著者
斎藤 博 向井 茂 寺西 鎮男 谷川 好男 藤原 一宏 浪川 幸彦 内藤 久資 齋藤 博
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1996

1.Alexeev,Sankaran教授を招いて1997年5月に名古屋大学においてモジュライ多様体の研究集会を開催し、アーベル曲面のモジュライに対する結果を発表するとともに一般次元主偏極の場合のトーリックコンパクト化について議論した.また、6月の数理解析研究所でもう一度会って、理解を深めることができた.この方面では(1、5)型と(1、4)型の場合に標準レベル付偏極アーベル曲面のモジュライ空間と対応する正多面体多様体の間の双有理写像を具体的に構成した.対数多様体の概念を使うと見通し良くなることと可積分系との関係がこの研究で得られた新しい知見である.2.夏からは研究計画3)の幾何学的不変式論に本格的に取組み1997年12月にはMumfordのものとは違ってlinearizationの取り方によらない商多様体の構成を発見した.これについては具体的な例でその有効性を検証中である.また、幾何学的不変式論の基礎を検証し、不変式環の有限生成性や簡約代数群の線型簡約性の証明を簡素化することができた.3.1996年度より続いている3次超曲面の周期写像の研究では幾何学的不変式論で得られるモジュライ空間と対称空間の数論的商を比較し、モジュライ空間としてふさわしいコンパクト化の候補を見つけた.これは本来問題としていたK3曲面のモジュライ空間のコンパクト化についても示唆を与えている.次数の低い場合に安定K3曲面の候補を色々実験している.
著者
剣持 直哉
出版者
宮崎大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

タンパク質をコードしていないRNA (ncRNA)が多数発見され、生体システムにおける重要性が明らかになりつつある。一方、これらのRNAは通常種々の修飾を受けているが、その意義は全く不明である。RNA修飾と自己免疫疾患との関連を明らかにするために、本年度は、SLE患者で自己抗原となるrRNAに対する人工抗体の作製を行うとともに、ゼブラフィッシュにおいてRNA修飾に働く核小体の低分子RNA(snoRNA)の機能を阻害し、生体におけるRNA修飾の役割を検討した。1. 人工抗体ライブラリーを用いた抗RNA抗体の作製ファージディスプレイ型の人工抗体ライブラリーから、28SrRNAの自己抗体結合部位を認識する抗体クローンを8種類単離した。得られた人工抗体のrRNAに対する特異性はELISA法にて確認した。抗体クローンの塩基配列を決定しデータベースを解析した結果、新規の抗体であることが明らかになった。2. ゼブラフィッシュにおけるsnoRNAの機能阻害とRNA修飾snoRNAは通常イントロンにコードされている。そこで、U22、U26、U44、U78の各snoRNAについて、ゼブラフィッシュにおいてこれらsnoRNAがコードされているイントロンのスプライシングを阻害した。その結果、ゼブラフィッシュ胚に共通した表現型として、発育遅滞、頭部の形成不全、色素沈着の遅れなどが観察された。また、いずれも約1週間で致死となった。一方、U26のノックダウン胚から抽出したrRNAを用いて修飾の状態を質量分析計で調べたところ、U26が標的とする部位の修飾が低減していた。これらの結果より、ゼブラフィッシュの初期発生においてRNA修飾が重要な役割を果たしていることが初めて明らかになった。
著者
北 英紀 日向 秀樹 近藤 直樹
出版者
National Institute of Advanced Industrial Science and Technology
雑誌
Synthesiology (ISSN:18826229)
巻号頁・発行日
vol.1, no.3, pp.212-221, 2008
被引用文献数
3

製造効率を高め、環境負荷を少なくするには、1つの過程を起点として全体に広がる資源やエネルギーの消費と排出の過程を知ることが必要である。本稿では、まず、アルミニウム溶湯中で使用されるヒーターチューブを鉄とセラミックスで作製した場合のエクセルギー解析とその比較を行い、次にアルミニウム鋳造の全工程についてのエクセルギー解析を行った。これらの結果から資源とエネルギーを有効に利用するための鋳造プロセスにおける合理化指針を得た。
著者
高塚 直能 長瀬 清
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、乳がん手術の待機期間に影響する要因について検討した。病期分類3の場合、病期分類0、1 、2に比べて待機期間の最大値が短く、我が国では重症例に対し先延ばしにしないという傾向を示唆するものであった。ただし、多変量解析では病期について有意な係数は得られなかった。また待ち行列理論の適用しモデル化を試みたが、流入率が流出率を上回ることがあり、流入率が流出率を上回らないとする理論から逸脱するため、適用は断念した。
著者
内田 直
出版者
早稲田大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

