著者
中島 真紀 松村 千鶴 横山 潤 鷺谷 いづみ
出版者
日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.57-63, 2004-06-30
被引用文献数
7

温室栽培トマトの授粉用に導入されたセイヨウオオマルハナバチの野生化の状況を把握するために,2003年5月下旬から8月下旬にかけて北海道勇払郡厚真町および鵡川町において踏査による営巣場所探索の調査を行った.のべ18人日の調査により,8つのセイヨウオオマルハナバチの野生化巣と11の在来マルハナバチの巣が発見された.巣の発見場所は,主に水田の畦や畑地の用水路の土手であり,特にセイヨウオオマルハナバチとエゾオオマルハナバチ,エゾトラマルハナバチは営巣場所の選択において類似性が高いことが示された.さらに在来種であるエゾオオマルハナバチの1つの巣から,セイヨウオオマルハナバチの働き蜂が出入りしていることが確認された.在来マルハナバチ類とセイヨウオオマルハナバチが同じ巣を利用することにより,寄生生物の異種間感染をもたらす可能性が示唆された.
著者
加藤 昌英 辻 元 田原 秀敏 横山 和夫 青柳 美輝 山田 美紀子 谷口 肇
出版者
上智大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本年度(補助金が交付されてきた期間を含む)に行った研究によって得られた結果は以下のとおりである。1.複素3次元射影空間のある種の領域(「広い領域」)の商多様体の分類に関して次のことが分かった。すなわち(1)この問題を(複素1次元の)クライン群理論の高次元化(奇数次元のみ可能)と考えた。特に複素3次元の場合には、Grassmann多様体G(4,2)に作用する群と考えることによって、うまく問題の定式化(2)クライン群理論における初等型の群に対応する部分の複素3次元版がほぼ完成した。ここで初等型の群とは3次元射影空間の稠密な領域に作用する「端点(end)」が有限である群と定義する。特に固有不連続な開集合の商空間が正の代数次元を持つコンパクトな成分を少なくともひとつ持てば、固有不連続な開集合は3次元射影空間の稠密な領域であって、クライン群は初等型になることが示された。同時に商多様体も有限不分岐被覆を除いて分類された。ここの議論では、(非Kaehler多様体を含む)複素多様体への正則写像の、S.Ivashkovichによる拡張定理が有効に用いられる。現在、発表のための草稿の作成と、証明の改良(なるべく概念的な証明に直すこと)を行っている。が出来ることがわかった。これによって基礎になる種々の概念が固まった。2.複素多様体がprobableになるための良い十分条件を求める問題についてはまだ手がついていない。複素射影構造が特異点集合の持つ場合の考察についても進歩がなかった。ともに今後の課題である。
著者
樽田 誠一 齋藤 直人
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

カーボンナノチューブ(CNT)を1.5SBF(無機イオン濃度が体液のそれよりも1.5倍高い溶液)へ浸漬させ、アパタイトの析出を検討した。CNTにアパタイトを短時間で均一に析出させるには、リン酸あるいはCaCl_2水溶液などで前処理した少量のCNTを1.5SBFへ均一に分散させることあると結論付けられた。また、CNTとアパタイト粉末を用い焼結法で複合化を行った。CNTが均一に分散した緻密な複合体が得られ、一般的なアパタイト焼結体と比べ、複合体の破壊靭性は向上したが、焼成中に発生したクラックにより曲げ強度は低下した。
著者
副島 光洋 長藤 将史
出版者
九州産業大学
雑誌
九州産業大学工学部研究報告 (ISSN:02867826)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.1-6, 2005-12-20

As reported in the previous studies on the friction characteristics for the cam and slipper follower, the effect of the anti-wear and friction modifier additives, ZnDTP and MoDTC, additionally blended as a kind of the supplementary FM agent to semi-used engine oils on the reduction of friction was made obvious through the experiment to measure the friction with the cam follower test rig, where the influence of soot contamination in oil on the friction was examined by mixing the carbon black substituted for the engine soot. In the present study, the experiment to examine the friction and wear characteristics was conducted under the condition of comparatively long test duration with the same test rig and test oils. Key study results are summarized as follows. (1) Both the supplement of the FM agent to the semi-used engine oil and the increase of the supplement amount seemed to be effective to reduce the friction and wear. (2) When mixed with the carbon black more than 1.0 in mass percentage, however, the effect for the wear becomes remarkably low while the effect for the friction is scarcely kept obvious. (3) The coagulation of soot in oil should be controlled by the dispersant, and the allowable rate of soot content in oil is less than 1.0 in mass percentage.
著者
江口 信清 藤巻 正己 ピーティ デヴィッド 山本 勇次 村瀬 智 瀬川 真平 池本 幸生 石井 香世子 四本 幸夫 古村 学
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

