著者
山下 光雄 室岡 義勝 小野 比佐好 林 誠 山下 光雄
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2003

マメ科植物と根粒菌との共生系を利用して、生物的窒素固定能に加えて重金属集積などの有用機能を付与し発現する共生工学基盤技術を構築し、環境浄化に応用する目的で下記の研究を行った1.共生工学基盤技術の開発:共生分子遺伝機構を解明するため、マメ科モデル植物のミヤコグサを用いて共生状態と非共生状態における遺伝子発現の違いをマクロアレー技術を用いて測定した。2.メタロチオネイン4量体遺伝子およびファイトケラチン合成酵素遺伝子の根粒バクテロイド内での発現:メタロチオネイン4量体遺伝子とアラビドプシスより分離したファイトケラチン合成遺伝子をベクターにつないでレンゲソウ根粒菌Mesorhizobium fuakuii subsp. rengeiに導入し、この組換え根粒菌をレンゲソウ種子に感染させ根粒を形成させた。インサイチュハイブリダイゼーションにより根粒バクテロイド内で両遺伝子が発現していることが観察された。3.根粒バクテロイドの輸送系の改変による植物組織への物質移動の試み:上記遺伝子を導入した組換え根粒菌は、野性株に比べて20倍のカドミウムの取り込みを示したが、この組換え菌をレンゲソウに接種して、根粒を形成させたところ、組換え根粒では野生型根粒の1.5-1.8倍のカドミウム蓄積にとどまった。これは根粒内への重金属取り込み能の不足と考えられた。そこで、金属イオンの膜透過に関与するシロイヌナズナのIRT1(iron-regulated transporter)遺伝子を取得し、上記組換え根粒菌株に組み込んだ。IRT1遺伝子を組み込んだ根粒菌はカドミウムを1.5倍近く取りこんだ。そこで、この組換え根粒菌をレンゲソウに感染させ、根粒を形成させた。4.創生レンゲソウの重金属集積能試験:B3:PCS(IRT1)を感染して根粒形成させたレンゲソウを、カドミウムを含む人工土壌で生育させ、植物組織各部位のカドミウム濃度を測定した。その結果、IRT1遺伝子発現によるカドミウム集積能には差が見られなかった。したがって、根粒内における根粒菌によるカドミウム集積の限定要因は、植物細胞によるものだと考えられた。5.土壌のファイトレメディエーション:稲田の土壌を用いて組換えレンゲソウを栽培して、カドミュウム浄化能を試験した。非組換え根粒菌を感染させたレンゲソウでは、汚染人工土壌中のカドミウム取り込み効率が約0.4%であったのに対して、MTL4およびAtPCSの2つの重金属結合遺伝子を組み込んだ根粒菌を感染させたレンゲソウは、同程度のカドミウムに汚染されたフィールド土壌中のカドミウムを約9%も吸収していた。
著者
東畑 郁生 Ghalandarzadeh Abbas Shahnazari Habib Masoud Mohajeri Ali Shafiee
出版者
東京大学地震研究所
雑誌
東京大学地震研究所彙報 (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.79, no.3, pp.69-80, 2004

Following the devastating earthquake disaster in Bam city, Iran, a reconnaissance team was sent to the site. The authors participated in its activities with special emphasis on geotechnical issues. A soil investigation in the city revealed that local soils have su$ciently good properties and cannot be the main source of heavy damage to houses. Because bridges and structures other than buildings experienced minor damage during the same earthquake, it seems that the structural weakness of houses made of masonry and adobe is a major problem. A possible mitigating measure may be to use light materials such as ESP, although consideration has to be given to the local climate and the landscape.
著者
山崎 晴雄 長岡 信治 山縣 耕太郎 須貝 清秀 植木 岳雪 水野 清秀
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

