著者
黒田 充紀
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

マイクロメートル寸法領域における金属材料の機械的性質の寸法依存性について実験的に調べ,それを,物理的合理性をもって再現可能な高次勾配結晶塑性論を定式化した.実験研究においては,板厚の異なる単結晶アルミニウム箔と単結晶銅箔を用いて,ひずみ勾配とともに蓄積される内部応力の挙動を明らかにした.理論研究においては,幾何学的必要転位密度の空間勾配によって発生する内部応力を考慮した高次勾配結晶塑性理論を定式化した.
著者
橋本 健史 岡田 泰昌
出版者
慶應義塾大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2003

【目的】:下肢組織をin vitroで保存するための条件を発見し、電気刺激実験系を確立することを本研究の目的とした。【対象と方法】対象は、幼若ラット群(9日齢)5例、若齢ラット群(16日齢)5例、成熟ラット群(生後3ヶ月以上)3例とした。麻酔下に開胸および開腹を行い、大動脈経由で人工的に下肢を灌流・維持できるようにした。自発呼吸活動をモニターした。標本を22℃〜36℃の様々な温度条件下で、至適灌流条件を検索するとともに、灌流液を室内気平衡条件下と高酸素平衡条件下とした場合の標本生存性を比較検討した。成熟ラット群については、腸骨動脈内へカテーテルを挿入し、下肢のみの人工的灌流を行うとともに、至適灌流条件についての検討も行った。吸引電極を用いて足部の各種の遠心性末梢神経の電気刺激を行うことによりin vitroにおいて様々な足運動を再現させることを試みた。【結果】幼若ラット群、若齢ラット群では、適当な条件下では長時間にわたって神経活動を維持・確認しえた。灌流温度としては28-32℃が適していると思われた。また、灌流液組成としては、ブドウ糖30mM,塩化ナトリウム126mM,塩化カリウム5mM、重炭酸ナトリウム26mM、硫酸マグネシウム2mM、塩化カルシウム2mM,燐酸二水素ナトリワム1mMとしそれを、それを酸素95%,二酸化炭素5%で平衡させた条件(pH=7.4)で、満足しうる標本維持結果を得ることができた。【結論】今回の結果から、28-32℃の灌流温度と一定の灌流液組成および至適pH=7.4で摘出下肢組織標本を経動脈的に灌流・維持することにより、神経の電気刺激にも十分、反応するin vitro実験系を確立することができた。これらの成果は、第30回日本足の外科学会と第3回国際足の外科学会で発表予定である。
著者
木村 昌由美
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

今年度の研究ではラットを用いた実験系において、1)妊娠初期に特有な生殖器官由来の催眠性サイトカインに着目し、そのサイトカインの中枢性作用を阻害したときに生じる睡眠変動について解析を深めるためのさらなる追試を行った。また、2)高齢雌ラットにおいてエストロゲン補填の処置を行い、睡眠一覚醒パターンを記録するのと同時に血中サイトカイン量ならびに脳内アセチルコリン(ChAT)活性を測定し、女性特有な睡眠パターンに対するエストロゲンの総合的な作用に検討を加えた。1)研究代表者による先行研究で、ラットにおいてもヒトと同様、妊娠のきわめて初期に過剰睡眠が誘発されることがこれまでに確かめられている。この時期、着床に重要な役割を担う顆粒球・マクロファージ・コロニー刺激因子(GM-CSF)の中和抗体をラットの脳室内に連続投与すると、対照IgGを投与された妊娠ラットにおける増加した睡眠パターンと比較して、ノンレム睡眠の約25%、レム睡眠の約60%が有意に減少し、最終的な出産を迎えられない母親ラットも数匹確認された。2)高齢雌ラットにおいては、細菌毒の一種であるリポポリサッカライド(LPS)に対する弱まった感受性が、エストロゲン補填処置(ERT)によって回復することが、これまでの研究で示唆されている。追究の結果、SD系雌ラットでは、明期のノンレム睡眠量が明らかに減少する一方、暗期のレム睡眠が増加するという、睡眠-覚醒パターンにおける日内リズムの狂いが著しく観察され、それが一週間のERTで若齢レベルに若返ることが示唆された。その際、E_2処理された群でLPS刺激後の血中TNFα量が有意に増え、IL-1量には変化は見られなかった。脳内ChAT活性は特定の部位でE_2による上昇効果がみられており、この作用がレム睡眠リズムの回復に関係していると考えられる。
著者
BREUKELAAR Ron
雑誌
International Journal of Computational Geometry and Applications
巻号頁・発行日
vol.14, pp.41-68, 2004
被引用文献数
1
著者
山路 龍天
出版者
同志社大学
雑誌
同志社外国文学研究 (ISSN:02862832)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.16-39, 1989-03-15

