著者
坂上 寛一
出版者
国立科学博物館
雑誌
自然教育園報告 (ISSN:0385759X)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.51-60, 1979-03

自然教育園の代表的な植生であるシイ林, ミズキ林, コナラ林, マツ林の土壌の腐植の形態を分析するとともに, 樹種や水分環境との関連を考察した。得られた結果は以下のように要約される。1) 4地点の水分環境はシイ林が最も乾燥しており, コナラ林が最も湿潤であった。ミズキ林とマツ林は両者の中間であり, 林内雨量と土壌水量は高い相関があった。2) ミズキ林とコナラ林の落葉広葉樹はCa含量が高く, pHが比較的高いが, マツ林とシイ林はCa含量低く, pHも低い。また, マツ林の炭素率は他の3地点の2倍ほど高い。3) 堆積腐植の近似組成分はマツ林で脂質類が多く含まれ, 蛋白質が少ないこと, コナラ林でリグニンの比率が高いことなど地点によりいくらか相違がみられたが, 表層土の有機物組成はシイ林がリグニンを始め, 各成分の含量が高いことを除けば, 非常に近似した値を示し, 有機物組成では地点間の差異がなかった。4) 水酸ナトリウム抽出部, ピロリン酸ナトリウム抽出部とも概して腐植酸よりフルボ酸の割合が高かった。特にコナラ林でその傾向が著しかった。5)コナラ林は腐植化過程の初期段階にあり, 水酸化ナトリウム抽出部腐植酸はRp型→P型を示した。ミズキ林はコナラ林より腐植化が進んでいるが, P型→A型→P型と一定した傾向は示さなかった。シイ林とマツ林は腐植化過程の後期段階にあり, 火山灰土壌の主要な腐植化経路と考えられるPo型→B型→A型を示した。
著者
有木 進 加籐 周 谷崎 俊之 庄司 俊明
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

Lie理論において重要な役割を果たしているヘッケ代数と呼ばれる有限次元代数の表現論を研究した。とくに数理物理由来のフォック空間を有限次元代数で圏化する研究は近年大きな進展のある研究であり、その進展に寄与する結果もいくつか得た。具体的には、アフィンA型ヘッケ代数の既約加群の幾何的実現と代数的実現の同定、変形フォック空間の圏化による量子シューア代数の次数付分解係数の計算理論等が得られた。
著者
島尻 優香 加藤 昇平 世木 博久 伊藤 英則
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.48, pp.213-214, 1994-03-07

仮説推論の研究に関しては、その理論的枠組の提案、効率的な推論システムの実現方法、並びに診断・設計問題などへの応用など、多くの研究結果が報告されている。我々は、すでにホーン節で表現された論理知識ベースを対象とした仮説推論の効率化手法について提案した。そこで、本稿ではより表現力の高い不確定論理データベースを対象とした仮説推論について述べる。不確定論理データベースのような非ホーン節(non-Horn 節)集合を対象とした推論方法として最近提案された定理証明系SATCHMOREがある。本研究では、 SATCHMOREで導入されている"関連性(relevancy)"の概念を仮説推論に適用することを考える。不確定論理データベースに対する問合せの答としては、"真(true)"、"偽(false)"、"不定(unknown or possibly true)"の三つが考えられる。そこで、SATCHMOREのような充足可能性を調べる定理証明系では区別されることのない"偽"と"不定"を仮説推論においては判別する処理を行なわなければならない。本稿ではその際の処理においても関連性の概念を用いることにより、冗長なOR分岐の抑制ができることを示す。
著者
清沢 茂久
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.37-40, 1962-09-29

