著者
岡崎 勝一郎
出版者
香川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

海苔の色落ちは天候やその他の要因で発生するが商品とはならずほとんどが廃棄されている。これを有効利用するため海苔の細胞壁に多量に含まれる粘性のある酸性多糖であるポルフィランを効率的かつ短時間で調製した。精製ポルフィランの免疫細胞に与える影響をマウスのマクロファージ培養細胞(J774. 1)とリポ多糖(LPS)に対する応答性が高いC3H/ HeN系マウスの脾臓細胞で検討した結果、細胞性免疫を増強するサイトカインであるインターロイキン(IL)-12とンターフェロン-γの産生誘導が乳酸菌やLPSと同様に認められ、マクロファージ上のToll様受容体4を介してLPSと同様にIL-12の産生を増強していることが示唆された。また、腫瘍壊死因子あるいは過酸化水素で刺激したヒト腸管上皮様細胞株Caco-2細胞で産生増強される炎症性サイトカインであるIL-8の産生をポルフィランと乳酸菌は抑制し、経上皮電気抵抗値で測定した腸管のバリア損傷に対する抑制効果もポルフィランに認められた。以上のことから、食物として摂取している海苔中のポルフィランには細胞性免疫の賦活化作用と腸管細胞での抗炎症作用といった乳酸菌と同様な健康機能効果があると考えられた。
著者
鈴木 智大 李 暉 丁 垚 韓 志晩
出版者
独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は東アジアの歴史的木造建築の構造システム論の創生に向け、技術的・空間的側面から各国の歴史的木造建築を総合的に分析、比較する研究構想の一部として実施した。具体的には中世日本と中国と韓国における木造建築について、その基礎的な情報および論考を集積・把握し、適宜現地調査をおこなった。そして、上記の基礎的な情報を踏まえ、中国の各時代・各地域の建築について網羅的な検討をおこなった。また中国建築における穿挿枋に着目し、日本建築との関連性を考察した。東アジア建築史著述の端緒となるだろう。
著者
氏家 誠 袴田 航
出版者
日本獣医生命科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

小胞体αグルコシダーゼ阻害薬(AGI)は、宿主細胞のαグルコシダーゼの働きを抑制する事で糖蛋白質の合成を阻害する。このため、AGIは、コロナウイルス(CoV)を初めとするエンベロープウイルスに対して抗ウイルス活性を示す。我々は、これまでに、化合物ライブラリーからスクリーニングを行い、動物およびヒトCoVに対して強力な抗ウイルス活性を示す新規AGIを6種類同定した。AGIが示した抗CoV活性は、当初、構造蛋白質であるS糖蛋白質の合成阻害に起因すると考えられていた。ところが、AGIはCoVのS糖蛋白質だけではなく非糖蛋白質及びその転写活性をも選択的に阻害する事が示唆された。最終年度は、AGIが示したこの予想外の抗CoV機構の解明を試み以下の成果を得た。1)CoVは感染すると宿主細胞由来の脂質2重膜を変化させてDMVsと呼ばれる「CoV専用の複製工場」を形成する。このDMVs形成には、非構造蛋白質のNSP3、4及び6が関与する。NSP3及びNSP4は糖蛋白質であることから、AGIはこれら糖蛋白質に作用してDMVs形成を抑制すると仮定した。そこで、AGI存在及び非存在下、感染細胞のDMVs形成を観察したところ、AGI存在下ではDMVs形成が著しく抑制される事が分かった。2)次にAGI存在及び非存在下、NSP4糖蛋白質の合成量を比較したところ、AGI存在下ではNSP4合成が強く阻害される事が分かった。これらの結果から、AGIは非構造蛋白質のNSP4糖蛋白質の合成を阻害することでCoV専用の複製工場DMVs形成そのものの合成を抑制し、結果として、CoVの転写活性・翻訳活性を強力に阻害することで強い抗CoV活性を持つことが示唆された。今後は、AGIによる抗CoV機構のさらなる詳細な解析を行いたい。
著者
岡田 勇 山本 仁志 諏訪 博彦
出版者
創価大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

