著者
神尾 達之
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

ラーヴァーターは学問の手前に位置していた観相学を学問に格上げしようとした。ラーヴァーターの観相学とその受容史を追うことで、次の二点を確認することができた。(1)学問がその条件として内包している客観的な観察という方法と、観察主体の透明性という前提は、近代の発明である。(2)観察主体が自覚しないままに自己特権化し、それを可能にするテクノロジーが開発されることによって、レヴィナスのいう「他者」の顔は隠蔽され続ける。
著者
池上 良正 中村 生雄 井上 治代 岡田 真美子 佐藤 弘夫 兵藤 裕己 松尾 剛次 池上 良正 中村 生雄
出版者
駒澤大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

「供養の文化」を日本の民俗宗教の重要な特徴のひとつとして位置づけることによって、古代・中世から近現代にいたる、その歴史的変遷の一端を解明することができた。さらに、フィールドワークを通して、中国・韓国を含めた現代の東アジア地域における「供養の文化」の活性化や変貌の実態を明らかにした。
著者
藤田 英典 紅林 伸幸 酒井 朗 油布 佐和子 名越 清家 WONG SukーYin
出版者
東京大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1994

本研究は、日本、カナダ,アメリカ、イギリス第8カ国の国際比較共同研究「教師の専門性と教師文化に関する国際比較研究(略称:PACT)」の一環として、PACT日本チームによって行なわれたもので、学校教育及び教師の仕事の改善に資することを目的として、文献研究、エスノグラフィ調査、及び質問紙調査を行い、日本における教職の専門性と教師文化の構造・特質について考察したものである。その成果と知見は多岐にわたるが、主なものは以下の通りである。1.教師文化と教育実践に関するエスノグラフィ的研究平成6年度に1年間にわたって4地域の小・中学校各1校(計8校)でフィールドワークを行ない、教師の仕事と教師文化について考察を行った。その成果の一部は、「II.研究発表」欄に記載の論文等にまとめられている。また、その知見の一部としては、教師の仕事が多種多様な作業(ワーク)によって構成されており、それが重層的に展開していることのなかに、教職の専門性や教師の多忙感の基盤があることが明らかにされた。2.教師の生活と意識に関する質問紙調査平成7年7月〜9月に全国8都県の小・中学校教師2053人を対象に実施し、教師の生活と教師文化の構造について考察した。その成果の一部は、「II.研究発表」欄に記載の研究報告書にまとめられている。同報告書において、教師の同僚性、教職の専門性、教員集団の構造、学校の組織構造などが考察・解明されている。3.PACT国際会議等での研究成果の発表平成7年4月の全米教育学会大会(AERA)、同年同月のロンドンでのPACT国際会議等、研究成果の一部を発表した。なお、今後さらに、英文で研究成果をまとめ公表する予定である。
著者
紅林 秀治 兼宗 進 鎌田 敏之
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

コンピュータがプログラムで動作し, 様々な機器の動作を制御していることを体験的に学習することで, 科学的にコンピュータを科学的に理解する能力が身に付けることができることが可能になるか調査した。そのために, 独自の教材用自律型ロボットを開発し, 中学生に対する授業実践を行った。その結果, 自動制御機器や家電等, 日常利用している自動化されている機器の仕組みを類推できる能力が身に付いていることがわかった。類推の背景には, コンピュータ, 電気回路, アクチュエータ, センサー等が連動していているシステムを構成していることや, 入力に対してその情報を処理して出力している関係を理解するなど, コンピュータの役割や仕組みを科学的に理解する視点が生まれてくることがわかった
著者
河合 望
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、古代エジプト新王国時代の王墓の副葬品を総合的に研究し、葬制の一端を明らかにすることを目的とした。中でも早稲田大学が1991年より調査を継続している王家の谷・西谷のアメンヘテプ3世王墓出土の副葬品の研究を中心にエジプトおよび欧米の博物館・美術館で調査研究を実施した。また自らが発掘調査を手がけたラメセス2世の孫娘イシスネフェルトの墓出土の副葬品の研究等も実施した。これらの研究により、新王国時代の王および王の埋葬にかんする理解を深めることができた。
著者
森岡 裕一
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

