著者
北川 敏一 平井 克幸 岡崎 隆男
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

三重項カルベンは、中性2配位の炭素原子に2個の不対電子をもつ有機分子種であり、安定化が困難な活性種の一つである。本研究では、三重項カルベンの長寿命化を目的として、その前駆体を我々が開発した剛直な「分子三脚」を用いてAu基板表面に自己組織化単分子膜として固定した。膜上への光照射により発生したカルベンは基板上への束縛をうけて2分子的分解反応を起こさないため、溶液中で発生させた場合と比べて安定化することが確認できた。
著者
家島 彦一 黒木 英充 羽田 亨一 上岡 弘二 川床 睦夫 飯塚 正人 山内 和也
出版者
東京外国語大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1998

本調査の主たる目的は、イスラム圏における統合と多様性のメカニズムを理解する-助として、当地における交通システムの歴史的変容を解明することであった。この目的を達成すべく、1988年度から2000年度にかけて-連の現地調査と文献調査を実施した結果、以下のような重要な研究成果を得ることができた。1.1988年度から2000年度にかけて行った南イラン・ザグロス山脈越えの古いキャラバン道調査では、バーチューン、アーザーディガーン、ローハーニーなどの地で、これまで記録のなかったキャラバンサライ(隊商宿)、水場、拝火神殿、石碑、城塞等の新たな歴史的遺跡群を発見した。この調査によって初めて、シーラーズ・シーラーフ間の正確なルートが明らかになった。2.2000年初頭に行ったエジプト南部のクース/エドフー(ナイル渓谷)〜アイザーブ(紅海岸)を結ぶキャラバン道調査では、イブン・ジュバイル、アブー・カースィム・アル=トゥジービー、イブン・バットゥータといったアラビア語メッカ巡礼書に登場する地名の同定に成功するとともに、新たな歴史遺跡数か所を発見。時代と場所を確定し、GPSを用いて図面に記録した。また、アバーブダー部族のベドウィンから当地の聖者廟に関する情報を得た。3.2001年初めに行ったホルムズ海峡からオマーンにかけての現地調査では、カルハート、ミルバート、スハールなどの港市遺跡を訪れるとともに、外国人労働者ネットワークの最近の動向について調査を行った。その結果、港湾における諸活動や人間移動の構造と機能は過去も現在もそう変わっていないことが明らかになった。この地域ではまた、最近のダウ船による貿易とダウ造船業の現況に関する調査も実施した。以上の成果を総合した結果、イスラム圏における共生と接触のダイナミズムをより深く理解するためには、交通システムに関する調査が今後も必要不可欠であることが確認された。
著者
岡崎 隆男
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

新材料の有機合成や体内での代謝反応や機能発現機構には、カルボカチオンが関与する反応が重要である。そこで、超強酸を使って多環式芳香族スーパー求電子化合物の効率的な発生方法を開発し、直接NMR観測とDFT計算による電子構造の解明と有機合成反応への応用を検討した。Benzo[ b, d] furan, benzo[ b] naphtho[ 1, 2-d] furan, benzo[ b] naphtho[ 2, 3-d] furan, benzo[ b] naphtho-[ 2, 1-d] furan, dinaphtho[ 2, 1-b : 1', 2'-d] furan, benzo[ b] naphtho[ 1, 8-de] pyran, dibenzo[ d, d'] benzo-[ 1, 2-b : 4, 3-b'] difuran, dibenzo[ d, d'] benzo[ 1, 2-b : 4, 5-b'] difuran, naphtho[ 2, 1-b : 3, 4-b'] bisbenzofuran, benzo[ 2, 3][ 1] benzofuro[ 4, 5, 6-kl] xanthene, 9, 9-dimethyl-9H-9-silafluoreneを脱ジアゾ環化反応等によって合成した。超強酸を用いてカルボカチオンを発生させ、NMR観測した。プロトン化カルボカチオンの陽電荷は酸素原子が隣接したベンゼン環への非局在化に限られていた。また、NICS値からフラン環の芳香族性が高いほどカルボカチオンになりやすいことが示唆された。
著者
大沢 寿 藤渕 まどか 岡本 好弘 斎藤 秀俊 村岡 裕明 中村 慶久
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MR, 磁気記録 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.348, pp.13-18, 2003-09-26
参考文献数
6
被引用文献数
1