イネの障害型冷害の発生過程をさらに明らかにするために, 陸羽132号の花粉の発育におよびす3日間の15〜19℃処理と, 3日間の暗黒処理(25℃)の影響を見た. 開頴前10〜12日, および6〜11日に相当する時期に低温に遭遇した頴花に充実花粉歩合の低下が見られ, これらの時期はそれぞれ減数分裂期と花粉外膜形成期に相当するものと考えられた. 暗黒処埋ではこのような充実花粉歩合の低下は見られなかつた. この事実は再び障害型冷害は低温による光合成の低下によるものでなく, 穂に直接作用する低温の影響によるものであることを暗示している. その他, 強風もまた花粉の発育を害することが暗示された.
著者
田窪 直規
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント : 記録管理学会誌 (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
no.51, pp.48-57, 2006-03-30
被引用文献数
1

韓国では、歴史資料の収集・編纂や歴史研究などを行なう機関として、国史編纂委員会が置かれている。この委員会は、韓国の歴史資料・歴史研究関連の13機関が参加する、韓国歴史情報統合システムを、実質上運営している。このシステムは、念入りな組織化によるデータ蓄積と、検索機能の充実という特長を有しており、図書館情報学の専門家が、その開発に関与している。日本では、ある専門分野の情報(検索)システムは、その分野の専門家とコンピュータの専門家で開発される傾向にあるが、韓国歴史情報統合システムのような、充実したシステムは少ない。今後は、図書館情報学やこれに類する分野の専門家が、このようなシステムの開発に関与することが望まれる。
著者
宍戸 一郎
出版者
社団法人日本動物学会
雑誌
動物学雑誌 (ISSN:00445118)
巻号頁・発行日
vol.10, no.121, pp.399-405, 1898-11-15
著者
保 智己
出版者
奈良女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

松果体と副松果体の神経節細胞は脳の3か所に投射しており、特に松果体は脳の深部にまで軸索を伸ばしていた。最も背側の投射部位では脊髄へ投射している巨大ニューロンの樹状突起と結合していた。さらに電気生理学的な実験からこの経路が波長(「色」)情報を伝達していることが示唆された。また、波長識別に関与する緑光受容細胞の視物質も紫外光受容細胞と同様に光再生している可能性が示された。明暗情報に関しては少なくとも遊泳活動リズムへの関与が示された。
著者
加藤 哲男 君塚 隆太 岡田 あゆみ
出版者
東京歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

歯周病は口腔の主要な感染症であり、その原因となっているのは口腔内バイオフィルムであるデンタル・プラーク中に存在する細菌である。本研究は、歯周病原性バイオフィルムの形成に関わる因子について解析するとともに、その形成を抑制あるいはバイオフィルム細菌に対して抗菌性を発揮するような機能性タンパク質について検索した。培養細胞やマウスを用いて、シスタチンやガレクチンなどの機能性タンパク質のバイオフィルム形成抑制作用や内毒素活性抑制作用などを解明した。
著者
石井 重美
出版者
社団法人日本動物学会
雑誌
動物学雑誌 (ISSN:00445118)
巻号頁・発行日
vol.28, no.332, pp.214-220, 1916-06-28
被引用文献数
1
著者
木村 伸吾 北川 貴士 銭本 慧 板倉 光 宮崎 幸恵
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

ニホンウナギの回遊生態と生息環境の解明を目的として、産卵域が位置する北赤道海流域および代表的な生息水域である利根川水系での調査を中心に研究を実施したものである。その結果、レプトセファルス幼生は表層で懸濁態有機物を摂餌し、同じ形態を有していても種によって摂餌する水深が異なっていること、幼生の輸送過程は大西洋と大きく異なること、成魚は餌生物が多様な自然堤防域を好んで生息することなどを明らかにした。
著者
川井 考子
出版者
和歌山信愛女子短期大学
雑誌
信愛紀要 (ISSN:03893855)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.18-28, 2002-03

