著者
齋藤 清二 西村 優紀美 吉永 崇史 TRISHA Greenhalgh
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

物語共有の場における経験的学習を推進することが、発達障害を有する大学生に対する心理・社会的支援として有用であるという暫定仮説に基づき、Webサービス(PSNS : Psycho-Social Networking Service)が構築された。PSNSは彼らの日常経験や想像上の経験を意味づけ、自由に表現することのできる、物語共有の場として機能した。PSNS上で交流されたテクストをデータとして、彼らが自らの経験を意味づけつつ学習することへの支援を通じて、どのような自己変容的プロセスが展開していくかについての質的分析を行い、発達障害大学生のための新しい支援モデルを提案した。
著者
福島 俊彦 鈴木 眞一 早瀬 傑 隈元 謙介
出版者
福島県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

小児甲状腺癌手術症例のうち、研究参加の同意が得られた67例について、癌関連遺伝子の解析を行った。BRAFの点突然変異は63%で認められ、K, N, H RASには遺伝子変異を認めなかった。これらの結果は、これまでの日本人成人の結果と同等のものであり、チェルノブイリ事故後の甲状腺癌のものとは異なっている。また、BRAFについては、免疫組織化学的検討も行い、染色性と変異陽性は同等の結果であった。
著者
横井 勝彦 竹内 真人 小野塚 知二 倉松 中 高田 馨里 松永 友有 福士 純 永岑 三千輝 田嶋 信雄 鈴木 淳 西牟田 祐二 奈倉 文二 須藤 功 西川 純子 山下 雄司 千田 武志
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究の目的は、総合的歴史研究を通じて軍縮と軍備管理を阻む近現代世界の本質的構造を解明することにある。第二次大戦以降、武器取引は急速に拡大し複雑化したが、その構造はすでに第一次大戦以前に形成されていた。その点を明らかにするために、われわれの研究プロジェクトでは武器移転という事象を、経済史・国際関係史・帝国史・軍事史などの多角的な視点から分析した。分析概念として武器移転を歴史研究の分野に適用したのは、わが国でも本研究プロジェクトが初めてである。
著者
池田 修一 高橋 幸利
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

正常卵巣におけるNMDAR抗原の発現を検索するため、ウシの卵巣と未受精卵を検索した。免疫組織化学的に原始卵胞の細胞質と未受精卵の細胞膜にNR2B抗原の発現が認められた。次に凍結卵巣と未受精卵1031個を集めて蛋白化学的分析を行った。Immunoblottingではこれら組織にNR1とNR2Bの蛋白分画があることが見出された。そこで未受精卵の細胞膜から抽出した蛋白分画をLC-MS/MSで解析したところ、SPFGRFK, KNLQDR, GVEDALVSLK, QPTVAGAPK, NEVMSSKの5個のペプチドを得た。これらはNR1、NR2A、NR2B、NR2Cの部分アミノ酸配列と一致した。
著者
今村 展隆 GLUZMAN Daniel F. KLIMENKO Ivanovich Victor GULUZMAN Daniel Fishelevich GLUZMAN Dani KLIMENKO Iva 木村 昭郎
出版者
広島大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1997

我々は非汚染地区であるビテブスク州(人口1,423,000名ベラルーシ共和国)においてリクイデーター(除染処理作業者)に高率の白血病発症を認めた。多数のリクイデーターが居住しているウクライナ共和国においても同様であった。更にドネエプロペトロフスク、ドネツク及びチャーコフ州に居住しているリクイデーター(各々 21,906, 26,503, 28,314名)と、それらの州における非被爆者男性に発症した白血病及び悪性リンパ腫の発症率を比較した。これらの州における白血病発症率は1986年のリクイデーター群において相対リスク3.02と非被爆者群と比較して高率であり、一方1987年のリクイデーター群では相対リスク1.05と低値であった。この差は1986年のリクイデーターに大線量被曝を受けた人々が多数存在している結果であり、白血病発症が線量依存性に発症している可能性を強く示唆している。悪性リンパ腫発症においても同様であり、1986年のリクイデーター群において相対リスク1.35とやや高率で、1987年のリクイデーター群は0.75と低率で白血病発症と同様に線量依存性である可能性を示唆するものと考えた。更に重要な事実は、原爆被爆者に発症した骨髄異形成症候群患者が白血病に進展する際にp53癌抑制遺伝子の突然変異を持っていた事実と同様に、検討し得た2例の急性骨髄性白血病にp53癌抑制遺伝子異常を認めた。放射線被曝によりDNAの突然変異が招来されたものと考えた。
著者
斎藤 修 深尾 京司 攝津 斉彦 尾高 煌之助 尾関 学 ジャンーパスカル バッシーノ スティーブ ブロードベリ 高島 正憲 ジェラルト シュラース
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

