著者
中山 陽介 江田 慧子 中村 寛志
出版者
信州大学農学部附属アルプス圏フィールド科学教育研究センター
雑誌
信州大学農学部AFC報告 (ISSN:13487892)
巻号頁・発行日
no.7, pp.29-36, 2009-03

本報告は,信州大学農学部附属アルプス圏フィールド科学教育研究センター(AFC)西駒ステーション演習林を中心とした地域について,昆虫類のデータベース化の第一歩として,また将来的にシデムシを指標種とした環境モニタリングの基礎データとして利用するため,西駒演習林標高別のシデムシ相を調査しその目録を作成したものである。調査期間は2008年6月19日から同年11月1日にかけて,全5回の調査を実施し,加えて3回の補足調査を実施した。調査には鶏肉を誘引用のベイトとしたピットフォールトラップ法用いた。今回の調査でシデムシ科14種447個体が採集された。内訳はモンシデムシ亜科8種,ヒラタシデムシ亜科5種,ツヤシデムシ亜科1種であった.長野県レッドデータブックにおける絶滅危惧Ⅱ類としてはビロウドヒラタシデムシとベッコウヒラタシデムシの2種,準絶滅危惧種ではマエモンシデムシ,ヒメモンシデムシ,ヒロオビモンシデムシおよびツノグロモンシデムシの4種が確認された。
著者
松川 節 三宅 伸一郎 小長谷 有紀 二木 博史 井上 治 二神 葉子 中村 和之 白石 典之 白石 典之 村岡 倫 小野田 俊蔵 バイ カル 山田 誠
出版者
大谷大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

モンゴル国に現存する世界文化遺産エルデニゾー僧院の保存・保護に向けて,基礎研究と現地における本調査を行った結果, (1)エルデニゾー僧院およびモンゴル帝国の首都カラコルムの歴史を解明する新たな文字資料2点を発見, (2)エルデニゾー立地点における8世紀~20世紀までの考古学的文化層について基礎データを収集, (3)モンゴル国政府に向けて,エルデニゾー寺院の研究と保存保護に関する6項目からなる「提言書」を提出などの成果を得た。
著者
安元 清俊
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. OPE, 光エレクトロニクス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.102, no.125, pp.1-5, 2002-06-12

第8回 International Symposium on Microwave and Optical Technology (ISMOT'01)の概要を報告する。本会議は、2001年6月19日〜23日にカナダのモントリオールで開催された。マイクロ波回路・システム、電磁波理論・応用、アンテナ、光技術などに関して25カ国から投稿された135件の論文が採択され、1 Plenary Session、24一般セッション、3特別セッション、及び1ポスターセッションにおいてTechnical presentationが行われた。当研究会でISMOTの会議報告をするのは初めてであるので、まず、ISMOTの沿革を述べ、次にISMOT'01の概要を報告する。最後に、2005年に福岡市で開催することが決まった第10回ISMOT(ISMOT'05)について簡単に紹介する。
著者
魚住 泰広
出版者
分子科学研究所
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2010

平成23年度には、マイクロ流路内での膜状高分子錯体の調製(step1)、ナノパラジウム触媒膜の形成(step2)と、同膜触媒導入マイクロ流路デバイスを利用する反応実施(step3)の3段階について検討した。具体的にはstep1では高分子配位子として直鎖ポリビニルピリジンおよびテトラクロロパラデートをY字型マイクロ流路に導入しマイクロ流路層流界面上で良好な膜形成が進行した。流路内で調製した触媒膜を還元的あるいは熱的に分解することで高分子膜内でのパラジウムナノ粒子の発生を試みた(step2)。その結果、PVP-Pd膜を50℃、30分間、ギ酸ナトリウム水溶液で扱うことで比較的狭いサイズ分布を持ったナノPd粒子が発生することを見いだした。さらに流路内に調製したナノPd膜を備えたマイクロ流路反応装置を利用し、幾つかのPd触媒工程をフロー型反応として試みた(step3)。その結果、ハロアレーン類の還元的脱ハロ反応がギ酸を還元剤として有効に働くことを見いだした。すなわちハロアレーン水溶液とギ酸水溶液をマイクロデバイスY字同入口から各々加えたところ室温で反応は速やかに進行流路内の保持時間僅か2-5秒で定量的に脱ハロ生成物を与えた。芳香族ハライドの置換基として電子供与性、電子求引性、オルト位、メタ位、パラ位に関わらず反応は良好であり、また芳香環上に複数のクロロ基を有する基質も良い反応性を示した。さらに本反応はハロアレーン濃度が10ppm程度でも問題なく進行した。
著者
松本 明日香
出版者
筑波大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