市販弁当類(幕の内弁当類18個,丼ものなど単品弁当7個)の栄養素含有量を調査し,成人女子(生活活動強度3)一日の栄養所要量の1/3量と比較検討した。(1)弁当に使用されている食品数は5〜19であった。消費期限・保存条件などの注意事項は大半の弁当に表示されていたが,食品添加物や栄養価表示は低率であり,原材料名を表示している弁当はなかった。(2)平均エネルギー量は692±223Kcal,たんぱく質24.2±7.6g,脂質量は21.3±12.4gであった。(3)エネルギー比率は,たんぱく質(P)14.5±3.6%,脂質(F)29.5±17.0%,糖質56.1±9.2%であった。5種類の弁当は900〜1200Kcal,たんぱく質30〜50g含有し,これは,一日の所要量の約50%を満たす量に相当していた。全体の6割が脂肪エネルギー比が高い傾向にあった。(4)脂肪酸の構成比は概ね良好であったが,n-6/n-3の比率が高値を示す弁当が6割あった。(5)食品数は多い割に野菜量(青果類)は非常に少なく,ビタミンC,Ca,Fe,Mg,Zn,Cuおよび食物繊維は全ての弁当で不足し,目標摂取量を下回っていた。ビタミンC以外の5種のビタミンの1/3所要量をほぼ満たす弁当は2個のみであった。(6)食品素材としては,うなぎ,さばなどの魚類,豆類,のり,椎茸,にんじん・かぼちゃが用いられている弁当が比較的バランスが良かった。(7)食塩含量は平均的であったが,食塩量約5gを含有する弁当が1割みられた。料理の調味%は標準的調味より,やや高かった。(8)エネルギー量,脂質量,ナトリウム量の表示値と実測値に差がみられた。単身者にとって,手軽に入手できる「市販弁当」は貴重な存在であるが,食生活に活かすには,食品素材の知識をもち,不足する栄養素,食品を補充することにより,バランスよい栄養摂取が出来るように工夫して食事としての質を高める必要がある。
著者
鈴木 重夫
出版者
名古屋女子大学
雑誌
名古屋女子大学紀要 (ISSN:02867397)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.127-132, 1987-03-01

幼児は日常的に走ることを好んで体験している.また,走る動作のある遊びを好んでしている.特に幼稚園のような集団生活をする場では,その集団力学的な面も関与して,走る活動が多くなっている.そのような中で,走る快感はもとより,止まることのタイミング,スピード感,距離感等が養われ,友達と遊ぶ喜びを味わい,ルールのある遊びを楽しむことによって社会性が発達する.このように走ることは,幼児の生活の中に深くかかわっている.3歳児にみられるような,ぎこちなさも,このような生活の中でやがて消失するであろう.しかし,この場合も,親や教師がよい模範を示すと同時に,それぞれの幼児の個人差や特徴及び実態に目をむけ,手の振りかたや,足のあげかた等,適切に助言を与えることを考える必要があるように思う.また,ゲーム的な遊びのみでなく,直線コースを友達と競争して力いっぱい走るとか,リレーをするとかの競技的な集団遊びも取り入れていくことが望ましいと考えている.それは,走る姿勢の矯正や,記録の向上を意味しているのではない.早く走ることのできる喜びを幼児なりに体験し,自信を持つことができるようになることを望んでいるのである.
著者
武智 靖博 坂牛 卓
出版者
一般社団法人日本建築学会
雑誌
日本建築学会北陸支部研究報告集 (ISSN:03859622)
巻号頁・発行日
no.50, pp.511-514, 2007-07-15

本計画は都市における地下空間について再考し、下記の3点に留意し、仙台駅の隣接地に地上10階、地下9階のオフィスと商業施設の複合施設を設計する。1)地下空間のネガティブな問題を、ヴォイドを活用させ、地下と地上の連動性を向上させることで改善する。2)地下空間特有のイメージを全て排除するのではなく、設計の際に迷路性や暗がりといった地下空間のイメージを転用していく。3)本計画において形成された地上構造物は、あくまで地下空間生成のルールに則って生産されたものである。
著者
長岡 直人
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

