著者
高谷 智裕 荒川 修 鈴木 重則 望岡 典隆
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

2015年に遠州灘で採取された17個体の自然交雑フグにつき、ミトコンドリアDNA解析および形態的特徴から両親種を推定し、それらの部位別毒性を求めた。17個体全てがマフグとトラフグの交雑種で、15個体に毒性がみられた。卵巣および肝臓で高い毒力が検出され,12個体の皮に弱毒が検出された。また,母親種がトラフグの個体に比べてマフグの方が高い毒性を示し,毒蓄積能が母親種の影響を強く受けることが推測された。人工交雑マトラへのTTX投与試験の結果、主として皮への蓄積がみられた。両親種であるマフグとトラフグの場合、TTX蓄積率は経月的に上昇し、両種ともに皮への蓄積割合が高かった。
著者
荒木 不次男 大屋 夏生
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では,放射線治療患者のQOLの向上を目指して,画像誘導放射線治療(IGRT)による位置決めX線CBCTの被ばく線量評価及び線量と画質の最適化を図るために,以下の事項を明らかにした. (1) kV-CBCTの簡便な吸収線量計測法を開発し,線量と画質の最適化を行った.(2) kV-CBCTの患者体内の線量分布をMonte Carlo simulation及び放射線治療計画装置から算出し,治療線量とCBCT線量の加算から直腸や水晶体等のリスク臓器の被ばく線量を線量体積ヒストグラム(DVH)から定量的に評価した.(3) kV-CBCT,MV-CBCT,MV-FBCTの被ばく線量を算出した.
著者
平田 結喜緒 七里 眞義
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

糖質ステロイド(GC)や非ステロイド性消炎剤(NSAID)は炎症や免疫を抑制する薬剤として広く臨床的に用いられている。しかしGCやNSAIDの作用機序については不明な点が多く、血管での誘導型NO合成酵素(iNOS)の発現に対する効果も未知である。そこで培養ラット血管平滑筋細胞(VSMC)を用いて炎症性サイトカイン(IL-1,TNF-α)によるiNOS発現とNO生成に及ぼすGCとNSAIDの作用を分子レベルで解析した。デキタメタゾン(DEX)とNSAID(アスピリン、サルチル酸)はいずれもIL-1やTNF-αによるNO生成を著明に抑制した。DEXはサイトカインによるiNOS遺伝子の発現を抑制し、この作用はIkBのリン酸化と分解を抑制する結果、NF-kBの活性化を阻止することによることが明らかとなった。一方アスピリンやサルチル酸はNF-kBの活性化やiNOS遺伝子の発現には影響を与えなかったが、iNOS蛋白の発現を抑制した。またアスピリンは直接iNOSの酵素活性を抑制したが、DEXやサルチル酸は無効であった。したがって血管平滑筋では炎症性サイトカインによるNO生成に対してGCとNSAIDの抑制機序の作用点が異なっており、GCはiNOSの転写レベルで、NSAIDは翻訳あるいは翻訳後レベルで阻害していることが明らかとなった。これらの成績は敗血症性ショックや動脈硬化性血管病変における炎症性メディエーターとしてのiNOS由来NOの治療戦略を考える上で重要である。
著者
黒岩 厚
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

Hoxa11とHoxa13は、それぞれ軛脚と自脚の固有な骨形態形成を制御する最上位遺伝子である。転写因子として機能するこれらHoxの標的遺伝子を、ChIP-Seqとマイクロアレイを組み合わせて網羅的に同定した。その結果、Hoxa11とHoxa13に共通する軟骨分化の制御に関わる標的遺伝子が同定された。これらの標的遺伝子は、四肢骨形成に関わる他のホメオドメイン転写因子の標的でもあることが判明し、四肢骨形態形成の転写調節ネットワークの実態が明らかになった。またHoxa13は、これらに加えて肢芽間充織の増殖に関わる遺伝子の発現制御を通じて四肢類の自脚に共通した形態形成を制御することが明らかになった。
著者
大本 亨 佐治 健太郎 加葉田 雄太朗
出版者
北海道大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

