著者
長谷川 公一 吉原 直樹
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

平成9・10年度は、おもに地球温暖化問題、エネルギー問題への取り組み、とくにCOP3以降の、環境NGOおよび地方自治体の役割を中心に、主要政令指定都市で調査を行った。ただしゴミ問題やリサイクル問題などと比較して、自治体とNGOのコラボレーション(対等な協働関係)の本格的な展開は今後の課題である。生協のような消費者団体、とくに生活クラブ北海道が中心となって1999年度から電気料金の5%相当分をグリーン料金として拠出しあい、その資金を風力発電事業に投資しようとする「グリーン電力料金」の運動は、消費者として電力会社および自治体に対して「意思表示」を行い、電力多消費的な自分たち自身のライフスタイルを見直し、節電の経済的動機づけをはかろうという新しいスタイルの運動として注目される。平成11年度は、主に東北・北海道の町村レベルでの風力発電、バイオマスなど再生可能エネルギー開発を中山間地域での地域おこしと結びつけようとする先進的な取り組みについて関係者への聴取調査、資料収集を行った。原子力開発のメッカだった東海村では、99年9月のJCO臨界事故を契機に、行政・住民の原子力に関する不安感、国や県の原子力行政に関する不信感が高まっており、人口1万人規模の東北の中山間地域の内発的な地域おこしをモデルとした地域づくりへの転換が模索されている。以上をもとに環境問題における市民的公共性の新しい担い手として、環境NGOを位置づけなおし、その新しい存在意義を考察し、論文にまとめた
著者
村石 幸正
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.154-159, 1995
被引用文献数
4

「(原爆被爆者の子孫を含め)放射線被ばくによってヒトに統計的に有意な数の遺伝的影響が誘発されるという証拠は得られていない。」という文章との出会いをきっかけに,もっと放射線に対する正しい認識と知識を持つ必要がある考えるようになった。そこで,放射線の影響なども含めた「放射線を正しく知る」ことを目標とした「放射線の学習」という単元を設定し,実践を行った。
著者
大村 道明
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究では当初、2005年度までに開発した地域資源マッチング支援ソフトウエアを農業地域向けに再構築し、これに経済評価・環境評価の機能を盛り込んで実在の地域でのテスト運用を目指した。再構築は完了したが、経済・環境評価機能を付加することが難しいことがわかった。この点は残された課題となったが、異業種間連携、都市・農村の情報流通支援ツールとしての「Webエコミュゼ」の基礎部分が開発できた。
著者
小倉 振一郎 佐藤 衆介 田中 繁史 菅原 英俊 松本 伸 阿部 國博 清水 俊郎 小寺 文
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.153-159, 2008-07-15

近年、わが国の養蚕業の衰退にともない遊休桑園が急速に増加している。その対策の一つとして、肉用牛による桑園の放牧利用が注目されている。桑は草食家畜に対して高蛋白かつ高消化性であることに加え、生産力が高いことから、飼料資源としてきわめて有用である。また、牛放牧による遊休桑園利用は、省力的に荒廃地の植生管理ができるほか、未利用資源が家畜生産に貢献するというメリットがある。電気牧柵による小規模放牧方式の導入により、省力的にかつ低コストで桑園の畜産的利用が可能である。すでに福島県では、電気牧柵による黒毛和種の放牧とマクロシードペレットを組み合わせることにより遊休桑園を牧草地化できることを実証している。宮城県においては、気仙沼・本吉地域一帯が、かつて東北地方の中でも福島県阿武隈地域、宮城県丸森地域と並んで養蚕業が盛んな地域であったことが知られている。しかし近年、遊休桑園が急速に増加し、荒廃化が急速に進行しているため、その対策が喫緊の課題となっている。こうした背景から、地域環境の保全および農林業の活性化を図るため、2005年秋に同地域内の南三陸町の遊休桑園において、黒毛和種の放牧が開始された。桑園放牧の普及にあたっては、桑の生産性と化学成分、ならびに放牧牛の行動、健全性といった基礎的知見の集積が不可欠であるが、こうした知見はこれまでにほとんど得られていない。そこで、南三陸町の遊休桑園における桑葉の現存量および化学成分、ならびに放牧牛の行動と血液性状からみた健全性について実証試験を行ったので報告する。
著者
野口 幸生
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.376-381, 2005 (Released:2005-09-01)

