著者
梅田 素博
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究の目的は、総合的学習のための表現教育の教材の開発にある。先ず、表現教育に関する音楽教育、美術教育(造形教育)、映像教育のカリキュラムと教材を資料として、収集した。そして、具体的な表現教育の教材を研究した。手順は次の通りである。1.音楽教育と美術教育最初に、色彩と形態を用いて音楽を表現した。PCCSのトーンを使って、オクターブと色彩の両者の関係を作成することによって、色彩における楽譜との相関を行った。それは、一つのオクターブの中の12音と12色相との適用である。また7つのオクターブと7つの色彩トーンを適用させた。次に、音と形態との関連において、音の長短と形や線の広さを相関させた。この結果、音楽と美術を照応することによって独創的な表現を表すことを立証した。2.映像教育(光)映像教育では、光を素材とした。そして上記1の結果に基づき、ルミノグラフ・パターンを研究した。光は、重要な造形要素の一つである。デジタルカメラ、カラーフィルター(赤・黄・緑・青の4原色)、原図(点・線・面)、特殊効果フィルターなどを用いて実験した。その結果、空間、リズム、緊張、コントラスト、バランス、ハーモニー、コンポジション等の表現効果が得られた。以上の結果、音楽と美術(色彩・形態)と映像(光)の関連するシステムの存在を明白にした。具体的には、「蠱惑の世界」シリーズ及び「月光の宇宙」シリーズである。そして将来にわたり表現教育において、新しい教材の開発を可能とした。
著者
及川 英俊
出版者
東北大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2005

本研究課題では,「有機-金属ハイブリッドナノ結晶の極微構造を制御した多層化コア-ナノシェル構造体の作製法を確立するとともに,その光学特性を評価し,ナノ界面電子・光相互作用を明らかにする.」ことを主たる研究目的とした.最終年度は,多層化の要素プロセスとして,逆構造であるPDA(ポリジアセチレン)コア-金属シェルの作製法「光触媒還元法」のさらなる拡充とその線形光学特性評価,「共沈法」との併用による多層化ナノ構造体の作製を試みたので報告する.ここで,PDAナノ結晶(結晶サイズ:70nm,150nm)は再沈法により予め作製した.(1)光触媒還元は,可視光を吸収したPDAの励起電子がコア表面周囲に存在する金属イオンを還元・析出させるものと考えられた.このことは,PDAコアのサイズ・形状とは関係なく,還元が進行することから支持される.(2)硝酸銀の代わりに,塩化白金カリウムを用いると非常に精細な白金ナノ粒子をPDAコア表面に析出することができ,白金ナノシェル構造が構築できた.(3)析出する銀ナノ粒子と白金ナノ粒子のサイズ・析出密度の差は,金属イオンの酸化還元電位と対応する金属の仕事関数で定性的に説明された.(4)予め「光触媒還元法」により析出したPDAコア表面の銀ナノ粒子を触媒として,化学還元法を併用し,金ナノ粒子を析出させることに成功した.(5)「光触媒還元法」と「共沈法」を組み合わせることにより,銀コア-PDAシェル(1)-白金シェル(2)という多層化ナノ構造を始めて作製することが可能となった.
著者
須藤 斎
出版者
独立行政法人国立科学博物館
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

本研究の目的は,「温室地球」から「氷室地球」への転換点である始新世/漸新世境界(以下E/O境界と記載)付近で,珪藻Chaetoceros属が渦鞭毛藻類に替わって沿岸生態系の主要な一次生産者と進化していった過程を解明することである.申請者の研究により,約4000万年前から,現在までの珪藻休眠胞子化石の分類が行われてきた.その結果,約3400万年前のE/O境界付近で,Chaetoceros属休眠胞子の多様性と産出頻度が激増する「Chaetoceros爆発」イベントが起きたことが解明された.一方,渦鞭毛藻類の休眠シスト群集は,逆に多様性と産出量が急減しており,沿岸域における主要な一次生産者がこの時期に渦鞭毛藻類からChaetoceros属に急激に交代した可能性が示唆された.しかし,研究した試料間隔の制約から,正確な数値年代が明らかにできなかったため,これはあくまで仮説である.さらに,Chaetoceros属と渦鞭毛藻類の激変が本当に対応しているのかも確かめられていない.また,「Chaetoceros爆発」とOi1イベントとの対応関係や,もう1つの重要な一次生産者である石灰質ナノプランクトンの群集変化との関係も全くわかっていない.そこで,現在,E/O境界をまたぎ,かつChaetoceros属・渦鞭毛藻類・石灰質ナンノプランクトンをすべて含み,さらに酸素同位体比の測定用の有孔虫化石をも含有する連続コアサンプル(アフリカ南東沖,DSDP369および南極沖ODP689)を高時間分解能で分析することにより,同一コアを高時間分解能で分析し,事変の正確な年代と各タクサ間および酸素同位体イベントとの対応関係を明らかにすることを試みている.そして,これを基にこの事変の詳細な変遷過程を解明し,その原因を考察する予定である.
著者
氷室 昭三
出版者
Japanese Society for Engineering Education
雑誌
工学教育 (ISSN:13412167)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.51-56, 2007-05-20
参考文献数
3
被引用文献数
1 2