特異点判定法を用いた研究として,以下のテーマを扱った.(1)曲面の射影微分幾何における局所理論(ダルブー・ヴィルチンスキ)の復興とその応用を目指し,特異点論の手法による研究を進展させた.(2)幾何的代数と特異点論を用いて線織面や線叢などに現れる特異点の微分直線幾何を発展させ,応用幾何学における新しい可能性を示唆した.(3)射影空間内の曲線および曲面に係る古典的数え上げ幾何を整理して,ヴィジョン理論への特性類理論からの新しいアプローチを提案した.(4)判定法の基礎付けとして,判別集合(自由因子)の対数的微分加群とA-接空間の関係について考察した.
著者
鈴木 健
出版者
東京水産大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

海藻は陸上植物と違う環境に生息するため、その構成成分は特有な栄養・生理機能を持つことが期待されるが、海藻食物繊維に関する研究はこれまでにあまり行われてこなかった。そこで本研究では海藻に含まれる食物繊維の栄養機能を明らかにすることを目的とし、脂質の消化吸収やコレステロールの代謝に深く関わっている胆汁酸に注目することとした。肝臓では一次胆汁酸(コール酸、ケノデオキシコール酸)が合成されるが、腸内細菌により変化を受け二次胆汁酸(デオキシコール酸など)となり、小腸から吸収されて肝臓に戻り、腸肝循環と呼ばれている。脂質の消化吸収には水不溶性の脂質を乳化する胆汁酸が必要で、腸肝循環による吸収を食物繊維が阻害することによりコレステロールの代謝が改良されると考えられている。本研究ではワカメ、コンブ、ヒジキ、ノリなどの海藻を試料とし、胆汁酸との結合を調べた。コール酸との結合では、pHの上昇にともない結合率の低下がみられた。またコール酸、デオキシコール酸、ケノデオキシコール酸との結合の実験では、水溶姓食物繊維は不溶性食物繊維に比べると、いずれの胆汁酸の吸着も全般的に大きかった。一方、食物繊維の摂取過剰による問題点も指摘され、ビタミンや無機質の利用率の低下も考えられる。無機質との吸着として亜鉛を用いたが、不溶性食物繊維についてはワカメで多く、スサビノリで低く、一方、水溶姓食物繊維についてはコンブで高かった。食物繊維の測定には酵素重量法が用いられているが、これらをほとんど含まない海藻においては測定に要する時間を考慮した改良法が必要でこれらについて検討を加えた。
著者
工藤 慎一 長谷川 英祐 小汐 千春
出版者
鳴門教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究は, 雄が抱卵する多足類ヒラタヤスデを対象とし, 配偶システムと繁殖行動の進化を理解することを目的とした。雄は, 菌類の感染から卵を保護していた。野外では, 体節幅の広い雄ほど繁殖に成功し抱卵数も多かった。これは, 体節幅の広い雄ほど雌に配偶者として選ばれ, 抱卵しながら複数の雌と配偶した結果であると考えられた。これらの結果は, 性選択が雄による子の保護の進化に重要な役割を果たすことを示唆している。
著者
林 政彦 東野 伸一郎
出版者
福岡大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

成層圏エアロゾル層の観測を飛躍的に発展させるために,安価で,観測装置および大気試料の回収が可能な観測プラットホームを開発した。観測装置を搭載した翼幅約3mのモータグライダーに,エアロゾル計数装置,エアロゾルサンプラーを搭載し,ゴム気球で飛揚,目的最高高度で気球を分離し,地上基地に自動で最適航路を選択しながら帰還させる。システム開発を国内における実験で行い,実地観測を南極昭和基地において,2013年1月に実施した。小型ゴム気球により,観測を行いながら飛揚したのち,気球を分離し,観測拠点まで自律帰還させることに複数回成功した。観測最高高度は成層圏下部に達する高度10kmであった。
著者
沼崎 誠 天野 陽一 高林 久美子 石井 国雄 麻生 奈央子 佐々木 香織 長田 眞由子
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

ステレオタイプと偏見の機能-特にシステム正当化機能-と自己ステレオタイプ化に注目して,ジェンダー・システムの再生産過程における,ジェンダー・ステレオタイプと性役割的偏見の役割について実証的研究を行った.システム正当化機能に関しては現システムへの脅威や死すべき運命や異性愛が顕現化した状況で,自我正当化機能に関しては自尊心への脅威状況で,集団正当化機能に関しては特定の自己表象が活性化した状況で,ステレオタイプ化や偏見が強まることを見いだした.ジェンダー・システムを再生産の観点からこれら結果について考察した.
著者
秋光 純 銭谷 勇磁
出版者
青山学院大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2002