A.運動をするとよく眠れるようになる、B.運動をすると気分がスッキリする、という経験的によく知られている事実についての科学的根拠を明らかにすることが本研究の目的である。成果の一つは研究のポイントが非常に明確になったことである。即ち(運動の種類[有酸素,無酸素],運動の強度,運動する時間帯[朝,昼,夕方,就寝前])の全て組み合わせについて比較検討する必要がある。また運動強度が強すぎるとストレスによる効果で,睡眠に対して悪い効果がある可能性も考えられる。さらに、それらの効果は、脳は睡眠段階判定だけでは十分に明らかにできない可能性がある。これらを検証は非常に長い研究期間を要する課題であることが明らかになった。本研究で行ったことは1.5km自己ペース走後の睡眠の変化、2.睡眠直前の高強度無酸素運動による睡眠への影響、3.早朝の一過性有酸素運動の前頭葉機能に対する影響、の3つである。1.においては、若年成人を対象としたが,午後の昼寝を間に挟むことにより夜間睡眠の質を劣化させる工夫を行った。また、昼寝と夜間睡眠の間に5km走行を入れた条件により,その後の睡眠に対する影響を調べた。また、判定にコンピュータによる周波数分析を行った。その結果,視察判定では睡眠の変化を確認できなかったが,周波数分析により徐波周波数帯域の増加が確認された。2.では、高強度無酸素運動の睡眠への悪影響について予想したが,睡眠変数に変化はなかった。しかしながら、睡眠前半の有意な体温上昇、心拍数の上昇などがみとめられ、睡眠変数だけでなく身体的生理学指標を同時に用いることにより、有意な睡眠の変化が認められることが明らかになった。3.については、睡眠への影響でなく前頭葉機能に対する影響をみたが、一過性の前頭葉機能改善が認められるに留まった。
著者
井戸 由美子 牧野 純子 奥嶋 涼子 堤 重年 堺 俊明
出版者
藍野大学
雑誌
Aino journal (ISSN:1348480X)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.29-33, 2002
被引用文献数
1

デイケア施設通所者に見られる生活習慣病の発生要因を調べるために,新阿武山病院のデイケア施設に通所中の分裂病患者(デイケア群)54名と,精神科慢性疾患治療病棟に入院中の分裂病患者59名を対象に身体的調査項目(身長,体重,肥満指数,血圧),血液生化学的調査項目(中性脂肪,総コレステロール,血糖値),生活習慣(運動量,食べ物・飲み物量,居住形態)について比較した。その結果,入院群に比べてデイケア群に体重,肥満指数,血圧,中性脂肪,総コレステロール,血糖値に異常値が高く見られた。その原因として,入院群は三食とも病院食を食べており,またおやつなどもある程度管理され制限されているのに対し,デイケア群では清涼飲料水,ファーストフードなどを多くとっていた。さらに女性群に比べ男性群に高い異常値が見られたことは,男性群の食生活は女性群に比べ正しく管理されていなかったためと考えられる。今後食生活の改善についての教育が必要と考えられる。
著者
渡部 泰明
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

中世和歌の形成に多大の功績を果たした歌人藤原俊成に対し、その撰集『千載和歌集』の配列構成に新知見をもたらし、またその歌論上の主著『古来風躰抄』の注釈を、最新の成果を盛り込みつつ完成させ、また源実朝・頓阿・宗祇(古今伝授)など、中世和歌の重要歌人・課題について、新たな視点を提示した。いずれも、従来の研究史において不足していた、和歌史的な視座のもとに新たに位置付け直す点に特徴がある。
著者
古和田 孝之 吉川 隆敏 山本 英人 堀井 洋
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.48, pp.271-272, 1994-03-07

近年、手書き文字認識の研究が進められ、商品化が盛んに行われている。しかし、不特定多数のユーザを対象にしたシステムの場合、文字データなどのパターン情報だけで高認識率を達成するのは困難である。それを解決する方策として、言語情報を用いた認識後処理技術が必要となる。現在の手書き入力システムの使用シーンを考えると、一般文書の入力よりも、住所、氏名、会社名、商品名など、記入すべき文字列の属性があらかじめ決まっているような形式の入力が主流で、また通常このような入力形式では、一般文書の入力よりも高い認識精度が要求される。このような状況を踏まえ、住所、氏名のように入力属性が限定されている場合の後処理手法の開発を行った。本報告では、その中から、名前に対する認識後処理として、姓名辞書と単漢字辞書を利用し、フリガナ連動処理と単漢字処理を行う手法について述べる。
著者
樋口 聡
出版者
美学会
雑誌
美學 (ISSN:05200962)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.1-13, 2004-09-30