明治以前日本における一人当り国内総生産(GDP)統計を人口・都市化データの整備と新たな推計方法の考案によって改訂し、目的は達成した。1600年全国人口は問題点の一つであったが,速水融の1200万説に代わる新推計を完成させた。また,都市化についても新たな成果を得,これらに依拠したGDPの新推計と部門分割をとりまとめた。一人当りGDP値は,国際的な準拠データであったマディソン推計とは異なり,後半期の増加率がより高く推計された。他方,産出高の部門シェアからみる構造変化は,一人当りGDPが伸びなかった17世紀に大きく,安定成長の後半期には逆に構造変化がなかったという結果となった。
著者
高村 昇 林田 直美 松田 尚樹 中島 正洋
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

チェルノブイリ事故後、小児甲状腺がんが激増したが、甲状腺がんと甲状腺結節との発生頻度には地域ごとに強い相関があることも示された。そこで我々は、ジトミール州において、事故後のスクリーニングで甲状腺結節を指摘された住民(結節群)と、甲状腺異常を指摘されていない住民を対照群として追跡スクリーニングを行い、甲状腺結節の長期的予後についての臨床疫学研究を行った。その結果結節群では結節数、径ともに有意に増加していたのに対し、対照群では結節の発生は認められなかった。細胞診での悪性は結節群の3例のみであったが、悪性の可能性が否定できない判定困難例を併せるとその割合は対照群より有意に高かった。
著者
吉川 茂 矢向 正人 芦川 紀子
出版者
九州大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2003

ガウディによれば、サクラダファミリア大聖堂の全体は1つの巨大な楽器として構想されていた。鐘の音楽と協会における礼拝との間での音響的なバランスをとるべく鐘楼の下部構造は一種のマフラー(消音器)になっている。生誕の門の左側(外から見て)の塔(ツインタワーの形をしている)に着目して、そのほぼ下半分の基本構造を1/25縮尺模型で再現し、上部に音源(「鐘」の代用)を置いて音の伝搬特性について実験した。音源スピーカーから14〜96kHzの広帯域信号を入力し、音響レベルを測定したところ、身廊部では約35dBの減衰があり、隣の塔ではさらに約10dBの減衰が見られた。上部構造からの放射に適合する鐘は細長い形をしたチューブラベル・タイプである。ピッチを決める主要な振動モードは(1,4)であり、両端では円形断面を保ちながら左右の5本(G5,A5,B5,C6,D6にチューニングされている)のベルに関する実験から確認した。ただし、ピッチがいくつかの部分音の寄与によって決まるのではなく、たった1つの振動スペクトルによって決まるので複数本のチューブラベルを組み合わせるときの効果は期待できない。生誕の門のファッサードにおける彫刻群「天使の合唱隊」などから予想される音楽的シーンは「復活祭の鐘の音と合唱の声」とか「エオルスの琴の音を伴奏とする妖精たちの合唱」などである。一方、塔、チューブラベル、螺旋階段などは完結性を意味するポジティブな円環であるとともに「樹木」のように閉ざされることのない「有魂」の「器官」を象徴している。サグラダファミリア大聖堂は鐘および合唱の音楽と合体することによって初めて「母なる自然の創造力と養育力(ゲーテの言う自然の治癒力)」を体現でき、「ガウディの聖堂」にふさわしくなると推測できる。
著者
畑山 義弘
出版者
北海道開拓記念館
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