今年度(第二年度)は、初年度に行った理論研究で明らかとなった協力を維持しうる規範が、実際の人間の規範意識として受容されているのかどうかを実証的に検討した。具体的には前半(2018.4-9)において、実験システムの仕様設計・構築・実装(外注)を行い、後半(2018.10-3)において、実際に被験者実験を行い規範意識の測定を行う。実施機関は創価大学と立正大学であり、それぞれの大学において研究倫理委員会などに実施の申請を行い承認を求めた。実証研究では、本研究で独自に開発した専用の経済実験システムを用いて行った。このシステムでは理論研究で明らかになった点、すなわち、行為者を評価する際にどのような情報に注目するかを測定する必要がある。従来知られていた規範では、行為者を評価する際に、一次情報(当該行為者が過去どのような行為をしたか)にまず着目し必要に応じて二次情報(当該行為者の行為が誰に対してなされたのか)に着目するという形態が主流であった。しかし本研究の理論研究では二次情報にまず着目し次に一次情報に着目するような評価ルールをもつ規範を新たな発見することができたため、この点を識別することが実験の大きな目的となる。被験者実験ではまずは大学生をサンプルとして実施した。実験は予備実験で実施の段取りを確認したのちに本実験として7回実施し、140名余りのサンプルを確保できた。この分析の結果、確かに理論として発見された規範が人間にも観察されることが確認できた。この結果は直ちに論文化して発表した。第三年度では理論と実験結果を統合して新たな理論仮説と分析に挑戦する。
著者
屋比久 浩市 益崎 裕章 高山 千利 島袋 充生 幸喜 毅
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

若齢期における人工甘味料摂取が、視床下部小胞体(ER)ストレスを介して、成獣期の肥満感受性(レプチン抵抗性)を高める可能性が示唆された。分子シャペロンを人工甘味料と共投与することで、視床下部 ER ストレスが低下し、さらに成獣期以降、高脂肪食に対する嗜好性をも軽減することが確認された。 マウスの embryo から摘出した全脳の primary culture においては、人工甘味料が ER ストレス関連遺伝子の発現をかなり亢進させた。これは人工甘味料が視床下部 ER ストレスにダイレクトに寄与することを示唆する所見である。
著者
三木 敦朗 奥山 洋一郎 白澤 紘明 斎藤 仁志
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

森林管理を持続可能な水準に高めることが求められていますが、一方でそれを実行する市町村では人材確保が難しいという現状があります。行政担当者の意志決定を支援するAIシステムがあれば、担当者は住民や関係者との合意形成等に専念することができ、持続可能な森林管理と行政コストの圧縮が両立できるのではないかと考えます。本研究は、そうしたAIの可能性を調査・実験等によって検証します。また、こうしたシステムが導入されたとき、森林管理や合意形成のあり方がどのように変化するのかを、制度と人材育成の面からも検討します。
著者
氏家 誠
出版者
日本獣医生命科学大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

エンベロープウイルスの膜融合蛋白質のheptad-repeat(HR)領域を標的とした抗ウイルスペプチド薬(HRP)は、ウイルスの膜融合活性を阻害する事で、ウイルス感染を抑制する。しかしながら、HRPは、細胞表面から直接侵入するウイルス※には高い抗ウイルス活性を示すが、エンドソームには取り込まれにくいため、エンドサイトーシスで細胞に侵入するエンベロープウイルスにはほとんど効果がない。本研究では、HRPにコレステロール(Chol)を結合することでエンドソーム指向性に改変したHRPを作製し、細胞表面経路又はエンドサイトーシス経路で細胞侵入する各種コロナウイルス(CoV)を用いて抗ウイルス活性を評価した。この結果、HRP-cholは、CoVの細胞表面経路だけでなくエンドサイトーシス経路も効率良く阻止する事を明らかにした。これらの結果から、エンドサイトーシス経路を主な細胞侵入経路とするその他のエンベロープウイルス(インフルエンザウイルス・エボラウイルス等)にも、HRP-cholが応用可能であることが示唆された。※最近の研究では、これまで細胞表面で膜融合を起こし細胞表面から侵入すると考えられてきたHIVやRSVなども、エンドサイトーシスを利用して感染する事が報告されている。ここでは、従来の「エンドサイトーシス侵入経路」と区別するためこれらの細胞侵入方法を「細胞表面侵入経路」とした。
著者
野口 裕記
出版者
愛知医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

angiotensinII(AGII)は、強い血管収縮作用などにより高血圧症のみならず腎障害、心筋障害も惹起することが知られているが、近年、ALI/ARDS発症にも関与していることが注目されている。今回私どもは敗血症性ALI/ARDS患者の、血中AGII濃度、アンギオテンシン変換酵素(ACE)遺伝子多型を検討することにより、ALI/ARDSとAGIIとの関連、およびAGII血中濃度に影響を与えるACE遺伝子多型と生存率との関連を検討したところAGIIは、ALI/ARDSで高値を示した。しかしながらACE活性が高いとされる(D/D)genotypeにALI/ARDS発症が多いわけではなかった。
著者
永原 章仁 浅岡 大介 北條 麻理子 泉 健太郎
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