The question of whether or not sport is art has been discussed by many scholars of the philosophy of sport. Taking this discussion into account, we now know that a simple conclusion regarding sport as art is not adequate, because it is clear that there is a politics of culture concerning sport and art behind the discussion. In this paper, the author summarizes this broader, background discussion as the context for critically reviewing Wolfgang Welsch's paper "Sport-Viewed Aesthetically, and Even as Art?" (XIVth International Congress of Aesthetics, 1998). Specifically Welsch considers modern sport as an example of today's aestheticization of the everyday, and regards sport as art. An important matter we should pay attention to in Welsch's paper is that he proposes two different concepts of art, that is: "art-art" and "sport-art." Welsch's strong point is that he clarifies the ambiguity of the contemporary concept of art and suggests a broad extension of the notion of art beyond the traditional concept of art through the discussion of the relationship between sport and art. Welsch's discussion is based on his idea of "recurrence" to the original meaning of aesthetics, aisthetis.
著者
寺崎 正則 清野 和司 山城 さつき
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.41, pp.208-209, 1990-09-04

光学的文字認識装置(OCR)における知識処理(後処理)の役割は文字認識により得られる候補文字の集合(以後、候補マトリクスと呼ぶ)を知識データベースを用いて照合し誤読やリジェクトを適応的に自動修正することである。文字認識が一文字毎を対象とし認識するのに対し、知識処理は候補マトリクスの各文字のつながりを対象とし、データベースを用いて探索し、記入された単語を裏付けるものであり、実用に耐える商用機の一役として必要不可欠な存在である。しかし、これまでの知識処理は一般に記入データに区切り(ブランクやスペース)を必要とすることや、姓名フィールドに記入される単語は姓名のみ(法人名不可)の制限事項などがあり、読み込まれた帳票の記入形式に適宜、対応した本格的な処理は未だ開発されていない状況である。本稿では、従来の記入制限をはるかに緩和したフリガナ付き手書き漢字姓名文字列(法人名含む)に対するフレキシブルかつ有効な知識処理の方法と、その評価実験結果を報告する。
著者
原口 強 岡村 眞 露口 耕治
出版者
一般社団法人日本応用地質学会
雑誌
応用地質 (ISSN:02867737)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.51-61, 1995-04-10
参考文献数
4
被引用文献数
3 2

1995年1月17日発生した兵庫県南部地震は、神戸市を中心に死者5千人を超える大災害を引き起こした。この地震に伴う地震断層(写真-1〜9)が、淡路島北淡町の既知の野島断層^1)^2)沿いの地表部において確認された。筆者らは、19日に現地調査、翌20日に地震断層沿いの空中写真撮影(S=1:4、000)を実施した。その後空中写真判読と図化、さらにこの結果をもとに追加の現地調査を行った。本報告は、野島地震断層の記載と断層沿いの被災状況、特に変位に伴う構造物の被災の一部について速報として報告するものである。なお、断層沿いに斜面崩壊や地すべりが発生しているが、本報告では触れない。本報告では、今回生じた地震断層を既往文献^1)^2)に示されている野島断層と区別して、「野島地震断層」と称することにする。
著者
笛木 賢治
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

I.目的本研究では咀嚼機能の観点からみた片側性遊離端義歯の人工歯部歯列の近遠心径についての臨床的示唆を得ることを目的としている.初年度は実験的に下顎の片側性遊離端義歯を対象にして人工歯部歯列の近遠心径を変化させた時にこれが咀嚼の混合能力に及ぼす影響を検討し第二大臼歯を半歯に短縮しても咀嚼の混合能力は低下しないことを明らかにした.そこで平成15年度は,上顎の片側遊離端欠損の症例で検討を行った.II.方法被験者は上顎第一、第二大臼歯の遊離端欠損を有しかつ対合には天然歯もしくは固定性の補綴装置が装着されている患者8名(男性2名,女性4名,平均年齢61.5歳)を選択した.実験義歯は片側性の設計で白金加金を用いてワンピースキャストで製作した.上顎第二小臼歯に近心レストとバックアクションクラスプ,上顎犬歯および第一小臼歯にエンブレジャーフックを設置した.人工歯部歯列の頬舌径は顎堤頂を中心軸として幅を7mmとし,光重合レジンを用いて口腔内で直接製作した.人工歯部歯列の近遠心径は以下の3種類に変化させた.Aは欠損部に隣接する上顎第二小臼歯の遠心面から対合の下顎第二大臼歯の遠心面(平均18.2mm)までとした.順次近遠心径を13,9mmとし,それぞれB, Cとした.咀嚼機能の評価は当教室で開発した混合能力試験で行い,被験試料を義歯装着側で10回咀嚼させ混合値(MAI)を算出した.3回試行しその平均値を各歯列の代表値とした.各歯列間の比較はTukey法により有意水準5%で行った.III.結果とまとめ歯列の近遠心径がAとBの間には,混合値に有意な差は認められなかったが,AとCおよびBとCの間には有意差が認められた.この結果から,人工歯部歯列の近遠心径を13mmより短くなると混合能力が減少すると考えられた.このことから,下顎と同様に上顎の片側性遊離端義歯においても第二大臼歯を半歯に短縮しても咀嚼機能が低下しないことが示唆された.
著者
辻井 正人
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究では典型的なカオス的挙動を示す連続力学系(アノソフ流、特に負曲率空間における自由粒子の運動を記述する測地流)に対して、付随する転送作用素のスペクトルを分析することで軌道の統計的性質を精密に分析する方法を研究した.最大の研究成果は負曲率多様体上の測地流(またはより一般の接触アノソフ流)に対し、転送作用素の生成作用素が離散的なスペクトルを持ち、それらが複素平面上の幾つかの虚軸に平行な帯状領域に含まれるという事実を示したことである.加えて、力学系のゼータ関数についても対応する結果を得た.これは従来の関係分野の研究を大きく前進させるものである.
著者
服部 浩一
出版者
東京大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2011