鮮新・更新世に噴出した火山灰層の対比・編年を通じて、日本各地の後期新生代堆積盆地の層序・編年を行った。これを利用して、関東平野や北陸地域、宮崎平野などの古地理変遷を明らかにした。また、洞爺火山や浅間火山などの活動史や地形変化を示した。これらにより以下の成果を得た。1.中央日本(大阪〜関東)において1.3Maの敷戸-イエロ-1テフラの存在確認を初めとして、4〜1Ma(百万年)の間に少なくとも12枚の広域指標テフラの層序及び分布を明らかにした。これにより、10〜50万年ほどの間隔で時間指標が設定でき、本州に分布する鮮新・更新世盆地堆積物編年の時間分解能や対比精度が著しく向上した。2.本研究で発見した坂井火山灰層(4.1Ma)は現在日本で知られている最古の広域テフラである。アルカリ岩質の細粒ガラス質火山灰で、その岩石記載学的特徴から同定対比が比較的容易であり、今後、日本列島の古環境復元に活用できる重要な指標テフラとなろう。3.関東平野の地下についてボーリングコア中の火山灰と房総半島や多摩丘陵に分布する火山灰の対比が進み、平野の地下構造、深谷断層-綾瀬川断層の活動史、テフラ降下時の古地理などが判明した。4.関東平野の地下構造とテフラ編年から、この地域の活断層の一部は15Maの日本海開裂時に形成された古い基盤構造が、1Ma以降の前〜中期更新世頃に新しい応力場で再活動を始めたものであることが明らかになった。5.北海道各地のテフラ情報が集積され、洞爺火山の活動史などが明らかになった。6.九州の火山活動史がとりまとめられると共に、テフラを用いて宮崎平野の地質層序、地形面の編年が詳細に調査され、鮮新・更新統の層序が明らかになった。7.テフラを利用して浅間火山の更新世活動史、泥流流下機構、周辺の地形発達との関係が明らかになった。8.本研究で改良した広域テフラを用いた地層の編年・対比技術はエチオピアの人類遺跡の調査・研究にも活用された。
著者
安部 力
出版者
岐阜大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

過重力環境下飼育によって引き起こされる摂食抑制の改善過重力(3G)環境下でラットを飼育すると摂食量の低下が見られ,この原因として,前庭系を介する酔いが考えられる。実際,前庭系を破壊したラットでは,摂食量低下の改善が見られた。今回,我々はセロトニンの5-HT2A受容体に注目した。5-HT2A受容体のアンタゴニストであるketanserinは,前庭器からの入力を受ける前庭神経核の神経活動を低下させる。そこで,ketanserinを慢性投与しながら過重力環境下で飼育し,摂食量の測定を行った。Ketanserinを投与したラットでは,前庭系を破壊したラットには及ぼないものの,有意な摂食量低下の抑制がみられた。このことから,過重力環境におけるラットの摂食量低下には前庭系が関与しており,その改善にketanserinが有効であることが示唆された。起立時の動脈血圧調節における前庭系の関与起立時には,血液が下方シフトし,静脈還流量・心拍出量が低下し,その結果動脈血圧の低下が生じる。この動脈血圧の低下は圧受容器反射により緩衝され,動脈血圧は維持される。また,姿勢変化時には前庭系に入力が入る。我々は,起立によって生じる動脈血圧低下の影響を小さくするために,前庭系がフィードフォワード的に働いているのではないかと仮説を立て,自由行動下ラットの起立時の動脈血圧を測定した。圧受容器および前庭系を破壊したラットでは,圧受容器だけを破壊したラットに比べ,起立時には有意な動脈血圧の低下が見られた。また麻酔下の実験では,前庭系が正常なラットではhead-up tilt時に交感神経活動が増加し動脈血圧の低下を防いでいることがわかった。このことから,姿勢変化時の動脈血圧の調節には,前庭系が関与していることがわかった。
著者
栗山 繁 大渕 竜太郎 青野 雅樹 持丸 正明
出版者
豊橋技術科学大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

