著者
佐々木 哲也 本田 尚 山口 篤志
出版者
独立行政法人労働安全衛生総合研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

ワイヤロープの疲労破壊はこれまで表面素線が先行すると考えられていたが、IWRCロープでは、内部の素線が先行する場合のあることが明らかになっている。そこで、本研究では各種IWRCロープについてS字曲げ疲労試験を行うとともに、ワイヤロープ素線のフレッティング疲労試験を行った。その結果、フィラー形とウォリントンシール型ではどちらも内部の損傷が先行するが、その損傷形態には大きな違いがあることが明らかになった。またフレッティング疲労には、素線に作用する繰返し引張荷重の大きさよりも素線同士の圧縮力の方が大きな影響を及ぼすことが明らかになった。
著者
大西 真駿
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2021-04-01

不良または余剰なミトコンドリアを適切に分解し除去することは細胞の健康維持に重要である。マイトファジーはオートファジーの仕組みを利用してミトコンドリアを分解する仕組みであるが、その詳細な分子機構はほとんど不明であった。本研究では出芽酵母を用い、ミトコンドリアと隣接するオルガネラである小胞体に存在する膜タンパク質がマイトファジーの制御に関わるメカニズムを解明する。この解析を通し、小胞体がミトコンドリアの分解制御にどのように貢献し、適切なレベルの分解を正確に駆動しているかの理解がより一層深まると期待される。
著者
綾部 早穂 山田 一夫 青木 佐奈枝 一谷 幸男 松井 豊
出版者
筑波大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

3つのアプローチからにおいのトラウマ記憶を探求した。臨床心理士への面接調査から、五感に示されるPTSD症状で、嗅覚に関する症状は当事者・治療者ともに認識が低いこと、味嗅覚は特定の被害とは結びつかないが、フラッシュバックで体験されることが示された。人間のにおい嫌悪条件づけ実験では、条件づけられたにおいへの主観的不快感には変化はなかったが、連続提示した場合に強度減衰が生じにくいことが示され、不快臭に対して注意が継続的に向けられることが示唆された。また、PTSDモデル動物に関しては、無臭の装置にラットを入れ、その後においと電撃を対提示した場合でのみ、においに対する恐怖反応がみられ、方法を確立した。
著者
矢田 勉
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

前近代の日本語表記における漢字・平仮名・片仮名の三字種の関係性については、片仮名・平仮名の用途区分を中心に言及されてきたが、先行研究は、ある一時期のみを分析対象とするか、時代差を考慮せず一つの論理で説明しているために、その時代的変遷が分析されてこなかった。本研究計画は、そうした問題意識から、三文字体系併用についての史的記述の再構を目ざす。そのために、同時期成立の漢字文・片仮名文・平仮名文の例を時系列に沿って出来る限り多く収集した上で、各々の筆者や成立事情・内容などを踏まえて、なぜその表記体が選択されたのかを分析し、各時代における三体系の用途の相違と重なりとを明らかにし、その変遷を記述する。
著者
佐藤 伸一 小川 文秀 小村 一浩 岩田 洋平
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