19世紀アメリカの禁酒小説と家庭小説に見られる感傷主義に着目し分析を進めた。とりわけ禁酒小説に関しては、その代表的作品ともいえるT・S・アーサーの『酒場での十夜』の翻訳を解説とともに出版できたことは意義深い。また、「涙する少女」のモチーフを通して、禁酒小説と家庭小説に共通する特質を抽出し、その成果を口頭発表や講演で発表、さらには論文や啓蒙的文章という形で公刊しえたことは大きな成果だと自負している。
著者
中野 正昭
出版者
明治大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、大正期に流行した浅草オペラがどのような舞台だったかを、オペラ座の検閲台本を基に考証した。従来、浅草オペラは西欧オペラを<簡略化>したものに過ぎないと考えられてきた。しかし、上演台本を調査・分析した結果、実際には、台詞や場面を新たに書き加えたり、興行法に従うために一つのグランドオペラ作品を複数回に分けて上演するなど、当時の日本の観客が既知の演劇文化の文脈の中で享受できるように工夫を凝らした、日本独自の演劇として<再構成>されたものであることを、具体的な作品の上から明かにした。
著者
長谷川 恒雄 LEVY Christi MARIOT Helen 細川 英雄 砂川 裕一 佐々木 倫子 RADKE Kurt W. COOK Haruko M. YUE Kwan Cheuk BEKES Andrej CHEUK Yue K LEVY Christ MARIOTT Hel STEINHOF Pa RADKE Kurt BEKES Andre KWAN Yue Che MARIOTT Hele STEINHOFF Pa RADKE Kurt W BEKCS Andrej
出版者
慶応義塾大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1995

本研究に先行し、本研究組織中の長谷川、佐々木、砂川、細川の4名は平成4・5年度文部省科学研究費補助金(総合研究A)「外国人留学生のための『日本事情』教育のあり方についての基礎的調査研究」(課題番号04301098)を得て、国内の大学等高等機関における「日本事情」教育の教育状況を調査し、「日本事情」教育の向かうべき理論的方向を研究したが、本研究においてはその研究成果をさらに世界的視野に発展させ、世界の諸大学の「日本事情」教育について調査し、その結果をもとに、意見交換を行ないながら、「日本事情」教育の国際比較研究を行なった。その結果、「日本事情」という名称の特殊性、あるいは地域による教育方法の差異が明確になり、従来漠然と指摘されていたこと等が本調査研究によって確認されるとともに、今後の質的研究のための基礎が形成できた。今後はこうした研究をさらに深めるため、「日本事情」教育の内容についての理論・実践を具体的に検討することが必要となる。
著者
田崎 直美
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2002

本研究は、ドイツ占領下(1940-1944年)のパリにおけるフランス人作曲家の音楽活動を具体的に検証することで、1)政治的要素が音楽製作や上演に与えていた影響、および2)音楽家が選択した文化面での態度、を考察し、当時の音楽様相の一端を明らかにすることを目的とした。1.占領下パリでの音楽活動における政治的影響:国立オペラ劇場連合(RTLN)について報告者はこれまでに、RTLNにて上演された作品とその上演傾向、およびフランス人作曲家による新作の検証と考察を行った。本年度は補足的研究として、RTLNの音楽活動への占領当局の関与について、現在までに収集可能であったフランス国立古文書館所蔵の史料を整理した。これにより、これまで知られていた事実(ドイツ人演奏団体の客演公演、ドイツ人作曲家のための音楽祭)に加えて、特定作品の上演要求、ドイツ人用座席の増加要求、人事への干渉等が行われていたことが判明した。2.音楽家の態度:プーランクとオネゲルを中心に本年度は、作曲家オネゲルのパリにおける音楽活動について、1)楽曲分析(占領下で作曲もしくは上演された作品について)、2)言説の分析(Comoediaに掲載された彼の音楽批評より)、3)作品の上演状況と当時の批評の検証(L' Information musicaleより)、を行った。この結果にプーランクの音楽活動を合わせ考えると、次の点が指摘できる。すなわち、二人の作曲家はこれまで政治的に両極の立場(対独協力およびレジスタンス)を取っていたと考えられがちであったが、作品上演の場は多くが共通していたこと、そして上演作品をめぐる政治的イデオロギー(「国民革命」、「ナショナリズム」)にも類似性が見出されることである。これには同時代人による「解釈」の問題が大きく関わっており、当時音楽と政治権力が切り離しがたい関係にあったことがうかがえる。
著者
匂坂 勝之助 荒木 忠 大和田 琢二 藤川 清三
出版者
北海道大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1990