強相関電子系物質において、フェルミレベルの分散を平坦化することは、その強相関効果を顕在化させる働きがある。特に顕在化する物性として強磁性と超伝導が考えられる。特に高温超伝導体においては、フェルミレベル近傍でk=(π,0),(0,π)での分散が平坦化している。また理論的観点からも、フェルミレベルの分散を平坦化すると1粒子励起が抑制され、2粒子励起が高められ超伝導に有利であると考えられている。以上の背景のもと、我々は銅酸化物を取り上げ以下に示す3つの物質群での超伝導開発を行った。1)Liebモデルを基礎とした物質開発-Ba_8Ca_<16/15>Cu_<64/15>O_y(CO_3)_<2.66>-Ba_8Ca_<16/15>Cu_<64/15>O_y(CO_3)_<2.66>の結晶構造はCuO_2二次元面内のCuサイトがCO_3基で1/4置換された既知の物質であり、その電気伝導性は絶縁体である。このBa_8Ca_<16/15>Cu_<64/15>O_y(CO_3)_<2.66>のCa^<2+>サイトをNa^+で置換し、ホール・キャリアを注入し超伝導化を試みた。その結果、T_c=117Kから超伝導性が確認された。Ba-Ca-Cu-O-CO_3系では既知の超伝導体(T_c=110K)が存在するが、XRDからは既知物質は確認されておらず、Ba_8Ca_<16/15>Cu_<64/15>O_y(CO_3)_<2.66>による超伝導の可能性は高い。現在、相の特定を行っている。2)団子格子モデルに基づく物質開発-PrBa_<2-x>A_xCu_3O_y (A=Ca, La)-PrBa_2Cu_3O_yはYBa_2Cu_3O_yと同じ結晶構造を有しているにも関わらず超伝導が出現しない物質である。我々はこのPrBa_2Cu_3O_yに過剰酸素を注入し、CuO鎖を2次元面とすることにより、超伝導化を目指した。結果、金属的伝導は示すが、測定最低温である5Kまで超伝導は確認されていない。3)平坦なバンド構造が期待される物質開発-LaCuOCh (Ch=S, Se, Te)-我々は、理論的モデル物質のみではなく、平坦なバンド構造を有する物質として知られているLaCuOCh (Ch=S, Se, Te)を母体とした超伝導体開発も行った。La^<3+>サイトをSr^<2+>等で置換し、ホール・キャリアコントロールを行った。現在のところ金属的な伝導を示すものの、超伝導は確認されていない。
著者
宮戸 健二 河野 菜摘子 山田 満稔 浜谷 敏生 中村 浩幸
出版者
国立研究開発法人国立成育医療研究センター
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2019-04-01

からだの内側は、粘膜上皮に覆われ、ウイルスや細菌、微小粒子状物質(PM2.5)の侵入から守られている。我々が発見したマイクロエクソソームは、卵や、生殖器と泌尿器を含む管腔構造の粘膜上皮から分泌される。マイクロエクソソームは、エクソソームと共通の成分を含むものの、構造が全く異なる逆ミセル状の構造体である。我々の研究から、マイクロエクソソームは、2つの役割(細胞膜の修復とウイルスの捕捉)を担っていることが推測される。本研究ではマイクロエクソソームを手がかりに、一見別々に見え、我々にとって身近な『子供の産まれやすさ』と『感染症への罹りにくさ』をつなぐ分子メカニズムの解明をめざす。
著者
知念 正剛
出版者
福岡医療短期大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

口腔乾燥症患者からは唾液が十分に採取できないので、これまで唾液粘度を用いた診断法が確立されなかった。ここでは少量の唾液から唾液粘度を測定する研究を行った。研究の結果、1~2滴の唾液(50~100μL)で唾液粘度の測定ができることが分かった。これによって、唾液粘度を使っての口腔乾燥症の診断評価に活用できる可能性が見いだされた。
著者
沢島 政行 堀口 利之 新美 成二
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1986