傷が治る過程には、様々な因子が関与するが、B細胞と呼ばれる免疫担当細胞が関わっているとは従来考えられていなかった。しかし、今回の研究で、このB細胞に発現する重要な分子であるCD19の発現を欠くマウスでは、傷の治りが悪くなり、逆にCD19を過剰に発現したマウスでは、傷の治りが良くなることから、B細胞が傷の治る過程に重要な役割を担っていることが明らかとなった。
著者
吉川 康夫 熊安 貴美江 飯田 貴子 井谷 惠子 太田 あや子 吉川 康夫
出版者
帝塚山学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本研究は、スポーツ内で生じるセクシュアル・ハラスメント問題の現状を解明するための最初のアプローチとして、女子大学生のスポーツ領域におけるセクシュアル・ハラスメント認識と経験を調査し、その特殊性を明らかにすることを目的とした。第一に、女子大学生について、セクシュアル・ハラスメントの経験および認識に関する全体的な状況を把握した。第二に、スポーツにおけるセクシュアル・ハラスメントについての経験や考えに関して女子大学生に対するグループインタビューを行った。第三に、体育系の女子学生とそれ以外の女子学生のセクシュアル・ハラスメント経験スポーツの場とスポーツ以外の場で比較し、両グループの経験および認識の差異を検討した。第四に、上記の調査結果を総合的に分析し、諸外国の調査事例との比較検討も含め、日本のスポーツにおけるセクシュアル・ハラスメントの特徴を女子学生の視点から考察した。体育系女子学生がスポーツの場で経験するセクシュアル・ハラスメントと、体育系以外の女子学生がスポーツ以外の場で経験するセクシュアル・ハラスメントの違いに関して、前者は「身体的特徴を話題にする」「腕や肩にさわる」などの行為を、後者はこれら2項目に加え、「性的なことばや冗談」「性的経験について質問」「からだを眺め回す」などの行為を多く経験していた。両者の認識の違いに着目すると、設定した19項目の行為のうち、17項目について、体育系女子学生(スポーツの場)は体育系以外の女子学生(スポーツ以外の場)よりもセクシュアル・ハラスメントになりうる行為に対して許容的であることが明らかになった。とりわけ、前者が経験する身体接触的行為については、これをセクシュアル・ハラスメントと認識しない学生も多く存在し、指導ゆえに許容される身体接触行為のなかに、同時にセクシュアル・ハラスメントとなりうる契機が存在することもまた、確認された。
著者
グレーヴァ 香子 グレーヴァ ヘンリク 赤林 英夫
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

本研究の目的は、ゲーム理論を主な道具として用い、労働者、企業は共に戦略的に行動しているという角度から労働の需給がどのように決まるのか、その結果としての賃金分布、就職/転職率労働供給量の性質などを、理論、実証の両面から分析することであった。1年目は労働者、企業がともに長期的利得を最大化するように行動し、しかも労働者は企業の行動を完全には知らないため、企業の評判が均衡に影響するというゲームモデルを構築してその均衡の性質を分析した。これと平行して日本の労働の特殊問題である配偶者控除制度に影響さる女性の労働問題についても考察した。また、実証分析の準備のためアメリカと日本の労働者行動のデータを収集、整理した。2年目は理論モデルの実証を主に、また理論モデルの発展についても研究を行った。理論分析の結果、労働者の転職行動は現時点での賃金だけに左右されるのでなく、労働者が予想する各企業の将来賃金、労働者の家庭状況や税制などにも依存することが考えられた。そこで、労働者が抱く将来賃金の期待は大企業ほど高いという『評判』モデルをアメリカのデータで検証し、理論の結論を支持する結果を得たまた、女性の労働供給は家庭状況や夫の所得控除といった税制に影響されていることも実証されたこの結果、労働供給は戦略的に行われていることが明確になり、これまでの価格理論的考え方(労働は賃金という価格により需給調整される財である)に一石を投じることができた。また、ゲーム理論の観点からも将来の予測がゲームへ参加するかどうかを左右するという新しいモデルとその応用を提供した
著者
嶋田 総太郎 松元 健二
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究では、ミラーシステムと報酬系と呼ばれる脳領野の活動に着目し、自己と他者の「一体感」がどのように形成されるかについて、認知神経科学的研究を行った。特に応援と被模倣という2つの社会性認知課題を取り上げ、報酬の共有化が一体感形成に重要であるという仮説を検証した。その結果、報酬を共有することによってミラーシステムと報酬系の活動が促進され、自己と他者のより強い一体感が醸成されることを支持する結果を得た。
著者
原 正昭 永井 淳 田村 明敬 山本 敏充 廣重 優二 小川 久恵 引土 知幸 梅田 光夫 川尻 由美 中山 幸治 鈴木 廣一 髙田 綾 石井 晃
出版者
埼玉医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

犯罪現場で時々みられる吸血蚊から、個人特定が可能かどうか、また、吸血後の経過時間を推定可能かどうかを目的として行った。2種類の蚊を、被検者計7名に吸血させ、一定時間経過後、殺虫した蚊からDNA抽出し、各抽出DNAを、3種類の増幅長の異なる増幅産物で定量を行った。また、15座位のSTR及びアメロゲニンの型判定を行った。その結果、型判定は吸血後2日経過まで可能で、ピーク高比などから総合的に半日単位の経過時間推定が可能であることが示唆された。17座位のY-STRの型判定結果も同様であった。今後、改良すれば、より精度の高い吸血後経過時間推定が可能であると考えられた。成果の一部は、英文誌に受理された。
著者
苅安 誠
出版者
九州保健福祉大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2001