人体の動作や形状を計測して大規模に蓄えられたデジタルデータ集合に対し、所望のデータを探し出す技術とそのデータを様々に役立てる再利用技術を開発した。動作データの探索に関しては世界最高の性能を達成し、規則の導出に基づく新たな探索機構も開発した。一方、形状データの探索に関しても特徴量の学習に基づく各種手法を開発し、世界最高クラスの性能を達成した。また、再利用技術を用いた種々のアプリケーションを開発した。
著者
内藤 真理子 庄子 幹郎
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

歯周病原菌であるポルフィロモナス ジンジバリス菌は我々の研究により菌株ごとにゲノム構造の多様性を持つことが明らかになった。本研究では転移因子の一つであるConjugative transposon (CTn)が実際に菌株間、だけでなく他の菌種の間で遺伝子を受け渡している事を明らかにした。この結果から、歯周病原菌は遺伝子情報のやり取りを通じて多様性と口腔内環境への適応性を獲得していると考えられる。
著者
佐藤 慎太郎
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.79, no.3, pp.701-722, 2005-12-30

本稿は宗教学の問い直し(「宗教学とはいかなる学問か」)の試みの一つとして、M・エリアーデの宗教学を考察の対象とするものである。特に彼はその研究における鍵概念として「聖なるもの」を置いており、この概念との関係からその視点を浮き彫りにすることを試みる。そこには近代西洋世界の救済への切迫した危機意識を看取できる。彼の宗教学においてはヒエロファニー論にしてもhomo religiosus概念であっても、最終的な帰結までもってゆけば、必ず近代西洋の問題に対してポジティブな可能性を開くものとして主張されていた。すなわち彼の宗教学には意味の次元の開示による、客観性や実証性という原理では取りこぼしてしまう、非聖化を迎えた近代西洋社会において果たしうる文化的役割がいわば確信犯的に強調されていることを確認する。
著者
中村 尚司 津田 守 広岡 博之 河村 能夫 鶴見 良行
出版者
龍谷大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1993

本年度は、2年目であるため報告書のまとめ方を念頭において、4回にわたる研究会を開催した。5月27日の第1回研究会では、津田守が「ピナトゥボ大噴火にともなう災害とルソン島中部の地域開発」について報告し、自然災害に対する救助活動の国際比較をまとめることにした。6月27日の第2回研究会では斉藤千宏「貧困・ニーズの充足・指標--80年以降の諸理論の比較検討」について報告した。あわせて中村尚司が「参加型農村開発の諸問題」を取り上げ、コロンボ大学との共同研究案を紹介した。第3回研究会は、9月8、9の両日に原グループと合同で福岡にて研究合宿を行った。川村能夫が「貧困概念とその指標について」、広岡博之が「社会経済指標の再検討について」報告した。10月17日に行なった第4回研究会では、斉藤千宏が「民衆科学運動と政府の相互作用--インド・ケララ州の事例--」、中村尚司が「海の交易と経済システム」について報告した。12月16日に、食道ガンの予後が思わしくなかった研究分担者の一人である鶴見良行が急逝し、共同研究を続けることができなくなった。まことに残念である。最終回の第5回研究会は、2月13日から15日まで長浜市において合宿し、報告書の執筆内容について各自が概要を報告し、その研究内容について討論した。この研究会の報告書は、鶴見の執筆を得られないものの、次年度の総括班の刊行物として印刷される予定である。
著者
三雲 健
出版者
日本自然災害学会
雑誌
自然災害科学 (ISSN:02866021)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.49-57, 2003-05-30

