著者
客野 貴広 服部 紀公士 伊藤 衡平 恩田 和夫
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌B(電力・エネルギー部門誌) (ISSN:03854213)
巻号頁・発行日
vol.124, no.4, pp.605-611, 2004 (Released:2004-07-01)
参考文献数
16
被引用文献数
1

Recently the high attention for fuel cell electric vehicle (FCEV) is pushing to construct the hydrogen supplying station for FCEV in the world. The hydrogen pressure supplied at the current test station is intended to be high for increasing the FCEV’s driving distance. The water electrolysis can produce cleanly the hydrogen by utilizing the electricity from renewable energy without emitting CO2 to atmosphere, when it is compared to be the popular reforming process of fossil fuel in the industry. The power required for the high-pressure water electrolysis, where water is pumped up to high-pressure, may be smaller than the power for the atmospheric water electrolysis, where the produced atmospheric hydrogen is pumped up by compressor, since the compression power for water is much smaller than that for hydrogen gas. In this study the ideal water electrolysis voltage up to 70MPa and 523K is estimated referring to both the results by LeRoy et al up to 10MPa and 523K, and to the latest steam table. By using this high-pressure water electrolysis voltage, the power required for high-pressure hydrogen produced by the high-pressure water electrolysis method is estimated to be about 5% smaller than that by the atmospheric water electrolysis method, by assuming the compressor and pump efficiency of 50%.
著者
宮坂 道夫 藤野 豊
出版者
新潟大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2003

ハンセン病問題を「物語的正義」論の観点から再検討することが、本研究の目的である。そのために、(A)資料・文献研究と(B)聞き取り調査を併用しながら、以下の点について理論構築を行った。1)パターナリズムとしての絶対隔離政策、2)患者団体による患者の権利運動の展開とその社会的受容、3)<語り手>としての患者と<聞き手>としての知識人の乖離と責任の所在、4)<伝え手>としてのマスメディアの責任、5)病者に対する社会的な<無関心>と<偏見>の形成と存続、6)医療についての<正義>に求められるべき特質(<語り手><伝え手><聞き手>それぞれの立場の責任、および公正な意思決定の手続きとはいかなるものか)。本年度の実績としては、理論研究と資料研究の双方で順調な成果を見た。研究代表者の宮坂は、単著『ハンセン病重監房の記録』を来年度初め(平成18年4月14日予定)に刊行する予定である。これは、本研究で行った聞き取り調査、資料調査などの結果を盛り込み、特にハンセン病療養所に設けられていた懲罰施設(とりわけ収監者が多数死亡した過酷な懲罰施設であった栗生楽泉園の「重監房」)に焦点を当てて概説したものである。そのような施設において、患者に保障されるべき裁判を受ける機会が与えられず、療養所職員の裁量罰として不当な監禁が行われた実態を明らかにし、さらには、それらがメディアや国会等でいかに論じられ、廃止に至ったかを検証した。患者らは、こうした不当な人権侵害について、戦前から訴え続けていたのだが、保健医療などの専門職、マスメディア、国会議員、および一般国民が、それを聞き入れるまでに長い時間がかかった。共同研究者の藤野は、『近現代日本ハンセン病問題資料集成 補巻』(全8,9巻)を刊行した。これは、『近現代日本ハンセン病問題資料集成 戦前編』(全8巻)および『同 戦後編』(全10巻)に引き続き、ハンセン病問題研究の一次資料の集成であり、この問題を研究する上での重要な基礎的資料となるものと考えられる。
著者
本田 逸夫
出版者
九州工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

丸山眞男の青年期=反動化の時代の経験、つまり彼の収監等の受難と同時代の「自由主義」的知識人の「実践的無力」は、日本の国家と思想の言わば病根を示すものだった。すなわち、「国体」は疑問の提出自体を許さない「直接的」「即自的」「統一」であると共に無際限に「精神の内面」へ侵入する権力であり、知識人の思想も表面の(外来)イデオロギー体系と深層の呪術的な(無)意識との乖離から、異端排撃への同調・屈服とその自己正当化に陥りがちだった。これらの問題性の克服の志向こそ、丸山の思想・学問の形成と展開を主導していた。そしてそこで特に重要な役割を演じたのが、--自由主義の批判者でありながらも、「大転向」の時代に良心に基き「時潮と凄絶に対決」すると同時に他者への寛容をも示した--師、南原繁との持続的な(思想的)対話であった。丸山は、(「古層」論等に至る所の)「存在拘束性」の徹底した追究を通じて日本思想の深層の問題を剔抉し、あわせて(おそらく南原を含む)日清戦後世代の知識人の国家観や天皇観の脱神話化につとめた。更に晩年の彼は、「伝統」や「正統」の研究が示す通り、超(むしろ長)歴史的な価値(=個性的人格・良心等)の「客観的」存在を唱える南原の思想に近づいていった。自由主義論に即していえば、その作業は、相対主義にも不寛容にも陥らぬ自由主義を支える(そして、主体形成の前提を成す「思想的な座標軸」でもある)所の「絶対的価値」ないし「見えない権威」--その歴史的な探求と重なっていたのである。
著者
永松 土巳 山本 正雄
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会九州支部会報 (ISSN:02853507)
巻号頁・発行日
no.16, pp.12-15, 1961-04