論文(Article)
著者
片岡 洋行
出版者
岡山大学
雑誌
特定領域研究(A)
巻号頁・発行日
2001

本研究では、内分泌撹乱化学物質のin vivoでの毒性評価法として(1)遺伝的に雌雄で体色が異なる性的二色性メダカを用いて、形態及び体色変化をマーカーとした性転換に基づく内分泌撹乱化学物質のスクリーニング法と(2)雌特有の体内リン酸化蛋白質(ビテロゲニン)中の構成ホスホアミノ酸をバイオマーカーとする内分泌撹乱作用(エストロゲン様活性)の定量評価法を開発し、環境中の有害化学物質の毒性評価に応用することを目的とした。(1)では、緋色メダカが雄、白メダカが雌となる性的二色性メダカを用いて、孵化後の性分化が生じる時期にメダカを化学物質に曝露させ、形態学的雌雄(鰭の形状から判別)と遺伝的雌雄(色素斑点の有無から判別)を調べ、性転換魚の出現率を検討したが、稚魚が曝露中に死亡するケースが多く、明確な結論は得られなかった。(2)では、化学物質を含む水溶液中でメダカを一定期間飼育した後、5%トリクロロ酢酸を加えて蛋白質を沈殿回収した、得られた蛋白質を6N塩酸気相中で110℃、2時間加水分解した後、遊離したホスホアミノ酸は、水溶液中から簡単にN-イソプトキシカルボニルメチルエステル誘導体へ変換でき、FPD-GCにより選択的かつ高感度に分析できた。検出限界はGC注入量としてホスホセリン(P-Ser)50pg,ホスホスレオニン(P-Thr)40pgであった。雄の成熟メダカをβ-エストラジオール(E2)に曝露したところ、E2の入っていないコントロールに比べP-SerとP-Thrレベルが顕著に増加した、また、E2濃度(0.5〜10ppb)及び曝露日数(0〜10日)に依存してP-SerとP-Thrレベルは上昇したが、男性ホルモンのテストステロンによる曝露ではほとんどホスホアミノ酸レベルの上昇は認められなかった。さらに、合成エストロゲンであるEE2やDESでも著しいP-SerとP-Thrレベルの上昇が認められ、エストロゲン拮抗剤であるタモキシフェンの同時曝露によりこれらの上昇が抑制されたことから、蛋白質リン酸化レベルがエストロゲン様活性の指標になることが明らかとなった。この手法を用いて様々な環境化学物質の曝露によるエストロゲン様活性を調べたところ、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル、ビスフェノールA、ノニルフェノール、PCBでは、5日間の曝露でほとんどエストロゲン様活性は観察されなかったが、60日間の長期曝露によりエストロゲン様活性を検出できることがわかった、これらの結果は、メダカを環境水中に曝露、あるいは環境中に生息する卵生生物のホスホアミノ酸レベルを調べることにより、環境汚染や生態系への影響を把握できることを示しており、内分泌撹乱化学物質の新しい毒性評価法として有効な手法になるものと期待される。
著者
柴田 文平
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本應用昆蟲學會・應用動物學會合同大會講演要旨 : 日本農學大會分科會
巻号頁・発行日
no.1952, 1952-04-01

この種の生態一般と染色體に就いて昭和15年に發表した時に單性生殖系統は1月以後に死滅すると結んだ。この種は秋中間寄主上に産雌虫(gynopara)と雄とが現われ主寄主へ歸るが,單性生殖を續けて越冬する状態はその地方の寒さによって異なる。そしてこの單性生殖系統からは唯1囘の飼育實驗であるが秋産雌虫及雄の出現を確める事は出來なかつた。飼育中緑と緋色(體色)の2系統が現われた。
著者
梅宮 典子
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