プラスチド イニシャル形成と低温度要求性:休眠覚醒後にプラスチド イニシャルの形成が始まるので、休眠覚醒のおこる低温度と覚醒のみられない環境条件下にポプラをおいて比較検討した実験で、休眠覚醒のみられないポプラではプラスチド イニシャルの形成は全く進行しないことがあきらかになった。プラスチド イニシャルは遊離状態で存在すること:ポプラの皮層部から遊離状態のプラスチド イニシャルを得た。プラスチド イニシャルの形成は多年生植物(樹木)で一般的にみられること:ダケカンバ、エゾニワトコ、スグリ、キタコブシ等の皮層細胞に休眠覚醒後にプラスチド イニシャルが存在することを明かにした。草木植物にプラスチド イニシャルが存在することを証明する予備的調査:ジャガイモ魂茎の形成期にアミロプラストの前駆体と思われる構造体の存在することを確かめた。この研究は現在継続中である。プラスチド イニシャル形成は各組織で同時に始まる:リンゴの花芽、葉芽及びシュートの皮層細胞でこのことを明らかにした。成熟プラスチドを経ないプラスチド イニシャルの形成:リンゴの花芽、葉芽及び皮層細胞から成熟プラスチドを経ない新しい形成過程を示す電子顕微鏡像を得た。この実験で、プラスチド イニシャルの形成に小胞体が直接関与していること及び小胞が活発に形成されてプラスチドイニシャルに融合している電顕像を得た。
著者
住吉 広行 山根 宏文 益山 代利子 建石 繁明 SHIRINASHIHAMA Hiroyuki MINEGISHI Yoshio
出版者
松本大学松商短期大学部
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

今回の申請は、安曇野が持っている豊かな自然環境や文化的な土壌を活かして、グリーンツーリズムあるいはエコツーリズムという視点で観光産業を発展させ、地域の活性化を図ろうとするものであった。特に、この地域では多くの方々が同じ思いで、独自の取組をされているが、それらがなかなか有機的に結びついていないという欠点を持っていた。それを大学という学術的な面での拠点を活かして、人と人とを結びつけ、新たな事業展開を図ることを一つの大きな目標にしていた。この点に関しては、2度の集いを開催し、各回70名を越える参加者を得ただけではなく、参加者自らが情報ネットワークを構築して、互いの情報交換を頻繁に行おうというところまで進展させることが出来た。参加者同士での知識や技術の交換も行われ、こうした方向性に参加された多くの方々が意を強くされた集会となった。一方で、安曇野が持つ観光資源をさらに広い視野で捉えようと、国内においては、産地直送や安全安心をテーマとした都市と農村の交流を活性化させることや、ユニバーサルデザイン化された観光地という視点での問題点洗のい出し、さらには環境を重視した世界的な取組などを、地域の方々と連携しながら学ぶ中で、これからの安曇野観光を共に考える機会が持てたと思われる。また、行政との連携という視点では、安曇野観光ネットワーク推進協議会やそれがさらに発展した、安曇野ブランドデザイン会議の進展などの成果があり、その後も大学と国営アルプスあづみの公園などが連携して、地域住を巻き込んだ健康づくりの活動も進んできている。また団塊の世代を対象とした、エコツーリズムのプランも旅行業者や地元観光業界などとの提携で、順調な足取りを踏み出して来ている。
著者
豊國 伸哉
出版者
名古屋大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

