著者
塚原 東吾 三浦 伸夫 小笠原 博毅 中島 秀人 隠岐 さや香
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は科学機器の歴史について、主に望遠鏡と顕微鏡に光をあて、イタリア・オランダ・イギリスのケースに加え、フランスの事例の研究を行った。この研究では哲学機器とも呼ばれた数学機器や、望遠鏡と四分儀を組み合わせた測地機器、また物理教育に使われた一連の力学機器などを検討したその際、科学機器自体の歴史を基礎に、科学の組織化、いわゆるアカデミーなどの制度化についても検討を行った。科学機器の歴史を通じて、科学史をより広く、また深い観点から検討するための基礎的な作業である。
著者
辻 瑞樹 松浦 健二 秋野 順治 立田 晴記 土畑 重人 下地 博之 菊地 友則 ヤン チンチェン 五箇 公一
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2015-04-01

生物学的侵略機構の研究には自然分布域と侵入域の比較が不可欠である。日本ではあまり知られていないが、近年北米で日本由来の複数の外来アリ種による環境被害が広がっている。しかし皮肉にもこれは日本の研究者にとって居ながらにして侵略アリの自然個体群情報を収集できる絶好の機会である。そこで、本研究では侵略的外来昆虫研究の日米のエキスパートが協力し、これら日本からの侵入者の生態・行動・遺伝情報を侵入先と自然分布域である日本国内で徹底比較する。さらに広大な国土を持つ米国で日本では不可能な野外実験を行う。既存の諸学説を整理しながら網羅的にテストすることで外来アリの侵略機構に関する一般論を導く。以上の目的で研究を始めたが、初年度冒頭に代表者の不測の病気が発覚し研究が遅延した。そこで、2年度目以降は遅れを取り戻すべく主として以下の研究を鋭意進めている。まず、米国側のカウンターパートと協力し、オオハリアリ、アメイロアリ、トビイロシワアリの各国個体群の基礎データを収集した。とくにトビイロロシワアリの炭化水素データを重点的に収集した。また多数外来アリが分布する沖縄では外来アリと在来アリの比較研究を室内および野外で進め、外来種を含むアリには採餌機能に関する複雑なトレードオフが存在することを立証した。また、日米比較の最大の成果として、オオハリアリが侵入前の原産地である日本国内においても侵略先の米国個体群と同様に、高度な巣内近親交配を行なっていることを明らかにし国際誌に発表した。これは近親交配耐性が侵略の前適応であることを示した世界初の成果である。また、テキサスのフィールドに研究代表者が研究室の学生らとともに訪問し実験のプロットを設置しており、2017年夏に2度襲来したハリケーンのため野外プロットが水没した遅れを取り戻すべく鋭意研究を進めている。H30年度にはプロットを再設置した。
著者
土畑 重人
出版者
京都大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2014-08-29

本研究では,進化生物学の主要な概念である社会進化と種分化の両理論を橋渡しする実証系を確立することを目標とし,社会性昆虫の一種アミメアリの同種内社会寄生者(裏切り系統)に着目した.集団遺伝学的な証拠から,裏切り系統は宿主たる協力系統から同所的に分化したと推定されたため,本年度はこの同所的な進化的分岐現象が可能となる生態学的・遺伝学的条件の理論的検討を主眼とした.報告者が作成したコロニーベース格子モデル(格子点には個体ではなくコロニーが入る;Dobata et al. in prep.)を発展させて,個体の協力形質の度合いが突然変異によって連続的に変化する進化シミュレーションを行った.コロニー内の個体数動態には,コロニー内の協力系統頻度に応じた公共財の利益,協力形質の程度に応じた個体へのコスト,コロニーサイズに応じた(負の)密度効果の線形結合で適応度を記述する一般化線形モデルを用い,階層ベイズ法を用いて野外データからパラメータを推定することで,計算が現実的な条件を反映するようにした.個体のコロニー間移出入,突然変異率とその表現型への効果については不明であるため,感度分析を行った.シミュレーションの結果,協力系統から裏切り系統が進化的分岐するかどうかは,コロニーの世代あたり分裂率,個体の世代あたりコロニー間移動分散率に大きく影響されることが明らかとなった.また,初期集団の協力形質の程度も進化的分岐の発生を左右するという結果が得られた.さらに,とりうる表現型の区切り幅(1回の突然変異で変化できる表現型の大きさ)を小さくするほど,進化的分岐が生じにくくなる傾向が得られたため,アミメアリの系においては,協力系統・裏切り系統の共存は何らかの断続的な表現型変化が関与している可能性が残された.モデルの単純化,解析的な取扱いが今後の課題であり,感染症のモデルを応用することを検討している.
著者
河原 昌美
出版者
金沢大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