集合住宅10戸の夏季から中間期の窓開閉、冷房使用、室内温熱環境の実測記録により、1)外気温26℃〜33℃で冷房使用率は70%程度、2)冷房期の冷房使用率は室温でロジスティック回帰できる、3)外気温と開放率の関係は季節によらず一定、4)外気温22℃のとき開放率最大、5)外気温22℃、27℃、31℃で調節の選択傾向が変化、6)外気温が室温より4K高いとき開放率最大、7)冷房期に「冷房停止・閉鎖」の選択率が最大のときPMVは1.5〜1.75。8)内外気温は季節ごとには相関なし、9)冷房〜中間期合計では相関は冷房停止・開放、冷房停止・閉鎖のとき高く、冷房使用時は相関なし、10)内外気温の相関は冷房停止・開放からの変化では冷房期と冷房終了期に高く、冷房停止・開放への変化では低い。11)中間期には内外気温の相関は、閉鎖から開放への変化時が、開放から閉鎖への変化時より高い。一方、集合住宅290戸の夏季温熱環境調節のアンケートにより、1)開放する理由は換気・通風、掃除、2)閉めておく理由は温熱環境維持が特に低開放頻度住戸で強く、防犯が開放頻度によらず強い。3)閉鎖する理由は冷房、外出。開放頻度の低い住戸は騒音、高い住戸は室温低下に敏感、4)居住年数とエアコン台数(有意水準1%)、就寝時の冷房使用と年齢、虫(2%)が冷房費に関連。5)南向き住戸は冷房費が安く、設定温度が高く、主観的冷房使用程度が低い。西向き住戸は冷房費が高い、5)睡眠や食事など生活様式、外界への好み、環境問題への関心は冷房費と関連が弱い、6)外部の視線は使用程度に関連、7)体質は設定温度にのみ関連、8)結露、におい、カビがあると使用程度が高く設定温度が高い、9)冷房費節約意識は設定温度を上げ使用程度を下げるが、冷房費には影響しない。以上、温熱環境調節行為の生起と生起状態が室温と外気温をもとに推定できる可能性が示された。
著者
彼末 一之
出版者
早稲田大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

温度に関係した感覚は「熱い・冷たい」という温度感覚と、「暑い・寒い」という温熱的快・不快感(快適感)に区別され、またそれぞれ全身の感覚と局所感覚がある。本年度は皮膚温と温熱的感覚の関係性を調べることを目的として、まず皮膚温、局所的温度感覚・快適感をコンピュータの人体模型上に再現するシステム(データ可視化システム)を開発した。全身50箇所から皮膚温を熱電対にて、25箇所から熱流量を熱流センサーにて30秒毎に測定した.一方全身的温度感覚・快適感、局所的温度感覚・快適感(25箇所)はスライダックの並んだパネル板(Fig.2)を使って随時被験者に申告させた。データ可視化システムではこのようにして得られた皮膚温、局所的感覚のデータをコンピューター上の人体模型に色を用いて表示した(Fig.3)。本システムの有用性を確かめるため、環境温を23℃(80分)→28℃(80分)→33℃(80分)と変化させ被験者男性3名、女性3名による実験を行った。環境温23℃の時、皮膚温は末梢において著明に低下し、冷たさによる不快感は特に足部において強かった。環境温を33℃にすると末梢と体幹部における皮膚温の差は小さくなった。頭部と体幹部の皮膚温の変化はよく似ていたが、暑さによる不快感は体幹部よりも頭部において強かった。このような皮膚温・感覚の全身分布、その変化を把握する上でデータ可視化システムは非常に有用であった。全身の皮膚温分布を調べるためにサーモグラフィーが用いられることが多いが、露出していない部位やカメラが正面からとらえられない部位の皮膚温は正しく測定できない。データ可視化システムは衣服着用下でも全身の正確な皮膚温を人体モデル上に再現することができ、また同じ人体モデル上に感覚のデータも示すことが可能である。
著者
石田 英之
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.123, no.5, pp.329-334, 2004 (Released:2004-04-27)
参考文献数
10
被引用文献数
3 5

細胞死にはネクローシスとアポトーシスがあり,両者ともミトコンドリアによってその運命が制御されている.とくにミトコンドリアPermeability Transition Pore(PTP)の開口は,チトクロムCの遊離を起こしてアポトーシスを誘導することはよく知られている.また,ミトコンドリアPTP開口阻害薬であるシクロスポリンA(CsA)が虚血再灌流障害によるネクローシスを抑制するとの報告もある.このように,ミトコンドリアPTPは,細胞の生死を調節する重要な因子であるが,その詳細は充分解明されていない.ここでは,ミトコンドリアPTPに関する最新の研究方法と心筋細胞死におけるミトコンドリアPTPの役割に関する検討を例にして,実験法を紹介する.
著者
小林 昭三
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