自然災害,犯罪,テロ行為や戦争などが発生したとき,ライブラリアンやアーキビストはプロフェッショナルとしてその対応に参加することを求められる。したがってそのような事態が発生しないよう各機関で防災計画を準備していることはもとより,そのような事態が発生したとき,自然,人為にかかわらず,被害を最小限に食い止めるため,危機管理,その対応に準備万端であることは必定である。本稿では,ニューヨーク市に所在するコロンビア大学のメインキャンパスを背景にコロンビア大学図書館(Columbia University Libraries)の防災・危機管理計画について考察する。
著者
タイトラー イズミ
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.371-375, 2005 (Released:2005-09-01)
参考文献数
2

本稿ではオクスフォード大学図書館の緊急対策を紹介する。当大学にはボドリアン図書館をはじめとして大小さまざまな図書館が存在するが,近年大学の組織改革に伴ってこれら図書館の統合化が進み,2000年よりオクスフォード大学図書館サーヴィス(OULS)の名のもとに,大学組織の一部局として発足した。OULSの緊急対策は,最近再編成された資料保存保護担当部門(OULS CCC)の基盤業務のひとつとして,現在見直し・検討されている最中である。課題への対処の際の基本的姿勢・構想,また緊急対策プランに盛り込まれる項目の実際例を述べる。
著者
WEBER Jürgen 吉次 基宣
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.366-370, 2005 (Released:2005-09-01)
被引用文献数
1

アンナ・アマリア公爵夫人図書館の建物と収集品は,1998年以来ユネスコの世界文化遺産に登録されている。2004年9月2日のアンナ・アマリア公爵夫人図書館の大火は,第二次大戦後ドイツ最大の図書館火災であり,建物,美術品,書籍などに多大な被害をもたらした。このレポートでは,消火作業と書籍の救出の状況を説明し,被害を受けた図書の修復の準備状況について報告したい。
著者
小川 千代子
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.340-350, 2005 (Released:2005-09-01)

文書館,記録管理分野は,資料の確実な保管・保存を前提とした利用提供がその使命であり,業務の中核である。歴史資料を扱う文書館は外部利用者による所蔵資料利用のために資料の収集・保管・保存を行うのが業務であることから,阪神淡路大震災以後防災対策の必要性が強く意識された。そのため,文書館とその職員で構成する全国歴史資料保存利用機関連絡協議会が中心となり,防災対策のマニュアル開発が行われた。これに対し記録管理分野は少し様相が異なる。記録管理はあらゆる組織の日常業務そのものである。防災が記録管理の一部であることは知られているものの,防災対策そのものを個別に取り上げて記録管理分野のなかで議論されている様子は見られない。「阪神」以後に危機管理(リスクマネジメント)が叫ばれるようになった。意識としては,記録管理の防災は日常的なバックアップシステムなどを含め,リスクマネジメントに包含されたと見られている可能性がある。これとは別に,文書館に収蔵されていない非現用歴史資料については,災害発生後の災害対応として被災資料の救出は,主として利用者の立場にある大学の研究者らが「史料ネット」を組織するなどして行われている。この中から,災害復旧には生活インフラのみならず文化財救助も含めるべきであるとする考え方が生まれた。
著者
塚谷 恒雄 テイラー J.A. ニックス H.A. アルマベコビッチ U.R スルタンガジン U.S. 江崎 光男 今井 賢一 福嶌 義宏 石田 紀郎 溝端 佐登史 TAYLOR J.a. ALMABEKOVICH U.r. スルタンガジン U.M.
出版者
京都大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1993

