著者
岩崎 俊樹 山崎 剛 余 偉明 大林 茂 松島 大 菅野 洋光 佐々木 華織 石井 昌憲 岩井 宏徳 野田 暁
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

ダウンスケール手法に基づくメソスケール予報システムを作成し、農業気象と航空気象へ高度利用法を検討した。予測精度を向上させるためには、物理過程を改良し、初期条件と境界条件を最適化することが重要であることが示された。農業分野では、清川だしの強風といもち病の予測可能性を明らかにした。航空分野では、ドップラーライダーとダウンスケールシステムを組み合わせた、空港気象監視予測システムの可能性を検討した。
著者
大宅 辰夫 丸橋 敏広 伊藤 博哉
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.62, no.11, pp.1151-1155, 2000-11-25
参考文献数
23
被引用文献数
3 58

大腸菌O157は, 牛が主たる保菌動物であり, 糞便中に排菌されることが知られている.我々は, 大腸菌O157保菌牛の排菌阻止を目的とした生菌製剤を開発し, 実験感染牛への経口投与による予備的な排菌阻止試験を試みた.生菌製剤の試作には, 成牛糞便から分離した乳酸産生菌であるStreptococcus bovis LCB6株及びLactobacillus gallinarum LCB12株を用いた.4ヶ月齢のホルスタイン牛8頭に大腸菌O157を実験感染させ, 感染7日後に排菌を継続した4頭の保菌牛に生菌製剤を経口投与し, 大腸菌O157排除効果を調べた.生菌製剤の投与により, 糞便への大腸菌O157の排菌は完全に阻止され, 再排菌も認められなかった.実験期間中の糞便中VFA濃度を定量したところ, 排菌阻止は, 生菌剤投与をきっかけとした糞便中VFA, 特に酢酸濃度の急激な上昇と相関していた.また, 実験感染の過程で感染しなかった4頭の糞便中VFA濃度は, 感染した4頭に比べ, 有意に高く, 牛での大腸菌O157保菌には糞便中VFA濃度が一要因として関係していると考えられた.今回の成績は, 特定の条件下の牛を用いた予備的試験において得られたものではあるが, 生菌製剤の応用による大腸菌O157保菌牛の排菌阻止の可能性が示唆された.
著者
中谷 敏昭
出版者
天理大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究では,中高年者や高齢者の健康づくりとしてトレーニング施設ではなく,自宅(イン・ハウス)で効果的なトレーニングを実施させるためのシステムの開発と実践をおこなった.まず,定期的なトレーニングを専門家の指導の元に3ケ月あるいは6ケ月(週に2回あるいは1回の計24回)行わせ,その後に運動継続を目的としたフォロー教室と健康づくりのための情報誌を作成して体力の変化を検討した.その後,イン・ハウスで行う筋力トレーニングのための活動筋の自覚的疲労感を指標とした強度スケールを開発し,生理学的強度との関係を若年男性と中年女性を対象に検討した.その結果,アームカール運動をもちた筋力トレーニング時の強度スケールは若年男性および中年女性とも,運動回数の進行とともに増加し筋電図仕事量でみた生理学的強度やBorg-RPEスケールとも強い相関関係をしました.その後,中年女性を対象に自宅で週に3回のアームカール運動(「かなり効いてきた」と感じる回数まで)を2〜3ケ月間行わせたところ,等尺性肘屈曲力と「限界」と感じる回数が増加し,筋力と筋持久力の改善に効果的な方法であることが明らかにできた.また,本研究の片側アームカール運動のトレーニングでは,反対側(非トレーニング側)の筋力と筋持久力が改善されcross-education効果を生じさせた.以上のことから,本研究のイン・ハウスの筋力トレーニングで利用するための活動筋の自覚的疲労感を指標とした強度スケールは筋力と筋持久力を改善させる指標としては安全で効果的な内容であることが示された.
著者
近藤 恒一
出版者
イタリア学会
雑誌
イタリア学会誌 (ISSN:03872947)
巻号頁・発行日
no.16, pp.52-67, 1968-01-20