研究目的:抗がん剤によって引き起こされる吃逆は、重症度は持続期間で患者のQOLを低下させることから、吃逆を引き起こす抗がん剤の種類と発現頻度および要因を明らかにし、化学療法施行患者への予防に役立てることを目的とした。研究方法:インタビューフォームから承認時および市販後の吃逆頻度が1%以上と報告されているオキサリプラチン、パクリタキセル、ビノレルビン、ドセタキセル、イリノテカン、ゲムシタビンの6薬剤を選択した。2008年4月から2009年9月の間に金沢大学附属病院で、上記6薬剤が投与された619名の入院患者を対象とし、性別、年齢、がん種、併用薬、吃逆の状態等を診療録から調査した。研究は、倫理委員会の許可を得て実施した。研究成果:調査薬剤すべてにおいて実際に報告されているよりも高頻度で吃逆が発現していた。吃逆の発現には、男性、ステロイドおよび5-HT3受容体拮抗薬の併用が関連していた。また、プラチナ系抗がん剤を併用すると、単剤投与に比べて吃逆の頻度は上昇した。一方、ステロイド投与量、抗がん剤の投与量、がんの臨床病期は影響をおよぼさなかった。吃逆の治療には、クロルプロマジン、リスペリドンが効果的であることがわかった。本調査結果をもとに、吃逆発現の可能性が高い患者に対して説明文書を作成して注意を促すこととした。また、医師に対しては、吃逆の可能性が高い患者であることを知らせ、早めに治療薬を処方するよう伝えることですみやかな対処が可能と考えられた。
著者
赤江 達也 大澤 絢子
出版者
関西学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究では、メディアに依存した宗教的言説実践、すなわち「メディア宗教」という新たな視座から、大正期に活発化する活字メディア上の宗教活動を検証し、宗教や教派の別を超えた「求道的な宗教性」と「流動的な組織形態」の実態を解明する。研究方法としては、明治末期から昭和戦前期にかけて既成の教団の外で活動した求道者・独立系宗教者たちに注目し、彼らが刊行した膨大な活字媒体(雑誌・書籍・小冊子)の収集整理と言説分析を行う。近代宗教と活字メディアの密接不可分な実態を解明し、広範な読者層の存在や修養・教養・道徳と浸透しあう宗教的ランドスケープを描き出すことで、教団中心に語られやすい日本近代宗教史を拡張・更新する。
著者
松本 和将
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2018-04-25

多くの動物は、生存・繁殖に様々な利点があることから集団を形成して生活している。集団の中で単なる性的な活動以上の協調的な相互コミュニケーションがあれば、その集団には「社会」があると規定される。社会には、複数の個体の間で繰り広げられる様々な個体間相互作用があり、これらは総称して「社会行動」とされる。社会行動は、その意味合いから順位制や縄張りなどいくつかに分けることができ、社会的に複雑な群れを作る種は様々な社会行動をすることが分かっている。霊長類をはじめ多くの動物において社会行動に関する膨大な量の研究が行われてきた。これにより、それぞれの社会の構造や機能が解明されてきた。しかし、進化の過程でいかにして社会が誕生して社会行動が獲得されるのかについての議論は、いまだ確証がないため推測の域を出ない。すでに明確な社会が確立されている種を対象にしていては、社会行動の獲得のための条件を解明することは不可能である。なぜなら、それぞれの動物に特有な社会行動は、長い時間の中で進化した形質であることから、その形成過程を現在では観察することができないからである。3500種以上いるヘビ類は、一般的に全て単独性で集団を形成しない。また多くの有性生殖の動物と同様に繁殖に関する個体間相互作用は存在するが、それ以外の行動においてはほとんど確認されていない。これらのことから、ヘビは一般的に社会性が非常に低いとされてきた。しかし、沖縄島に生息するアカマタという 夜行性のヘビにおいて、ウミガメ卵を採餌する時に限って、社会的な行動をすることを発見した。ヘビがウミガメ卵を餌にすることは非常に珍しく、世界でも本種を含めた2種のみが頻繁に採餌する。本来は社会をもたないヘビが、特定の条件下において社会行動をするようになるメカニズムを解明することができれば、動物の社会の芽生えに必要な条件を探る一助になる。
著者
長嶋 雅子
出版者
自治医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