1中緯度乾燥地域の地球規模汚染モデルの作成は,共同研究者であるカザフスタン共和国科学アカデミー宇宙研究所のスタッフによってまとめられた.これは旧ソ連で開発された組込原則による拮抗モデルを非平衡環境システムに応用したもので,アルマ-ティにおいてまずロシア語版で出版された.またバルハシ湖周辺を対照とした水文気象観測データを用いGISの構築にも基礎的結果を得た.バルハシ湖とアラル海の水質分析結果の公開はおそらく世界で初めてであろう.これは国際砂漠学会で発表され,以降各国学界から注目されている.またバルハシ湖については本分析結果を1960年代初頭のデータと比較し,乾燥地閉鎖湖の除塩機構に関し地球化学的変化の一端を示すことができた.2環境汚染による健康被害の疫学的調査は,カザフスタン側共同研究者の尽力によって,アラル海とシルダリア川沿岸の乾燥地域,アルマ-ティの工業地域およびセミパラチンスクの各実験地域について,おそらく世界最初に詳細な健康影響データが公表された.国際的な共感を呼んでいるアラルの悲劇はこの地方全体の文明,社会経済指標および住民の健康状態に重大な影響を与え,免疫ホメオスターシスの脱抑制,免疫病理反応を進行させている.B型ウイルス性肝炎の住民感染率は32.7%,HBs抗原の慢性キャリア率は19.1%にも達している.冷戦の遺産セミパラチンスク核実験場の周辺住民は,40年の長きにわたって合計50ラドから200ラドの放射線被爆を蒙った.放射線に起因する免疫変化は,腫瘍疾患,血液疾患,先天性異常,心・血管系疾患,感染症,その他の病理を含む一般罹患率の上昇を導いた.疾患分布と被爆線量との間には有意な相関関係が見いだされ,腫瘍疾患の増加には罹患率と死亡率上昇の位相性が認められた.この結果は日本文でKIERディスカッションペ-パ-にまとめられた.3セミパラチンスク核実験場の放射能評価は,カザフスタン側共同研究者の尽力によって国立核センターの協力のもとで進められた.まず昨年度採取したシャガン川人工ダム(1965年1月15日の半地下核実験による)周辺土壌の分析から^<237>Np/^<239,240>Pu比を割り出し,この実験が水素爆発ではなく通常のプルトニウム原爆によることを推測した.この結果を実験担当者等に確認したところ,当該核実験の詳細データの提供を受けた.加えて1949年8月29日から1962年12月1日の間にセミパラチンスク核実験場で行った地上実験(30回)空中実験(88回)の基礎情報の提供を受けた.これは前年度の実験影像の提供と同様,世界で初めて公表されたものであり,日本に対するカザフスタンの信頼が高いことを示している.この結果は英文でKIERディスカッションペ-パ-にまとめられ,国際原子力機関(IAEA)にも送られた.また再生計画に資するため,実験場内部と周辺居住地で土壌,植物,血液の資料採取を行った.ただし膨大な分析時間がかかるため,残念ながら本国際学術研究の期間内に完結することはできなかった.各担当者は早急に成果を取りまとめる努力をしている.4再生アセスメントの設計に関し,率直に言って,新独立国家群の経済再建は困難の極みにある.国民や組織,機関の願望や期待,あるいは欲求を達成できる社会経済システムが未熟であるためである.研究分担者らは学会発表や学術討論など機会あるごとに資源節約型の経済システム構築が中央アジア諸国の命運を決定し,それが環境保全につながることを強調してきた.これを一層推進するためには,科学的情報の受信発信の体制を整備することが急務であると共同研究者間で意見が一致し,本年度は科学アカデミーで蓄積された環境経済関連の成果の整備に取りかかり,合計3,000点の文献目録データベースを完成させた.この結果は英文でKIERディスカッションペ-パ-にまとめられた.この作業で,アラル海とバルハシ湖に関する旧ソ連科学アカデミー湖沼学研究所が地球化学,古生物学,鉱物学などの学際研究を蓄積していることが判明し,その結果は日本文でKIERディスカッションペ-パ-にまとめられた.
著者
高石 孟 沼田 宗純 目黒 公郎
出版者
Institute of Industrial Science The University of Tokyo
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.363-366, 2010

2010年2月27日,現地時間3時34分,南米チリ沖に発生した地震(Mw8.8)により津波が発生し,チリをはじめとして世界各国で被害が発生した.わが国もこの津波に対し,大津波警報を出し警戒したが,その背景には,1960年チリ沖地震(Mw9.5)による津波が各地を襲い,大きな被害を被った過去の教訓がある.本報告では,神奈川県平塚沖の神奈川県波浪等観測塔(旧防災科学技術研究所波浪等観測塔)により観測された.2010年チリ地震による津波観測データの分析を行い,津波波形とスペクトル分析から波高約40cmの津波が2月28日15時頃に平塚沖に到達したことが確認できた.[本要旨はPDFには含まれない]
著者
原渕 保明
出版者
旭川医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