栽培地を異にした水稲の生育相の差違を明らかにするとともに,暖地の早期栽培における収監構成の機椛を解明せんがために若干の調査研究を行なったのその概要を報告する。
著者
冨谷 至 矢木 毅 岩井 茂樹 赤松 明彦 古勝 隆一 伊藤 孝夫 藤田 弘夫
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2002

「東アジアの法と社会」という研究題目の下、4年間に渡って続けてきた我々の共同研究の成果として、以下の成果を報告する。第一は、国内国外で二度にわたって国際シンポジウムをおこない、東アジアにおける空間的、時間的座標のうえに死刑・死罪を考え、各時代、各地域の相違が浮き彫りにされたことである。その適用理念は、応報にあるのではなく、一に予防と威嚇にあることである。それは今日の中国の死刑に実態をみれば、罪と罰が均衡をかくこと、死刑廃止の議論が希薄であることからもわかる。各担当者の課題を深めて論文にした当研究の成果報告『東アジアにおける死刑』(科学研究費成果報告:冨谷篇)において、かかる東アジアの死刑の歴史的背景、本質が明らかにされている。報告書には、スウェーデンのシンポジウムには、参加できなかった藤田弘夫、岩井茂樹、周東平の各論考の収録し、社会学の視座からの死刑問題の考察、現代中国の死刑制度をテーマとする。さらに報告書は、さきの平成15年のセミナーの報告も加えたもので、英語でなされたセミナーの報告は、英文で、その後の主として日本側の研究分担者、および周東平論文は日本語で掲載している。なお、本研究のさらなる成果として、京都大学学術出版会から、平成19年に『東アジアにおける死刑』(仮題)を出版する予定である。我々の研究成果が今日の日本の死刑問題を考える上で、寄与できるのではないかと自負している。
著者
吉川 泰永 森松 正美 落合 和彦 永野 昌志 山根 義久 冨澤 伸行 佐々木 伸雄 橋爪 一善
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.67, no.10, pp.1013-1017, 2005-10-25
参考文献数
32
被引用文献数
13

乳腺腫瘍はヒトの女性および雌イヌでもっとも発症頻度の高い腫瘍である.BRCA2遺伝子は, DNAの修復に関与する巨大タンパク質をコードしており, ヒトではBRCA2が変異すると腫瘍罹患リスクが上昇する.BRCA2タンパク質はガン抑制タンパク質であり, これがヘテロ接合性の消失(LOH)によって不活化すると乳腺腫瘍が発症すると考えられている.本研究では, イヌBRCA2のLOH解析に適当な多型マーカを確立するために, 腫瘍に罹患したイヌ30例と罹患していないイヌ21例についてエキソン27領域のゲノム配列を解析した.これまでにイヌBRCA2遺伝子座で報告されていた多型は10204ins/delAAAだけだったが, この他に新たに4種類の単一ヌクレオチド多型(SNP)を発見した.これらのあわせて5つの多型を解析した結果, 4つのアリル型が存在することが判明した.今回解析した多型の中で10204ins/delAAAの出現頻度がもっとも高かったため, PCR法を応用してこの多型を判別する方法を確立した.この方法は, イヌのBRCA2においてLOHと腫瘍発症との関係を解析するうえで有用と考えられる.
著者
粟屋 憲太郎 伊香 俊哉 内海 愛子 林 博史 永井 均
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

第2次世界大戦において日独が行った数多くの残虐行為に対し、連合国はそれをどのように認識し、対処しようとしたのか。これまで個別分散化していた戦犯裁判研究を総合的に明らかにするため、大戦初期の連合国による戦争犯罪認識の形成過程から戦犯処罰方式の決定に至るまでの過程、さらに対日戦犯裁判政策の形成・実施・修正・終了のプロセスを全体的に明らかにすることを目指し、連合国による対日戦犯裁判政策に関する政策文書を収集・分析した。
著者
柏原 清江
出版者
同志社大学
雑誌
同志社政策科学研究 (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.33-46, 2008-07