ゲノム情報の変化は発がん過程で重要な役割を果たしている。本研究においては、培養細胞や個体各臓器の細胞のゲノム配列において、紫外線・放射線あるいは鉄を介した酸化ストレスによってDNA塩基への傷害が起こりやすい部位をアレイ技術の応用により網羅的に同定し、その法則性を見いだすことを目的とした。これまでに、私たちは鉄ニトリロ三酢酸(Fe-NTA)腹腔内投与による腎発がんモデルを開発し、その病態に酸化ストレスが関与すること、主要な標的遺伝子にCDKN2Aがん抑制遺伝子やptprz1遺伝子などがあることを示し、ゲノムに酸化ストレスに対して欠損・増幅しやすい領域があることを報告した。今年度は遺伝解析より新たにalninoacylase-1にがん抑制遺伝子としての作用があることを見いだした。昨年度に引き続き、モノクローナル抗体で修飾塩基を含むDNA断片を免疫沈降する技術とマイクロアレイ技術を組み合わせることにより、ゲノム内の酸化ストレスに対する脆弱部位を網羅的に解析した。Fe-NTA腹腔内投与による腎癌モデル初期において代表的な酸化修飾塩基である8-hydroxy-2'-deoxyguanosine(8-OHdG)に対するモノクローナル抗体を使用した実験を反復した。対照のラット腎臓ならびにFe-NTA投与3時間後の腎臓からゲノムDNAを抽出し、制限酵素BmgT120Iで切断後,DNA断片の免疫沈降を行い,8-OHdGを含むDNA断片を回収した。DNA断片を蛍光色素でラベルした後CCGHのアレイにハイブリダイゼーションし解析を行った。すると、8-OHdGは非遺伝子領域に高密度に分布し、遺伝子領域には相対的に低密度に分布することが判明した。ゲノムの遺伝子密度と8-OHdGの存在頻度に有意な負の相関を認めた。分布のパターンそのものは対照と酸化ストレスのかかった状態でほとんど差が見られなかった。CDKN2A部位では酸化ストレス時に8-OHdGの増加を認めた。
著者
松田 謙次郎
出版者
神戸松蔭女子学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

この研究プロジェクトは、過去の法令と言語をめぐるアプローチとは異なり、法令を言語データ(コーパス)と見なして言語変化・変異の観察を行い分析することで、法令の言語データとしての特質やその可能性を見極めようとしたものである。具体的な変異現象として先行研究の多いサ変動詞の五段化・上一段化現象を取り上げた。法令データを分析すると、その分布は先行研究の結果と似たものであり、法令データでも他種類と同様な変異が存在することが確認された。また同年に公布された法令間、また同一の法令の中でも同一動詞についてサ変~五段・上一段という活用のゆれが存在することが明らかとなった。次に改正履歴を追跡するために、改正履歴が追跡可能な法令データベースを用いて過去10年間におけるいくつかのサ変動詞の動向を調査した。その結果いくつかの動詞で変化が年とともに進行する様子を明らかにすることができた。これらの結果からは、この変化が法令作成に携わる関係者の意識下で進行する、「下からの変化」であることが分かる。また、内的要因を分析してみると、少なくとも五段化では、先行研究で主要な制約条件とされてきたものがそのまま当てはまることが判明した。
著者
PEKAR Thomas
出版者
学習院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

亡命をめぐる文化人類学的要素(ホームシック、故郷の文化と移住地の文化の差異による葛藤、新しい文化への結びつき等)は異なる分野の亡命テクスト(哲学、文化、文学等)に見られることが明らかになった。これらのテクストを「亡命の文化テクスト」と定義することが可能であり、亡命文学、移住文学、旅行文学に共通するカテゴリーを定義することができる。このカテゴリーは、文学研究および文化人類学の分野で「超域文化テクスト」と定義されている。この「超域文化テクスト」という手法上の概念は第一の成果である。さらに、異文化交流の観点から亡命概念を考察することにより、日本における亡命理解の背景が明らかにされた。日本文化においては、ユダヤやキリスト教文化をベースとする「亡命」の概念が根付いておらず、日本において「亡命」は「追放」の意味合いを持つものとして捉えられていた。ドイツと日本という異なる文化における「亡命」概念の差異の分析は第二の成果である。第三の重要な成果として、様々な文書館および図書館での資料収集、学会の開催(研究発表は出版予定)により、第二次世界大戦中の日本および日本占領地を含む、東アジアへの亡命の全体像が明らかになった点が挙げられる。
著者
渡邉 俤二 平川 一臣 澤柿 教伸 石川 守 岩田 修二 泉山 茂之 水嶋 一雄 落合 康浩
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