I primi studi del Petrarca ebbero inizio tra i dotti notari toscani che erano soliti riunirsi alla piccola Corte del Cardinale Niccolo da Prato ad Avignone. In modo particolare, egli prosegui i suoi studi a Carpentras sotto la guida di Convenevole da Prato, maestro di "grammatica" e "retorica" e uno dei notari, ed in seguito a Montpellier dove si reco per studiare legge. Il Petrarca fu incoraggiato ed aiutato negli studi da suo padre, anch' egli notaro ed entusiasta di "retorica" e di Cicerone. Alcune delle caratteristiche del Petrarca si rivelarono fin dal primo periodo della sua formazione; 1) un accesso estetico ed artistico ai classici e specialmente Cicerone, il quale lascio una profonda e quasi simbolica traccia sulla sua vita e cultura, proprio come fecero in seguito Laura e Sant'Agostino ; 2) un senso quasi innato della vita umana, senso che si sviluppo in una coscienza sempre crescente attraverso lo studio dei classici.
著者
加藤 内藏進 加藤 晴子 赤木 里香子 湯川 淳一
出版者
岡山大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

本研究の最終的な目的は,地球温暖化などに伴う地域気候の『変化の兆候』について(東アジアを例に),科学的視点と感覚的視点を双方向に駆使して,いち早く把握出来る『眼』を涵養するための教育プログラム開発にある。本年度は,前年度までの成果を更に発展させて取りまとめた。また,研究遂行の結果,気候変化を捉える際のベースとなる詳細な季節サイクル自体を把握する『眼』の育成が特に重要との認識が更に高まったので,その取り組みも重点的に行った。ドイツにおける5月の雨が子供を成長させるというモチーフの民謡は,気温が季節的に急昇温する時期(5月)の雨という意味が大きいことが,気象データも併せた分析によって示されるなど(論文掲載),日本の春との違いを比較できる格好の素材を提示した。一方,唱歌『朧月夜』を接点とした前年度の中学校での研究授業を分析し,春の温帯低気圧・移動性高気圧の周期的通過に伴う気象状況の特徴について,『朧月夜』の歌詞からもそれなりに的確にイメージ出来ており,気象データによる学習への活用の可能性が示唆された。また,『中間的な季節』にも踏み込んで,日本の季節サイクルと唱歌や絵画の鑑賞や色による季節の表現を軸に,学際的な研究授業を本年度も行い成果を分析した(岡大・教育学部,「くらしと環境」)(論文掲載)。更に,冬から春への進行に注目して,唱歌『早春賦』を軸に,その表現活動と気象・気候の特徴に関する学際的授業を,岡山城東高校で実施した。また,秋から冬への時期に注目し,日本海側での『時雨』を軸に,気象状況の把握と時雨を歌った和歌(新古今集等)の鑑賞に関する国語と連携した授業開発を行った。生物との連携に関しては,地球温暖化に関連するミナミアオカメムシの分布北上の実態,タマバエ類の発生期と寄主植物フェノロジーの同時性のずれなどについて研究成果を発表するとともに,本の分担執筆や各地での講演により,研究成果の普及に努めた。更に,房総半島や日本海側の海岸植生で,キク科植物に虫えいを形成するタマバエ類に関する分布調査を行い,分布北限等を確定した。一方,地球温暖化と日本付近の気候変化の昆虫への影響に関連して,昆虫類の年間世代数の増加,分布域の変化,昆虫と餌植物の同時性のずれ,高温による発育障害や繁殖障害,等,一筋縄ではいかない影響の絡み方を意識させるような研究授業を,岡大・教育学部の初等理科内容研究の講義で実施し,その成果や問題点を分析した(2011年5月に気象学会で発表予定)。なお,学校現場での参考になるよう,3年間の成果をまとめた冊子体の報告書も作成した。
著者
木内 徹 福島 昇
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009-04-01

英米の演劇に登場するアフリカ系およびアフリカ系アメリカ人の登場人物、英米のアフリカ系およびアフリカ系アメリカ人劇作家の作品、英米の演劇におけるアフリカ的要素などを精査し、その共通の特徴、あるいはその差異と各劇作品の主要テーマとの関連を検証する。黒人の演劇における影響の範囲は幅広く、文学を初めてとして、歴史、奴隷制度、音楽、などを調査しなければならない。
著者
江口 浩二 高須 淳弘 大川 剛直
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本課題では、内部構造や外部構造を持つテキストデータとネットワークデータに対して確率的に表現された潜在構造を推定する技術を開発する。ここでいう内部構造とは、たとえば、テキストデータにおいてトークン(単語)が属性で特徴づけられたものを指し、ネットワークデータにおいては各頂点または辺が属性で特徴づけられたものを指す。また、外部構造とは、たとえば、所与のネットワーク構造における各頂点にテキストデータ群が関連付けられた状況を指す。このような複雑な構造をもつ大規模なデータから低次元の潜在構造を推定することで、様々な実問題に利用可能な「知識」を抽出する。情報の検索、推薦、予測と、時系列解析などに応用する。
著者
松本 淳 遠藤 伸彦 林 泰一 加藤 内藏進 久保田 尚之 財城 真寿美 富田 智彦 川村 隆一 浅沼 順 安成 哲三 村田 文絵 増田 耕一
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