今回, 殖民軌道の調査をしたことにより次のことが明らかになった. 殖民軌道は, 北海道第1期拓殖計画末期の大正13年に取上げられ, 根室の厚床より標準に至る約80km, 軌間762mmの根室線が最初であった. これを「北海道殖民軌道」と呼んだ. 軌道は国費によって北海道各地に施設され, 36の線が運営された. (昭和2年の第2期拓殖計画では47線, 407km).設置については, 軌道法第32条により特許申請は不要で, 設置する官庁(農林省)が主務大臣と協議してなされていた. しかしこの制度で実施されたのは根室と枝幸の2線だけであった. 昭和20年以降, 北海道緊急開発計画の樹立にともない, 名称を「北海道簡易軌道」と改称し農林省の所管となり, 国有機関車, 軌道の保全のため国が費用を補助していった.また軌道の新, 改良は北海道開発局が担当し, 北海道知事がその管理者となり, 昭和28年からは, 管理運営に関しては, 北海道庁と各町村が委託協定を結び一切の管理運営を各町村が行うようになった. しかし昭和46年3月をもって国の補助(土地改良法による補助)が打ち切られ, また道路網の発達により自動車が急速に普及し, 軌道の利用が減少, 施設の老朽化にともない経営が困難となっていった. このため昭和46年12月, 浜中町営軌道を最後に北海道から消えていった.また今回の調査で軌道の運営と利用について確認されたことは, 当初は利用者が「移住者世話所」に申出て承認を受ければ無償で軌道の使用ができたが, その後計画輸送と自主的管理運営の必要から利用者を組合員とする運行組合に委託, 組合は使用料を徴収して維持費用にあてた. ただし根室線, 枝幸線は軌道法32条により直営運輸線として国が直営していた. この他軌道の営業実績, 地域の変ぼうについては資料の整理分析が終了次第明らかにしてゆきたい.
著者
橋本 智也
出版者
京都光華女子大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2015

研究目的本研究の目的は、日本の大学が「データに基づいた中途退学防止策」を検討する際に活用できるモデルを構築することであった。研究方法研究目的の達成のため、日本と米国の制度・環境の違いを考慮しつつ、日米の大学で行われている中途退学防止に関する研究・実践を調査・整理し、日本の多くの大学が応用できる内容を検討した。日本については、雑誌論文を中心に網羅的な文献調査を行った。米国については、日本への応用可能性を考慮して、日本の現状(知見の共有・蓄積が不十分な状況)に類似した年代に焦点を絞って調査した。また、IRに携わる専門職協会(Association of Institutional Research)の開催する国際大会に参加し、情報収集を行った。研究成果日本の文献では、主なものとして、以下の文献が知見の共有・蓄積に役立つと考えられる。丸山(1984)は、中途退学を説明するモデルについての米国の先行研究を整理するとともに、それらのモデルを基に、日本の調査データを用いて、各学部の環境要因が学部の退学者数・退学率に与える影響を検証している。また、姉川(2014)は、中途退学を扱っている各種調査の結果を整理するとともに、先行研究で中途退学と関連があるとされた要因について、公開データを用いて検証を行っている。米国の文献では、主なものとして、以下の文献が役立つと考えられる。Spady(1970)は従来の研究について、経験的な知見の間につながりがないことを指摘し、理論的基盤を持つ共通の枠組みの中で経験的知見を統合していく必要があることを主張している。Tinto(1975)は学生が大学に学術的・社会的に統合されるかが中途退学の有無に影響するという具体的なモデルを提唱し、その後の研究・実践が発展する基礎となっている。日本と状況が類似した年代の米国の枠組み・方法を応用し、研究・実践の知見を統合・共有することで、日本の取り組みが、より効果的・効率的に進められると考えられる。
著者
今井 一雅
出版者
高知工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