A new educational program was introduced to our college in 2000. This program based on the extensive knowledge in the engineering and high culture, originally intended to foster young engineers with creativity, diversity, interdisciplinarity, internationality and high practical skills. It also aimed to nourish engineers who would be engaged in developing user-friendly technologies that can coexist with nature and who can flexibly cope with current global issues such as environmental problems, food shortages and energy efficiency. Regrettably, great numbers of students don't seem to be interested in studying. We feel that there is an urgent need to improve the educational program to attract students to learn and encourage their motivations. In this paper, We would like to propose a new education model that is the Collaborative Work of Industry, Local Government and College of Technology.
著者
海老名 敏明 鹿内 健吉 伊藤 隆 梅田 義彦
出版者
低温生物工学会
雑誌
凍結及び乾燥研究会記録 (ISSN:02888289)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.16-24, 1960-07-17

現在我々の行つている乾燥BCGワクチン(以下乾ワクと略す)の製造では,箱型乾燥機内でアンプル中の液体ワクチンが一且凍結真空乾燥された後,空気を入れて真空を破つて取り出され再び多岐管式乾燥に取りつけて真空に熔封される。此の際真空下にあつた乾ワクは一時空気にふれ再び真空下に戻される事になる。この乾ワクにふれる空気の湿度や,空気と接触している時間の長さが乾ワクの生菌数及び保存性に如何に影響を及ぼすか検討した。1)箱型乾燥機内で乾燥が終つた時,真空下でアンプルにゴム栓を施し,一時的に封じ,之を箱外に取り出し最終的に熔封を行つた乾ワクと,従来の方法で短時間(10分以内)空気にふれさせた後,真空熔封されたものの生菌保性を氷室保存12ケ月比較観察したが,両者間に著差を認め得なかつた。2)箱型乾燥機からとり出されたアンプルを一部は直ちに真空熔封し,他は相対湿度約25.5%の容器中に貯え,2時間後に真空熔封した。この両者の製造直後の生菌数は,後者では明らかに滅少して居た。又15時間上記容器中に放置した群を加えこれら3種の乾ワクの生菌保存性を比較したが,氷室保存では製造直后の生菌をよく保持したが,37℃保存で空気とふれた時間に比例して生菌揖失の度が増した。3)硫酸処置により5.2%, 56.8%, 88.5%の含湿空気を作り,之らに乾ワクを2時間ふれさせた後,真空熔封し,各乾ワクの生薗保存性を比較したが,氷室保存で製造直後の生菌数をよく保持し得たが,37℃保存で高湿度の空気にふれたもの程生菌損失の度合は大きかつた。尚各乾ワクの含水度はふれた空気の湿度に比例して多くなつて居た。4)アンプル熔封時,空気,酸素,窒素等のガスをアンプル中に送入し,再び真空状態に戻した後アンプルを真空熔封した場合,その乾ワクの生菌保存性は窒素群が他群より多少優れて居た。
著者
大成 博文 高橋 正好
出版者
徳山工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