注意欠如・多動障害(ADHD)治療薬の塩酸メチルフェニデート徐放剤(MPH)内服歴のないADHD児に関して、自閉症スペクトラム(ASD)の併存の有無別に、MPHの効果を近赤外線光トポグラフィー(fNIRS)を用いた無作為二重盲検試験を抑制機能課題で行った。右前頭前野で、ASD併存なし群では、MPH内服前には活動がなかったが、内服後に見られた。ASD併存あり群では、内服前に有意傾向の活動があったが、内服後にはなかった。行動評価では、MPH内服前、内服1ヵ月後の比較で両群とも有意に改善があった。MPH有効例でASD併存の有無により病態が異なることが示唆された。今後はMPH無効例において検証を行う。
著者
田中 佐織 宮治 裕史 井上 加菜 田中 享 谷野 美智恵 加藤 昭人 金山 和泉 西田 絵利香 村上 秀輔 川本 康平 宮田 さほり
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

歯根破折歯接着治療法の予知性向上を目的として,封鎖材料のレジン表面を改変し培養細胞シートを貼ることでレジン上に歯周組織再生を目指した.レジン表面をカーボンナノチューブ(CNT)とナノβ-TCPでコーティングした.細胞付着試験では,CNTコートした試料に付着した細胞はコントロールと比較すると多く,細胞伸展が良好であった.また細胞増殖性試験でも高い細胞増殖性がみられた。皮下埋植試験では著明な炎症反応は認められず,CNTコートした試料に培養細胞シートを貼った試料周囲に骨様組織形成が認められた.以上よりレジン表面を改変することにによりレジン上に歯周組織再生の可能性が見出された.
著者
小山 博史 柏木 公一 中口 俊哉 黒田 嘉宏 金井パック 雅子 井野 秀一 藤原 道隆 足立 吉隆 江頭 正人 松井 邦彦
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2020-04-01

研修医や新人看護師など医療者のリアリティショックによるPTSDや早期離職が社会問題となっている。その理由の一つに臨床現場における多重課題に対する訓練不足が指摘されている。本研究では、現実世界での経験が困難な多重課題の臨床現場をバーチャルリアリティ(以下VR)技術を用いて仮想世界に再現し、多重課題シナリオを被験者(熟練者と初心者)に体験させ、その際の被験者の観察箇所や判断データを取得し、ヒューマンファクターデータとともにデータマイニング手法を用いた解析により多重課題における意思決定要因の解明と今後の臨床現場でのナビゲーションの基礎となる意思決定支援モデルの作成に関する研究を行う。
著者
中本 龍市 中園 宏幸 舟津 昌平 原 泰史
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2022-04-01

本研究の目的は、専門サービス組織の組織成長の要因と過程を明らかにすることである。すでに触れたように、組織の成長は時間的変化を持つ多面的な現象であるため、この答えを導くには、定量および定性研究を併用する必要がある。Penroseの理論を援用すれば、組織成長の要因と過程を明らかにするためには、インタビューなどの質的研究を通して当事者の機会の認識や経営資源の使い方の意思決定を分析する必要がある。この点について、本研究では、営利企業ではなく、専門サービス組織を対象とするため、既存研究の境界条件が明らかにできる。
著者
加藤 文元
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

リジッド幾何学の将来的な応用を見据えた基礎付けとして、対応するZariski-Riemann空間の位相的性質や、その土台部分をなす環論の基礎付けを行い、多くの有用な結果を得た。またその基礎付けに至る過程で、数理物理学や非アルキメデス的一意化理論などへの応用の新たな可能性が明らかとなった。特に後者については、非アルキメデス的一意化に関係した不連続格子について、従来の理論では1 次元の場合に限って有効であった手法を多次元に応用する道が開かれた。
著者
鈴木 丈詞 レンゴロ ウレット
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2018-04-01