1.問題と目的:ヒトの音声は、音源が声道で共鳴を受けた産物である。この音声が家族で近似していることは知られ、遺伝的により近い形態をとる双生児では声道が類似するために、音声がより近似すると考えられる。これまで、双生児音声を知覚的に観察した報告は数多くあるが、それを定量化して遺伝で規定される音声の諸側面を調べた研究はあまりない。そこで、本年度は、双生児の音声の音響的特性について、一卵性と二卵性双生児ペアでの近似性を調べた。2.研究対象:日本全国の多胎児サークルに文書で研究の依頼を行った。研究期間内に協力可能であったサークルの集い(青森、山梨、神奈川、福岡、宮崎)で、音声の収録を行った。対象は、幼児から学童の双生児ペア27組で、分析対象とした音声資料が収集可能であったのは、21組(一卵性MZ8組、二卵性DZ13組)であった。双生児42名(男子20名、女子22名)の年齢は、2〜12歳(平均4.52歳)であった。3.方法:音声資料は、日本語5母音の持続発声とし、音響分析プログラムMulti-Speechを用いて解析を行った。母音の中央部を切りだし、音声基本周波数Foと共鳴周波数(F1,F2,F4)を測定した。さらに、音響理論に基づいて、F4値より声道長(声帯から唇までの距離)の推定値を求めた。統計処理として、MzとDzで別々に級内相関を求めた。4.結果と考察:母音Foは、202Hz〜514Hz(平均307.6Hz)であった。級内相関係数は、Mzで0.73、Dzで0.09、であった。一方、F4(3930〜5560Hz)より推定された声道長は、10.70〜15.14cm(平均11.76cm)であった。級内相関係数は、Mzで0.86、Dzで0.34、であった。この声道長の級内相関の違いより、かなりの部分が遺伝で規定されると考えられた。5.結論と展望:双生児の音声は、その基本周波数(声の高さとほぼ一致する)と推定された声道長において、近似しており、特に声道長が遺伝でかなりが規定されることが明らかになった。これは、声道が構造上個体に付随する管腔であり、その随意的変化が小さいものであることからも、支持される。一方、声の高さは意図的かつ場面への適応的行動として変化の可能性がより高いため、遺伝の影響が明確化されなかったのであろう。
著者
多々納 詩織
出版者
島根県立大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2019-04-01

近年の慢性腎臓病患者増加の背景の一つに、食事からのリン摂取の増加がある。しかしながら、妊娠期や成長期といったライフステージにおけるリン摂取の増加が、将来の慢性腎臓病発症に及ぼす影響は不明な点が多い。さらに、妊娠期における母親の栄養状態は新生児の代謝機構に影響を与えることが知られ、妊娠期の母体のリン摂取状態が将来の慢性腎臓病の発症や進展に寄与している可能性がある。そこで本研究では、胎児期から将来の慢性腎臓病発症を予防する新しい栄養管理法の確立を目指す。
著者
広瀬 統一
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2023-04-01

本研究は、スポーツ活動中に好発するハムストリング肉離れの再発予防のために開発された傾斜台を用いて行う「インクライン・ノルディックハムストリングエクササイズ(NHE)」の予防効果に関する学術的基盤の構築を目的とする。そのため、ハムストリング、特に大腿二頭筋の肉離れ既往者を対象にして、本プログラム実施中の①両側・片脚実施時の筋活動の健側差、②エクササイズ介入後のスプリント中の筋の振る舞いと動作変化、③肉離れの再発予防効果の3つの課題を検討する。
著者
宮田 隆 水野 重樹
出版者
九州大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1988