マイクロ・ナノバブル技術を用いて,閉鎖海域における海洋生物の蘇生と海洋環境の水質浄化に関する研究を行い,以下の成果を得た.(1)マイクロ・ナノバブル発生装置を開発し,マイクロ・ナノバブルの直径と上昇速度を計測した.その結果,1〜10μmの気泡径を有する「マイクロナノバブル」の存在を確認するとともに,「マイクロバブル」から「マイクロナノバブル」へと収縮する過程を詳しく検討した.(2)マイクロ・ナノバブルの発生装置の内部について高速度撮影を行い,マイクロ・ナノバブルの発生が秒速400回転程度の旋回速度で発生し,その静電摩擦によって,マイクロ・ナノバブルの物理化学的特性が生まれるという「サイズ効果」の存在を明らかにした.(3)マイクロ・ナノバブルの生理活性効果を見出し,それが,2枚貝のみならず,人体においても発生することを明らかにした.とくに,マイクロ・ナノバブルの供給によって,通常の2倍前後の血流促進効果を見出した.(4)マイクロ・ナノバブル技術を水産養殖に適用し,広島カキ養殖,北海道ホタテ養殖,三重真珠養殖における成果を系統的に検討した.また,その技術的成果における課題を明確にした.以上を踏まえ,マイクロ・ナノバブルによる水環境蘇生技術の可能性と展望を明らかにした.
著者
氷室 昭三
出版者
有明工業高等専門学校
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

化合物をマイクロバブルによって分解できるかを明らかにした.有機化合物を形成している原子間の結合を切断するエネルギーをマイクロバブルがもっているどうかを明らかにするために,2.6×10-5mol/1の4-エチルフェノール水溶液1dm3をマイクロバブルでバブリングし,その水溶液の蛍光強度を測定した.この水溶液の蛍光強度がバブリング時間とともに減少し,バブリングによる消光作用を示したが,このとき極大の蛍光強度を示す波長のシフトは見られなかった.蛍光スペクトルのシフトが見られなかったことから,マイクロバブルが原子間の結合を切断していないことを見出すことができた.洗剤を含む水溶液をマイクロバブルで処理し,一定時間ごとに採取した溶液の表面張力を測定したところ,マイクロバブル処理前の洗剤溶液の表面張力は,濃度に依存して低下が大きくなるが,マイクロバブル処理後の洗剤水溶液における表面張力は上昇していることを見出した.これは洗剤の臨界ミセル濃度以下では,一般に,洗剤分子は空気に接している海面に集合する.ところが,水中にマイクロバブルが存在すると洗剤分子が気泡との海面に集合し,水中に分散するため,バブリングによって表面張力が時間とともに増加することを見出した.マイクロバブルで処理した仕込み水でつくった焼酎と通常の方法でつくった焼酎との味の違いを味覚センサで測定した.マイクロバブルで活性化した酵母でつくった焼酎の味が大きく変化するのを見出した.味覚には甘味,塩味,苦味,酸味,うま味があるが,ここではうま味の成分であるグルタミン酸ナトリウムの1mmol/1溶液についても測定したところ,マイクロバブルで仕込んだ焼酎が,グルタミン酸ナトリウムの応答に近づくことを見出した.
著者
Sakpuaram Thavajchai 福安 嗣昭 芦田 淨美
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.1279-1281, 1989-12-15
被引用文献数
4

1987年6月〜7月において, 屠場搬入の肺炎病巣保有豚120頭のうち25頭から A. pleuropneumoniae(104株)を分離した. 病変別の菌分離率は, 膿瘍では34.0%(16/47), 出血性肺炎では11.6%(5/43), 膿瘍と出血性肺炎を保有する肺炎では26.7%(4/15)であった. 分離菌株の血清型別を行ったところ, 1型2頭(10株), 2型21頭(85株) 8型2頭(8株), 9型1頭(1株)であり, 8型及び9型菌株は我が国で初めて分離された.
著者
北 潔 原田 繁春 三芳 秀人 渡邊 洋一 網野 比佐子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