本研究の目的は、社会的弱者が、不利益をもたらされがちであった観光現象を逆手にとって、自立化・自律化の途を進み、かつ近代化の過程で喪失してきた自信やプライド、そして「伝統」を回復することはできるのだろうか。社会的弱者の自立的な生き方に観光がどのような意味を持つのかについて、世界の多様な地域の事例の比較分析し、考察をすることにある。比較研究の結果、少なくとも4つの結論を得た。(1) 途上国における社会的弱者は、観光にかかわるだけでは自立しえないであろう。(2) 外部で作られた観光の概念やスタイルと現地の人たちの理解するそれらの間には、しばしば齟齬がある。(3) 自生的なリーダーとこの人物を支えるフォロワー関係の存在が、観光開発の成否やコミュニティの福祉の改善に大きくかかわる。そして、(4) 女性の役割がたいへん重要であるということである。
著者
坂東 要志 野口 宏一朗 永田 真
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ICD, 集積回路 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.550, pp.61-66, 2007-02-28

サブ100nm CMOS時代を迎えて、大規模・高速デジタルLSIにおけるダイナミックな電源雑音やウェル電位変動に起因したシグナルインテグリティの劣化が顕著になっている。本研究は、サブ100nmデジタルLSI内部の、電源、グラウンド、ウェル、および信号、などの実測評価を目的として、多点・多電位かつ広帯域な波形の捕捉を簡易に実現するオンチップ・モニタの回路構成を提案する。提案する回路はソースフォロワ入力段と、その出力電圧を電源値に線形変換するとともにサンプル/ホールド動作する出力段からなり、1.0Vの大振幅(フルスイング)信号に対する実行帯域は1.1GHz、モニタの面積はチャネルあたり30μm×120μmである。また、出力段からのサンプル値を電流出力する構成により、単一の電流出力配線・出力パッドを複数のモニタ回路で共有でき、多点・多電位モニタアレイの搭載コストををチップ面積やパッド数の面から低減しているから、サブ100nm CMOS時代のシグナルインテグリティ解析・検証に、実務的に役立つ回路IPである。
著者
宮内 勝敏 高橋 広 上田 重春 河内 寛治
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.32, no.7, pp.1126-1130, 1996
被引用文献数
1

Hirschsprung 病の父子例について報告した.父は1971年生まれ.生後8ケ月,他院にて一期的根治術を施行された.aganglionosis の範囲は S 状結腸までであった.子は1995年8月生まれの男児.生後2日目,腹満にて発症.生後6日目,右横行結腸瘻造設.生後3ケ月,Duhamel-池田変法にて根治術施行.aganglionosis の範囲は横行結腸中央部までであった.Hirschsprung 病は家族性の比較的高い疾患として知られているが,親子例の報告は比較的少ない.本邦における自験例を含めた4組7例,海外における28組51例を集計し考察した.男女比を親についてみると,父親11例 (42%),母親15例 (58%) と一般の発生率に比べ女性の比率が高い.また,aganglionosis の範囲については,子供の方が親より長い傾向にあった.
著者
渡辺 守
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2010

本研究は申請者らが独自に研究を展開してきた腸管上皮細胞による粘膜免疫の機能調節に注目し、自然炎症の調節異常がもたらす炎症性腸疾患の発症メカニズム解明と新規治療法の開発基盤を目指すものである。その解析には細胞株を用いた解析系よりも腸管上皮細胞の初代培養細胞が理想的である。我々は当該研究期間において、大腸組織から単離した上皮細胞の初代培養系を確立することに世界で初めて成功した(Nat Med 2012)。その培養技術の特徴は、マウス大腸組織から正常上皮を単一細胞として単離し、3次元的にsphereを形成させながら長期に亘って継代培養が可能なものである。本研究期間で我々はこの技術をさらに応用し、腸管上皮細胞によるエンドサイトーシスおよびトランスサイトーシスの解析系を構築することに成功した。この解析系の樹立によって、これまで困難であった腸管上皮細胞に特徴的な膜輸送の生理的アルゴリズム解析が可能になったといえ、今後さまざまな免疫学的解析に応用できると期待する。さらに現在我々は、Lgr5陽性上皮細胞から吸収上皮細胞、神経内分泌細胞、杯細胞など各々の系統に分化した細胞における自然炎症調節機構を詳細に解析している段階である。こうした研究結果は、これまで明確に把握し得なかった腸管上皮細胞における自然免疫応答を、より生理的で正確に解析できる重要な手がかりになると期待できる。またこうして得られる解析結果をもとに、既に我々が確立した腸管上皮の移植実験系に応用し、in vivoにおける評価に直ちに結びつけることが可能であると我々は確信している。
著者
矢部 辰男 茂木 幹義 Selomo Makmur NOOR Noer Bahry
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.43-47, 2001
被引用文献数
1 2