気流阻止法を用いて、正常者における発声時の呼気圧,呼気流率と声の強さの関係を検討した。対象は成人男子30名、女子36名であった。発声条件は、声の高さとして、各人の話声位、および5度高い地声とした。声の高さはピアノの音で与えた。声の強さは、中等度,弱い声,強い声の3種類とし、各人の主観的判断にまかせて発声させた。測定は、各発声時の声の基本振動数(Hz),声の強さ(dB SPL),呼気流率(ml/sec),呼気圧(mm【H_2】O)の4種の値の同時測定である。結果は以下の通り。1)声の強さは流量計開口部から20cmの距離で60〜90dB SPLの範囲に分布し、話声位、5度高い声の間に差はなかった。2)呼気圧は、上記の声の強さの範囲で男女共に水柱20mm〜150mmの範囲に分布し、話声位、5度高い声の間に差はなかった。声の強さの増加と共に呼気圧は上昇した。3)呼気流率は、男女共に毎秒70〜350ml/Secの間に分布し、声の高さによる差はなかった。また声の強さを増しても、呼気流率は必ずしも増加しなかった。4)声の強さと呼気圧,声の強さと呼気流率,それぞれの比を計算すると、この値は、声の強さと共に一定の増加を示していた。すなわち、呼気圧,呼気流率共に、声門における呼気-音源の変換の効率が、声の強さと共に変化することが示された。このような効率と強さの関係を考慮して、病的症例の検査結果の評価を行なうべきである。5)呼気圧と声門下圧との関係は、呼気流率が少ない時はその差が無視されるが、呼気流率が増加した場合は、適当な補正により、呼気圧から声門下圧を推定することが可能である。
著者
豊原 治彦 前川 真吾
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2017-06-30

本年度は、ディスカスの親魚の粘液に含まれる仔魚期の生残を優位にする哺育因子を探索する目的で、RNA-seqによるディスカス粘液中遺伝子の網羅的発現解析を行った。また、哺育因子と思われる物質についてディスカス粘液中のウエスタンブロット解析及び仔魚の消化管の免疫染色を行った。その結果、哺育期のディスカス粘液中で免疫系の遺伝子群、特に免疫グロブリンを構成する遺伝子が誘導されていることが分かった。また、仔魚が親魚の粘液由来の免疫グロブリンを摂餌していることが示唆された。RNA-seqにより哺育期と非哺育期のそれぞれの粘液で発現している遺伝子を比較した結果、非哺育期に比べ哺育期に発現が抑制される遺伝子数は12であるのに対し、誘導される遺伝子数は160と多く、ディスカスの親魚は仔魚の育成のため複数のタンパク質の合成を促進していることが示唆された。また各遺伝子の発現パターンをもとに行ったクラスター解析では、Breed 4個体、Non-Breed2個体がそれぞれ同グループになることを期待したが、結果としてNon-Breed1とNon-Breed2及びBreed3とBreed4が同グループに、Breed1とBreed2が他4個体の外縁のグループに分類された。Breed1,2とBreed3,4が異なるグループに分類された原因として、粘液採取時の仔魚の孵化後日数の違いが考えられる。Breed3,4がともに仔魚の孵化後5日目の時期に採取しているのに対し、Breed1,2はそれぞれ仔魚の孵化後8,13日目の時期に採取したものである。哺育期のディスカスは仔魚の孵化後の経過日数にあわせ粘液中のイオン含量等を変化させるという報告があり、Rディスカスは仔魚の成長段階にあわせ異なる遺伝子の発現を誘導させることで粘液中のタンパク質組成等を変化させていると考えられる。
著者
BOLT Timothy 田宮 菜奈子
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

A Discrete Choice Experiment (DCE) among the public, older people and caregivers in Japan will be used to measure end-of-life care service feature and health outcome priorities. This includes the difficult trade-offs between direct health outcomes, Quality of Life (QoL) factors and other goals.
著者
ゲーマン・ジェフリー ジョセフ 飯嶋 秀治 小田 博志 マーティン カイリー・アン ルアレン アン エリス バヤヤナ ティブスヌグエ (汪 明輝)
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、最終報告書の編集にアイヌ民族当事者たちのインプット・フィドバックも含め、当事者たちの声を研究プロジェクトの中心に据えること=アクション・リサーチ研究を目指してきた。先住民族による合同研究会を継続的に実施することにより、先住民族アイヌの「知」を規定する様々な要因を特定できた。また、先住民族同士の合同研究の在り様に関する斬新な理論・方法論を発見した。このようにアイヌ民族の「知」を規定する社会的構造と文化伝承のメカニズムの両面を同時に取り入れた研究として、本研究はこの国初と言って良いであろう。国際発表をしたところで、研究方法は称賛され、注目もされている。
著者
高橋 淳 影山 和郎 金田 重裕 大澤 勇
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