初めに,鼻性T細胞リンパ腫の細胞の起源を免疫遺伝子学的に解析した結果,本腫瘍の細胞起源としてはNK細胞またはNK様T細胞である可能性が示唆された.また,検索した全症例にクローナルなEBウイル遺伝子が認めたことから,EBウイルスは本疾患の発症に深く関与していることが示唆された(Cancer77:2137-2149,1996).次に鼻性T細胞リンパ腫含む頭頚部悪性リンパ腫について腫瘍組織における細胞接着分子の発現と患者血清中の可溶性細胞接着分子の測定した.その結果,鼻性T細胞リンパ腫の血管内浸潤部位(angiocentric region)ではICAM-1の極めて強い発現が認められた.鼻性T細胞リンパ腫では他の頭頸部悪性リンパ腫に比較して血清中の可溶性ICAM-1が有意に高値を示していた(Ann Otol Rhinol Laryngol 105:634-642,1996).また,ワルダイエル扁桃輪原発悪性リンパ腫について臨床的解析を行った結果,T細胞リンパ腫はB細胞リンパ腫に比較して予後が非常に不良であることが統計学的に証明された(Acta Oncologica 36:413-420,1997).頭頚部原発の上皮系悪性腫瘍については中国医科大学と共同研究を行ったところ,頭頸部悪性腫瘍におけるEBウイルスの関連性には組織型や原発部位だけでなく,人種や地域性によって異なる可能性が示唆された.また,上咽頭癌ではEBウイルス遺伝子・発癌抗原の発現形態,癌遺伝子,癌抑制遺伝子の発現形態,およ臨床像との関連性が認められた(第10回日本口腔・咽頭科学会,1997;第15回日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会.,1997;第22回日本頭頸部腫瘍学会,1998).最後に,鼻副鼻腔原発の悪性リンパ腫におけるEBウイルスの検出と細胞型,病理組織型および臨床像との関連性について検討した結果,細胞型または組織型およびEBVの有無による完全緩解率や生存率の有意な変化は認めないが,著明な浸潤破壊性病変を有した例では予後が極めて不良であることが証明された(2nd Asian Research Symposium in Rhinology.Seoul,Korea,November1,1997).
著者
丹後 俊郎 山岡 和枝 緒方 裕光 池口 孝
出版者
国立保健医療科学院
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

「ごみ焼却施設からの距離」をダイオキシン類への曝露の主要な代替変数としたごみ焼却施設周辺の疾病の超過リスクの検出に関して、本研究では、(1)焼却施設の位置を既知としてその周辺の超過リスクを検出する方法(Focused test)と、(2)焼却施設の位置を未知として、超過リスクが生じている「場所とその周辺」を特定する方法(Global test)を検討してきた。前者については、すでにStatistics in Medicine(2002)に報告し、かつ、周辺地域のがん死亡率の経年的変化に基づく新しい健康影響評価のための方法を、施設からの方角など距離以外の要因も考慮に入れた柔軟な統計モデルを英国王立統計学会主催の国際統計学会(2002)で発表(招待講演)した。後者の方法については、Connecticut大学の生物統計学科Kulldorff助教授との共同研究により,昨年度までに提案した方法と他の方法,Kulldorffのspatial scan statisticとBonetti-Pagano's M statisticsとの検出力の総合的な比較を行い、その結果はComputational Statistics and Data Analysis(2003)に掲載された。本研究で検討した統計モデルの応用として,ごみ焼却施設周辺の乳児死亡への影響の解析に適用するとともに、ごみ焼却施設とは異なるものの単一汚染源への応用例として、原子力発電所周辺の周産期死亡データの解析例を示し、その応用可能性を検討した。
著者
永田 裕保 山本 照子 岩崎 万喜子 反橋 由佳 田中 栄二 川上 正良 高田 健治 作田 守
出版者
日本矯正歯科学会
雑誌
日本矯正歯科学会雑誌 (ISSN:0021454X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.598-605, 1994-10
被引用文献数
19

