著者
村上 潔
出版者
日本社会学理論学会
雑誌
現代社会学理論研究 (ISSN:18817467)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.160-172, 2010 (Released:2020-03-09)
被引用文献数
1

本稿は、戦後日本社会において、女性の「労働」のありかたについてなされた最初の論争である「主婦論争」の意味を捉え返し、その課題と、論争が保持していた潜在要素一一現在的な問題の源泉ーーを抽出する作業を行なうものである。「主婦論争」とは、1955年に始まり1970年代前半まで段階的に生起した、「主婦」のありかたーーその立場・役割や労働の評価一ーをめぐる論争である。本稿では、「主婦論争」を内在的に読み解き、主にその対象となる層を念頭におきながら論調を図式的に分類していくことで、①論じられていたことが実際にはどのような現象としてあったのか、②それらはどのような関係を取り結んでおり、いかように力関係を保ってきたのか、③現状の課題と照らし合わせた際、改めて力点を置かれるべき立場はどこにあるのか、を検討した。その結果、従来論争における主要な論点とされてきた「働くべき」vs. 「働くべきでない」という論調の対立構図が、実は同じ(中間層以上の)階層の主婦層を対象とした「選択Jの問題にすぎず、そこからは「働かざるをえない」層の主婦たちの存在が不可視化されていることが明らかになった。そのうえで本稿では、「「地域/生活のための運動や協働を担う」立場の主婦たちと「働かざるをえない」主婦(ならびにその周縁の女性)たちによるこれまでの自律的な実践の成果を確認し、両者の協調的進展の模索にこそが今後の展開の試金石であることを指摘した。
著者
倉橋 節也 横幕 春樹 矢嶋 耕平 永井 秀幸
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.C-L42_1-9, 2022-01-01 (Released:2022-01-01)
参考文献数
21
被引用文献数
2

In this paper, we propose a new SEIR model for COVID-19 infection prediction using mobile statistics and evolutionally optimisation, which takes into account the risk of influx. The model is able to predict the number of infected people in a region with high accuracy, and the results of estimation in Sapporo City and Tokyo Metropolitan show high prediction accuracy. Using this model, we analyse the impact of the risk of influx to Sapporo City and show that the spread of infection in November could have been reduced to 0.6 if the number of influxes had been limited after the summer. We also examine the preventive measures called for in the emergency declaration in the Tokyo metropolitan area. We found that comprehensive measures are highly effective, and estimated the effect of vaccination and circuit breakers on the spread of infection after the spring of 2021 using the effective reproduction reduction rate of infection control measures obtained from the individual-based model and the SEIR model.
著者
成田 紀之
出版者
一般社団法人 日本顎関節学会
雑誌
日本顎関節学会雑誌 (ISSN:09153004)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.85-92, 2014-08-20 (Released:2014-10-01)
参考文献数
18

口顎ジストニアは,顎・舌・顔面の持続的な異常筋活動を特徴として,咀嚼,嚥下,ならびに開口の障害,食いしばりを引き起こす。口顎ジストニアの病因には,遺伝子素因,中枢神経の損傷,末梢性外傷,服薬,代謝性疾患,あるいは中毒や神経変性疾患などが挙げられる。口顎ジストニア治療における第一選択肢はボツリヌス神経毒素を用いた治療であり,咬筋,側頭筋,あるいは外側翼突筋へのボツリヌス毒素の応用により,口顎ジストニアの約60%に咀嚼ならびに会話の改善がもたらされる。また,薬物治療では,抗コリン製剤,ベンゾジアゼピン製剤,抗痙攣薬などが応用されている。口顎ジストニアに認められる感覚トリックは,たとえば口唇あるいはオトガイをそっと触る,ガムを噛む,話をする,楊枝を咬むなどして,ジストニア症状が一時的に軽快することであるが,このとき,ボツリヌス毒素治療と同様にして,感覚トリックによっても,感覚運動皮質の活動性に変調が生じえる。口顎ジストニアは,うつ,不安,強迫性障害,ならびに統合失調症といった精神障害と共存しており,これら口顎ジストニアの精神心理的側面は臨床診断を難しくする。最近のわれわれのデータは,口顎ジストニア患者におけるボツリヌス毒素治療が,ジストニックな異常筋活動の軽減ばかりか痛みや精神病理の緩和に有効であることを示唆している。本論文は,包括的な理解を目的として,口顎ジストニアの治療について概説するものである。
著者
村松 潤一
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.6-24, 2017-09-29 (Released:2020-02-25)
参考文献数
43
被引用文献数
6 1