プラスチックス製(ポリエステル等)の柔軟なシートまたは袋による海上輸送技術(シール材またはコンテナとしての利用)が、低コストで低環境負荷型な輸送手段として注目されている。本研究では、このウォーターバッグに関して、疲労メカニズム解明と損傷(すなわち内容物流出のリアルタイム)検知システム開発の2つの検討を行った。すなわち、まず、ウォーターバッグの損傷の主要因と考えられている(内容物輸送後の)リールへの巻き取り時等における疲労損傷発生に関し、室内実験として「巻き取り模擬試験」を行い、それに基づき「損傷発生メカニズム解明」ならびに「疲労プロセス解明」を行った。この際に、万能試験機制御装置を導入し、既存設備である万能試験機(島津UH-500KNI)を本研究用途に改造してデータの収集を行った。その結果に基づき、繰り返しによる疲労損傷プロセスの解明が行なわれ、より長寿命で信頼性の高いウォーターバッグ設計への提言を行うと共に、モニタリングによる損傷検出のための方針を策定した。一方、上記の検討を通して明らかとなった損傷の形態や大きさの情報をもとに、過剰な設計を避けて最適なライフサイクルコストを実現することを目的として、ウォーターバッグ内外の電位差変化に着目した低コストな損傷検知システムの開発を行った。具体的には、「巻き取り模擬試験」のデータと考察をふまえた実際の損傷形態と大きさにもとづき、電位差変化により損傷の有無と場所を検知するための理論構築を行い、検知システムを開発した。
著者
山本 真一郎
出版者
兵庫県立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究ではまず、新たな電磁環境対策材料として、金属線配列材を用いた反射・透過制御材設計法を確立し、反射・透過特性を評価した。具体的には、負の等価比誘電率を持つ金属線配列材と誘電体を組み合わせた構成により、バインドパスフィルター、ハイパスフィルターが設計可能であることを示した。さらに、有限長金属線配列材を制御材の一部に取り入れることにより、全透過・全反射周波数を制御できることを確認した。次に、近年注目されているミリ波帯での遮蔽材を評価するため、ミリ波用透過係数測定装置を新たに作製した。種々のミリ波遮蔽材を評価することにより、妥当な結果を得た。
著者
福永 玄弥
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2016-04-22

今年度の研究実施状況は次の2点に分けることができる。第一に、4月1日より8月20日まで台湾に滞在し、前年度に引き続き、性的マイノリティの制度への包摂という点において日本よりも先行ポジションにある台湾の事例を調査し、その研究成果を論文や学会で発表した。第二に、日本の事例について調査を実施し、学会発表を行った。今年度の補助金はこれらの研究を遂行するために使用し、主にフィールド調査(旅費)や関連図書の購入費に当てた。なお、台湾の滞在にあたっては貴会若手研究者海外挑戦プログラムの支援を受けた。具体的な研究実施状況およびその成果は以下のとおりである。1. 日本と台湾における性的マイノリティの社会運動が、東京と台北のプライド・パレードをプラットフォームとして近年、連帯関係を形成してきたことを指摘し、その政治的背景を批判的に考察した。その成果は台湾、韓国、香港における学会ならびに東京で開催された公開シンポジウムで口頭報告として発表した。また、同成果を国際学会誌に論文として投稿しており、掲載の可否について連絡を待っているところである。2. 日本の事例として、2014年に成立した「渋谷区男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例」を取り上げ、同性パートナーシップが制度化されるに至った政治的背景を調査した。現在も調査は継続して進めているが、その成果の一部は学会で発表した。3. 2018年に米国で始まり、その後、日本や台湾、韓国、中国でも急速に広がった#MeTooムーブメントをフェミニズム運動のグローバル化として位置づけ、それが日本や台湾ではモダニティと関連づけて表象されていることを批判的に検討した。その成果は香港の学会誌に中国語で投稿した。