著者
南 徹弘 日野林 俊彦 安田 純 今川 真治 小島 康生
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

幼児の社会的相互交渉他児との社会的相互交渉と言語的コミュニケーションスキルの関連を検討するために19名の4歳齢幼稚園児を対象とした観察を実施した。幼児の発話量には個入差が大きかったものの、概ね、女児は男児よりも肯定的発話を示し、否定的発話は男児に頻繁にみられた。また、スキルレベルの低い児は、より単独で過ごすことが多く、より活動的で、遊び集団への仲間入りを頻繁に試みていた。しかしながら、その試みは他児から必ずしも受け入れられず、他児からの拒否や無視を受けることが多かった。一方スキルレベルの高い児は遊びを方向付ける発話が多くみられ、遊び集団から離脱しても他児の追従を受けることが頻繁であった。すなわち、言語コミュニケーションスキルの高低が幼児の行動としてあらわれ、ひいては仲間関係に影響を及ぼすことが示された。そこで、実際にいざこざが生起した際に彼らがどのような行動を示すのか、また、いざこざに関わっていない他児がどのように関与するのかを保育園において5歳齢児を対象とした観察を実施した。その結果、男児のいざこざおよびいざこざへの介入には社会的関係に直接影響を受けず、女児のいざこざは彼らの社会的関係を反映した傾向があることが示された。保育士のしつけ行動幼児が逸脱的な行動を示した際に保育士がどのように介入しているのかについて、保育園3歳齢児と担当保育士を対象とした観察を行った。食事場面等においては保育士は児の行動を方向付けるようなしつけを頻繁に行っていたが、自由遊び場面においては児の自主性に任せるようなしつけ行動を示した。また、効果的なしつけの存在が認められたものの、保育士は必ずしもそのようなしつけを用いず、児が自身で考えられるような機会を用意していることが示唆された。
著者
砂川 正隆 福岡 博史 小山 悠子 福岡 明 岩城 完三
雑誌
日本歯科東洋医学会誌 (ISSN:09157573)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.7-12, 2006-08-31
被引用文献数
4
著者
秦 明徳
出版者
島根大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

岩石の風化作用は気圏,水圏,生物圏,岩石圏といった地球サブシステム間の相互作用として成り立っており,地球システムとして説明できる身近な好例である。本研究では風化作用を軸とした花崗岩地帯学習の在り方について取り上げ,地球システム教育の一般教育における重要性とその可能性について探った。具体的にはシステム論的視点にたった花崗岩類風化作用の教材開発・カリキュラム資料の作成するとともに、実験授業を行い,その評価を踏まえながら新しい地球学習のありかたについて提案した。
著者
篠藤 明徳 日詰 一幸 伊藤 雅春 佐藤 徹 前田 洋枝
出版者
別府大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

市民討議会の全国事例(2006年から2010年)調査を通し、身近なテーマ、青年会議所と行政の共催、プログラムの類型等が明らかになり、高崎市、豊山町の事例調査では、参加動機等を分析できた。ドイツでの変形型プラーヌンクスツェレの状況やアメリカでのアメリカスピークス、ケッタリング財団など全国組織の支援体制を調査できた。その結果、参加者の多様性の担保や情報提供の公正等、市民討議会の質保証の基準を明確化すると共に、データバンクの構築・公開、表彰・認証制度の創設などを提案できた。
著者
狩俣 繁久
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

3年間で白保方言の臨地調査と波照間方言・白保方言の比較研究を行った。日本語の影響は、予想以上に大きく、回答を得られない単語が近接する方言間の言語年代学的な数値を出すには無視できない数であった。そこで、さまざまな音環境にあらわれる母音、子音がどのように音韻変化したかを詳細に比較した。両方言で類似するものの多くは、分岐する以前の祖方言の形式を保存するだけでなく、変化の要因などを共通に有したまま分岐し、別々に平行的に変化したものがあることがわかった。波照間、白保方言に特徴的にみられる語末のN音挿入も分岐した後に平行的に変化したものである。母音の音位転換と子音の音位転換があることを指摘したが、音位転換は分岐後の収斂変化であることがわかった。形容詞の代表形を収集し、波照間方言と白保方言を比較した。その結果、波照間白保祖方言の形容詞語尾は-haNであったが、両方言ともに、周辺方言、とくに石垣島中心市街地方言の影響で一部の形容詞の語尾に-saNと-sahaNを有する語があることがわかった。saN形容詞は借用語形であり、sahaN形容詞は、saN形容詞のsa連用形をhaN形容詞の語幹として取り込んだものである。語尾にsahaNをもつ形容詞の発生は両方言で平行的に変化したものである。形容詞語尾の違いが八重山方言、宮古方言の下位区分の重要な指標になりうることもわかった。文法現象は、名詞の語彙に比べて借用されにくく影響も小さい。文法現象が体系的であることを反映して、借用された形容詞語彙は、その判別が名詞に比べて容易であることもわかった。
著者
船場 貢 松原 功 立石 博 三好 祐二
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会九州支部会報 (ISSN:02853507)
巻号頁・発行日
no.56, pp.21-24, 1989-12-25