1978年4月から1992年3月までの過去15年間に大阪大学歯学部附属病院矯正科で治療を開始した, 口唇裂口蓋裂を除く矯正患者4, 628名(男子1, 622名, 女子3, 006名)を対象とし, 統計的観察を行い以下の結果を得た.1.大部分の患者は半径20 km以内から来院しており, 大阪府下居住者であった.2.男女比は男子 : 女子=1 : 1.9であり年度による大きな変動はなかったが, 9歳以降年齢が高くなるにつれて女子の割合が上昇した.3.治療開始時の年齢は7&acd;12歳が大半を占めた.近年13歳以上の割合が増加を示した.咬合発育段階では, IIIB期が最も多かった.4.各種不正咬合の分布状態は, 男子では反対咬合の割合が最も高かった.一方, 女子では, 叢生の割合が最も高かった.男女ともに年々反対咬合の割合が低下し, 叢生の割合が上昇した.5.Angle分類については, 男女ともにAngle I級が最も多く, 骨格性分類では, 男子で骨格性3級, 女子で骨格性1級が最も多かった.咬合発育段階別の骨格性分類では, 骨格性2級はIIC期からIIIA期にかけて増加を示し, 骨格性3級はIIC期とIVC期に多かった.IIIC期からIVC期におけるAngleの分類と骨格性分類との関係について, 男女ともAngle I級では骨格性1級, Angle II級では骨格性2級, Angle III級では骨格性3級が多く認められた.
著者
島村 英紀 SELLEVOLL Ma EINARSSON Pa STEFANSSON R 末広 潔 金沢 敏彦 塩原 肇 RAGNAR Stefansson MARKVARD Sellevoll PALL Einarsson MARKVARD Sel PALL Einarss RAGNAR Stefa 岩崎 貴哉
出版者
北海道大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1990

大西洋中央海嶺は、いまプレ-トが生まれている場所である。アイスランドは、その海底山脈がたまたま島になったところである。海嶺については、いままで精密に地下構造が調べられたり、地震活動が詳しく調べられたことはなかった。たとえば地震活動については、何千キロメ-トルも離れた陸から中央海嶺に起きる地震を研究するのが唯一の手段だった。一方、日本の海底地震計は小型軽量で高感度に作られており、数十台という多数の海底地震計を投入する結果得られる、従来よりもはるかに精密な微小地震活動の研究と、精密な三次元地下構造の透視など、地下構造の研究についても、他国をリ-ドしている。このように中央海嶺付近は、その地球科学的な重要性にもかかわらず、いまだ、精密な観測のメスがはいっていなかった。今回の研究は中央海嶺上にあるアイスランドという希有な場を足がかりにして、世界でも初めて成功裏に行われた海底地震研究である。大量のデ-タが得られたために現在まだ解析が続いているが、画期的な成果が得られつつある。具体的には1990、1991の両年とも日本から約20台という大量の海底地震計を運び、アイスランド近海で高感度の海底地震群列観測を行った。同時にアイスランド陸上には臨時に十数点の高感度地震観測点を設置して海と陸、双方から地震を追った。1990年夏には、アイスランドから南西に伸びるレイキャヌス海嶺で長さ150キロ、幅40キロにわたる海域に18台の海底地震計を展開した。観測にはアイスランド気象庁とレイキャビック大学の全面的な協力が得られ、また海底地震計の設置と回収にはアイスランド側の全面的な協力を得て、同国の海上保安庁の船が借りられた。また設置した海底地震計の近くでは、同国のトロ-ル漁業を一カ月の観測期間中、遠慮してもらった。このため海底地震計すべてを順調に回収出来た。この観測の結果、微小地震は海嶺軸に沿ってだけ分布しており、その幅はわずか5キロメ-トル以下であることが分かった。海嶺の両側では全く地震は発生していないことも分かった。そして微小地震は海嶺軸に沿って一様に分布しているのではなく、地震活動の高いところと低いところが発見され、しかも過去の海底火山地震活動との関連が明らかになった。一方、微小地震の震源の深さは、海嶺軸から鉛直下方に伸びているのが分かり、しかもその深さは地下12キロメ-トルまで伸びていることが分かった。従行、海嶺軸下でプレ-トを生むマグマ活動がどのくらいの「根」の深さを持っているかはナゾであり、漠然と2、3キロメ-トルに違いないと考えられていたが、今回の研究によって、海嶺の「根」はずっと深いことが初めて明らかにされたことになる。また一カ月の地震観測期間中、二度にわたって群発地震が捉えられ、そのいずれもがごく細い煙突状の筒の中を震源が移動したことも確かめられた。このような海嶺の群発地震の詳細が捉えられたのも世界で初めてである。1991年にはアイスランドの反対側、北側で海底地震観測を行った。この海域は新しいプレ-トを生んでいる大西洋中央海嶺が、複雑で百キロメ-トル以上もの幅にひろがったトランスフォ-ム断層をなしているところで、世界的にも地球科学の大きなナゾを残している場所である。このアイスランド北側から北大西洋にかけての大西洋中央海嶺で21台の海底地震計と約15台の陸上地震観測点が連携した微小地震観測に成功した。全ての地震計は無事に回収された。また、地下構造を研究するための人工地震実験も行って、従来ナゾだった地下構造を調査した。デ-タは現在、解析中である。この両年度の研究で、従来の地震観測では把握することのできなかったアイスランド周辺の大西洋中央海嶺で何百個という微小地震を捉えることが出来て、地震活動がはじめて精密に分かり、また未解明だった地下構造が知られた。捉えた地震のマグニチュ-ドは1とか2とかの微小地震である。また、アイスランドの南北で明瞭に違う大西洋中央海嶺のそれぞれの活動について、世界でも初めての詳細な知見を得ることが出来た。
著者
岩井 芳夫 下山 裕介
出版者
九州大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