我々は回虫などの寄生虫と宿主であるヒトのミトコンドリアを用いて酸素適応機構の解明を目的として研究を進めている。その結果、寄生虫ミトコンドリアにおいて多様な嫌気的呼吸鎖が機能している事が判って来たが、中でも回虫で見い出したNADH-フマル酸還元系は多くの寄生虫に存在し、宿主体内の環境で中心的な役割を果している事が明らかになった。この系は複合体I(NADH-ユビキノン還元酵素)、ロドキノンおよび複合体II(ロドキノール-フマル酸還元酵素:RQFR)の3成分から構成され、NADHから最終電子受容体であるフマル酸への電子伝達を触媒している。その生理的意義は嫌気的グルコース分解系の最終ステップとして、無酸素下でも複合体Iの共役部位を駆動する事によりATPを合成できる点にある。そこで本研究ではNADH-フマル酸還元系の分子構築とその生理機能の特徴を明らかにする目的で研究を行っている。本年度は回虫ミトコンドリアを用い、以下の結果を得た。1)複合体I(NADH-ユビキノン還元酵素)および複合体II(RQFR)の分子構築と電子伝達機能に関しては、複合体Iの精製を目的として可溶化条件とこれに続くカラムクロマトグラフィーの条件を検討し、最適な界面活性剤を見い出した。また複合体IIに関してはその結晶化を試み、再現性の良い結晶化条件を見い出した。この条件で得られた結晶は3Åを切る解像度を与え、その解析からFAD、〓-イオウクラスター、ヘムの補欠分子族の位置関係を決定する事ができた。これらの分子間の距離と配置はそれぞれロドキノールからフマル酸への複合体内での電子伝達を可能にするものであった。2)ロドキノンおよびユビキノンの生合成機構と生理的役割に関しては、水酸化を触媒するCLK-1について調べる目的で組み換えタンパク質を合成し、抗体を作成中である。3)生活環における呼吸酵素群の発現制御機構に関しては、ウサギを用いて感染後の第三期幼虫ミトコンドリアの呼吸鎖の変動を調べる系を確立した。
著者
吉田 敦彦 今井 重孝 西平 直 西村 拓生 永田 佳之 井藤 元
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

1)日本各地の全てのシュタイナー学校(8校)のフィールドワーク調査による現状把握。2)範例な実践事例の収集および学習指導要領との対照における分析・考察。3)ユネスコスクール認定のシュタイナー学校におけるESD実践事例の研究。4) NPO法人立シュタイナー学校における社会的制度的認知プロセスに関するアクションリサーチ。5)シュタイナー学校の卒業生に関する欧米の先行調査の紹介と日本での調査実施の準備。
著者
媚山 政良
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
日本機械学會論文集. B編 (ISSN:03875016)
巻号頁・発行日
vol.53, no.495, pp.3358-3362, 1987-11-25
被引用文献数
12

The author and his co-workers have been developing the technique of collecting, conserving and utilizing systems of cold heat energy in the winter season. This paper presents an example of methods for the storage of agricultural products by the use of natural ice in winter season ; that is, by means of a HIMURO type storage shed. The author has proposed a method for the thermal design of a cold storage room taking account of monthly changes in environmental conditions and heat generation from agricultural products. The experiment was performed over a period of one year to verify the propriety of the thermal design and to observe the storing condition of product by using a HIMURO type storage shed on a practical scale. The close agreement between the observed and designed characteristic values were obtained. It is clear that the characteristics of the HIMURO type storage shed are very suitable for storing many kinds of agricuitural products over a long time period.
著者
井上 雄三 FAN Bin
出版者
独立行政法人国立環境研究所
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

石油や埋立地汚水漏洩による地下帯水層のオンサイト修復を模擬したベンチスケール実験装置(電極材料:ステンレス製タワシ)を作成した。本装置は透過性反応型地中壁(PRB)の原理を発展させた透過性電気生成反応型地中壁(e-PRB)であり、近年、米国にて発見された微生物の嫌気性代謝の一つ(電子受容体として陰電極を用いて微生物が有機物質を酸化)である。電子は電流として陽電極に伝達され、そこで酸素が還元される。開発中のe-PRBは、透過性反応壁としての地中バイオフィルム(陰極)、地下水以浅の酸素還元(陽極)、電気とイオン移動回路の3つから構成される。通常は最終電子受容体として大気中の酸素を地下水に供給するが、酸素の溶解は効率的でなく、従来のPRB技術では高コストが懸念されている。E-PRBは酸素を地下水中に溶解の必要がないため、経済的で効率的な地下水浄化技術となる。有機汚濁物質としてグルコース、石油系汚染物質としてBTEX(ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン)をモデル汚染物質として浄化実験を行い、本装置が長期間(約4ケ月)にわたり安定した電極出力分解反応を継続できることを実験的に明らかにし、e-PRB技術が地下水汚染現場に適用可能なことを示した。本反応の電気出力は、グルコースでは有機炭素濃度が5〜20mg/Lの範囲で電流値4mA、電位差(陽極:0.39V,陰極:0.19V)となった。これは、本プロセスの浄化能力が、量論的に0.2kg-有機炭素/(m3・日)と非常に大きな有機物分解速度となることを示すものであり、オンサイト浄化技術としての能力が非常に高いと判断できる。一方、BTEXでは2mA程度になり、電極活性に阻害が生じないことは示されたが、BTXの具体的な分解能力は評価することができなかった。
著者
棚部 一成 遠藤 一佳 佐々木 猛智 白井 厚太朗 伊庭 靖弘 守屋 和佳
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