一般に進化に寄与する突然変異の主要因はDNAの複製の際に生じるエラ-であると考えられている。もし、この仮定が正しければ、一般にオスの生殖細胞の分裂数がメスのそれ(前者の後者に対する比をαとする)よりずっと大きいと考えられているので、進化に寄与する突然変異の大部分はオスに由来する、という重要な結論へと導く。本研究は、このことを明らかにすることを目的として行われた。オスとメスの生殖細胞の分裂数に差があると、突然変異率が染色体間で異なることを理論的に導いた。すなわち、α>>1の場合、XX/XY型では突然変異率の比は、常染色体:Z染色体:Y染色体=1:2/3:2となる。興味あることに鳥類などのZW/ZZ型ではこの比がXX/XY型と比べて逆転することが示される:常染色体:Z染色体:W染色体=1:4/3:0(1/α)(0(1/α)は非常に小さな値)である。ここでXはZに、YはWに対応する。すなわち上記の仮定から、常染色体に対するX及びYの相対突然変異率(それぞれRx、Ryと書く)が哺乳類と鳥類で逆転する。この理論的結果を確認するために塩基配列の比較が行われた。遺伝子ごとにヒトとマウス(あるいはラット)の間で塩基配列を比較し、機能的制約がほとんど働いていない同義座位の置換率Ksを求めた。本研究では、常染色体遺伝子が35、X染色体遺伝子が6、Y染色体遺伝子が1つ解析され、常染色体遺伝子に対するX及びY染色体遺伝子の相対進化速度(R´x、R´y)が計算された。その結果、R´x=0.58、R´y=2.2となった。この結果は、理論的期待値Rx=2/3、Ry=2に非常に近い。以上のことから、我々は、進化に寄与する突然変異の大部分はオスによって生成されると結果した。我々は、鳥類でもこの結論を確認するため、Z及びW染色体遺伝子のクロ-ニングを試みた。残念ながら、クロ-ニングはまだ成功していない。今後も引続き続行する予定である。
著者
大路 樹生 井龍 康文 高柳 栄子 長谷川 精 Dornbos Stephen Q. Gonchigdorj Sersmaa
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

モンゴル西部ズーン・アツのエディアカラ系より藻類化石を発見し、その特徴的な保存状態に関して化学分析と考察を行った結果、バージェス頁岩タイプの堆積岩であることが判明した。またバヤンゴル渓谷のエディアカラ系より垂直構造を持つ生痕化石を発見した。これは海底下4㎝まで潜りU字状の形態をもった生痕で、おそらく前後に伸びた体制と深く底質を掘り込むことが可能な筋肉組織をもった左右相称動物によって形成されたもので、また捕食動物の存在も示唆される。このようにカンブリア紀より前に深く潜る生痕化石を報告し、左右相称動物と捕食動物の存在を示唆する成果が得られたことは、従来の学説を大きく変えるものとなった。
著者
西村 欣也
出版者
筑波大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1994

繁殖行動(繁殖の時期、産卵場所の選択、産卵する子の大きさなど)は、子孫を残すことに密接に関係をしている。そのため、繁殖行動は自薦選択によってどの様にデザインされてきたかを考えることは、行動の進化を研究する上で重要となる。産卵のためのコストと産卵された子どもの適応度の間にトレードオフの関係があるとき、産卵行動はそのトレードオフによってどの様の影響を受けるだろうか。寄生蜂(Dinarmus vasalis)を用いた実験から、寄生蜂の寄主選択は、産卵する雌が、交尾を受けているかどうかによって変わることが明らかになった(Nishimura,in MS)。生活史進化の数理生物学的解析によると、産卵のこめのコストと、産卵された子どもの適応度のバランスによって、寄主選択の仕方は左右される。寄生蜂は、未受精卵は雄となり受精卵は雌となる。卵の大きさに雌雄で違いはないので,寄主の条件が同じであれば、産卵のためのコストは、受精を受けた雌、未受精の雌の間で違いはない。産卵のためのコストと産卵された子どもの適応度の間にトレードオフがあるような2つのタイプの寄主(一方は、産卵しやすいが産みつけられた子どもの適応度が低くなる、他方はその逆)の利用の仕方は、産卵にかかるコストによって現在の生存率が減ることと、産卵のコストをかけることによって子どもの適応度が上がる事のバランスによって決まる。交尾を受けた雌では、よい発育条件のもとで、より適応度が上がる雌を産めるので、産卵に、よりコストをかけ、子どもの適応度が高くなるような寄主に産卵する、一方、未交尾雌では、よい発育条件のもとで雄の子が適応度を上げる利点よりも、産卵コストの少ない寄主に産卵して、生存率を高めた方が進化的に有利は方法となる。寄主選択は、生活史進化の解析から、交尾の有無、産卵にかけるコスト、産みつけられた子どもの適応度よって変化することが分かる。
著者
伊藤 美紀子 坂上 元祥 加藤 陽二 田中 更沙
出版者
兵庫県立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

