- 著者
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唐沢 康暉
- 出版者
- 東京大学
- 雑誌
- 若手研究
- 巻号頁・発行日
- 2018-04-01
虚血による神経細胞死では、酸化ストレスが重要な役割を果たしている。ラットの虚血モデルにおいて、虚血部位の周囲でMAPキナーゼがリン酸化がおこる。酸化ストレスによる神経細胞死において、シグナル伝達物質、MAPキナーゼの活性化が関与するといわれ、治療のターゲットの一つとして期待されている。 本研究では、酸化ストレスによる細胞死モデルであるマウスの海馬由来のHT22細胞を用いて、MAPキナーゼの活性化を反映するFRET(fluorescence resonance energy transfer)プローブを組み込み、酸化ストレスによるMAPキナーゼの活性化を、可視化、定量化する実験系を確立した。本年度は,ベルギーのSarah-Maria Fendt研究室と共同研究の結果、「脂肪の多い食事をしたマウスは糖を飲んだ後、乳酸が多くでき、人でも、太めの人の方が糖を飲んだ後、乳酸が多く出る傾向がある」ことをしめした。さらに培養細胞、マウスのデータとともに、高脂肪食と肝細胞癌の発生機序の関連を示した論文を出版した( Broadfieldら、Cancer research 2021)。健康なヒトが糖を摂取した後に繰り返し採血をおこなうことで、詳細な血中代謝物およびホルモンの時系列データを取得した。数理モデル解析を行い、個人間および分子間における、代謝物とホルモンの時間パターンに、1)大きさや早さなどの時間成分、2)個人間の時間パターンの類似性、3)個人間の大小関係の時間変化、4)分子間の時間パターンの類似性、の4つの指標があることを示した論文を出版した(npj systems biology and applications 2021, These authors contributed equally: Suguru Fujita, Yasuaki Karasawa.)