超臨界二酸化炭素+エタノール系の電流-電圧特性を系統的に測定した。測定には縦4mm、横4mmの銅製電極を用い、電極間を2mmで測定した。温度308、318K、圧力8.0〜20MPa、エタノールの濃度を0〜2.63mol/Lに変え、直流電圧を0〜5000V印加して電流値を測定した。その結果、一定の印加電圧では温度が高いほど、圧力が低いほど、またエタノール濃度が高いほど電流値が高くなることがわかった。これにより、電流のキャリアはエタノール分子であり、二酸化炭素分子は電流を妨げるように働くと推察された。すなわち、温度が高く、圧力が低くなると電流を妨げる二酸化炭素の密度が減少して電流値が上がり、エタノールの濃度が増加すると電流のキャリアであるエタノール分子の密度が増加して電流値が上がると推察された。電極間に麻糸をたらし、超臨界二酸化炭素+エタノール系308K、8.0MPaにおいて5000Vの直流電圧を印加したところ、麻糸は正極のほうに傾いた。超臨界二酸化炭素のみのときは同様の実験をしても麻糸は動かなかったことより、超臨界二酸化炭素+エタノール系に直流電圧を印加すると流動が発生することが確認できた。ナフタレンをエタノールに溶解させた試料を容器の底に入れ、超臨界二酸化炭素で加圧して308K、8MPaにした。また、容器の底にはあらかじめ電極を挿入した。そして、容器上部のナフタレン濃度を紫外分光器で測定した.電圧を印加しない場合は30分経過しても容器の上部にはナフタレンは検出されなかった。次に、同じ実験条件で徐々に直流電圧を印加したところ、1000V印加した20分後から容器の上部にナフタレンが検出されるようになった。これにより、超臨界二酸化炭素+エタノール系に直流電圧を印加すると系内が撹絆されることが確認された。
著者
仙波 浩雅 岡部 永年 山地 徹 沖田 圭介 山内 清 松本 賢哉
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 A編 (ISSN:03875008)
巻号頁・発行日
vol.71, no.709, pp.1234-1242, 2005
被引用文献数
1

This paper deals with the bulge process for forming the single-stage bellows of TiNi shape memory alloys, which is proposed as a new type of seismic applications, and especially considering the material's special behavior. Thin walled tubes with 20% cold work, whose composition is Ti51.0 at% Ni, were prepared. First they are appropriately heat-treated and then the rubber bulge process is introduced for the tubes under the condition of austenite phase at room temperature. Displacement control method is adapted to the process. Theoretical prediction of change in outer diameter of the tube on compression is derived, and modified taking into account the progress of the stress-induced martensite transformation on tube's surface by observing the detachment of the oxide layer of the surface. Finally theoretical relationship between compressive displacement and the outer diameter of the tube, which is the most inportant for the design of the bellows shape, is cleared.
著者
西川 雅史
出版者
青山学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