まず、1976年米国大統領選挙に関して、昨年度収集した米国公文書館の外交文書などをもとに分析結果の一部を論文「フォード大統領東欧発言の形成過程-1975年ヘルシンキ協定と1976年米国大統領テレビ討論会から-」として纏めて『国際公共政策』に上梓した。次に、比較対象として、1960年米国大統領選挙の第4回キューバ侵攻計画を扱うために、アイゼンハワー大統領とニクソン大統領図書館にて調査に行った。二者における関係性を平成24年6月には『アメリカ学会』にて「公開討論会と外交機密-1960年第4回、1976年第2回米国大統領候補者テレビ討論会の対照比較-」と題して報告することが決定している。最後にこれまで研究してきた政治テレビ討論会をベースに米国の状況をより客観的に分析するために各国制度比較を行っている。NHKアーカイブスにおいて、日米の討論会を比較検討する『政治テレビ討論会と国家指導者像の変遷-日本党首討論会と米国大統領討論会』の研究を進めている。これまでの資料館調査を元に、平成24年4月24日に『日本アーカイブズ学会』で「テレビ政治討論会のアーカイブズ-日・英・米を比較して-」を報告することになっている。また政治スピーチの分析手法を精査するため、これまでの質的に分析に加えてコーパスによる量的分析も行った。自然言語処理を専門とする吉田光男との共同研究を行い、『日本政治学会』において「国家指導者のTwitterレトリック-バラク・オバマと鳩山由紀夫の対照比較-」のポスター報告を行った。これまでの質的分析をある程度裏付ける結果を出すことに成功した。さらにこれまで扱ってきたテレビと、近年のウェブにおける政治言説の差異と継続も吟味できた。
著者
橋本 葉子
出版者
東京女子医科大学学会
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.52, no.10, pp.1396-1396, 1982-11-25

東京女子医科大学学会247回例会 昭和57年6月19日 東京女子医科大学本部講堂
著者
若林 隆 仁木 一郎 吉田 松年 早川 哲夫 JERZY Krechn ZDZISLAW Wai MICHAL Wozni
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

1.培養細胞系によるミトコンドリア(ミト)巨大化実験モデルの確立:従来の動物(マウス、ラット)に代わって培養細胞系による実験モデルを確立し、ミト巨大化の機序解明を可能にした。2.ミト巨大化機序の解明:様々な病的条件下でのミト巨大化の普遍的機序に、フリーラジカルが直接関与することをin vivo,in vitroの実験系で証明した。3.ミト巨大化の細胞病理学的意義の解明:巨大ミト存在下の細胞がやがてアポトーシスに陥る事を培養細胞系で見いだした。フリーラジカルに晒された細胞内ミトは、巨大化により自らの酸素消費量を減少することによって酸素ラジカル産生を減少させ細胞内フリーラジカル量の増加を緩和しようとするのであり、ミト巨大化はオルガネラ・レベルでの適応と考えられる。4.フリーラジカルスカベンジャーによるミト巨大化阻止の成功:coenzyme Q_<10>,α-tocopherol,4-OH-TEMPOにより、in vivo,in vitroでの種々病的条件下でのミト巨大化の阻止に成功した。6.臨床応用を目的としたフリーラジカルスカベンジャーの開発:in vivoの実験系で4-OH-TEMPOの副作用がみられたので、新たに6種の誘導体を合成しスカベンジャー効果を培養細胞系で検討した結果、4-octanoyl-,4-lauroyl-TEMPOに4-OH-TEMPOよりはるかに優れたスカベンジャー効果が見られ、in vivoの系で検討中。
著者
J クスマノ
出版者
上智大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

