著者
宮川 佳也 山内 眞義 松浦 知和 高木 一郎 大畑 充 戸田 剛太郎
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.43, no.12, pp.570-574, 2002-12-25 (Released:2009-03-31)
参考文献数
9

症例は26歳の性転換願望男性. 吐下血を主訴に来院し, 食道静脈瘤および出血性胃炎を指摘され入院となった. 腹部CT, 超音波検査にて肝硬変および著明な脾腫を認めた. 患者は性転換願望があり中容量ピルを内服し, エストロゲン製剤の注射を頻回に受けていた. また, 常習飲酒家であるが飲酒歴は9年間と短く, また, 積算飲酒量は純エタノール換算で480kgとアルコール性肝硬変としては少量であった. しかし, ウイルス性や自己免疫性の肝硬変は否定的であり, 肝組織像はアルコール性肝硬変の所見であった. 本症例は女性ホルモン製剤を常用しながら飲酒を継続していたことにより急速にアルコール性肝硬変へ進展した極めてまれな症例であり, アルコール性肝障害の発症における性差を考察するうえで示唆に富む症例であると考えられた.
著者
光山 松雄
出版者
Japan Society for Distributive Sciences
雑誌
流通 (ISSN:09149937)
巻号頁・発行日
vol.1989, no.2, pp.139-146, 1989-04-20 (Released:2010-04-30)
参考文献数
5
著者
有田 秀穂
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.129, no.2, pp.99-103, 2007 (Released:2007-02-14)
被引用文献数
3 5 1

ストレス状態は視床下部・下垂体・副腎皮質軸および交感神経アドレナリン系の亢進に特徴づけられる.ストレスを緩和させるには,これらの制御系の働きを逆転させる必要がある.ストレス回避や安静・睡眠は消極的な方法である.一方,積極的な制御系の逆転は,涙を流すことである.流涙は,脳幹の上唾液核にある副交感神経の過剰な興奮によって誘発される.ドラマを見たり,心理療法を受けて,涙が溢れるとき,共感に関与する内側前頭前野において,特徴的な血流変化が認められる.予兆としての緩やかな血流増加と,それに続く一過性の急峻な血流増加がある.後者が出現すると,激しい涙と泣きが継続し,一時的に自己制御できなくなる.自律神経のバランスは,覚醒状態にありながら,極端な副交感神経の興奮状態にシフトする.この時,POMS心理テストでは混乱の尺度が著明に改善し,すっきり爽快の気分が現れる.すなわち,ストレス緩和の神経回路の存在が予想される.このデータを笑いのデータと比較し,涙の効用を議論する.
著者
宮澤 研人 大村 嘉人 山岡 裕一 岡根 泉
出版者
The Editorial Board of The Journal of Japanese Botany
雑誌
植物研究雑誌 (ISSN:00222062)
巻号頁・発行日
vol.98, no.1, pp.37-41, 2023-02-20 (Released:2023-02-20)
参考文献数
19

静岡県伊豆半島のブナ樹皮上やブナ樹皮上のコケ上と長野県大阿原湿原のコケを伴う岩上から採集された標本に基づき,ダイダイサラゴケ科ダイダイサラゴケ属の Coenogonium isidiatum (G.Thor & Vězda) Lücking(ト ゲダイダイサラゴケ,新称)を本州から初めて報告する.本種は国内(北方領土を含む)ではこれまで色丹島のみから報告されていた.得られたITS rDNA領域の配列は本種の既知配列と高い相同性を示した.本種は地衣体上に長さが最大0.5 mm の単一からわずかに分枝する裂芽を生じることで,日本産の類似種から容易に区別することができる.
著者
郷間 英世 田中 駿 清水 里美 足立 絵美
出版者
日本発達支援学会
雑誌
発達支援学研究 (ISSN:24357626)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.99-114, 2022-03-31 (Released:2023-03-31)

今回発刊された新版K式発達検査2020の標準化資料を、1983版の標準化資料と比較し、現代の子どもの発達の様相や変化について検討した。その結果、2020年までのおよそ40年間の子どもの発達は、全体的にみると大きな変化はなかったが、いくつかの発達課題で顕著に促進した課題や遅延した課題がみられた。促進したのは「色の名称」課題で4つの色を答える検査項目では12ヵ月の変化がみられた。遅延したのは「図形模写」や「折り紙」課題であり、「正方形模写」「三角形模写」「菱形模写」では9~11ヵ月、折り紙を何回か折る検査項目である「折り紙Ⅱ」「折り紙Ⅲ」では3~6ヵ月の変化が認められた。これらの発達の変化は、社会環境や養育環境などの急激な変化に伴い、子どもの認知や運動の発達が変化してきたことが推測された。この変化をどうとらえ、どのように対応していくかは今後の課題である。
著者
早川 智
出版者
日本大学医学会
雑誌
日大医学雑誌 (ISSN:00290424)
巻号頁・発行日
vol.78, no.3, pp.189-190, 2019-06-01 (Released:2019-08-07)
参考文献数
8
著者
小橋 浅哉
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.54, no.10, pp.427-435, 2005-10-15 (Released:2011-03-01)
参考文献数
14
被引用文献数
1