インドネシアの西チモールと中央スラウェシにおける水田開発がクマネズミ個体群に与える影響を調べた。西チモール(1998・99年8月の乾期と2000年2月の雨期)ではクマネズミは家屋のみで捕獲され, 水田(いずれも田植期)に生息する形跡はなかった。8月の捕獲個体の約半数が収穫期(5∿6月, 雨期または雨期直後)生まれと推定された。中央スラウェシ(1998年8月の雨期)ではクマネズミは水田(成熟期・収穫期)に生息しており, ここで捕獲されたうちの約半数が7∿8月生まれと推定された。これらの結果から, クマネズミは雨期または雨期直後の収穫期に活発に繁殖し, 収穫後に家屋に移動することが示唆された。水田開発はクマネズミの繁殖を促し, また屋外と家屋との間の移動を促すと推測される。
著者
菊池 久和
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会ソサイエティ大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.1997, 1997-08-13

電子回路の授業についてパネル討論をするから出てくれと言われ、小生は素人ゆえお断りすると申し上げたところ、素人の意見も聞きたいのだと切り返され、まんまと罠にかかった次第である。必ずしも電子回路を専門としない先生でもしっかりと授業をされているであろうが、本稿ではへたな素人が電子回路の授業をするとこんな程度にしかできないという一例を記し、話題提供の一助としたい。
著者
由井 義通 若林 芳樹 神谷 浩夫 古賀 慎二 宮内 久光 加茂 浩靖 中澤 高志 久木元 美琴 久保 倫子
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

労働の女性化の実態を把握するために,労働市場,就業先における労働状況,終業後の生活時間,家族状況などの相互の側面を関連づけながら,労働力の女性化の実態について多面的な解明を試みることによって,経済のサービス化とグローバル化を原因とした労働の女性化について明らかにした。研究の意義としては,労働力の女性化に対して多様な女性就業の実態を捉えるとともに,住宅問題や保育問題を関連させて分析した点である。
著者
山田 尚勇
出版者
国立情報学研究所
雑誌
学術情報センター紀要 (ISSN:09135022)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.81-109, 1998-03

本稿では、まずごく初歩的な数理的分析を通して、かつて日本の思想を風靡した精神主義の非合理性を検討し、大東亜戦争における日本の敗北の真の一因を明らかにする。その上で、そうした思想を醸し出す一端となった、日本語の表記法の問題点を検討し、この間題についてはわれわれの多くがいまだに不合理な思考の枠に囚われていることを指摘する。
著者
電気工学会 編
出版者
電気工学会
巻号頁・発行日
1925
著者
友部 博教 松尾 豊 武田 英明 安田 雪 橋田 浩一 石塚 満
出版者
社団法人 情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.46, no.6, pp.1470-1479, 2005-06-15
被引用文献数
7

Web上では,あらゆる人があらゆるトピックについて何でも書くことができる.セマンティックWebでは,情報の信頼性をWeb of trustにより計算することが重要な技術である.我々はこれまで,研究者の協働関係ネットワークをWeb上の情報から抽出する研究を行ってきた.本論文では,Webから抽出した情報を用い,人の関係性をセマンティックWebの枠組みの中で記述できること,得られたネットワークの中心性の解析をすることで,コミュニティにおける著名な人物が分かること,それが信頼性につながる別の尺度と相関していることを示す.セマンティックWebにおいて,人のネットワークを情報の信頼性の計算に用いる1つの新しい方法を提案していると考えている.Anyone can say anything about anything on the Web. In the context of Semantic Web, it is important to caluculate the trust of information based on "Web of Trust." We have developed an automatic extraction system of a social network among researchers from the Web. In this paper, we describe that the extracted relation is useful for human relation description in the context of Semantic Web. Moreover, we can extract the central persons in a community by analizing the network centality. Centrality measures are used as a surrogate of trust degree. Our approach shows an overall architecture to calculate the trust of information based on a social network.
著者
上北 恭史 花里 利一 稲葉 信子 松井 敏也 小野 邦彦 箕輪 親弘
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

本研究は2006年5月27日に起こった地震によって被災したインドネシア共和国ジャワ島中部の世界遺産プランバナン遺跡群及びその周辺の石造による組積造建造物遺産の破損メカニズムと修復計画策定の手法の開発を行うものである。研究は、1)常時微動測定と亀裂変位測定をシバ祠堂を中心に行い、2)シバ寺院内部構造解明のため、植民地時代に修復された記録をオランダの国立図書館にて調査を行い、3)遺跡公園の観光マネジメントの調査を行った。研究の結果、シバ祠堂は構造的に安定していることが明らかになった。またシバ祠堂に内部構造を示す歴史的資料はオランダにも現存していないことがわかったが、一部の資料からシバ祠堂の内部はコンクリートで補強されていることが想定される。そして遺跡公園を訪れる観光客の多くはプランバナン遺跡の中心であるロロ・ジョングラン寺院に集中して訪れているため、災害時の避難のためのガイドラインが必要なことが明らかになった。