2016年7月に木星に到達したNASAの木星極軌道探査機JUNOと、アメリカにある世界最高レベルの感度を持つ低周波電波望遠鏡LWAを使った木星電波観測により、木星電波の放射機構を解明する上で重要となる電波放射源の位置やそれに関連する電波放射ビーム特性を調べ、3次元的な木星電波放射ビーム構造を明らかにすることを目的としている。LWAの観測データについては、木星電波のダイナミックスペクトラム上に見られる斜めの縞状構造のモジュレーションレーンに着目し、偏波特性を考慮したモジュレーションレーンの傾きの解析を行った。このモジュレーションレーンの測定によって、木星電波源の位置が推定でき、従来から同定されている木星電波源の衛星イオの位置に関連するIo-CとIo-Bについて、起源の異なる電波源の領域があることがわかった。それらを新たにIo-C'とIo-B'を呼ぶことにし、その電波源の領域が、衛星イオを貫く磁力線の根元で最もオーロラ発光強度が高い経度と一致するという重要な情報が得られた。特にIo-Cの領域においては、木星の北磁極側と南磁極側の両側から同時に電波が放射されていることがわかり、複雑な木星電波放射源の様相を明らかにすることができた。また、JUNOで観測された木星電波観測データの解析から、従来の木星電波放射が木星の磁力線に対して角度を持ち磁力線に軸対称に放射されているとするコニカルシート状のビーム構造を支持する結果が出始めている。つまり、JUNOから見た木星電波の緯度方向のビーム構造は、コーン状の一部を見ていることを示しており、電波放射機構を解明する上で、非常に重要な情報を得ることができたことになる。今後、さらに多くのJUNOで観測された木星電波のデータ解析を行うことにより、コニカルシート状のビーム構造が一般的であるかの統計解析も行っていく予定である。
著者
明石 孝也 南口 誠 林 重成 清野 肇 上田 光敏
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

酸化ジルコニウムを分散させたアルミニウム中間層を用いた液相酸化接合によって、固体酸化物燃料電池構成部材のイットリア安定化ジルコニアとステンレス合金の間に酸化アルミニウムと酸化ジルコニウムの複合層を生成させることで,高い酸素ガスシール性と優れた耐熱サイクル性を有するシールを形成することに成功した。また、酸化ニッケルを分散させたアルミニウム中間層を用いた液相酸化接合によっても接合部の耐熱サイクル性を向上させた。
著者
中澤 高清 菅原 敏 岡野 章一 青木 周司 田中 正之
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1995

大気中のメタンの循環を解明するために、まず、その安定炭素同位体比を精密に測定する技術を開発した。メタンを二酸化炭素へ変換するために白金-アルミナを用いた自動変換装置を製作し、変換効率が99.9%であることを確認した。また、炭素同位体比の値が既知である精製空気を本装置で精製し、得られた二酸化炭素を質量分析計を用いて分析することによって、総合精度が0.07パ-ミルであることを確認した。使用した大気試料は約3Lであり、従来の研究において必要とされた量の1/5に減ずることができた。本装置を用いて、ロシア中央気象観測局の協力を得てロシア上空の対流圏各層で採取された大気試料を分析し、観測の大きな空白域となっていたこの地域のメタンの炭素同位体比を初めて測定した。特に、湿地と化石燃料起源のメタンが定量的にも明瞭に区別できることを示した。また、日本上空の対流圏で採集された大気試料、および日本上空の成層圏の14km-35km間で採集された大気試料についても分析した。その結果、炭素同位体比は対流圏では約-48‰であり、成層圏においては、濃度とは対照的に高度と共に増加し、35kmで約-38.5‰であることが明らかとなった。このような高度分布の原因を明らかにするために、1次元光化学-拡散モデルを開発し、メタンの炭素同位体比の高度分布を計算したところ、主な成層圏におけるメタンの消滅源はOHとの反応であるが、炭素同位体比の高度分布にとってはC1との反応が特に重要であることが分かった。なお、成層圏でのC1との反応によるメタンの消滅量は10-15%と推定された。さらに、対流圏のメタン収支の解明に炭素同位体比を利用するために、2次元メタン循環モデルに炭素同位体の発生・消滅過程を組み込み、濃度と同位体比の緯度分布を解析することによって、近年の地球表層のメタンの発生量および消滅量を評価した。
著者
林 重成 坂口 紀史
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

Ni-低Al合金上への金属コーティング(最大100nm厚)によるAl_2O_3スケール形成の臨界Al濃度の低減について検討し、Ptコーティングと熱処理との組み合わせにより、最小臨界Al濃度は14at%まで低減できた。一方、他の金属コーティングでは顕著な効果が得られなかった。Ptコーティング材では、熱処理後にAlのアップヒル拡散が確認され、これが低Al合金上へのAl_2O_3形成を促進したと考えられる。
著者
吉田 奎介 白井 良夫 塚田 一博 川口 英弘
出版者
新潟大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1988