本研究では、各種生殖細胞系列の分化成熟過程におけるマトリックスメタロプロテナーゼ(MMP)、血液線維素溶解系(線溶系)に代表されるセリンプロテアーゼ等の各種プロテアーゼ活性の意義及び重要性を理解し、生殖細胞動態制御機構の解明を主目的としている。代表者らは、各種MMP及び線溶系因子プラスミノーゲン(Plg)の遺伝子欠損マウスで、有意な妊娠、出産率の低下を認め、特に後者群について、精巣中の精子数に有意な減少、さらに精巣重量の低下を見出した。代表者らは、この原因として、今年度迄の研究を通じ、Plgの遺伝子欠損マウスでは、テストステロン及び下垂体ホルモン(LH)の分泌に障害があることを見出した。また、Plg遺伝子欠損雄性マウスでは、こうしたステロイドホルモンの分泌障害に基づくと考えられる貧血を呈していること、テストステロン分泌の主体と考えられる精巣中のライディッヒ細胞が有意に減少していることも明らかとなった。加えて各種MMP及びPlgの遺伝子欠損マウスでは、生理学的ストレス刺激時の雄性生殖細胞の分化増殖因子Kit-ligandの細胞外ドメイン分泌に有意な障害のあることが判明しており、これらの各種プロテアーゼ活性が、生体内の生殖細胞系列の分化調節に様々な角度から関与していることが確かめられた。また代表者らは今年度の研究で、各種プロテアーゼ遺伝子欠損マウスについて停留精巣モデルを作製し、精巣重量を経時的に測定したところ、これらの野生型と比較して有意な重量減少と、これに応じた精巣の組織傷害が進むことが判明した。またこの時、遺伝子欠損マウスでは、血中のKit-ligand濃度の上昇が抑制されていること、さらに野生型において、Plgアクチベータの投与が精巣重量の減少を有意に阻害したこと等から、各種プロテアーゼ活性は雄性生殖細胞の分化増殖に寄与し、その再生にも関与していることが示唆された。
著者
大鍋 寿一 田内 雅規 久保 純一
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
福祉工学シンポジウム講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2003, no.3, pp.229-232, 2003-11-07

第26回RESNA国際会議は米国アトランタにおいて6月19日から6月23日まで開催された。本国際会議でアメリカ政府の福祉政策責任者であるDr. Margaret J Gianniniがアメリカの福祉政策に関して基調講演された。その中で新自由イニシアティブ"New Freedom Initiative"の紹介, 福祉工学, アクセシビリテイ, ユニバーサルデザインの必要性を強調された。本会議で紹介された車いす装備サービス・マニュピュレータ(Manuas), 遠隔操作介護ロボット, 仮想現実感ロボット/可視手術機器, シート, クッションなど移動福祉機器ならびに, 視覚障害及び聴覚障害など感覚系障害に関する企業や機関からの出展について報告する。
著者
鈴木 雅一
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.70, no.6, pp.261-268, 1988-06-01
被引用文献数
11

山地流域からの流出に与える森林の影響を評価するために, 流況曲線を用いて流況を定量的に比較する流況解析法を提案した。この解析法は, 安定した水利用の水準を示す指標として, 水不足量W_d, 水不足率W_d^*を流況曲線より定義し, 新たに導入された目標利水率α, 無次元貯水容量S_M^*に対する水不足率W_d^*のふるまいを調べるものである。桐生試験地, 竜の口山試験地, 油日の森林流域とゴルフ場芝地流域の流出記録にこの流況解析を適用し, 森林流域の流況安定と蒸発散量の関係について検討した。安定した水利用のために, 大容量貯水池と蒸発散抑制で対処する方策と, 降雨流出過程の出水遅延による流況の一様化で対処する方策がある。目標利水率αが大きく集約的な水利用をはかるとき前者の方策が, αが小さい領域では後者の方策が有効である。