本研究は、大学の授業にヨガを導入することの先駆的な試みとして、その精神生理学的な効果と被験者(学生)の主観的な反応を調べることを目的とした。被験者は本学心理学専攻学生53名(男子13名、女子40名)であり、全員が必修科目の中でヨガを体験した。手続きは、脈拍と血圧についてヨガ実施前に3回のベースラインを測定した後、ヨガ実行中および終了後に合計3回の測定を行った。また、ヨガ終了後はその時点での気分とリラックスの度合いを評定させた。ハタヨガの実施時間は約1時間15分であった。その結果、ヨガ実施前と実施後の脈拍の平均値をt検定で比較したところ、有意にヨガ実施後の低下が見とめられた。血圧や、各変数間の相関では有意な結果は得られなかった。このことより、授業という状況の中でヨガを実行することによる身体的な効果はある程度認められたと考えることができる。これは、ほとんどが初心者で、しかもヨガに対する動機づけが必ずしも高くないという状況であっても、ヨガによる変化を体験することができることを示している。但し、授業の中での実践はあくまでヨガの紹介やきっかけ作りという側面が強いため、本研究を踏まえて、今後はより継続的な実践のための長期的なプログラムを検討していく必要があると思われる。
著者
J クスマノ
出版者
上智大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

本研究は、被験者によるヨガ介入の効力知覚、ならびにそれによるセルフ・エフィカシィ知覚に対して、生理学的な指標の即時フィードバックが影響を及ぼすか否かを明らかにするために計画された。仮説として提起したのは、ヨガ介入が効果的と把握されればされるほど、被験者が自発的にヨガをやる確率が高くなり、しかもヨガを継続的に実行するようになり、継続することによって望ましい効果が得られるというものである。ヨガの指導を受けてから、実際に何人の被験者がその後も継続したかをフォローアップで調査しなかったために、本研究では直接に応諾の問題には対処しなかった。むしろ本研究では、介入の効力知覚を高めることをねらったフィードバックの使用に焦点を当てた。換言すれば、本研究で直接扱うのは、ヨガ介入の効力知覚を高める手段としてのフィードバックである。ヨガ介入の効力を測定するために、今回はリラクセーション達成率を調べた。前記の仮説をより大きな準拠枠に当てはめてみると、実際に本人が遂行した介入に対する効力知覚が大きければ大きくなるほど、セルフ・エフィカシィは高まる。そして、セルフ・エフィカシィ知覚が高くなればなるほど、応諾率も上昇すると推測される。62人の学部生を被験者としてヨガによるリラクセーションのセッションを行い、リラクセーション達成率を測定した。被験者は、実験群とコントロール群の2つのグループに分けられた。実験群では、介入前後に血圧と脈拍数を測定し、その数値を提示した。コントロール群には、同数値のフィードバックを与えなかった。その結果、この2つのグループ間でリラクセーション達成率に有意差は示されなかった。しかし、両グループにおいて、男性に比べて女性の方が自分の達成率を有意に高く評価した。
著者
岡村 昌夫
出版者
日本幼稚園協会
雑誌
幼児の教育 (ISSN:02890836)
巻号頁・発行日
vol.107, no.3, pp.26-33, 2008-03-01
著者
徐 強 SINGH Sanjay Kumar
出版者
独立行政法人産業技術総合研究所
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