1950年代以前のアジアモンスーン諸国における紙媒体気象データをデジタル化したデータセットを作成し,20世紀全体でのアジアモンスーンと台風の活動や経路の長期変動を解析した。その結果,日本の冬季モンスーンが弱まり,冬の期間が短くなる傾向や,フィリピンで夏の雨季の開始時期が近年遅くなる傾向,東南アジアで降雨強度が強まる傾向,台風発生数の数十年周期変動,台風の低緯度地方での経路の長期的北上傾向等が見出された。
著者
古川 清香 森 智恵子 植野 正之 品田 佳世子 川口 陽子
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.33-43, 2008-01-30
参考文献数
22
被引用文献数
1

口腔疾患が日常生活に障害を引き起こすことが報告されているが,日常生活の障害と喫煙行動との関連については明らかにされていない.また,タバコをとりまく環境が変化している現在,労働者の意識や知識を喫煙対策に反映していく必要もある.そこで,喫煙と日常生活への障害,人々のタバコ対策への意識およびタバコの害への知識を明らかにすること,そして,職域における歯科保健活動における喫煙対策の必要性を探索することを目的として本研究を行った.対象者は,2004〜2005年に,歯科健診および質問票調査に参加した電子機器メーカの事務および技術職の男性従業員855名(平均年齢42.1±6.4歳)である.健診項目は,歯の状況(DMFT),歯周組織の状況(CPI),歯垢の付着,口腔粘膜,咬合・歯列,顎関節の異常の有無,質問内容項目は,歯科保健行動,口腔に関連する日常生活の障害,タバコ関連の質問である.その結果,本研究の対象者は,喫煙者38.7%,過去喫煙者12.9%,非喫煙者48.4%であった.口腔に関連した日常生活の障害は,「見かけが気になる(20.6%)」が最も多く,次に「おいしく食事ができない(13.7%)」,「話しづらく感じる(10.1%)」,「仕事に集中できない(6.1%)」,「よく眠れない(3.5%)」であった.ロジスティック解析において,喫煙習慣と口腔に関連する日常生活の障害のうち3項目について関連がみられた.喫煙者は非喫煙者に比べて1.60倍「見かけ」が気になり,喫煙者は2.03倍,過去喫煙者は1.98倍,非喫煙者に比べて「おいしく食事ができない」と感じ,喫煙者は非喫煙者に比べて4.01倍「よく眠れない」と回答した.会社における禁煙支援が不十分だと回答したのは23.7%,会社における歯科専門家からの禁煙支援が必要だと回答した人は29.3%であった.労働者のタバコ関連疾患の認識は,肺がん95.4%,口腔癌67.1%,歯周病54.6%であった.以上の結果,男性労働者の喫煙行動と口腔に関連する日常生活の障害の間に強い関連があること,労働者は禁煙支援が必要だと考えていること,タバコに関連する情報の提供が必要であることが明らかとなった.それにより,職域における口腔保健活動に禁煙支援活動が必要だと考察された.歯科専門家は職域においても積極的に禁煙支援活動に携わるべきである.
著者
向井 紳
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では研究代表者らが開発した氷晶テンプレート法により作製したマイクロハニカム状モノリス体の複合化による高機能化を目指した。まずはÅオーダーからサブAmオーダーのサイズを有する活性種をモノリス体に固定化する技術を確立した。これらの技術を利用し、光触媒、液相用固体酸触媒、イオン交換体として利用でき、流体に対する抵抗が非常に低いモノリス体の製造に成功した。さらに有機-無機ハイブリッドを前駆体に用いることにより、高い耐熱性を有するモノリス体の製造にも成功した。
著者
石川 健三 鈴木 久男 中山 隆一 河本 昇 末廣 一彦 JACKIW Roman WIEGMANN Pau 細谷 裕
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