8月中旬までの収穫を目標に,移植期と苗の種類を組み合わせて,出穂・成熟期の早進化程度及び生育・収量について検討し,下記の結果が得られた。1.中苗を4月中旬に移植すれば8月15日までに収穫でき,生育・収量も4月下旬植稚苗に比べて大差はない。また活着及び減数分裂期の不稔についても問題はない。2.4月上旬植は,4月中旬植より更に早進化するが,その程度は小さく,年により晩霜や低温のために減収する危険性がある。3.現在作成中のメッシュ気候図を利用することにより,地域の気象条件に応じた移植時期を設定することが必要である。
著者
大串 和雄 千葉 眞 本名 純 月村 太郎 根本 敬 狐崎 知己 木村 正俊 武内 進一
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、複雑化を増す現代世界における政治的暴力の力学解明を試みた。取り上げた課題は主として以下の通りである。(1)グローバル化時代の暴力に関する政治理論的考察、(2)民族浄化の概念とメカニズム、(3)パレスチナ解放闘争におけるアラブ・ナショナリズムと個別国家利害の相克、(4)犯罪対策と治安セクター改革におけるインドネシア軍の利益の維持・拡大、(5)グアテマラにおける政治的暴力、(6)アフリカ諸国における民兵、(7)ビルマ難民の民主化闘争における非暴力の位置づけ、(8)ラテンアメリカの移行期正義。
著者
児玉 泰 吉村 健清
出版者
産業医科大学学会
雑誌
産業医科大学雑誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.469-480, 1983-12-01

我が国においては, 産業医学卒後教育に関する系統的なシステムは今日まで何等確立されていない. しかし, 産業医科大学設立の時点で, 特色ある産業医学の教育・研究は卒後教育において充実させるよう示されており, したがって本学卒業生や産業医に対して産業医学教育を行うことは本学の重要な使命の1つであると言える. 昭和59年春第1回の卒業生を世に送り出すに当り, 本学の産業医学卒後教育基本講座のカリキュラムや生涯教育を含めた我が国の産業医学教育のあり方を, 日本の現状を踏まえて考えることが必要であろう. その参考資料として, 産業医学に関する歴史的背景と経験を有する英米両国の現状を紹介する.(1983年8月15日 受付)
著者
松本 豊士
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会九州支部会報 (ISSN:02853507)
巻号頁・発行日
no.32, 1969-07-30

昭和42年度より,九州農試と共同研究事業として発足した水稲品種育成事業を,より良く明確に進めるために,過去11ヵ年間に当分場で供試された水稲奨励品種決定試験の資料をもとにして,当該地方における収量阻害要因のうち,気象要因,生物要因をとりあげ,その関係を逐次解明しようと試みた。今回は,供試数122品種,53系統を〔I〕移植期,〔II〕出穂期の2群に別け,それぞれの群別における穂数,穂長,千粒重,および移植後30日間,出穂前25日間,同じく15日間,出穂後30日間の日照時間が収量におよぼす影響について調べた。その繍果〔I〕移植期では5月15日〜5月25日植,〔II〕出穂期では,8月15日〜8月25日の作型が安定した様相を呈していることがわかった。
著者
真喜屋 清 堀尾 政博 塚本 増久
出版者
産業医科大学学会
雑誌
産業医科大学雑誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.43-52, 1990-03-01

皮下末梢血における糸状虫ミクロフイラリア(Mf)の分布様式を明らかにし, 吸血蚊への取り込み数を検討するために, ネッタイシマカに大糸状虫感染大を吸血させる実験を行った. 体表の約50カ所を剃毛した感染大を麻酔して吸血させ, 吸血前後の蚊の体重を正確に秤量することによって, 蚊1匹当りのMf取り込み数と, 単位吸血量1mg当りのMf取り込み密度とを調べた. Mf取り込み密度は吸血部位によって著しいばらつきを示し, 負の二項分布に適合する集中型の分布をするものと推定された. 吸血場所によってはMf取り込み密度に有意差が認められたが, 繰り返し実験では再現性のある結果が得られないことから, 吸血場所間のこの差異は一貫性のあるものではないと推察された. 蚊の吸血量が増加すると, 蚊1匹当りのMf取り込み数が増えるだけでなく, Mf取り込み密度も高くなるのが観察された. 同一の部位で別の蚊に取り替えて吸血させた実験でも, Mf取り込み密度は蚊の吸血量が多い時に高くなるのが認められた.(1989年8月15日 受付, 1989年12月14日 受理)
著者
清水 裕之
出版者
名古屋大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1997

