモニア性窒素が多く飲料不適であったこと,中札内にあっては敷わらの不足,削蹄の不完全,運動場に汚水の潴溜等の欠陥が指摘された。2.牛舎内気象状況(1)気温……すべての地区とも最高は7月,午後0〜6時のもので上芽室では22.7±4.1℃,中札内では22.2±4.0℃,畜大では26.3±3.1℃であった。また最低は1月で,上芽室では午前6〜12時の2.2±4.0℃,中札内では午後0〜6時の4.7±3.0℃,畜大では午後6〜12時の1.0±3.2℃であった。3地区とも牛舎内温度の多くは至適温度内にあった。(2)湿度……最高は上芽室,中札内では1月,午前0〜6時で,それぞれ94.2±2.6%,94.0±6.0%であったが,畜大では4月,午前6〜12時の90.0±7.4%であった。なお前2者では冬期間夕方より翌朝にかけ湿度は95%を越える日が多かった。最低は上芽室,中札内では4月,午後0〜6時で,それぞれ55.4±1.4%,61.0±13.9%であり,畜大では10月,午後0〜6時の62±12.9%であった。(3)乾カタ度……最高は上芽室では4月,午前9時の11.71±2.84,中札内,畜大では1月で,それぞれ午前9時の11.77±2.69,午前3時の12.9±1.40であり,最低は上芽室では7月,午後9時の7.31±1.60,中札内,畜大では10月で,それぞれ午後9時の7.07±1.85,午前9時の9.4±0.36であった。(4)炭酸ガス量……最高は上芽室では4月,午前3時の0.16±0.024%,中札内,畜大では1月で,それぞれ午後9時の0.26±0.106%,午前3時の0.12±0.095%であり,最低は上芽室,中札内では7月,午後9時で,それぞれ0.06±0.001%,0.05±0.017%で,畜大では10月,午前3時の0.03±0.004%であった。3.繁殖成績について1〜4ヵ年間の上芽室,中札内および畜大における平均受胎率はそれぞれ96.4,88.3,90.3%,受胎効果は1.55,207,1.71回,受胎牛の平均空胎期間は3.69,4.33,6.12ヵ月であった。4.疾病について上芽室,中札内では趾間腐爛,乳房炎の発生が多かった,このほか上芽室では二等乳の発生が多く,12月には全産乳量の30%におよんだ。なお7月行なった分房別異常乳調査では,上芽室で,13.9%,中札内では11.9%に発生が見られた。以上のことから上芽室,中札内の多頭数飼育牛舎にあっては,繁殖成績は良好で仔積の生産は順調であるが,乳房炎,異常乳,二等乳および趾間腐爛の発生が多く経営を困難にさせている。これらの疾病発生は牛舎内の換気不良,高温度,乳房管理あるいは削蹄不良等に原因しているように思われる。
著者
江見 俊彦
出版者
一般社団法人 日本鉄鋼協会
雑誌
鉄と鋼 (ISSN:00211575)
巻号頁・発行日
vol.100, no.1, pp.31-58, 2014 (Released:2013-12-31)
参考文献数
87
被引用文献数
2 13

Progress of steelmaking technology in Japan over the last 100 years is reviewed covering hot metal treatment, primary steelmaking with open hearth furnaces, converters and electric arc furnaces, secondary refining of steel with degassers and ladle furnaces, and ingot-/continuous-casting.Key issues that contributed considerably to the progress of the unit processes are highlighted with scientific, technological and engineering breakthroughs involved. Systematization of the unit processes, that optimized full cost, productivity and quality of steel products to meet the constraints on the resources and socioeconomic demands of the steel market at times, is depicted as another key issue for the successful systematization.Possible future development of steel technology is briefly commented on the basis of the above observation.
著者
小松 輝久 ROTHAUSLER EvaAnja ROTHAUSLER Eva Anja
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

流れ藻はブリやマアジ稚魚の生息場として非常に重要である.特に,ブリ養殖では,流れ藻ごと採集するブリ稚魚のモジャコに種苗を全面的に依存しており,流れ藻の生態について正確に知りたいという要望は非常に強い.ブリの最大の産卵場である東シナ海では,アカモクのみからなる流れ藻しかなく,流れ藻は中国から輸送されると考えられている.しかし,アカモクの浮遊期間や,それに影響を及ぼす環境要因も明らかになっていない.そこで,研究対象としてアカモクを選び,その浮遊期間を推定するために必要な,水温や光合成有効放射,紫外線などの環境条件とアカモクの生理生態および浮遊期間の関係を調べることにした.平成23年度は,青森県にある東北大学浅虫海洋生物研究センターにおいて,アカモク流れ藻に及ぼす水温の影響の評価を目的に,アカモク8個体を実海域で,20日間,人工流れ藻としてロープで縛り生長と環境条件について,また,アカモクの葉片を採集し,低水温(6.8±0.2℃),環境水温区(15.8±1.9℃),高水温(20.7±0.3℃)に制御して,それぞれ8個体の生長と生理状態を20日間調べた.野外実験の結果,実験終了時に3個体のみが浮いていた.海底に固着していた個体には,生殖器官がなく,20日間浮かんでいた人工流れ藻は沈んだ人工流れ藻よりも多くの生殖器を発達させていた.このことは,成熟期に流れ藻となり,環境に順応できた個体は20日以上浮遊でき,新しい場所へ分散し,再生産して定着できる可能性があると考えられる.室内実験の結果,高水温区では,気胞は低水温区よりも早く脱落したが,高水温区の生殖器のバイオマス(25%)は,低水温区(3%)や環境水温区(11%)よりも多かった.高水温環境は海藻を早く沈降させ,分散のポテンシャルを減少させることになることが示された.