安定な電力供給に資するため,雷サージ,電気鉄道,配電系統高調波などを解析するソフトウェアおよび解析モデル構築ツールを開発した。回路解析と電磁界解析プログラムを相互補完的に用いて新たな知見を得ると共に,実機・縮小モデルを用いた実験により精度確認を行った。提案法は実用精度を有すると共に,従来と比して高速な解析が可能となり,本研究の成果は安定かつ高品位な電力供給,安全・安心な社会構築に貢献する.
著者
坂原 茂
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

本研究では,従来の意味論の枠内で処理することが困難なコピュラ文をメンタル・スペース理論の枠組みで研究し,コピュラ文に反映される人間の知識使用の柔軟性についての基礎的研究も行った.コピュラ文「AはBだ」は,通常,同一性と集合論的包含関係を表すと考えられている.本研究では,コピュラ文をさらに詳しく見た場合,変数的に使われた非指示的名詞句に値の割り当てを表現する同定文(「源氏物語の作者は,紫式部だ」).すでに同定された対象に付加的属性を付与する記述文(「紫式部は,源氏物語の作者だ」).異なる情報領域で互いに独立に同定された2つの対象の同一性を表わす同一性文(「シェークスピアはベーコンだ」),対象同定のパラメータと値が直接結合された多少アクロバット的な知識使用を含むウナギ文(「私はウナギだ」),メタ言語的な定義文(「ピラミッドは古代エジプト王の墓だ」)などのさまざまな用法があることを明らかにし,それらの用法の相互関連について考えた.この研究は,シカゴ大学出版から刊行されるメンタル・スペース理論関係の論文集に掲載予定である.さらに.コピュラ文の特殊例としてトートロジーについても考察を広げ,それを東京大学教養学部紀要に発表した.その後,コピュラ文の意味論から考えた場合,トートロジーは4つの基本的用法があり,それ以外の用法はすべてこの4つからの派生として説明されるべきであるという暫定的結論に達し,その主旨の口頭発表を筑波大学で行った.この結論が,広くデータを収集した場合も成立するかどうかは確かめていないが,トートロジーの多様な用法に対する包括的理論を構成できるという見通しを得ることができた.この点に関する本格的研究は,将来の研究課題である.また,知識使用との関連で,条件文の語用論的解釈についての研究も行った.
著者
Guan PANG Guijin WANG Xinggang LIN
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
IEICE TRANSACTIONS on Information and Systems (ISSN:09168532)
巻号頁・発行日
vol.E93-D, no.3, pp.658-661, 2010-03-01

Human detection has witnessed significant development in recent years. The introduction of cascade structure and integral histogram has greatly improved detection speed. But real-time detection is still only possible for sparse scan of 320 240 sized images. In this work, we propose a matrix-based structure to reorganize the computation structure of window-scanning detection algorithms, as well as a new pre-processing method called Hierarchical HOG Matrices (HHM) in place of integral histogram. Our speed-up scheme can process 320 240 sized images by dense scan (≈ 12000 windows per image) at the speed of about 30 fps, while maintaining accuracy comparable to the original HOG + cascade method.
著者
井坂 行男 井賀 誠子 増田 朋美 仲野 明紗子 松岡 梨恵 原田 利子 内藤 志津香
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要 4 教育科学 (ISSN:03893472)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.33-49, 2006-09

本論文は聴覚障害を有する幼児の教育相談支援事例についての報告である。人工内耳を装用した幼児と他の障害を併せ有する幼児に対して,言語獲得支援を行った。その結果,コミュニケーション手段(手話)の獲得によって,情緒の安定,こだわりの減少,コミュニケーション意欲の向上が認められた。This paper is a case study of educational consultation support of infants with a hearing impairment. We gave support to an infant with Coclear Implant and an infant with other impairment for the language acquisition. As a result, It was admitted that they stabilized emotion, decreased the sticking to interesting things and improved the communications will by the acquisition of the communications means (Sign Language).
著者
有斐閣 [編]
出版者
有斐閣
巻号頁・発行日
1986