これまで劇場建設に求められたものは、1980年代に始まる多目的ホール建設ラッシュから、その反動としての90年代には専用劇場の建設、また今日では劇場の多目的化についても見直され始めている。こうした日本の劇場建設における独特の二者択一の状況を生む背景には何があったかということを歴史的な作業を通して解明し、劇場建設に一つの見解を得ようとするものである。即ち、劇場建設における計画の「多目的」あるいは「専用」の問題についてその議論が見えてくる時代に遡ることによって、現在の劇場建設における功罪を検証しでいる。「多目的」劇場、あるいは「専用」劇場を建設を取り巻く問題の中で、現代に見られる我が国の演劇創造と劇場の乖離現象を暗示するのが、帝国劇場(1911年開場)、築地小劇場(1924年開場)、東京宝塚劇場(1933年開場)であり、それはヨーロッパの劇場空間の影響を受けて進行する。一方、ヨーロッパにおける劇場の近代化には、逆に演劇創造と劇場の協力関係が見える。特に、舞台装置家アドルフ・アッピア(1826-1928)は、舞踊家エミール・ジャック・ダルクローズ(1865-1950)と共に、ダルクローズ学校内ホール(ドイツ・ドレスデン)において、ルネッサンス以来初めてプロセニアムアーチを排除した空間を実現した。そこには、アッピアの演出理念、新しい劇場技術が反映され、ダルクローズとともにつくり出した演劇創造と劇場空間との協力関係を見ることができる。こうした協力関係が、我が国においてどのような背景で乖離の芽が作られたのかについて演劇界、建築界の言説をもとに描き出し、以下の点がなぜ達成できなかったかについて、社会における劇場の位置づけ、劇場制度、劇場技術、舞台と客席との空間構成から見直すものである。
著者
白川 千尋
出版者
国立民族学博物館
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

一昨年度と昨年度に続き、本年度も戦後日本のマスメディアにおけるオセアニア表象、とりわけメラネシア地域に関する異文化表象を主たる対象としながら、主に以下の研究活動を行った。1.1960年代から本研究に着手する前年(2002年)までに放映されたメラネシアを取り上げたテレビ番組における異文化表象のあり方の検討。2.同じ時期に出版されたメラネシアを取り上げた図書における異文化表象のあり方の検討。3.1.で検討の対象としたテレビ番組の制作過程に対する文化人類学者の関与のあり方の検討。その結果、主に以下の知見を得た。1.テレビ番組においては、各年代を通じて集落部を対象とした番組がきわめて多く、対照的に都市部のみを取り上げたものは皆無に等しい。また、番組のなかで取り上げられる人々はペニスケースや腰蓑といった出で立ちであることが多い。そして、これらの地域や人々に対して「秘境」、「未開」、「裸族」などの語が使われ、「近代的な世界から隔絶した世界に生きる人々」や「外部者を容易に寄せつけない未開人」といった提示の仕方がなされている。こうした傾向は1960年代から2002年まで大きく変化することなく続いている。2.図書においては、テレビ番組にみられたものと同じような傾向が、1960年代から70年代に出版されたものに関して認められる。しかしながら、そうした傾向は1980年代以降に出版されたものに関しては希薄になり、都市部を取り上げたもの、あるいはTシャツやズボン、ワンピースといった出で立ちの人々の写真を多く掲載したものも目立つようになっている。3.テレビ番組の制作過程に対する文化人類学者の関与は1960年代においては顕著であったが、海外での調査研究に関する基盤整備(科研費の充実化など)が進むとともに希薄化し、近年では番組制作者が番組の制作過程で文化人類学者の研究成果を一方的に「流用」する形になっている。上の1.で指摘したように、テレビ番組のなかでメラネシアとそこで暮らす人々は、1960年代からこの方、一貫して「未開」や「秘境」といったキーワードに収斂する形で表象されてきた。こうした表象が維持されてきた背景には、それがテレビ界の視聴率競争との関連で、視聴率を獲得するための重要な「資源」と目され、利用され続けてきたことがあると考えられる。なお、以上に述べた知見などについては、別に作成した報告書(『日本のマスメディアにおけるオセアニア表象の文化人類学的研究-平成15〜17年度科学研究費補助金研究成果報告書』)で詳述した。
著者
渡邉 真理子
出版者
福岡大学
雑誌
福岡大學人文論叢 (ISSN:02852764)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.129-152, 2007-06