A large earthquake (Mw7.4) occurred on January 22, 2003 off the Pacific coast of the state of Colima, Mexico, which was felt strongly throughout the state and its adjacent regions. The hypocenter was located near the suggested boundary between the Rivera and Cocos plates both subducting beneath the North American plate, and close to the southeastern rim of the source region of the 1995 Colima-Jalisco earthquake (Mw8.O). From a centroid moment tensor (CMT) inversion of teleseismic waveforms, the 2003 earthquake has been shown to have a thrust fault shallowly dipping toward NNE. The ruptured source region estimated from the aftershock area with a radius of about 30 km extended over part of the seismic gap left unbroken between the source areas of the 1973 and 1995 previous large earthquakes, and overlapped the southeastern part of the 1932 and 1995 source regions. The earthquake has been recorded at various seismograph stations not only in Mexico but also worldwide. The maximum ground acceleration recorded at hard sites during this earthquake exceeded 100 gals in the epicentral region, and was 2-3 gals at inland stations 800 km away from the epicenter. The seismic intensity in the cities of Colima and Tecoman was reported to be VIII on the modified Mercali scale. The state of Colima and the adjacent states suffered extensive damage, including 15,000 damaged houses which were mostly unreinforced masonry and brick structures. Landslides and liquefactions were also reported near the epicentral region and along the coast.
著者
早渕 仁美 梅木 陽子 久野 真奈見
出版者
福岡女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

飲食物の内容と量から主食・主菜・副菜等の料理分類を行う方法と基準、食事摂取基準等指標との関係を明確にし、食事状況を栄養素・食品レベルだけでなく料理レベル、さらに料理の組合せである食事レベルで示し、食生活の質を総合的に評価するための、食物ベースの食事評価方法を確立することを目的とした。また、栄養士等専門家向けの定量的データ(食事摂取基準)と、一般向け定性的メッセージ(食生活指針)をつなぐ、半定量的な食事ガイドとして、食物ベースによる食事評価の科学的根拠に基づく教育ツールを開発し、栄養指導や食育活動に活用し、その妥当性と有効性について検討した。1.前回の科学研究費の研究成果であった「料理群分類方法」の妥当性を、データベースに基づいた系統的分析 によって明らかにした。2.食事状況を食物ベースで、視覚的にわかりやすく、的確に示す方法を提案し、その効果を検証した。3.食事評価に料理レベルのデータを用いることの意義を明らかにした。4.料理レベルで食物摂取の内容と量を簡便に把握する食事調査方法の検討を行った。5.自分の食習慣を簡便に把握し、食生活改善の動機づけに役立つシステムを開発した。6.料理を食事バランスガイドの基準で分類、サービング計算するシステムを開発した。7.食事記録調査データの栄養計算を行い、食物ベースで評価するシステムを試作した。8.上記開発した調査、評価手法を活用して、食事調査や栄養教育・食育活動行い、その妥当性と効果の検証を行った。
著者
井堀 宣子
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2004

テレビゲームに関する研究のメタ分析を2種類実施した.メタ分析は文献のレビューとは異なり,領域すべての研究を量的に統合することが可能な手法である.まず,テレビゲームと認知能力との関係を検討した研究についてのメタ分析についてだが,ここでは,テレビゲームが,空間認知,情報処理能力,創造性,論理性,学校成績,、言語能力などの認知能力にどのような影響をもたらしたかについて検討した研究を収集し,知見を統合することを目的とした.オンラインデータベース「PsycINFO」,「Science Direct」,、「ERIC」等を利用し,テレビゲーム(コンピュータゲームを含む)と認知能力に関するキーワードで文献を検索し,テレビゲームの使用を独立変数とし,認知能力の測定を従属変数とした研究を抽出した.このうち,メタ分析に必要な統計値が報告されていなかったり,理論的にメタ分析に使用できない統計値しか報告されていない研究は除外した.その結果,本研究で対象とした研究は,空間認知に関するものが研究,情報処理能力に関するものが2研究,学校成績に関するものが7研究,言語能力に関するものが4研究,数学的能力に関するものが3研究であった.各研究で報告されていた統計値を,メタ分析で扱う数値に変換し,効果サイズZ_<FISHER>を求めた結果,重み付けを行わなかった場合は,いずれの認知能力の効果サイズも有意ではなかったが,重み付けを行った場合では,空間認知,情報処理能力,言語能力については,正の有意な効果サイズを示し,学校成績,数学的能力については負の有意な効果サイズを示した.これらの結果から,テレビゲームの使用は空間認知,情報処理能力,言語能力については,それらの能力を向上させるのに役立つ可能性が示され,逆に,学校成績や数学的能力については,それらの能力を低下させてしまう可能性が示された.次に,テレビゲームと攻撃性との関係を検討した研究についてのメタ分析についてだが,ここでは,テレビゲームが攻撃性などにどのような影響をもたらしたか検討した日本における研究のみを収集し,実施している.攻撃性の他に,攻撃行動,向社会的行動,社会不適応,共感性などの変数に関する従属変数を扱った研究についても同時に検討している.こちらのメタ分析については現在も進行中である.
著者
山本 和英 中山 匠
雑誌
研究報告自然言語処理(NL)
巻号頁・発行日
vol.2010-NL-198, no.1, pp.1-7, 2010-09-09