世界的な難防除害虫であるナミハダニを対象とし,経口摂取した二本鎖RNA(dsRNA)によって誘導されるRNA干渉(RNAi)を作用機構とした次世代農薬の研究開発を実施した.まず,摂食機構を調査した結果,本種は直径500 nm以下の粒子を吸汁できることが判明し,この結果は,dsRNAの保護や植物体や虫体内での滞留を制御するための担体開発に資する.次に,dsRNAの効率的な経口摂取を促す複数の手法人工給餌装置を開発し,RNAiスクリーニングを実施した結果,致死効果を示す標的遺伝子を複数見出した.また,dsRNAの鎖長依存的なRNAi効果と,その分子機構も明らかにした.
著者
平井 義和
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

アルカリ金属ガスをシリコンとガラスで作製したセルに封入した「MEMS型ガスセル」は、小型原子時計や高感度磁気センサの心臓部として使用される。そのため、高性能な小型原子デバイスを作製するには、微細加工技術によるガスセル作製法が重要である。本研究では、多孔質アルミナやシリコンの三次元構造にアルカリ金属アジ化物の結晶を析出したアルカリ金属生成源を開発し、この生成源とプラズマ陽極接合を融合したウェハレベルのガスセル作製法を確立した。提案手法ではMEMS型ガスセルが高効率かつ低温で作製できることを実証したとともに、小型原子デバイスの高性能化につながる作製法であることも明らかにした。
著者
中村 衛 松本 剛 古川 雅英 古本 宗充 田所 敬一 田所 敬一 安藤 雅孝 古川 雅英 松本 剛 古本 宗充
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

琉球海溝に固着域が存在するか否かを明らかにするため、中部琉球海溝で海底地殻変動観測を開始し、琉球海溝付近前孤側でのプレート間カップリングを検出する試みをおこなった。2年間の観測から、海底局群が沖縄本島に対して北西方向に7cm/yrで移動したことが明らかになった。予想される固着域の幅は約30-50kmである。このように琉球海溝の海溝軸付近には固着域が存在しプレート間カップリング領域が形成されていることが明らかになった。
著者
伊東 秀之
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

高齢化社会の進行や医療費の増加などから,機能性食品などを利用したセルフメディケーションに取り組む人々が増えている.しかし,その機能性に反して,過剰摂取や医薬品との相互作用による副作用も出現している.本研究では,機能性成分の生体内挙動に関して,クランベリー成分およびエラジタンニンの尿中代謝物の検索,さらにクランベリーとワルファリンの食品-医薬品間相互作用の疑いが持たれていることから,その相互作用の解明の一環として,クランベリー成分の薬物代謝酵素に与える影響についても検討した.クランベリージュースをボランティアに飲用後,採取した尿を分析し,ジュース中には存在しない成分が代謝物として排泄されていることを確認し.中にはProanthocyanidin A-2のモノメチル化体など,新規代謝物の存在も明らかにした.またクランベリーの代謝物の中には,バイオフィルム形成抑制を示唆する低分子代謝物の存在も見出した.エラジタンニンをラットに経口投与後の尿中代謝物として,7種の新規代謝物を単離し,各種スペクトルデータの解析結果から,その化学構造を明らかにした.その代謝物の中には,抗酸化活性が顕著なエラジタンニンと同等の活性を有する代謝物も存在することを明らかにした.クランベリー成分の薬物代謝酵素(CYP2C9, CYP3A4)阻害活性をin vitro実験系にて評価した結果,高分子ポリフェノール画分が阻害活性を示し,また,in vivo系実験においてもワルファリンの体内からの消失を遅延させることを示唆するデータが得られ,クランベリー成分がワルファリンの主要代謝酵素を阻害する可能性が示された.本研究成果から,生体内代謝物が機能性本体として作用していることが十分考えられることから,機能性成分の評価には,生体内挙動の知見を考慮しながら遂行することが重要であることが示された.
著者
鳥巣 諒 伊藤 菊一
出版者
岩手大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2003