低次元場の理論の研究とその応用をテーマとする本研究では、量子ホール効果の場の理論、重力の量子論並びに弦の量子論が中心的課題として取り上げられた。これら物理学の基本的諸問題に関する多方面にわたる研究が展開され、以下の成果があげられた(1)極めて特異な量子的な物理現象である量子ホール効果の厳密性に関して、ホール系のガス状態が負の圧縮率を持つことが示され、さらにこのことより縦抵抗が有限な値をとる現実の実験状況下でもホール抵抗の値が厳密に量子化されることがしめされた。また、量子的な多体効果が重要な働きをしている分数量子ホール諸問題について、空間の対称性を最大限に保つvon Neumann格子表現を使い、相互作用によりfluxが凝縮し、Hofstadterのbutterflyスペクトルと同様なものになる一粒子状態を持つflux相に基ずく新しい平均場理論が提案された。この意味で、Hofstadterのbutterflyスペクトルと分数量子ホール効果の関連が初めて明らかにされた。(2)時間や空間の反転に関する不変性を破る超伝導では量子ホール系と同様に電磁場に対するChern-Simons項が導かれる。磁場の役割をp波のCooper対凝縮がし、u(1)対称性が破れているときのChern-Simons項の係数には補正があること等について解明された。(3)任意次元に一般化された偶数次元のChern-Simons作用が無限階質量殻上既約という極めて特殊なゲージ対称性の構造を持つ理論であることが示されまたこの理論の量子化に成功した。(4)3次元Chern-Simons重力と4次元BF理論を格子上にのせる試みに成功した。(5)ストリング理論におけるD-Particleの有効理論のコンフォーマル対称性が示され、またハミルトンーヤコービ方程式を用いたストリングの新しい定式化にせいこうした。(5)超弦理論について、その相転移がヒッグス場による対称性の破れと解釈できる相転移点まわりでの物理量の計算について、定量的に解析する技術の開発に成功した。(6)量子情報理論における量子的絡み合い状態についてのエントロピーの持つ関係式の導出に成功した。
著者
尾形 良彦 種村 正美 遠田 晋次 庄 建倉 鶴岡 弘 田村 義保 佐藤 整尚 川崎 能典 島崎 邦彦 間瀬 茂 柴田 里程 ANDREA Llenos SEBASTIAN Hainzl JEFFREY J. DAVID Vere-Jones
出版者
統計数理研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

ETAS(epidemic type aftershock sequence)などの統計的点過程モデルで各地の地震活動の確率的予測を行う同時に,モデルを物差しにして静穏化・活発化などの地震活動異常を検出できる解析手法を確立した.地震活動予測からの逸脱による地震活動異常の空間パタンから,断層内の非地震性すべりによる地殻のストレス変化との因果関係を実証研究した.このような地震活動の異常性が殻歪変化のセンサーとして有用である.さらに地震活動異常とGPSによる地殻変動データとの整合性を確かめ,大地震の前駆的なすべり現象の解明に迫った.
著者
池田 健吾 黒田 英夫 藤村 誠
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会総合大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.1995, no.2, 1995-03-27

近年ワープロの普及により,一般の人でも整った活字体文字で文書を作成することが一般的になっている.しかし,一方で,画一的な活字体が個人的な手紙などに使われることに対して,個性がないなどの理由により敬遠される傾向がある.そこには,より人間的な文字を使いたいという要求がある.そこで我々は人の特徴を取り入れた書体の自動生成を目指している.そのなかで漢字のストロークから文字の特徴を正確に取り出すために,正確な芯線を取り出す必要がある.今回我々はヒゲの少ない輪郭線追跡細線化法を提案する.
著者
藤居 義和
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
大学の物理教育 (ISSN:1340993X)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.71-74, 2009-07-15
参考文献数
1
著者
平井 京之介
出版者
日本文化人類学会
雑誌
民族學研究 (ISSN:00215023)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.366-387, 1995-03

北タイの農村地帯に1980年代後半突如として外資系企業を主とする巨大な工業団地が出現した。ここで働く女性工場労働者は収入の大半を家の新築や家財道具の購入につぎ込んでおり,家にどれだけ豊かなモノを揃えたかを村の同年代の女性どうしで競いあっている。本稿では,彼女たちの消費行動が村において構築された家と女性に関するハビタスに基礎を置いており,そうしたハビタスによって生み出される実践は工場社会で新たに経験する同僚との相互行為を通じて変容されるということを考察する。そして,彼女たちにとって家を化粧するということは,工場での実践の変容を通して顕在化したものであるが,村で形成された女性の名誉に関するハビタスに根差したものであり,自己の相対的地位を高めることを目的とした能動的行動であるということを論じる。