市町村の意志決定は、少なくとも住民による選挙(手による投票)と住民の移動(足による投票)とによって規律付けされていると考えられる。しかし、私たちの日常的感覚からすれば、こうした理論的前提を首肯し得ないことが多い。本研究プロジェクトでは、市町村データを用いて地方財政と地方議会選挙との関係を考察し、上記の前提の妥当性を疑う事実のいくつかを明らかにした。なお、あわせて「足による投票」の基礎的考察も行った。
著者
榎本 昭二 PODYMA KATARZYNA A. 柳下 正樹
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1999

本年度においては、昨年発表されたヘパラネース遺伝子のシークエンスをもとに、培養口腔癌細胞株および、患者から得られた口腔癌組織内におけるヘパラネースの発現について検索を行い、その転移能との相関についても調べた。さらに、研究計画どおり、培養扁平上皮癌細胞株におけるヘパラナーゼの活性とMMP2、9、MT-MMPの発現との相関も調べた。用いた培養細胞それぞれのヘパラネースmRNAの発現量は、活性レベルとほぼ相関していることがわかった。ヘパラナーゼの酵素活性を、定量PCR法を用いて、簡便に測定できることが示唆された。術前からリンパ節転移が存在した症例、原発が制御されても術後9ヶ月以内にリンパ節転移を確認した症例のなかでヘパラナーゼ陽性例数を見ると、前者には57.1%で陽性、また、後者では、100%陽性であった。また、発現レベルとともに転移率の上昇が見られた。以上より、ヘパラネースが、口腔癌において、リンパ節転移能と関連する重要なマーカーの1つになる可能性が期待できる。さらに、培養扁平上皮癌細胞株における、MMP2,MMP9,MT1-MMP,TIMP2の発現を定量し、そのヘパラネース活性とマトリジェルにおける浸潤能の相関についてしらべたところ、それぞれの細胞の浸潤能に対し、独立したMMPの発現レベルとヘパラネース活性を有しており、とくに大きな相関は見出されなかった。現在、昨年クローニングしたラットヘパラネースの抗体の精製を完了させ、また、in situハイブリダイゼーション法による、組織内のヘパラネース発現パターンを検索しており、マウス実験転移モデルと組み合わせて、がん転移機構における、ヘパラネースの機能の分析を続けていく予定である。
著者
武部 啓 巽 純子 宮越 順二 八木 孝司
出版者
京都大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1996

目的:DNA修復系には紫外線損傷などに働く修復系に加えて、大腸菌のmut遺伝子と相同のミスマッチ修復遺伝子による修復系のヒトにおける存在が確認されている。ヒトで、それが大腸菌同様に自然突然変異に限って働くのか、誘発突然変異にも関与しているのかを調べる、これらの結果を腫瘍の発達(大きさ、悪性度、時間経過など)およびこれまでにわかっているp53遺伝子の突然変異と対比させて、発がんにおけるDNA修復の役割と、それが多段階発がんのどの段階に主に働くかを明らかにしたい。研究成果:1.p53遺伝子の突然変異が皮膚における多段階発がんにおいて、他のがん関連遺伝子に比べより高頻度に関与していることが示された。それらはDNA修復が正常であるか、低下しているか(色素性乾皮症患者)、太陽光にさらされている部位か、そうではないか、などによる違いはみられず、DNA修復の影響を受けない本質的な変異と考えられる。DNA修復のうち、ミスマッチ修復は一般に自然突然変異に関与していると考えられる。ヒトのがんの中で、もっとも自然発がんの可能性の高い非露光部の悪性黒色腫について、ミスマッチ修復の欠損を反映するとみられるDNAエラー(RER)を調べた。原発がん部位では18.2%のRERがみつかったのに対し、転移部位では検出できなかった。これまでの報告にくらべ特に高くはないので、非露光部の悪性黒色腫が自然突然変異によることを確認することはできなかった。