胃潰瘍や癌がないにも関わらず、胃痛、胃もたれを起こす例は機能性ディスペプシア(FD)と呼ばれ、症状発現機序は十分に解明されていない。本研究では胃内圧を測定し、空腹時の内圧が食後の満腹感に影響している可能性を示した。FDの診断では、軽微な内視鏡所見にとらわれず、症状にフォーカスして診療をすること、治療では、新たな酸分泌抑制薬が高い効果を認めること、多剤併用療法の効果は限定的であること、抗うつ薬・抗不安薬が一定の効果があること、また、長期の管理は今後解決すべき大きな問題である事を明らかにし、非効率的な薬剤治療を回避し、適切な薬物治療を行うためのエビデンスの構築に寄与することができたと考えられる。
著者
秋山 庸子
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では「触感重視型材料」の設計の手法を確立することを目的とし,触感と材料の微構造の関係について検討した。皮膚に塗布して用いる製剤においては,皮膚の製剤によるぬれ性が触感に大きな影響を及ぼしていることが明らかになった。製剤の皮膚表面におけるレオロジー特性も,皮膚に対するぬれ性により変化することが分かり,皮膚の界面化学的性質が触感に及ぼす影響が明らかになった。また「しっとり感」と「べたつき」のように,統計学的には類似した性質を持にもかかわらず,前者は快,後者は不快をそれぞれ示すような官能評価項目について,物理的な現象の違いを検討し,それぞれの官能値と高い相関を持つパラメータを明らかにした。
著者
松木 太郎
出版者
名古屋市立大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

1.文献検討および解析プロトコルの検討:本研究では、①母親がマインドフルネス・トレーニングを実践することにより、母親および発達障害児(ASD、ADHD)においてどのような効果が生じるかについて検討すること、②ペアレント・トレーニングおよびマインドフルネス・トレーニングが有するそれぞれの特徴の違いに着目し、両トレーニングの長所を生かした育児支援方策のあり方を検討すること、の2点を主な目的として、文献検討および解析プロトコルの検討を行った。母親のアウトカムとして、育児ストレスの変化をはじめ、養育スタイルや主観的幸福感の変化にも着目すること、子のアウトカムとして、行動面および情緒面の変化を捉える必要性があることが示唆された。また、母親の既往歴、母親以外の者(父親など)の育児関与の有無、母親・子のストレスを生じさせるライフイベントの有無、子の投薬変更の有無、などを調整因子として含める必要性があることが示唆された。2.各アプリケーションの開発:文献検討および解析プロトコルの検討を行った上で、本研究で使用するペアレント・トレーニングおよびマインドフルネス・トレーニングのスマートフォン用アプリケーションを作成した。作成の際は、①各トレーニングの動機づけの維持、②各トレーニングの日々の達成度の記録、の2点が可能なように工夫を行った。なお、広く研究参加者を募集するために、スマートフォンはiPhoneおよびアンドロイドで実施できるようにしている。
著者
根津 由喜夫
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では、中世、ビザンツ帝国に成立した軍事聖者崇敬が周辺のスラヴ・東欧世界に伝播し、その地に定着し、独自の発展をしてゆく過程を分析し、地域ごとに生まれた特性を比較、検証した。特に注目したのは、テサロニケの聖デメトリオス信仰がブルガリア、セルビアで受容されるプロセスである。こうした課題を究明するため、文献調査と並んで、両国の教会や修道院などに残さされた壁画などの現地調査も実施し、それらの地域でビザンツに由来する軍事聖者が現地の守護聖人として定着してゆく過程が確認された。
著者
平野 達志
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