日本語の動詞と形容詞はその形態によって明確に分類されている。ところが両者の意味を考えると一部の動詞は動作というよりも対象とする事物の状態を表現 (すなわち形容) していると見なしたほうが自然である。本稿ではこのような日本語の動詞と形容詞の分類の意味的ずれに着目し、新たな用言の分類 「形状性用言」 「作用性用言」 を提案する。まず動詞・形容詞という形態上の対比よりもより意味に近い形状性・作用性という分類が実用上有益であることを議論し、形状性用言の定義、及び辞書の作成に際しての検討課題を整理する。
著者
柴木 優美 永田 昌明 山本 和英
雑誌
研究報告自然言語処理(NL)
巻号頁・発行日
vol.2010-NL-198, no.3, pp.1-8, 2010-09-09

Wikipedia を利用し,人に関する大規模な is-a 関係のオントロジーを構築する手法を提案する.本手法では初めに,人を表すカテゴリを機械学習による分類器で判定し,Wikipedia の階層構造をそのまま利用して is-a 関係だけから構成される人のカテゴリ階層を構築する.その後,人を表すカテゴリが付与されている記事から,人を表す記事をインスタンスとして抽出する.機械学習では,カテゴリ名及びカテゴリの周辺の単語が,日本語語彙大系のインスタンスとどのようにマッチするかを素性にした.その結果,人を表すカテゴリを適合率 99.3%,再現率 98.4%,人を表すインスタンスを適合率 98.2%,再現率 98.6% で抽出することができた.
著者
廣嶋 伸章 戸田 浩之 松浦 由美子 片岡 良治
雑誌
情報処理学会論文誌データベース(TOD) (ISSN:18827799)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.33-45, 2010-09-28

Web 検索において,あるクエリが入力された際に,そのクエリの種別を知ることができれば,それに応じてシステムの応答を変化させることが可能となり,適切な検索結果を提示することができる.たとえば,あるクエリの種別が 「グルメ」 であることが分かれば,レシピ検索とブログ検索の結果を提示することができる.このようなシステムの応答を変化させるための条件であるクエリの種別をクエリタイプと呼ぶことにする.クエリの属するクエリタイプを知ることで,上で述べたような利便性の高い検索サービスが実現できる.そこで本論文では,様々なクエリに対してクエリタイプを判定する手法を提案する.提案手法では,単語に対してその単語の分野を表す概念ベクトルが付与された概念ベースを参照して,クエリに関する文書から得られたクエリ分野ベクトルと各クエリタイプ分野ベクトルとのコサイン距離に基づきクエリタイプを判定する.実験では,27 のクエリタイプに対し,提案手法単独で 64.6%,Wikipedia などの情報を利用した手法を組み合わせることにより 77.1% の精度で判定を行うことができた.
著者
藤田 遼治 太田 学
雑誌
情報処理学会論文誌データベース(TOD) (ISSN:18827799)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.78-87, 2010-09-28