高い水素含有量を持ち、燃料電池用水素源として高い可能性を持つ水和ヒドラジンに注目し、水和ヒドラジンの触媒による選択的完全分解反応で、室温という温和な温度において、PtNi及びIrNi合金ナノ粒子触媒を用いて制御可能な条件下で水素ガスを発生させることができることを見出した。PtNi,IrNi二成分合金ナノ粒子触媒の組成を調節して、触媒活性・水素生成選択性評価を行ったところ、それぞれ100%水素選択率を示す組成領域を明らかにした。PtNi合金ナノ粒子触媒ては、Pt含有量が7-34%の幅広い領域において、100%水素選択率を示す。IrNi合金ナノ粒子触媒に関しては、Ir含有量が5-10%の領域において、100%水素選択率を示す。放出ガスの体積測定のみならず、質量分析におけるH_2/N_2比(2.0)及びアンモニアに起因する^<15>NNMR信号がないことから、これらの条件下ではヒドラジンの完全分解反応H_2NNH_2→N_2+2H_2が選択的に進行していることが確認された。TEM観察により、PtNi,IrNiナノ粒子の平均粒径は約5nmである。XPS測定により、それぞれPtNi,IrNiの二成分合金ナノ粒子となっていることがわかった。これら合金ナノ粒子が高活性・高選択性を有することは、触媒表面に両成分とも存在し、完全分解・水素生成に有利なヒドラジン結合活性化に寄与していることを示している。水和ヒドラジンは、液体であるため移動型燃料タンクへの充填が容易であり、既存の液体燃料用供給・貯蔵インフラ設備が利用可能という大きなメリットを有する。さらに完全分解によって水素と窒素に分解するため、生成物回収・再生が不要である。
著者
前迫 孝徳 片山 滋友 山内 裕平 菅井 勝雄 久保 和彦 横尾 能範 木原 俊行 水越 敏行
出版者
大阪大学
雑誌
試験研究(B)
巻号頁・発行日
1993

本研究の目的は、教育現場で利用可能なセンサーインタフェースを開発し、ハイパーメディア上で統合させることにあった。まず、国産のパーソナルコンピュータが現場で扱い易いセンサーインタフェースを有していないことから、パラレルポートを利用してデジタル入出力とアナログ入力を行う汎用のセンサーインタフェースを開発した。次に、センサーのアナログデータを電圧・周波数交換して、微弱電波や赤外線で伝送する無線方式のセンサーインタフェースを開発した。パソコンへはシリアルポートを通してデータを転送する。さらに、これらのセンサーインタフェースを利用する授業実践を行う中で改善を加えた。一方、環境や身体情報り測定が重要な意味を有するようになってきたことを考慮し、簡単な3次元地震センサー学習状況の把握に役立つ心拍呼吸性変動測定装置を開発した。さらに、インターネットの普及の中で重要性が増したHTMLを対象とすることで、センサー情報のハイパーメディアへの統合を実現する基礎研究を行った。すなわち現場校で気象等の授業を行う際、各種の情報や他地域との比較が望まれたことから、センサーの測定結果を扱う分散データベースと、Java及びJavaスクリプトを利用しインターネットを介して情報交換を行うハイパーメディアシステムの試験運用を行った。このように本研究では、ハードウェアとして、測定対象が卓上から屋内、そして屋外の測定へと拡大しつつある状況に対応可能なセンサーやインタフェースの開発と、ソフトウェアとして、インターネット上のWWWサーバを基本要素とする分散データベース上でリアルタイム測定データを扱う統合したハイパーメディアシステムを実現する基礎が確立できたと考える。今後もシステム運用を継続する中で改善等の活動を行う予定である。
著者
東 自由里 リム ボン 大津留 智恵子 出口 剛 ジェイ クラパーキ 堀田 秀吾 イアン ホザック 米山 裕
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2002

当該研究プロジェクトは、最終年度のため、研究代表者及び分担者はそれぞれ次の研究プロジェクトを視野にいれて研究活動を行った。研究代表の東は2005年5月にゲルニカ平和ミュージアム(スペイン)で開催された国際平和ミュージアム学会と国際博物館協会(ユネスコ本部、ICOM)の分科委員会である「公共に対する犯罪犠牲者追憶のための記念博物館国際委員会」(ICMEMO)との共催で行われた国際会議で発表する。ゲルニカではICMEMO委員会の会合も行われ、関連テーマを共有する欧州の特に館長を中心とした歴史博物館関係者たちとの学術的交流をもつ機会を得ることができた。国際会議での発表は、ゲルニカ平和ミュージアムの編集によって著書になることが決定している。3月は在外研究でフランクフルト大学に客員研究院として滞在中の分担者である出口剛司との研究会及びドレスデンの戦後復興事業の視察と資料収集のために、リム、東は渡欧し、現地での研究協力者たちと研究会を行った。ドレスデンは冷戦終結がするまで旧東ドイツ側に属する。そのため、旧西ドイツとは対照的に、最近になってようやく歴史を見直す動きがでてきている。ドレスデン在住のザクゼン記念財団の代表者、創設者でもあるノーバート・ハッセ博士の案内で、ハッセ氏の財団が運営しているいくつかの主要な歴史博物館視察することができ有意義な議論と意見交換を行った。尚、当該研究の研究成果は著書『負の遺産とミュージアム』(文理閣)にまとめることが決定している。また、英文の著書を出版する予定でもある。今年度も、これまでと同様に文献資料では得がたい貴重な学術的交流をフィールド・ワーク及び人的交流を積極的に行ってきたといえよう。
著者
和田 雅人 小森 貞男 松本 省吾
出版者
独立行政法人農業技術研究機構
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2003