科学概念の形成を効果的に実現する最先端のIT利活用で力学分野、又は圧力・熱分野、等を詳細に記録し分析・検証する授業法を研究開発し、DVD教材集やウェブ資源に集大成して広く普及した。1.抵抗が極小な教材(超軽量台車、スペースワープ機材、ホバークラフト)活用で、運動法則、運動量、エネルギーなどの分野でも効果的な概念形成をするIT based授業を新展開した。2.ドライブレコーダーという装置で車の日常的な運動を記録して位置・速度を風景動画と同期・提示する(エクセル活用も可能)授業モジュールを開発をした。3.GPS装置で多様な運動(飛行機、新幹線、自転車、ランニング等)の3次元位置情報から効果的な速度概念の形成を可能にした。4.無線LANセンサー・PC装置、携帯センサー装置等の先進的IT活用で効果的授業法を開発した。5.空気抵抗や水の粘性抵抗が支配的な「空中や水中での物体の運動」の教材を研究開発した。6.最先端の動画DVDやMeb資源を蓄積し生徒・学生・教員への実習で初中高理科の改善に寄与した。2005PCカンファレンスの実行委員長として「情報教育の課題と展望一アジア諸国と日本」でASPEN韓国NPC・キム教授、前ASPEN議長代理・リー教授の招待講演を企画成功させた。ICPE2005インドでの講演、ICPE2006東京会議(8月13日〜18日)やASPEN香川Workshop(8月10日〜12日)の組織者として講演やワークショップを企画、等で上記諸成果を発表して国際的にアピールし、超軽量台車・紙カップ教材などを国際的に広く普及した。日本物理学会シンポでは「ICPE2006東京会議の報告と世界の物理教育の動向」の招待講演をした。国内外の学会や教育現場の教員研修・研究会や生徒・学生への実習を広く行ない、初・中・高教育における最先端のIT活用理科の新展開と再構築を進めた。
著者
礒田 昭弘 王 培武
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学園芸学部学術報告 (ISSN:00693227)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.1-9, 2001-03-31

中国新疆において,水分ストレス条件下のダイズ数品種の蒸散速度と葉温を経時的に測定し,その品種間差異と葉の調位運動との関係について検討した.4品種(青豆7232,8285-8,高肥16,東農87-138)を用い,播種から開花期の7月2日まで適宜かん水を行い,7月2日から8月12日の期間かん水処理を行った.かん水処理開始16日後に,水平に固定した葉身(葉身角度処理区)と自由に調位運動を行っている葉身(葉身角度無処理区)の葉温の経時的変化を測定した.同時にかん水区,無かん水区の1個体につき,単位葉面積当たりの茎流速度(蒸散速度)を測定した.各品種,処理区の小葉ごとの受光量も調査した.土壌水分条件が変化することにより,葉の調位運動に加えて葉温および蒸散速度の対応が品種間で大きく異なることが認められ,葉温と密接に関係していた.葉温の制御を主に葉の調位運動で行っているタイプ(東農87-138,高肥16),主に蒸散で行っているタイプ(青豆7232),そして両方によっているタイプ(8285-8)が認められた.かん水区の上位2層の受光量は,青豆7232が最も大きく,次いで東農87-138,8285-8,高肥16の順でとなり,無かん水区に比べかん水区の受光量が高くなった.単位土地面積当たり受光量は,かん水区で東農87-138,8285-8が大きくなり,無かん水区で若干減少した.葉面積,乾物重は,かん水区に比べ無かん水区では,高肥16および東農87-138は大きな差がなかったが,8285-8では葉面積,乾物重は大きく減少した.青豆7232は葉群構造は大きな変化はなかったが,無かん水区の葉面積,乾物重はかん水区に比べ一回り小さくなった.以上のことから,ダイズは葉の調位運動によって水分の損失を防ぎ,受光態勢の悪化を抑えることで乾物生産を保ち,水分利用効率を大きく向上させているものと考えられた.
著者
豊国 源知
出版者
東北大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