今年度は特別研究員採用期間の3年目に当たり、昨年度に続いて資料収を継続し、2009年9月から2010年2月までの期間に日独共同大学院プログラムを利用してドイツ、ハレ=ヴィッテンベルク・マルティン=ルター大学での在外研究を行った。まず資料収集作業としては、モスクワと北京に滞在してロシア国立図書館(2009年8月)、中国国家図書館(同9月)に関連文献を調査したことが挙げられる。さらにドイツ渡航後にはドイツ外務省政策文書館(同10~11月)、イギリス国立公文書館(同11~12月)、ミュンヘン歴史学研究所(2010年1月)、ベルリン=リヒターフェルデ連邦文書館(同)、国際連盟公文書館(同)で作業を実施した。すでにベルリンでは何度も渡航して資料を収集していたが、今回はとりわけ中央や在外公館の間の公信だけでなく、1930年代に駐華大使を務め、日中戦争初期に和平工作を行ったオスカル・トラウトマンの日記を撮影できたことが成果として特筆される。また、ロンドンでの作業は今回が初めてであり、華北分離工作から日中戦争、日米開戦に至る東アジア情勢や、世界政治における枢軸形成に関するイギリス側の基本資料を収集できた。また年明けにはジュネーヴ国際連盟文書館を訪れ、デジタルカメラで約3,000枚分の資料を集めることができた。ハレでの在外研究では、まずこの都市で9月末から10月初頭にかけて開催されたドイツ語圏日本研究学会に出席し、ドイツ、オーストリア、スイスなどから訪れた日本学研究者と知遇を得た。それに続いて10月初頭に1週間開催された東大・ハレ大秋季共同アカデミーでは、「市民社会とその対抗構想」というテーマでの討論に参加した。その後、面談を通じてパトリック・ワーグナー教授からの博士論文指導を受けた。
著者
小林 一貴 竹本 稔
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究の目的は我々が同定した筋芽細胞分泌たんぱくであるR3hdmlの骨格筋における糖取り込みにおける役割ならびにマイオカインとしての機能を明らかにすること目的としている。本年度は計R3hdmlをアデノウイルスベクターを用いて肝臓に過剰発現させた後、ストレプトゾトシン(STZ)を投与し糖尿病を惹起した際の糖代謝や生存曲線に与える影響を検討した。その結果、R3hdml過剰の有無により空腹時血糖値に差はなかったものの、R3hdml過剰マウスで有意な生存曲線の延長が観察された。以上より肝臓で過剰発現され分泌されたR3hdmlが全身の組織、細胞に影響を与える可能性が示唆され、さらに分泌されたR3hdmlと脂質代謝との関連を調べた。R3hdmlを過剰発現した肝臓では脂質代謝のマスターレギュレーター膜結合型転写因子SREBPの発現が低下することやR3hdmlを過剰発現したAd293細胞では飽和脂肪酸の一種、パルミチン添加に伴う細胞障害が軽減されることが明らかとなった。R3hdmlと全身の脂質代謝との関連が示唆され、今後さらに研究を進めてゆく予定である。
著者
福島 正己 佐川 宏行 垣本 史雄 荻尾 彰一
出版者
東京大学
雑誌
特別推進研究
巻号頁・発行日
2009

米国ユタ州に宇宙線観測装置テレスコープアレイ(TA)を設置し、極高エネルギー宇宙線の観測をおこなった。2014年までの5年間に10^<18>から10^<20> 電子ボルト(eV)にいたる宇宙線を約80,000例とらえ、銀河系外の宇宙で発生して地球まで伝搬してくる陽子宇宙線の特徴をもつことを示した。また10^<19.76> eV 以上の72例には、ある特定の方向から偏って到来する傾向があることを見出した。今後の観測で発生源の天体を特定し、宇宙空間で粒子が極高エネルギーに加速される仕組みの理解をめざす。
著者
森 哲 竹内 寛彦 森 直樹 Savitzky Alan H. Tang Yezhong Li Ding Tsai Tein-shun Nguyen Tao Thien Das Indraneil Silva Anslem de Mahaulpatha Dharshani 城野 哲平
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

ヤマカガシは頸腺と呼ばれる特殊な防御器官を持ち、強い皮膚毒を持つヒキガエルを食べることによりその毒成分を取り込んでこの器官に溜める。また、特異的な防御ディスプレイを行って、その毒を効果的に捕食回避に利用する。本研究では、合計18種のユウダ亜科のヘビが同様の防御器官を持つことを確認し、それらの形態は多様化していることを明らかにした。また、分子系統解析の結果、頸腺システムは1回だけ進化してきたことを示した。さらに、ミミズ食に移行した一部のヘビでは、頸腺毒をヒキガエルではなくホタルから取り入れている可能性が示された。
著者
野口 晴子 田中 隆一 川村 顕 牛島 光一 別所 俊一郎
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究の目的は,子どものHCの蓄積過程に焦点を当て,因果推論に裏打ちされた政策評価手法を応用する同時に,実装プロセスを開発することで,官学協働による実効性のあるEBPMの実現を目指すことにある.東京都足立区との協働の下,公的な保育・教育サービスを利用する子どもたちの「全数」を対象に,同一の子どもを10年間以上悉皆で追跡することの出来るパネルデータを独自に構築・整備する.本研究により,世界的に主流となっている計量経済学の分析手法の活用可能性が広がり,これまで日本では困難であった,子どものHCの蓄積過程に関わる様々な要因間での相関メカニズムを解明することが可能となる.
著者
吉田 孝 中島 秀喜 瓜生 敏之
出版者
北見工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