研究目的:恒温植物ハスの発熱現象の解明を次の2つの視点から行なった。(1)ハスの発熱する体温の時系列データをカオス時系列解析手法を用いて、体温変動の中にカオスが発現することを確かめること、(2)発熱時・非発熱時の花托部分の熱収支方程式を構築して、熱伝達・熱放射に関与する熱定数を同定し、ハスが発生する熱量を推定すること。実験方法と実験場所佐賀市内のハス田(佐賀市本庄町北緯33.3:東経130.3)で、ハスの開花時期(平成17年6月24日から7月14日)、ハスの花托部分の体温と気温を測定した。測定個体は40体で、温度測定には温度サーミスタ方式のデジタル温度記録計を利用し、サンプリング時間は1分とした。ハスが恒温植物であることの再確認ハスの花托部分が3〜4日間発熱し、30〜35℃を保ち、外気温より10〜15℃程度高い温度となった。また、太陽放射の無い日没から日の出までの間、温度制御を活発に行なっていた。ハス体温(花托部分)のカオス時系列解析ハス体温のパワースペクトル解析から遅延時間τを160分と決定し、3次元相図を用いてアトラクタを作図した。次に、相関次元解析を行い、埋め込み次元(16〜17)と相関次元(2.2)を求めた。さらに、リアプノフスペクトル解析を実施し、最大リヤプノフ指数とKSエントロピーがともに正の数となり、軌道不安定性・長期予測不能性が確認された。このことから、実験開始前の予想通りハス体温の変動にカオスが発現することが確認された。ハスの発熱基礎方程式の構築と発熱量の推定ハス花托部分の発熱時期の熱収支には、ハス自身の発生する発熱量のほかに、太陽からの熱放射、気温からの熱伝達、周囲環境からの熱放射・熱伝達が影響する。ここでは、太陽放射のない夜間部の熱収支に着目し、測定した温度データを入力として未知の発熱や各熱定数を求めるという逆問題(inverse problem)を解いた。これにより、パラメータの同定と発熱量の推定が可能になった。求められた熱特性パラメータは、空気から花托への熱伝達率が1.2kJ/10min m^2Kであり、発生した発熱量は、150〜300J/10minであった。
著者
道川 武紘 高見 昭憲 諸隈 誠一 山崎 新 清水 厚
出版者
東邦大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2018-04-01

微小粒子状物質(PM2.5)を中心とする大気汚染物質の周産期影響に関して疫学知見は増えているものの、日本を含めたアジア諸国からの報告は相対的に少ない。本研究では、PM2.5とその成分に注目し、日本の妊婦と胎児への影響を検討した。PM2.5の特定成分曝露が胎児発育の指標である出生時体重や胎盤重量と負の関連性を示すこと、また産科合併症のリスクを高める可能性があることを報告した。またPM2.5を含む黄砂について、黄砂が飛来した1~2日後に産科救急疾患である常位胎盤早期剥離をともなう出産が増加することを観察した。
著者
吉田 さち 松本 和子
出版者
跡見学園女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究は祖国を離れた「ディアスポラ言語変種」が、新天地で接触によって誘発され、様々な変容(contact-induced language change)を遂げる過程と結果、その諸要因を究明することで、言語・方言接触に関する理論構築に寄与することを目指している。具体的には、在外コリアンに焦点を当て、日本の首都圏およびロシアのサハリン州(かつての「樺太」)在住のコリアンコミュニティにおいて言語・方言接触の結果として生じた①コード・スイッチング、②借用語、③コイネーに関する事例を収集し、社会言語学分野の様々な理論的枠組みを検証していく。
著者
高山 千利
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

坐骨神経痛などの神経障害性疼痛は、罹患率が高く難治性であることから、世界的健康問題であり、有効な治療法の開発が待たれている。治療法開発の突破口の1つとして、γアミノ酪酸(GABA)の機能異常を介する痛みの発生機序を明らかにし、その治療法に迫ることを目的として研究を行った。その結果、疼痛モデルマウス、遺伝子改変マウスにおいて、ミクログリアの活性化が持続し、K, Cl共輸送体(KCC2)の発現量が減少したままの状態が続くため、GABAによる抑制力が低下しており、この抑制力の低下が痛みの持続を生み出していることが明らかになった。
著者
土屋 壮登
出版者
防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2020-04-01

研究では、生体適合性に優れ、止血作用と血管の組織修復が可能なバイオマテリアルを開発し、実験動物を用いた止血作用と組織再生評価に関する研究を行う。具体的には、光照射によってハイドロゲルを形成する光応答架橋剤を含有するゼラチン水溶液を用い、その化学反応性や物理化学的性質を評価し、マウス体内における分解性を確認した後、血管吻合部に適用し、止血作用や血管組織の再生の評価を行う。本研究は医工連携による材料開発と治療方法の開発という革新的な研究内容である。