紙類に含まれる放射能のレベルを知るため, 我が国で製造された雑誌, 新聞, コピー用紙等の紙類について天然放射性核種 (226Ra, 228Ra, 228Th及び40K) の放射能をγ線スペクトロメトリにより定量した。また, それらの放射性核種の源を明らかにするため, 試料のX線回折測定を行った。文庫本の226Ra, 228Ra, 228Th, 40Kの平均含有量は, それぞれ6.4, 21.5, 23.7, 18.8Bqkg-1であった。他の種類の試料については, それらの核種の含有量は, 文庫本並みかそれ以下であった。228Thの濃度は, 228Raの濃度よりいくぶん高かった。紙類の製造過程において原料から228Raが228Thより優先的に水に溶出したのであろう。天然放射性核種の濃度は互いに相関していた。X線回折測定の結果は, 試料にはカオリナイト, 滑石及び方解石が含まれることを示した。試料のカオリナイト含有量は, 天然放射性核種の濃度と相関があり, このことは, 紙類に含まれている天然放射性核種の大部分は, 紙類の填料又は塗工用顔料として用いられているカオリナイトによりもたらされていることを示している。データの回帰分析の結果は, 填料用カオリナイトの天然放射能含有量は, 顔料用カオリナイトの天然放射能含有量より高いことを示した。
著者
于 亜
出版者
The Human Geographical Society of Japan
雑誌
人文地理 (ISSN:00187216)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.396-413, 2005-08-28 (Released:2009-04-28)
参考文献数
33
被引用文献数
2 2

Every traditional society has its own particular regional food culture. The dumplings examined in this article are one example. In northern China, the dumpling has played an important role in food culture, not only materially but also spiritually. Dumplings even have meaning as ceremonial foods, and they form one of the chief elements of traditional food culture. Due to the liberal reform policies carried out in the 1980s, the Chinese economy has developed remarkably, and daily life, especially the food culture of the Chinese people, has changed radically. The aim of this paper is to examine the changing nature of the traditional food culture by focusing on the dumpling, and also to examine the changing meaning and function of the dumpling itself.The region discussed in this paper is Shandong in the lower Yellow River valley. The present state of dumpling food culture was investigated in seven districts within this region. In each district I distributed questionnaires, interviewed local people, and consulted historical records concerning food culture.The Shandong region is the birthplace of the dumpling and we can trace the historical development of it by using local documents. People consume dumplings in various settings, not only in daily life, but on formal occasions as well. The latter category includes annual celebrations and ceremonial events such as weddings, funerals, ancestor-worship rituals, and coming-of-age ceremonies. People still recognize dumplings as a vital dish. Moreover, on formal occasions, the opportunity for consumption, the reason for consumption, the place of consumption, and the group preparing the dumplings differs from place to place. Thus, the dumpling in Shandong is a daily food staple made out of wheat, and, at the same time, is a part of the local food culture that is valued socially and ritually.Since every local area has its own natural environment and historical and social background, types of dumplings differ by locality. However, people's respect for the dumpling is universal. By observing variations in the form of dumplings and by interviewing cooks, it becomes clear that knowledge about dumplings-their different types, forms, and functions-is a sort of folk wisdom that has spread widely.
著者
水野 誠 佐野 幸恵 笹原 和俊
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.6-18, 2021-03-31 (Released:2021-03-31)
参考文献数
28
被引用文献数
2

パワーブランドのロイヤル顧客には,しばしば熱狂的なファンが含まれる。彼らがなぜ熱狂するのか,しかもなぜ熱狂が持続するのかを理解するため,われわれはファンの熱狂が典型的に現われるプロ野球に注目する。その際,集合行動としての熱狂に働く社会的相互作用について把握するには,ソーシャルメディアでのファンのコミュニケーションを分析するのが1つの有効な方法である。そこでわれわれはTwitterから2018年の日本のプロ野球に関するツイートを収集し,ファンの投稿頻度のみならずポジティブ/ネガティブな感情を測定し,試合の勝敗や優勝争いの展開でそれらがどのような影響を受けるかを分析する。また試合中にファンのツイートとリツイートが瞬間的に同期する現象をバーストとして分析を行う。これらの分析から,長期と短期の異なるタイムスケールで熱狂が変化している様子を把握し,ファンダムを形成し維持するための示唆を得る。
著者
ベレック クロエ
出版者
日本女性学研究会
雑誌
女性学年報 (ISSN:03895203)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.63-86, 2020 (Released:2020-12-19)
参考文献数
21