本研究では,パミール高原の中核地域であるタジキスタン共和国東部とキルギス共和国南部を主たる対象地域として,1991年の経済自由化がもたらした貧困が招く自然資源(大型草食動物と灌木)の利用(消費)の実態,土地利用(特に放牧地利用)変化,貧困が招いたオオカミ増加が家畜に対して与える影響,ツーリズムの現状,などを明らかにし,その上で持続的な自然資源の利用(保全)につながるジオエコツーリズムの導入について考察した。
著者
堀地 明
出版者
北九州市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究の目的は、清代中国における食糧暴動の首謀者がどのよう法令に基づいて、いかなる刑事罰を受けたのかを実証的に解明することである。雍正~道光年間(1723~1850)の事例を検討した結果、清代の食糧暴動の首謀者に課せられた最重の刑罰は、大清律例軍律激変良民の光棍条例による判決後の即時執行の斬首刑であった。食糧暴動が頻発した乾隆13(1748)年には、皇帝の意向により斬首執行後の梟首が付加され、刑罰の厳罰化がはかられた。
著者
志柿 光弘
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

本研究では米国との関係におけるプエルトリコ、日本との関係における沖縄という二つの事例について、「一定の地理空間を歴史・言語・文化的な同質性の基盤として有するが、独自の主権国家を形成することはせず、歴史・言語・文化的同質性の範囲を越えたより大きな主権国家内にとどまり、あるいは統合されることを選択している人間集団が構成する政治単位」としての「国家内地域」という概念を措定し、これを上記の事例に適用し、その有効性の検証を試みた。プエルトリコについては、地理的空間を基盤に持っていること、アメリカ合衆国とは明らかに異なる歴史的・言語的・文化的特性を有していること、しかし、分離独立を支持する住民は少数であり、アメリカ合衆国の主権下に止まることを住民は望んでいることから、「国家内地域」概念が有効性を持つと考えられる。また、沖縄については、地理的空間を基盤にしており、日本本土とは異なる歴史的・言語的・文化的特性を有しているが、明治維新以来の同化政策の結果、その差異はプエルトリコの場合ほどには顕著とは言えない。しかし、分離独立の可能性は持っており、「国家内地域」概念の適用は可能である。何れの事例についても、「民族」や「エスニック集団」という概念では、現状を十分に説明できないが、「国家内地域」概念を導入することによって、より客観的で冷静な理解が可能となる。
著者
崔 鍾植
出版者
大阪商業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

(1)最近の少年非行の動向としては、まず日韓ともに低年齢化の傾向が顕著である。少年比と殺人罪については韓国より日本のほうが高いが、反面、強盗罪と強姦罪、10万人あたりの少年犯罪者の割合は、韓国が日本より高く現れている。(2)少年司法においては、少年の健全育成という側面から見れば、全般的にいまだ足りないところが少なくない点から、日韓ともに「少年保護の理念」という初心に帰って処遇の多様化と充実化のためのさらなる工夫が必要であると判断される。特に、日韓ともに刑事裁判において少年に対する配慮が足りないところが多い点から抜本的な改善方策が急を要する。(3)日韓少年司法において望ましい市民参加による裁判制度については、少年審判と刑事裁判ともに参審制形態の市民参加による非公開の裁判制度の導入を検討すべきであるという結論に至った。
著者
高野 忠 戸田 知朗 遠山 文雄 佐々木 進
出版者
宇宙科学研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

レーザレーダの探知能力は、レーザの出力と送受信の光アンテナの性能に強く影響される。しかもレーザの放射パターンは、暗点が無くなるべく一様であることが必要である。従来の1W級の大出力レーザをワイヤレス応用すると、パターンが乱れているために性能が著しく劣化してしまう事を、実験により示した。そして最も有望なブロードエリアレーザにおいて、パターンの平滑化を実現するための設計法を導いた。高性能光アンテナについて、製作誤差に強い鏡面修整法として、給電系のレンズと副反射鏡を修整することを考案した。その効果を、シミュレーションにより明らかにした。複数のレーザからの放射光を空間的に重畳することにより、強い照射光および受信光を得られる。更に単一レーザ光で問題になるスペックル効果を、制御することが可能である。これらのことを、実験的に明らかにした。