透析患者では低栄養によるサルコペニア・フレイルの発症率が高い。その要因として高リン血症による心血管疾患を予防するためのリン摂取制限がある。リン摂取制限はたんぱく質の摂取不足につながる。マグネシウムは石灰化を抑制する。そのためマグネシウムの摂取は透析患者の血管石灰化と低栄養を抑制できる可能性がある。本研究では動物モデルを用いて、食事中のリン/マグネシウム比が血管石灰化と筋肉量に与える影響を明らかにする。さらに透析患者の食事調査を行い、リン/マグネシウム比と低栄養との関連を解析する。これらの研究結果にもとづいて栄養療法を開発する。
著者
中島 秀人
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

マイケル・ポラニーは、ハンガリー生まれの科学者である。しかし、彼についての歴史研究は、後半生の哲学者としての側面に偏っていた。本研究では、彼の物理化学者としての姿を詳しく明らかにした。ポラニーは、ギムナジウム時代から、物理化学に興味を持っていた。彼のブダペスト大学の博士論文は、吸着ポテンシャルを主題としたものだ。その背景には、化学反応の物理学的理解の探求がある。マンチェスター時代の反応速度論研究は、これと同一線上にあった。
著者
佐藤 由紀男
出版者
岩手大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

北海道苫小牧市タプコプ遺跡出土鉄器が紀元前2世紀の所産であり、かつ刃器であることが確認された。また北海道では、この時期の骨角器に鉄器による加工痕が確認された。鹿の角などの硬い素材の加工道具として鉄器が用いられたのである。こうした鉄器は、船を利用した日本海側の交易・流通で西日本から搬入されたものである。東北北部もその経由地の一つである。現時点では未確認であるが同じ時期の東北北部にも同様の鉄器が存在したと考えられる。
著者
坂本 龍太 Dendup Ngawang 安藤 和雄 坂本 陽子 赤松 芳郎
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2021-04-01

本研究は、日本、ブータン両国の関係者が互いに現場を行き交い、課題を共有する双方向型の研究である。高齢者の健康を守るという目的を共有しながら、医学、経済学、農学、文化生態学の専門家がチームを組み、高齢者の健康評価、伝統医療の調査、村の保健を基本的に無報酬で担うVillage Health Worker (VHW)の潜在力や持続可能性の分析、紹介医療システムの検証、過疎・離農の現状分析、それらの高齢者の健康への影響分析等に、VHWへのバイタルチェックのトレーニングや高齢者を源とする文化継承活動などのアクション・リサーチを交えて、地域社会と協働で高齢者の健康を守る仕組みをつくる創造型地域研究である。
著者
松村 英之 橋本 光靖 浪川 幸彦 向井 茂 大沢 健夫 四方 義啓
出版者
名古屋大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

1.橋本は局所環の重複度の研究,ことに交差の重複度が零にならないというセール予想の研究に取り組んだが,大問題なのでまだ結果が出ていない.2.岡田はフィボナッチ半順序集合に関係した半単純代数の増大列とその既約表現などについて研究したが,平成5年9月からM.I.T.に留学中である.3.吉田はlinear maximal Buchsbaum modulesを定義してその性質を研究した.局所環(A,m)上の有限生成加群Mが,e(M)+l(M)個の元で生成されるとき,Mをlinear maximal Buchsbaum moduleと呼ぶ.ただしl(M)=sup(length(M/qM)-e(q,M):q is a parameter ideal of M)Aがmaximal embedding dimensionをもつとき,剰余体A/mのsyzygyがすべてlinear maximal Buchsbaum moduleになるなど,多くの興味ある結果が得られた.この研究は38ページの論文にまとめられたが,なお推敲中である.4.松村は局所環の合成によって非ネーター環を簡単に作る方法を考案した外,留学生鄭相朝の博士論文(一般化された分数の加群とクザン複体),修士2年生の志田晶の修士論文(局所環の準同型のDGファイバーに関するもの)を指導した.