垂直磁気記録におけるPRML-AR方式の誤り率特性改善について検討している.PRML-AR方式は,ビタビ復号における入力系列の推定値演算にARチャネルモデルを適用したビタビ復号器を用いる方式である.本稿では,最急降下法によるARチャネルモデルの雑音フィルタ係数を用いたPRML-AR方式の誤り率特性を計算機シミュレーションにより求め,従来のPRML-AR方式との比較検討を行っている.その結果,提案したPRML-AR方式は従来のPRML-AR方式に比べて,10^<-4>の誤り率,規格化線密度が1.5のときで約l.OdBのSN比改善が得られることを明らかにしている.
著者
平光 照子 安藤 元郎 鹿江 寛 兼松 まどか 元津 康彦
雑誌
中部日本整形外科災害外科学会雑誌 (ISSN:00089443)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.149-150, 2002-01-01
参考文献数
2
被引用文献数
1
著者
長谷川 まどか 加藤 茂夫 田中 雄一
出版者
宇都宮大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究は,携帯デバイスを対象としたマルチセンソリー認証方式の開発を目的としている.現在,携帯デバイスでの認証には暗証番号やパスワードが多用されているが,覗き見への耐性の面で問題がある.本研究では,画像などの視覚情報,音声などの音響情報,振動などの触覚情報といった複数の知覚要素を組み合わせて認証に利用することで,覗き見への耐性が高く,かつ,ユーザが使いやすい認証方式の検討を行った.さらに,携帯端末を振る動作や空中描画動作などの行動的特徴を認証に利用する方式についても検討を行った.
著者
宮本 匠
出版者
大阪大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

本年度当初は、前年度より継続していたアメリカ合衆国デラウェア大学災害研究所での研究を行い、筆者が実施した新潟県中越地震や阪神淡路大震災の被災者への復興曲線を用いたインタビュー結果について、同研究所の研究者らとその分析について議論を行った。議論の中では、被災者の心理的な回復の様子をその描かれた曲線の形状に即して吟味すると、1、短期間で回復していくもの、2、長期間で回復していくもの、3、一度回復したのちに再び大きく心理的に落ち込んでしまう「2番底」を経験するもの、4、曲線の一部分あるいは全体が複数の線によって重ね描きされ心理的な不安定さを表現するもの、5、曲線が底部で停滞したまま心理的な回復がなされていないことを強調するもの、等の特徴によって類型化できることが分かった。このように類型化できる一方で、ひとつひとつの曲線、つまりひとりひとりの復興が、決して普遍的な復興モデルに回収されることのない単一性(singularity)をもっていることを強調しておくことが、復興支援にとって重要であることも強調した。また、被災者の心理的な回復場面、曲線でいえば、被災者の心理的な変化を表す曲線が下降から上昇へと転じる屈折部分で起こっている現象を理論的に明らかにするために、筆者の中越地震被災地でのアクションリサーチを記録したエスノグラフィーを柳田國男の遠野物語拾遺における説話についての社会学的考察を援用して考察し、論文にまとめた。これらの一連の被災者の心理的な回復がどのようなに現象し、どのように支えることが可能なのかについての論考は、甚大な被害を及ぼした東日本大震災からの復興や今後予期されている首都直下地震や東南海地震のような巨大災害からの復興への備えとして実践的な意義をもつと考えられる。
著者
野中 泰二郎 高畠 秀雄 谷村 真治 平澤 征夫 三村 耕司
出版者
中部大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1999

1995年兵庫県南部地震ではそれ以前の地震では経験しなかったような構造物被害が発生した。其のうち特に特徴的な脆性的あるいは衝撃的破断が発生した芦屋浜高層住宅と神戸市の橋脚に焦点を当てて、得られた研究結果を以下に要約する。記録地震波と実構造に近い三次元連続体モデルの有限要素による動的数値解析を遂行したもので、耐震設計上考慮すべき事項を列挙する。1.激しい直下地震の場合などでは初期の過渡応答過程がその後の動的挙動に支配的な影響を及ぼすこと、またそれは、構造物の大きさや形、支持・境界条件と初期地震動のプロファイルによって著しく異なる事がわかった。これらの現象は構造物中を伝わる応力波の影響を考慮することで理解される。2.構造物に発生した顕著な被害箇所は急激なエネルギーの変化と密接に関係している。3.特に、高層骨組の極厚断面主柱の破断が特定の階(4階と8階)の段落した部分での溶接部に多発した原因はこれで理解できる。4.高層骨組みブレースと柱の接合部が一体となって破断した原因は、剛接ブレースに作用している軸方向力と剪断力から生じる鉛直成分の力によって、ブレースが上向きに引っ張られて破断し、次に、柱の破断を誘発した。この問題は、連続体を有限要素にする際、フレーム解析よりは高次のシェル要素を用いた解析結果から、破断過程を解明できた。5.骨組構造において、塑性ヒンジが初期に集中して発生する階では構造物の損傷を受けやすく、塑性ヒンジが発生していない階では被害は顕著でない。塑性ヒンジが集中的に作用する事を避ける必要がある。
著者
柴田 圭子 渡邉 容子 早瀬 明子 安原 安代
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 = Journal of cookery science of Japan (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.87-97, 2010-04-05
参考文献数
17