我々は,検索結果の推移を用いてユーザの検索意図を推測し,ユーザの代わりに検索質問を生成して検索する先読み検索を提案する.本研究では,検索結果の推移に加え,ユーザが入力した検索質問の変化パターンを利用してユーザの検索意図を推測する.本稿では実装したプロトタイプシステムを,擬似適合性フィードバックによる検索,および Google が示す検索キーワード候補による検索と比較することにより評価を行った.さらに,先読み検索において検索質問変化パターンを考慮することの効果を定量的に評価した.
著者
数原 良彦 宮原 伸二 植松 幸生 金田 有二 藤野 昭典 片岡 良治
雑誌
情報処理学会論文誌データベース(TOD) (ISSN:18827799)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.99-111, 2010-09-28

情報検索において,機械学習の枠組みでランキング関数の最適化を行うランキング学習が重要な課題である.従来のランキング学習手法では人手による適合性評価,もしくはクリックログから得られる訓練データを利用してきた.我々は,これらの複数情報源を適切に利用し,より高精度なランキング学習を達成することを目標とする.我々は複数情報源から得られる訓練データは,適合性分布が異なると考えた.そのため,訓練データの適合性分布が同一であることを仮定している従来の教師あり学習に基づくランキング学習手法では,複数情報源を用いたランキング学習の実現が困難だと考えられる.そこで我々は,分布が異なる訓練データを用いて転移学習の枠組みに着目し,転移学習をランキング学習に適用することによって適合性分布が異なる複数の情報源を用いたランキング学習の実現を試みる.本稿では,転移学習の枠組みに基づくランキング学習手法 TRankBoost を提案し,商用モバイルウェブ検索エンジンの実データを用いた評価実験によって有効性を検証した.評価実験により,TRankBoost によって,従来手法である RankingSVM,RankBoost と比べて NDCG@5,10 の値で上回る精度のランキングを実現することを示した.
著者
稲垣 陽一 中島 伸介 張 建偉 中本 レン 桑原 雄
雑誌
情報処理学会論文誌データベース(TOD) (ISSN:18827799)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.123-134, 2010-09-28

本研究ではブロガの体験熟知度に基づいたブログランキングシステムの開発を行った.ユーザが入力した検索キーワードに対して,関連するトピックを複数抽出し,各トピックに関するブロガの体験熟知度を算出する.これに基づいてブログエントリのランキングを行う.熟知度スコアが高いブロガ (熟知ブロガ) が書いたエントリは,熟知度スコアが低いブロガが書いたエントリよりもランキングが上位となる.ブロガの熟知度スコアは,ブロガが過去に投稿したエントリ内で,各トピックに関して共起に基づいて抽出した特徴語をどれほど使ったかを分析することで算出される.なお,開発したシステムは,視点の異なる複数のランキングを提示するとともに,エントリ投稿者 (ブロガ) の特性に関する補助情報を提示している.これにより,ユーザは閲覧するブログエントリの信頼性を自分なりに判断することが可能となる.我々は開発した実証実験システムをWeb上で公開するとともに,これを用いた評価実験を行った.提案システムにより提示される熟知ブロガおよびブログエントリの妥当性が十分に高いことを確認できた.
著者
中村 俊輔 古殿 幸雄
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.211-217, 2008-04-15

本論文は,人間の日常生活行動の中で,購買行動に着目しつつ,企業のマーケティング活動や需要予測などを円滑に行うためのファジィ推論モデルの構築を試みる.具体的には,主成分分析の適用によって有用になるであろう気象要因の選定を行い,また,来客数と気象要因の相関分析をも試みる.そして,分散分析を適用する事によって,日々の売上高や来客数と気象要因との関係について解析を行う.これらの解析結果から,人間の購買行動に影響を及ぼす気象要因を選定し,ファジィ推論モデルが構築される.最後に,著者らは需要予測の想定の確立を試みる,同時に,本ファジィ推論モデルの有用性を明らかにするために,従来の予測手法である回帰分析の予測結果と比較する.