サービスをプロセスとして捉えるS-Dロジックが提示されてから,かなりの時間が過ぎた。しかし,S-Dロジックが求めた新たなマーケティングは未だその姿が明らかとなっていない。一方,もともとサービスをプロセスとして理解してきたのが北欧学派であり,Sロジックである。そこで,両者からの示唆を得ながら新たなマーケティングについて考察することを本稿の目的とした。その結果,消費プロセスで文脈価値を高めるマーケティングを新たに価値共創マーケティングと呼ぶことにし,伝統的マーケティング,類似概念との対比を試みた。次に,それがどのような意義を持ち,その実践がどのような成果を生むかについて議論し,若干の典型的な事例をみることで,4Cアプローチ,文脈マネジメントといった独自の考え方を示すと共に,価値共創マーケティングを推進する企業システムについても言及した。
著者
美濃 陽介 吉田 浩子 庄子 和夫
出版者
日本心身健康科学会
雑誌
心身健康科学 (ISSN:18826881)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.73-86, 2022 (Released:2022-09-22)
参考文献数
44

学校教員の職業性ストレス低減に資する新たな知見を得ることを目的に,学校教員1,000人を対象にインターネット調査を実施した.健康上の問題を自覚していた640人を,ストレス反応合計得点(職業性ストレス簡易調査票)と労働障害指数(日本語版SPS)の組み合わせで分類した.分類されたストレス状況の異なる各群によって関連する諸要因が異なるという仮説を検証した.多母集団同時分析の結果,就労状況,教職に対する価値観,ワークモチベーション,労働障害指数,職業性ストレス要因・反応の下位項目を変数とする適合度の良いモデルが得られ,各群に共通のパスと固有のパスが抽出された.過重労働に伴う負荷に加え,教職に対する価値観やワークモチベーションがストレス要因からストレス反応に至る過程に干渉要因として作用していた.学校教員の職業性ストレス低減のために過重労働といった就労状況の改善に加え,職務に対する価値観や適切なワークモチベーションの維持に配慮した支援が必要と考えられる.
著者
糸井 宇生
出版者
公益社団法人 日本マリンエンジニアリング学会
雑誌
日本舶用機関学会誌 (ISSN:03883051)
巻号頁・発行日
vol.6, no.12, pp.965-980, 1971 (Released:2010-05-31)
参考文献数
3

誘導電動機に電圧を突然印加すれば, 電動機には電気的過渡現象に基づく電流が流れる.この電流を突入電流と定義する.本論文では, この突入電流の性質を明らかにすると同時にその大きさを求める計算式を導く.まず誘導電動機を線形回路網とみなし, これより得られる等価回路から, 一般的な突入電流計算式を導き, これを基礎として突入電流の性質を吟味した.この結果, 突入電流は定常交流成分と二つの過渡成分とから成っていることが明らかとなり, かつ, 過渡成分の大きさは始動時に最大とはならず, ある回転速度で最大になることがわかった.これより極数変換形電動機において低速側より高速側へ切り換えたときには大きな突入電流の生ずることが明らかとなり, 回路保護用しゃ断器の過電流保護機構の設定について注意しなければならないことが実際の電動機に対する計算結果より指摘された.また, 過渡成分は始動時においては時間とともに減衰する直流であるが, 電動機が回転しているときには正弦波状に変化する.計算式としては, 任意の回転速度において電圧を印加したときに流れる突入電流の波形を表現する計算式および始動時の突入電流の波形を表わす計算式を求めた.しかし, これらの計算式は, その中に表われる定数を計算することがかなり複雑であるため, 特に実際上必要な始動時突入電流波形を簡単に求めることのできる実用的な近似計算式を導き, その妥当性について検討した.さらに, 実際の電動機の定数より, 始動時突入電流の尖頭値は, 電圧印加後約0.5サイクルに生じ, かつその大きさは電圧印加時の位相によって異なることがわかった.これらの関係から始動時における最大の尖頭値を求める近似計算式を導いた.この近似計算式は電動機の全巻線抵抗および全漏れリアクタンスを与えることにより, 約10%以内の誤差で簡単に求めることができる.なお, 計算に必要な電動機の定数は特殊かご形の場合は回転速度によって異なるので, この変化についても実際の電動機を対象として, その性質ならびに計算法について述べてある.本計算式はすべて電動機の磁気回路の飽和を無視してあるので, 実際に流れる突入電流は本計算式による値よりも幾分大きくなることが予想される.
著者
関本 正直 中村 茂 望月 靖文 戸田 伸一 高原 英明
出版者
The Institute of Electrical Engineers of Japan
雑誌
電気学会論文誌D(産業応用部門誌) (ISSN:09136339)
巻号頁・発行日
vol.116, no.7, pp.749-757, 1996-06-20 (Released:2008-12-19)
参考文献数
7