我々はこれまでに合成および天然多糖類を硫酸化した硫酸化多糖は高い抗HIV作用を持つことを見出し研究を続けている。特に天然多糖カードランを硫酸化したカードラン硫酸は、低毒性であり高い抗HIV作用を示すことを明らかにした。作用機構は、硫酸基に由来する(-)電荷が、HIVのエンベロープタンパク質gp120の(+)電荷集中部位に静電的に相互作用してエイズウイルスがT細胞などへ感染することを阻害すると考えた。インフルエンザウイルスもエンベロープタンパク質を持つ。本研究では、カードラン硫酸の抗ウイルスメカニズムによりインフルエンザウイルスにも適用させた材料化を検討した。
著者
山内 敏正 窪田 直人 原 一雄 門脇 孝
出版者
東京大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

(1)アディポネクチン受容体の特異的アゴニストを植物(果物・野菜を含む)から抽出・精製し糖尿病の根本的治療薬を開発。:アディポネクチンと立体構造上ホモロジーを持ち、アディポネクチン受容体に結合してAMPキナーゼを活性化するオスモチン並びにPR-5ファミリーペプチドをあらゆる植物・果物からスクリーニングし、ジャガイモOSM-1h(89%)、トマトNP24(89%)、ピーマンP23(86%)、トウガラシosmotin-like protein(72%)に含まれることを見出した。(()内はタバコオスモチンとのアミノ酸配列相同性を示す。アディポネクチン受容体アゴニストであることが確認されたオスモチンを、肥満・2型糖尿病モデルマウスであるob/obマウスに投与したところ、糖・脂質代謝が改善されるのが認められた。(2)オスモチン測定系の確立。:PR-5ファミリー物質の抗体の作製を完了した。ウエスタンブロットにて反応性の検討中である。(3)果物・野菜の摂取量とオスモチンの血中濃度・メタボリックシンドロームとの相関の検討。:東大病院に入院・通院する糖尿病患者あるいは兵庫県宍粟郡の住民からなるコホート集団を対象として植物・果物の摂取頻度調査を行い、前者の集団では種々の植物・果物の摂取量と糖尿病関連臨床指標との相関を後者の集団では種々の植物・果物の摂取量と糖尿病発症率との相関を検討し、PR-5ファミリーのうちどの物質が実際に生体内で対糖尿病作用を強くもっているかのsupportiveなデータが得られるか検討中である。
著者
神田 道子 旭 洋一郎 天野 マキ 細井 洋子
出版者
東洋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

本研究は、女性の社会参画を推進すると観点に立ち、教育、福祉、医療領域の女性リーダーについて、調査に基づいてジェンダー関係の差別の構造について分析した。その際、コンパラブル・ワース、組織のタイプ、所属するスペース、スペースの中で権力関係を伴う位置=プレイスの概念を用いてアプローチした。調査は、公立小中学校の校長・教頭、福祉施設の施設長、公立病院の看護部長・婦長、コントロールグループとして地方自治体の管理職者、組織のタイプが異なる社会活動リーダー(女性問題、教育、学習、福祉活動)を対象に行った。分析を通して以下の知見が得られた。1.所属するスペースのジェンダー構成によって人事、マネージメントなどによる影響力に差があり、女性比率が高い小学校、病院などは強い影響力をもつ。しかし、これらはコンパラブル・ワースが問題になる領域であり、差別の構造の複雑さが明らかになった。2.ジェンダーの意識、女性問題認識などでは、職業リーダーと社会活動リーダーとの間に差がみられた。「学校」「病院」リーダーは性役割の固定化につながる意識がみられた。参画可能性があり、影響力をもつプレイスに座ったとしても、それが男女平等を質的に進める参画には結びつかない場合もあることを示している。3.リーダーの生活を情報資源、人間関係資源、時間資源の所有状況などから分析し、その生活を明らかにした。