研究最終年度の本年は、昨年度から引き続き南極および北極の観測網で記録された遠地地震波形記録を用いて地球内核中をS波として伝搬するコアフェーズ「PKJKP」の検出を試みたが、検出には至らなかった。本課題のスタート直前には、PKJKPの検出を報告する論文が2編出版されていたが(Cao et al., 2005, Science; Wookey & Helffrich, 2008, Nature)、本年には検出可能性に否定的な研究が報告された(Shearer et al., 2011, GJI)。極域氷床上の地震波形データには、氷や雪の影響で水平動成分に特にノイズが多く、検出はさらに困難なものと考えられる。以上のことから本年は、極域の氷床上での地震波形データに氷床がどの程度影響を与えるかを定量的に評価することに研究の主眼を置いた。厚さが3km一定で、密度・地震波速度も一定の簡単な南極氷床モデルを作成し、ピュアな横ずれ型震源から励起される卓越周期30sのP波・S波の計算を行ったところ、氷床の効果はほとんど見られないことがわかった。地震波の鉛直成分の空間解像度は波長の1/8程度以上であることが知られているが、周期30sではP波・S波の波長がともに氷床の厚さに比べて長すぎるため、氷床の影響は見られなかったものと考えられる。よって30sよりも短い周期で計算を行う必要があるが、現在の計算機環境では30sの計算に約5日要しており、単純に周期を短くすることは実質上不可能であった。そこで本年は、シミュレーションの際にS波のみを励起する震源(トルク型震源)を用い、方程式のP波に関する部分を落とすことと、S波が地球の外核以深を伝搬しない性質を利用して計算領域を縮小することで、S波のみであるが30sより短周期での計算を実現した。卓越周期60s,30s,20s,10sの4つのケースで理論波形計算を行った結果、60sと30sでは氷床の影響がほとんど見られなかったのに対し、20sでは氷床上の観測波形に1.4倍程度の顕著な振幅の増幅が現れた。また10sの場合は1.6倍強のさらに顕著な増幅に加え、氷床内部の多重反射を反映したと考えられる後続波が見られることがわかった。振幅の増幅は、基盤岩の上にやわらかい堆積物が乗っている場合と同様の原理である。今回の計算により、氷床上で観測された30s以下の短周期地震波形では氷床の影響が顕著になることと、影響のオーダーを明らかにすることができた。
著者
佐藤 史郎
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

これまで、政策上、核抑止の重要性を主張することは「現実主義」である一方、核軍縮・不拡散措置の重要性を主張することは「理想主義」として捉えられてきた。前者が核に依存して安全の確保を試みるのに対して、後者は核に依存しないで安全確保を試みるからである。本研究は、威嚇型と約束型という2つの再保証(reassurance)の行動予告に着眼することで、核軍縮・不拡散措置の重要性を主張することは「現実主義」である旨を提示した。
著者
奥平 啓太 平田 圭二 片寄 晴弘
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. [音楽情報科学] (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.84, pp.21-26, 2004-08-02
参考文献数
7
被引用文献数
7

ポップス系音楽においてドラムのグルーブ感(groove)は,その違いにより楽曲全体の印象を変えるような重要な要素の一つであると言える.しかし,これまでグルーブ感と実際のドラムの発音時刻及び音量の関連については調べられてはこなかった.本研究では,プロのドラム奏者による8ビートと16ビートのリズムパターンの異なるグルーブ感を出した演奏から,スネア,ベースドラム,ハイハットの打点時刻と音量を測定し,これらのグルーブ感との関連を調べる.グルーブ感の違いは,実際の発音時刻や音量からも読み取ることが出来た.
著者
奥平 啓太 平田 圭二 片寄 晴弘
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. [音楽情報科学] (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.19, pp.53-58, 2006-02-23
参考文献数
7
被引用文献数
4

ポップス系音楽においてドラムのグルーブ感は,楽曲全体の印象を変えるような重要な要素の1つと考えられる.我々はこれまで,タイトとルーズのグルーブ感を与えたドラム演奏から,スネア,ベースドラム,ハイハットの打点時刻と音量を測定し,これらのグルーブ感との関連を調べてきた.この結果からグルーブ感の違いは,実際の打点時刻や音量からも読み取ることが出来た.本研究では,グルーブ感を含んだ様々な演奏意図と打点時刻及び音量との関係を分析した.その分析結果をふまえてドラム演奏生成システムを実装した.そのシステムは連続する打点の相関を考慮すること,ゴーストノート付加できることなどの特徴を持つ.
著者
奥平 啓太 平田 圭二 片寄 晴弘
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. [音楽情報科学] (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2005, no.14, pp.27-32, 2005-02-18
参考文献数
7
被引用文献数
3

ポップス系音楽においてドラムのグルーブ感(groove)は, 楽曲全体の印象を変えるような重要な要素の一つと考えられる.我々はこれまで, 8ビートと16ビートのリズムパターンの異なるグルーブ感を与えた演奏から, スネア, ベースドラム, ハイハットの打点時刻と音量を測定し, これらのグルーブ感との関連を調べてきた.この結果からグルーブ感の違いは, 実際の打点時刻や音量からも読み取ることが出来た.本研究ではさらに, 1) ドラム奏者に複数のリズムパターンを与え, このそれぞれについて異なるグルーブ感を与えた演奏.2) 昨今のポップス系音楽で多く見られるゴーストノートを付加した演奏に対して同様の測定を行う.ドラム演奏にこれらの変化を与えることが, 各打楽器の打点時刻及び音量とグルーブ感との関連にあたえる影響について調べる.