初年度と2年度にはMCPAとBOPの至適投与量に関する基礎的検討並びに農薬検出法の検討を行った。最終年度は、MCPAのBOP胆嚢発癌促進作用並びに胆石症患者胆汁中の農薬排泄の有無につき検討した。1. BOP長期投与によるハムスタ-胆道上皮の変化及びMCPA同時投与の影響: (1)BOP単独投与の効果;BOP20ppm含有水を摂取させ、20週で肝内に細胆管増生86.7%、異型上皮20.0%、肝外胆管に異型上皮6.7%、胆嚢に異型上皮6.7%の発生を認めた。(2)MCPA単独投与の効果:MCPA 4000ppm含有固形飼料摂取20週で肝内には細胆管増生を60.0%に認めたが、異型上皮の発現は認められなかった。(3)BOP,MCPA同時投与の効果:肝内には細胆管増生100%、異型上皮12.5%を認め、肝外胆管に上皮内癌6.3%、異型上皮31.3%を認めた。 小括:MCPA単独では胆道に異型上皮を誘発しなかったが、BOPによる異型上皮の発生を有意に(P〈0.05)促進し、少数ながら胆管癌の発生を誘発した。今回の実験では、胆嚢に異型上皮は発生しなかった。2.人胆汁中農薬の検出について: 人胆汁中にCNPが1pg/μ1、p,p'ーDDTO.8pg/μ1及びBHC(痕跡)が検出された。しかしMCPAは検出されなかった。〔結論〕MCPAは、BOPによる胆嚢の異型上皮の発生を促進しなかったが、胆管ではBOPによる異型上皮の発生を促進した。この結果より、MCPAは胆道上皮に対して発癌プロモ-タ-作用を持つ可能性が示唆された。人胆汁中では、MCPAは検出されなかった。今後、土中ならびに人体内でのMCPAの分解・代謝過程を明らかにし、MCPAならびにその代謝産物の胆汁中排泄の有無を確認したい。疫学上胆道癌死亡率と関連性有りとされたCNPが胆汁中に検出されたことより、その発癌作用についても検討する必要がある。使用禁止後長期経過した農薬が未だに人胆汁中に検出されたことから、体内残留農薬の発癌への影響についても検討が必要と考えられた。
著者
竹内 比呂也 川本 一彦 白川 優治 國本 千裕 岡本 一志 姉川 雄大 藤本 茂雄
出版者
千葉大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

大学図書館による学習コンテンツの提供,ラーニングコモンズおよび学習支援サービスの有機的結合によって形成される新しい学習環境が学生の学習行動,情報探索行動にどのように影響を与えるかを明らかにし今後の学習環境整備の方向性を示すことを目的として,千葉大学アカデミック・リンクを対象に学際的なアプローチの下,定量的,定性的調査分析を実施した。その結果,新しい学習環境が学生の多様なニーズを満たしていること,また,間接的ながら,学習成果に影響を与えていることが示唆された。
著者
REPETA Lawrence
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、2011年に発生した東日本大震災を受けての福島第一原子力発電所事故に関する情報収集とアーカイブ化のプロジェクトである。政府、国会等が行った調査は、原発事故とそれに対する政府の対応を明らかにしたが、日常生活に及ぼす放射能の情報は複数の機関・組織に分散したままである。こうした問題意識から、1)福島県で行われた健康診断 2)環境省委託組織による調査 3)放射能レベルの測量基準 4)政府による除染作業 5)特定避難勧奨励区域に関する情報 6)除染対象地域の小中学生の健康診断についての情報を体系的に収集し、デジタル・アーカイブ化を行った。また、事故に関する行政再編成についての報告書を作成した。
著者
小助川 貞次 月本 雅幸 高田 智和 渡辺 さゆり 呉 美寧 朴 鎭浩 WHITMAN John ALBERIZZI Valerio luigi
出版者
富山大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

漢文訓読は日本以外の漢字文化圏でもそれぞれの言語で行われていた言語活動であるが、一般社会における認識は極めて低く、また漢文訓読に関する学術用語の国際的共有も進んでいない。本研究では国内外の研究者と連携・協力しながら「国際的共有知財としての漢文訓読」というテーマのもとで問題解決を試み、「漢文訓読用語集」(日本語・韓国語・英語・イタリア語)の公表(共著)と「東アジア漢文訓読史概説」の大学教育での実験を行った。