Induction motor drive with inverter control, which can reduce the total weight of the system, has been introduced to the Shinkansen trains in order to achieve high speed transportation.The individual-motor-control type 953 train, which is a part of the STAR21 prototype Shinkansen for high speed experimental run, was used for measurement running, in which we observed wheel slip and adjusted re-adhesion control parameters at the speed of 200 to 300km/h. It was found that the slip detection within one percent speed difference from the reference, was possible by adopting sensitive detecting method. Quick torque reduction by sudden reduction of motor current was necessary for re-adhesion control, and one-second waiting time before re-applying current was also inevitable. For re-applying the current, an exponential curve with four-second time constant was proved to be effective.By these tests, high speed performance and re-adhesion characteristics improvement by adjusting control parameters were obtained. To the next step, for example creep control, which utilizes fine continuous slip, should be investigated in order to keep enough torque minimizing current reduction during re-adhesion control.
著者
TANABE,TSUTOMU
出版者
Zoological Society of Japan
雑誌
Zoological science
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, 1990-06-15

A new species of Xystodesmidae, Riukiaria jamila, is described and figured based on male and female adults from Is. Yaku-shima, off the southern coast of Kyushu, Japan. This species is characterized by the gray tergites, the yellowish white paranota, and the acropodite of the male gonopod which is very wide from the base to the twisted portion.
著者
大橋 唯太 井原 智彦 高根 雄也
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 Vol.37(2023年度 環境情報科学研究発表大会)
巻号頁・発行日
pp.27-32, 2023-12-08 (Released:2023-12-08)
参考文献数
21

東京23 区の夏季熱中症と虚血性心疾患の高齢者死亡リスクを,沿岸と内陸の地域別に高温経験の遷延性を考慮して解析した。日最高気温99 パーセンタイルの37℃高温経験は,沿岸地域で3日後,内陸地域で6日後まで熱中症リスクを高めていた。日中の高温条件では沿岸のほうが内陸よりも死亡リスクが高い一方,夜間の高温となる日最低気温28℃では逆に内陸のほうが死亡リスクは高くなった。虚血性心疾患の遷延性は特に沿岸地域で熱中症よりも長く12~13 日後までみられ,死亡リスクも沿岸が内陸よりも高くなっていた。日中の気温が高い日ほど業務・商業施設が集中する沿岸地域への高齢者の流動人口は減少し,気温による大規模な行動変容が確認された。
著者
藤田 雅人
出版者
公益社団法人 日本航海学会
雑誌
日本航海学会論文集 (ISSN:03887405)
巻号頁・発行日
vol.136, pp.1-7, 2017 (Released:2017-07-01)
参考文献数
10

Future transition from traditional air traffic control to trajectory-based air traffic management is now discussed. Accurate trajectory prediction is indispensable for trajectory-based management. We developed a regression model to predict the flight time of flights bound for Tokyo international airport departing from Fukuoka airport. Aircraft are vectored to make an efficient arrival sequence to the airport in Kanto South sector. The flight time predicted by our model is the time required from the entrance of Kanto South sector to the airport. It is influenced by the decision made by controllers on the order of arrival sequence to the airport. The main repressors of our model are the modified positions of the other aircraft bound for the same runway, which are called traffic density data. The width of ninety five percent interval of prediction errors is more than three minutes narrower than that of ninety five percent interval of the original data. This shows the effectiveness of the inclusion of traffic density data as repressors, but our model still has a large prediction error, and further refinement is necessary.
著者
増田 展大 秋吉 康晴 水野 勝仁 高尾 俊介 松谷 容作 城 一裕 横川 十帆
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2021-04-01

人文思想の分野では近年、「生命」および「物質」概念の再考が盛んに進められている。このことはポストインターネットとも呼ばれる近年のメディア環境に呼応すると同時に、人間を含めた動植物の生体組織やDNAを取り込んだバイオアートの実践や、物質の可塑的な特性を応用した3Dプリンタなどのデジタルファブリケーション技術の台頭とも無関係ではないと考えられる。このような観点から本研究では、生命と物質に関連する理論調査班と、ハード/ソフト/ウェットウェアに大別される制作実践班に分かれつつ、両者を効果的に接続することでメディアアートに関連する新たな表現形態を具体的に提出することを試みる。
著者
星野 伸明
出版者
一般社団法人 日本統計学会
雑誌
日本統計学会誌 (ISSN:03895602)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.1-42, 2017-01-10 (Released:2017-08-30)
参考文献数
41
被引用文献数
3