1)リンゴ単為結実品種は花器官変異を持っており、花器官形成遺伝子MdPIの発現が欠損していた。しかし本研究で、このMdPI遺伝子の発現組織、発現制御を解析した結果、花器官変異の説明は出来るが単為結実とは直接結びつかないことがわかった。MdPI遺伝子の機能は他の植物のPIホモログのものとよく似ており進化的な保存性が高いことも分かった。2)MdPI遺伝子が転写調節遺伝子のMADS遺伝子ファミリーに属しているためMdPIの発現抑制により発現に影響を受ける遺伝子を探索した。同じ花器官形成遺伝子のホモログMdTM6、MdMADS13のクローニングに成功した。またこのMdMADS13の発現が単為結実品種で減少し、かつ発現組織も結実と関与する子房や胚珠で観察され、単為結実と関与することを示唆した。3)正常品種のMdPI、MdMADS13など単為結実に関与する遺伝子の機能を調べるために、これらの遺伝子発現の抑制、または促進した組み換え体リンゴの作出を行った。これまでのリンゴの形質転換効率は非常に低いものであったが、本研究では形質転換法や転換体の培養法、形質転換に適した品種の選抜を行うことで、これまでより数十倍高い形質転換効率を持つ系を確立することに成功した。4)MdPIのアンチセンス、またはサイレンシングベクターを組込んだ組換えリンゴの作出に成功した。またMdMADS13のアンチセンスベクターを導入した組換え体リンゴ、さらにMdTM6のアンチセンスベクターを導入した組換えリンゴの作出に成功した。5)これら組換えリンゴが開花、結実して初めて導入遺伝子の機能が解析できるため、早期開花組換えリンゴを作出し、2ないし3年で開花することに成功した。
著者
箸本 健二
出版者
経済地理学会
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.337-351, 2000-12-31
被引用文献数
2

本稿では, 主に情報通信技術の進展とその広汎な普及にともなう社会経済的な影響を, 主に産業空間の変容という視点から整理し, 今後の産業活動における変化の方向性を展望する.経済地理学では, 情報技術(IT)と産業の空間構造との関連をとらえた研究が1960年代後半から進められ, 対面接触の代替, 情報交換における時間距離の短縮効果, 通信コストの削減効果, そして通信回線を産業基盤として評価する研究が主に行われた.さらに, コンピュータのネットワーク化が進んだ1980年代以降は, 企業間提携の進行, 情報財産業の立地特性, テレワークやサテライトオフィスなど労働市場への影響などが新たな研究テーマとされる一方, 企業や都市構造など既存組織の再編成を情報通信技術と関連づけた研究も進んでいる.今日, 情報通信技術を産業モードの変化を加速させる因子として評価する視点が定着しているが, とりわけ重要な要素となるのがインターネット環境の浸透である.インターネット環境の浸透は, コミュニケーションコストの大幅な削減だけでなく, コミュニケーションそのものの急激な拡大をもたらしており, その社会経済的な影響力ははかり知れない.それゆえ経済地理学においても, 今日的な情報通信技術をブラックボックス化せず, 経済の各局面で果たしている役割と産業の空間構造との関係を冷静に検証し, そのモデル化を進める必要がある.