薙刀(なぎなた)とは、本来長い柄の先に反り返った長い刃をつけた武器である。20世紀半ばまでは学校教育制度外における武術流派の道場で、男性のみならず女性にも薙刀の稽古が続行されたが、1910年に師範学校の女子生徒を対象に課外活動として認められた薙刀は、やがて高等女学校・女子実業学校へと広がった。それは、第二次世界大戦の終結後、GHQの指令により学校での武道教育が廃止されるまで続いた。 20世紀前半に女子教育の領域で普及した薙刀は、ジェンダーに関する新たな問題を提起している。薙刀は、相手を攻撃し、戦うための武器である。「武器」・「攻撃」・「戦う」という言葉で表現されることは、社会的には「男性らしい」と見なされているものである。にもかかわらず、薙刀は女子教育においていかなる理由で採用されたのだろうか。そして、学校教育では、社会や文化における男や女に対する期待と規範が教えられ、体育の教育も「女らしい」「男らしい」という期待に沿いながら行われている。そこで本論文では、20世紀前半の日本の薙刀教育において、「女性らしさ」に対する社会の期待の変化がどのように示されていたかを明らかにする。 当時の女子生徒向けの薙刀教本では、女性らしい健康な身体に備わった女性の優美さと、薙刀との関連性がよく指摘され、薙刀教育は女子の「女性らしさ」を育成しなければならないとされた。そして、薙刀教本では、薙刀と関係がある女性の例をよく取り上げることで、女子教育と薙刀の歴史的関係を強調し、女子向け教育として薙刀を正当化するとともに、薙刀を女性らしいものにした。 20世紀前半において学校教育に導入された武道の中では、薙刀だけが女子のみを対象とするものであった。薙刀を女子教育に採用することによって、女子の武道は男子の武道と差異化された。薙刀は女子武道を代表するものとされ、それによって男子との相違が強調されたのである。このように、薙刀を女子のみの武道として設定することによって、薙刀は女性化されたのであった。

16 0 0 0 OA 爆発現象の解析

著者
田中 克己
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.36, no.6, pp.383-389, 1997-12-15 (Released:2017-04-30)

気体や火薬類の爆発現象の解析手法にっいて,爆発特性,着火機構,燃焼火炎の伝播,爆轟への転移および爆風の発生と被害について解説し,それらの現象を流体力学的に解析する手法について概説した.
著者
寿楽浩太 土田 昭司 下 道國 神里 達博
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.60, no.9, pp.542-548, 2018 (Released:2020-04-02)

東京電力福島第一原子力発電所事故から7年。福島県の農畜産物の価格が,事故前の水準に戻らない。風評被害はなぜ,起こるのか。この問題にはどう対処すればいいのか。原子力学会の理事会と社会環境部会は春の年会でこれをテーマにしたセッションを企画し,この問題に対する解決策を探った。ここでは登壇した4人の講演と,その後の質疑の概要を紹介する。
著者
中村 光
出版者
一般社団法人 日本老年療法学会
雑誌
日本老年療法学会誌 (ISSN:2436908X)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.1-7, 2022-11-21 (Released:2022-11-23)
参考文献数
45
被引用文献数
2

コミュニケーションとは「意味の共有」と定義される。一方が共有を望んで頭の中の意味を記号化しメッセージとして発信し,他方がそれを受信して記号を解読し頭の中に同じ意味が生じれば,コミュニケーションが成立したことになる。また,コミュニケーションの場には必ずコンテキスト(文脈,状況)があり,同じメッセージであってもコンテキストによって意味は異なってくる。コミュニケーションの問題を引き起こす障害は,大きく4つに類別できる。①記号の入出力の問題が聴覚障害や音声・構音障害であり,②記号の操作の問題が大脳左半球の損傷で生じる失語症である。また,③主にコンテキストの利用の問題として,近年では認知コミュニケーション障害(CCD)という概念が提唱されている。CCDとは,注意・記憶・遂行機能などの認知機能障害を背景にしたコミュニケーション障害で,大脳の右半球損傷,前頭葉損傷,瀰漫性損傷によって生じることがある。さらに,④認知症は意味の問題に加えて②③も併発しているものと捉えることができる。失語症に関して日本では最近まで,機能障害水準の評価尺度がほとんどでコミュニケーション障害(活動制限)水準を直接評価する尺度は乏しかったが,現在は複数のものが開発・発表されつつある。CCDの評価尺度は開発の途上にある。最後に,老化におけるコミュニケーションの問題についても,CCDの研究・臨床で得られる知見が有用であろうと論じた。