家庭における飯の冷凍保存とその電子レンジ加熱の方法を研究するため,女子大学生と消費者モニター(日立アプライアンス)にアンケート調査を実施した。その調査より得られたデータに基づき,電子レンジ加熱後の飯の食味におよぼす加熱条件の影響を検討した。アンケート参加者の多くが8~10cm四方,150g程度のかたまりの飯を1週間程度冷凍保存をしていた。その90%以上が冷凍飯を加熱するのに電子レンジを使用していた。飯がほどよく膨潤糊化していれば,150gの電子レンジ加熱した飯の食味は冷凍していない飯の食味に類似していた。しかし,たとえよく膨潤糊化した飯でも,300gの飯の場合には加熱ムラのために食味が低下した。ゆえに,家庭で飯を冷凍-電子レンジ加熱する場合,飯は小さめ(例えば150g程度)に冷凍し,電子レンジ加熱は庫内のプレートに直接置くのが最も適当であろう。
著者
池津 善郎 池部 敏市 小倉 英郎 小田嶋 博 黒坂 文武 佐瀬 くらら 杉内 政巳 杉山 朝美 勝呂 宏 鈴木 慎一郎 藤沢 重樹 北條 徹 松井 猛彦 松田 三千雄 山本 淳 四本 秀昭
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.633-642, 1991
被引用文献数
8

米アレルギーの関与が考えられるアトピー性皮膚炎(AD)患者に対する通常米の厳格除去効果を臨床的に検討することを目的として, 低アレルゲン米(HRS-1)の代替食療法を多施設共同で実施した. その際, 米と小麦との交叉反応性を考慮し小麦も厳格除去した. このHRS-1は, 抗原蛋白を除去するため蛋白分解酵素処理した米である. 総実施例49例のうち除外・脱落などを除いた43例を解析対象とした. 多くの症例でHRS-1摂取直後から4週にかけてAD病変の範囲・重症度指数(ADASI)の急速な低下が観察され, 2週後, 4週後, 最終判定日(平均5.6週)のADASIは, それぞれ開始時と比較して有意に低下した. 全般改善度において「改善」以上の改善率は, 2週後では39%, 4週後では67%, 最終判定日では74%であった. また, 併用ステロイド外用剤の減量効果においても「軽減」以上の症例は, 最終判定日で約半数に認められた. 3例の悪化のほかに特記すべき副作用は認められなかった. 有用性の成績は, 43例中「非常に有用」が17例(40%),「有用」が13例(30%),「やや有用」が9例(21%)であり,「有用」以上の有用率は70%であった. HRS-1は, 米アレルギーに悩む難治性重症AD患者の代替食として高い有用性のあることが認められた.
著者
中塚 武 光谷 拓実 河村 公隆 安江 恒 光谷 拓実
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

樹木年輪のセルロースに含まれる酸素と水素の同位体比が、過去の降水量や相対湿度の変動を、年~月の単位で極めて良く記録しているという知見に基づき、北海道から南西諸島に至る日本各地で、過去数百~数千年に亘る水循環の変動を復元して、梅雨前線活動とエルニーニョの関係の周期変動や、洪水・旱魃のサイクルが日本の歴史に与えた影響、水循環変動に対する植物の長期応答などについて、気候学・歴史学・生態学的解析を行った。
著者
河内 俊英
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲 (ISSN:09155805)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.536-546, 1985-09-25
被引用文献数
1

ナナホシテントウ, ヒメカメノコテントウおよびクロヘリヒメテントウの成長量(羽化時生体重とした), 成長速度および休眠誘起に対する日長条件の影響を調査した.ナナホシテントウ, ヒメカメノコテントウの羽化時生体重は, 20℃, および25℃では長日条件よりも短日条件下で重くなった.ナナホシテントウ, ヒメカメノコテントウおよびクロヘリヒメテントウの成虫は, 25℃では長日・短日の各条件とも休眠割合が低い.ナナホシテントウ成虫では, 20℃短日条件で卵巣成熟の遅延がみられた.産卵前期間は8L/16Dで54.6日, 10L/14Dで65.2日, 12L/12Dで31.9日を要した.ヒメカメノコテントウ成虫は, 20℃短日条件では80%以上が休眠した.クロヘリヒメテントウ幼虫の成長期間は, 25℃の短日・長日両条件において, 顕著な差異はみられなかった.ナナホシテントウ成虫の夏眠を誘起する要因としては, 梅雨時期の餌不足が重要と考えられる.日長および温度条件は, ナナホシテントウの夏眠誘起にとって, 2次的要因であろう.
著者
林 泰秀 外松 学 朴 明子 大木 健太郎 佐野 弘純 小川 誠司
出版者
群馬県衛生環境研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

ALK遺伝子の解析で神経芽腫(NB)では、部分欠損型ALKも腫瘍化に関与することが示され、ユーイング肉腫では新規のミスセンス変異の4例は活性化変異であることが判明した。横紋筋肉腫50検体の解析では高頻度にALKの高発現を確認した。IDH1/2遺伝子の解析ではNBを含め4種の腫瘍で変異が同定された。さらに次世代シーケンサーのエクソーム解析とALK経路に関連する遺伝子群の解析で新規異常を複数検出し、ALK経路はNBの発症と進展に重要な役割を果しており、治療標的になりうることが示唆された。
著者
倉井 耕
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会関東支部会報 (ISSN:13416359)
巻号頁・発行日
no.5, pp.45-46, 1990-12-06

栃木県において、小麦は成熟期が梅雨期にあたり、低アミロの発生がしばしば問題になっている。低アミロは降水との関係が大きいが、今回は降水の時期とその程度について検討した。なお本研究は水田農業確立試験研究の中で行った。また、アミログラム値は農業研究センターの機器を使用して算出した。