匿名データについて,個体識別が可能か否かの判定は定義に関わる.しかしこの判定は明確に定式化されていないため,改善のための議論がかみ合わない.従って本論文は,個体識別可能性の判定方式を定量評価に基づいて明確化する.このような判定方式に関する既存研究は存在するが,個体識別可能性の測度について閾値を定める理論が欠けている.この点について本論文では,個体識別が起きていないという観測可能な事実に基づいて統計的に閾値を推定する.このような実証的態度により,匿名データ制度を根拠に基づいて継続的に改善することが出来る.実際に本論文では個体識別可能性審査の改善を提案する.
著者
佐々木 結花 山岸 文雄 鈴木 公典 宮澤 裕 杉戸 一寿 庵原 昭一
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR TB AND NTM
雑誌
結核 (ISSN:00229776)
巻号頁・発行日
vol.68, no.11, pp.695-698, 1993-11-15 (Released:2011-05-24)
参考文献数
5
被引用文献数
1

We reported a case of Addison's disease, caused by adrenal tuberculosis. The patient was female, seventy four years old. She complained cough and body weight loss. She complained cough from June, 1989, but her home doctor didn't take care of her symptoms. September 1989, she felt appetite loss, and easy fatigue, so her home doctor suspected her disease as pulmonary tuberculosis, so he introduced our hospital, and she admitted. When she admitted, her chest roentogenogram revealed bII12. Sputum smear examinations were negative. Laboratory datas on admission, we observed slightry eosinophilia, severe iron deficiency anemia, and accenturation of blood sedimentation rate. Immediately after admission, she complained nausea, vomiting, coldness, and powerless. On 25 days after admission, she lost her senses suddenly, and her blood pressure fell 5 days after, she fell in shock state, too. We found out her blood sugar data was 29. After blood examinations, we found out that ACTH was high, cortisole, 17KS, 17-OHCS were low. So we thought she got acute hypoadrenocorticism. We found her abdominal CT revealed calcification in her right adrenal gland. We diagnosed her disease as Addison's disease caused by adrenal tuberculosis so we began to give prednisolone, 7.5mg per day. After giving, her state made better. We thought her disease as Addison's disease caused by adrenal tuberculosis, revealed acute hypoadrenocorticism.
著者
光石 亜由美
出版者
奈良大学
雑誌
奈良大学紀要 (ISSN:03892204)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.280-265, 2014-03

園田てる子(一九二六~一九七六年)は、埼玉県熊谷市生まれの小説家である。少女小説、推理小説、官能小説、性風俗の体験記、エッセー等さまざまな仕事を残したが、その生涯、業績はまったくといっていいほど知られていない。本稿では園田てる子の妹・石山三重子さんのインタビュー、娘・典子さん(フランス在住)とのメールと、園田てる子の著作から、その生涯と作家活動を描き出し、一九五〇年代から一九七〇年代に、女性のセクシュアリティを前面に押し出し、独特の地位を保った園田てる子の足跡をたどる。
著者
中溝 宗永
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.117, no.2, pp.81-85, 2014-02-20 (Released:2014-03-20)
参考文献数
16

頸部郭清術は, 頭頸部癌を主とした頸部リンパ節転移を制御する手術で, “頭頸部がん専門医” にとっては必須で基本の手術術式である. 既に100年以上もの歴史があり, この間にさまざまな変法や術式名称が生まれた. 現在は全頸部郭清術を基本型とし, 肩甲舌骨筋上頸部郭清や側頸部郭清などを主とする選択的頸部郭清術が頻繁に行われている. 頸部郭清術では, 頸部筋間の脂肪組織に存在する転移リンパ節を, その連続性を保持して一塊に切除する. メス, 剪刃, 電気メスなどでの切離だけでなく, 結紮や止血, 縫合など, 種々の基本的外科手技が不可欠であるため, 使用する器械の機能や使用法に習熟し, 頸部臓器・組織の解剖学的構造を熟知して, 各所において適切かつ確実な手技を行うことが要求される. 選択的頸部郭清術を行うことで, 全頸部郭清術よりも郭清領域を狭めても, 決められた領域のリンパ節群は残すことなく確実に郭清し, 治療成績を低下させないようにする. 一方, 術後の機能障害や変形の軽減化を目指し, 重要な脈管と神経など温存する臓器とその周囲を確実に処理する. 温存する臓器・組織が多い選択的な術式は, ワーキングスペースと視野が狭く, 手術に慣れるまでは操作が難しい. したがって, 根治的郭清術を十分経験した後に選択的頸部郭清術を行うのが望ましい.本稿では,内頸静脈と副神経を温存してレベルI~IVを郭清する選択的郭清術の手順を記載し,筆者が考える器械の使用法や手技上のコツについて述べるので,参考になれば幸いである.