論説(Articles)本稿での「企業再生」は、再建型法的手続を適用した企業を過去のしがらみから脱却させ、再出発させることを重点に早期再建を検証する。筆者は、再建型法的手続の企業を中心に、適用した企業に買収監査(Due Diligence)を行い、管財人および経営者、従業員の事情聴取を行ってきたなかで、従業員が再生に対しての管財人並びに旧経営陣の経営続投に対する不安感が多くあった。一方では、経営者たちも後継者難の悩みを抱え、再生に対して、不安を募らせていた。また、経営者たちのなかでは「現状の再建型法的手続は、未だネガティブなイメージがあり、申し立てに躊躇してしまう。再建型法的手続による成功事例(企業再生)が少なく、どのようなスキームで再建できるのかを知りたい。むしろ、中途半端な再建をしなければならない状態では申し立てした意味がない。これでは、敗者復活(再生)ができるのか不安で、再建型法的手続の意味がわからない。」といった意見も多く耳にした。本稿の目的は、以上の調査から再建型法的手続の倒産処理において「企業再生」に何が必要なのか。再建型法的手続の主旨である「企業再生」を有効にかつ早期実現できるように、人的・制度枠組みを提言する。"Revival of enterprises" in this text verifies that the enterprise that applies the rebuilding type legal procedure is gotten rid of from past bonds, and it is made to start afresh and rebuilding at the early stage is verified to the emphasis. The author audited purchase (Due Diligence), existed to the enterprise that applied mainly the enterprise of the rebuilding type legal procedure by the employee on the inside where the administrator, the manager, and the employee had been questioned, and there were a lot of anxieties to management the consecutive pitching of the administrator and former executives to the reproduction. On the other hand, managers also held the worry about the difficulty of finding successors, and uneasiness was felt increasing for the reproduction. Moreover, managers. "The rebuilding type legal procedure of the current state is still a negative image, and hesitates in the statement. I want to know can the success case (revival of enterprises) by the rebuilding type legal procedure able to be few, and in what scheme to rebuild it. There is no stated meaning in the state to have to do a halfway rebuilding. With this, it is uneasy, and doesn't understand the meaning of the rebuilding type legal procedure. whether it can be a consolation (reproduction)" It heard of a lot of opinions. What of the purpose of this text is necessary for "Revival of enterprises" in the bankruptcy processing of the rebuilding type legal procedure from the above-mentioned investigation?"Revival of enterprises" that is the purport of the rebuilding type legal procedure does, and it is effective and to achieve it at the early stage, proposes the human system frame.
著者
Hor Tai-Hwa Chang Mou-Hsiang Jou Ben Jong-Dao
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.76, no.4, pp.473-496, 1998-08-25
参考文献数
42
被引用文献数
1

TAMEX IOP期間中(1987年6月15日)に台湾の東岸沖で研究用航空機(NOAA P-3)を用いて梅雨前線の鉛直断面(6高度)観測を実施した。航空機による直接観測データと2種類の航空機搭載レーダーのデータを用いて、梅雨前線南端付近のメソスケール構造と、前線の維持機構を調べた。各高度における水平飛行中の乱流強度の急増から前線の先端の位置を決定し、前線の移動速度を考慮に入れて、前線を横切る鉛直断面内の運動学、力学及び熱力学変数の分布を合成した。これらの分布から、前線の先端部は風速の水平成分と空気密度の偏差の等値線に平行で、密度流的な構造を示すことが明らかとなった。熱力学変数の変化はさほど顕著ではないが、相当温位の分布は前線後面の下層の寒気コアの存在を示した。寒気コアは最も空気密度の大きな部分に対応していた。密度流の進行及び前線系の維持のメカニズムとして、寒気コア内における後方から前方に向かう水平気圧傾度力、前線の先端部付近における中程度の対流不安定、平均流からの運動エネルギーの変換が考えられる。
著者
篠田 太郎
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

雲解像モデルCReSSを用いた数値実験によって、中国華中域平野部上における日中の大気境界層の発達過程を示した。この過程において、乾燥対流境界層からforced cumulus境界層→、そしてactive cumulus境界層への遷移過程を示した。Active cumulusの発生は自由対流高度の急激な低下の時刻と一致していた。自由対流高度の低下は、地上付近の相当温位の増加と逆転層下端の飽和相当温位の極小値の減少によるものであることを示した。また、組織的な感度実験の結果から、初期条件において水蒸気量が多い場合、大気の安定度が小さい(不安定な)場合、地表面が湿っている場合にactive cumulusの発生時刻が早くなることを示した。Active cumulusによる水蒸気の鉛直輸送により、大気境界層は厚くなり、その上層における水蒸気量が増加することも示した。
著者
清道 亜都子
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.361-371, 2010-09-30
被引用文献数
4