氷室時代の現世と温室時代の白亜紀の軟体動物(貝類)を対象として、貝殻の成長縞解析と地球化学的分析を行い、海洋環境に対する生活史形質の応答様式を解析した。その結果、北西太平洋の貝類の個体としての寿命が100年以上と長く、全球規模での海洋環境変動の記録を貝殻に保存していることが明らかになった。また、保存のよい浮遊性有孔虫、底生有孔虫、貝類化石の酸素同位体比分析から、白亜紀後期の北米内陸海や北西大西洋の陸棚は温室期の白亜紀中期に比べてやや寒冷化し、低層水温には季節変動があったことが示唆された。また、これら海域の貝類は現世の温暖な海域の貝類と似た生活史形質を持っていたことがわかった。
著者
門田 充司 難波 和彦
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

農産物の生育環境から品質に至るまでの一貫したトレーサビリティを構築するために,収穫と同時に品質評価を行うロボットシステムを開発した。ロボットの操縦と果実収穫は人間が行い,果実の品質評価をロボットに搭載されたマシンビジョンで行う。各株に装着されたICタグの番号から果実収穫が行われた株の特定を行い,品質評価結果と共に保存される。これにより,生産者にとっての情報となる圃場内の果実品質や収穫量に関するマップが生成される。
著者
瀬川 直美 間瀬 裕子 古宮 照雄
出版者
木更津工業高等専門学校
雑誌
木更津工業高等専門学校紀要 (ISSN:02857901)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.81-92, 2010-02

シェイクスピアの戯曲には深甚な政治的観察がうかがわれる。彼は秩序の維持が社会の原動力であることを力説する。ルネサンス期のイギリスに充満した権力闘争を強く非難している。浅薄な民衆迎合の日和見主義が国家の危機を招くと主張する。権力と大衆との不安定な関係に懐疑的な目を向けるのである。コリオレイナス、ジャック・ケイド、ブルータス、その他を考察の対象にして、シェイクスピアの政治観を探った興味深い論文である。
著者
平出 公仁
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.18, no.11, pp.1265-1274, 1966-11-01

妊娠時における十二指腸からの鉄吸収についてその特異性を知るために, 放射性鉄を用い十二指腸拡置法によつて, 正常, 貧血, 鉄負荷時の鉄吸収, アミノ酸, 有機酸同時注入による影響, 胆汁中への鉄排泄と鉄の腸肝循環の可能性, progesterone, estrogenの鉄の吸収に及ぼす影響について観察した. 1)胃腸管ではすべての部位において鉄は吸収されるが, その中で十二脂腸では最もよく吸収が行われ, 回腸, 胃と続き, 結腸では僅少であつた. 2)妊娠時の鉄吸収は非妊時より亢進し, 臓器内鉄移行も増加している. 3)貧血妊娠時では正常妊娠時に比し鉄吸収が著しく迅速かつ大量である. 鉄負荷妊娠時は正常妊娠時に比し鉄吸収は抑制される. 母体臓器, 胎仔, 胎盤への鉄移行も正常時に比し貧血時は増加し鉄負荷時は抑制されている. 4)十二指腸内に微量鉄投与を行ないその鉄吸収を電子顕微鏡的に観察すると, 貧血妊娠時では正常, 鉄負荷時に比し十二指腸粘膜細胞のinterdigitation (指状篏合)が強く認められ, その吸収容積を拡大させ形態学上, 鉄吸収を容易にする状態にあること, 及び細胞内のlysosomeの存在は細胞内物質代謝の旺盛なることが考えられる. 5)十二指腸内に, ある種のアミノ酸, 有機酸が存在すると鉄吸収は亢進する. 6)生理的にも胆汁中に鉄が排泄され, ステロイドホルモンにおける腸肝循環と同様に, 鉄においてもこれが成立する可能性がある. 7)十二指腸における鉄吸収はestrogenによつて著しく影響される.