本研究の目的は,高校生に対する意見文作成指導において,意見文の「型」(文章の構成及び要素)を提示することの効果を検討することである。高校2年生59名(実験群29名,対照群30名)が,教科書教材を読んで意見文を書く際,実験群には,意見文の「型」や例文を示して,書く練習をさせた。その結果,事後テストでは,実験群は対照群より文字数が多く,意見文の要素を満たした文章を書き,内容の評価も高まった。さらに,介入1ヶ月後においても効果が確認できた。また,対照群にも時期をずらして同一の介入指導を行ったところ,同様の効果が現れた。これらの結果から,意見文作成指導の際,意見文の「型」を提示することにより,高校生の書く文章は量的及び質的に充実したものになることが示された。
著者
原田 利男
出版者
独立行政法人国立高等專門学校機構
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2008

1. 研究目的我が国の稲作における水の供給には農業用水路が用いられる場合が多い。稲作において、水管理(中干し、間断潅水など)が重要なポイントであるので、用水路に堰を入れ稲田へ取水するが、空梅雨の夏季には閉鎖性水域になりやすく、水質悪化の原因となる植物プランクトンが大量発生する。数年前から取り組んできた省ェネ型酸素供給装置は、水深の浅い所(0.5m)でも機械的拡散が生じない流動特性を備えている理由で、用水路の表層水を取水する稲作に適用し、水環境改善について検討する。2. 実験方法宇部市平原(かつては稲作地域であった)で実験を行なった。小高い所に設けられた、灌漑用貯水池から放流される用水路が、東西南北四方に交叉した処から西へ約5m行った場所を選定した。北方が源流であり、東西南方面へ水を供給している。西側を試験区、東側を対照区として表層水の分析を行なった。用水路(幅約1m、水深0.5m)に装置(消費電力80W,水流動65L/min.)を設置し、装置から約20m離れた川底から装置へ水を吸引循環した。流速は0.2cm/sec.であった。3. 実験結果および考察(1). 溶存酸素濃度(DO):試験区は対照区と明確な差が出た。日中には、過飽和(試験区は19.9mg/L以上、対照区は12~14mg/L)になるが、朝方には、対照区では0mg/Lを示し、試験区では、日没から3mg/L以上で推移した。(2). ろ過速度:GFBろ紙で試験区の採水1Lを速やかにろ過できたが、対照区では約0.5Lで目詰まりを起こした。粒度分布の結果、目詰まりの原因として1μm以下の微細粒子の存在が考えられた。(3). 藻類の発現:表層水のクロロフィルaや濁度の値は試験区の方が良好であった。また、試験区では、溶存炭素濃度、DO、pHの測定結果は、光合成が盛んに行なわれたことを示した。試験区の川底に約100mに渡りアオミドロがグリーンベルト状にへばり付き、藻内に多くの微生物が共生し、良好な水環境を形成した。
著者
河野 憲治 尾形 昭逸 安藤 忠男
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.93-99, 1981-04-30

イタリアンライグラス(Ir)草地に暖地型牧草シコクビエ(Am)を不耕起導入する場合,Irの残存生育を抑到し,Amの定着を向上させる方法として石灰窒素の利用を検討した。すなわち,Irの残存生育とAmの発芽定着に及ぼす石灰窒素の施与量と施与時期の影響を圃場試験により検討し,さらに石灰窒素のIr残存生育抑到とAm定着向上効果を地温の面から解析した。(I)石灰窒素と硫安施与量を10a当りN=0,6,12,18,24kgの5段階,Amの播種時期を5月22日,6月5日,6月20日と変えた圃場試験の結果,(a)石灰窒素多施与(N:24kg/10a)区Amの乾物重と発芽定着数は,硫安区と比較し著しく高く,5/22播よりも6/20播で高い値を示した。(b)石灰窒素区Irの乾物重は窒素施与量の増加に伴って減少し,N多施与区では枯死状態を呈した。この傾向は5/22播よりも6/20播で顕著であった。また石灰窒素多施与区Irのクロロフィル含量と根の活力はともに硫安区と上比較して著しく低い値を示した。(II)石灰窒素と硫安施与量をポット当りN:0,0.1,0.2,0.4,0,6g,地温を18°,23°,28°,33℃と変えた土耕ポット試験の結果(a)石灰窒素区Amの乾物重は地温の高い区程,また窒素施与量の増加に伴って大きい値を示した。また,石灰窒素多施与Am区の発芽定着数は地温の高い区程大きい値を示した。(b)石灰窒素Ir区の乾物重は窒素施与量の増加に伴って激減し,その傾向は高地温程顕著であった。以上の結果から,地温が低く,Irの残存生育が旺盛な時期においても,10a当りN:24kgの石灰窒素多施与によりIrの残存生育を著しく抑制できること,その結果Irとの養分や光に対する競合が軽減され,Amの定着を向上させること,さらに石灰窒素によるIrの残存生育抑制効果とAmの定着向上効果は高地温程大となることが明らかとなった。