著者
大野 眞男 鑓水 兼貴 竹田 晃子 小島 聡子 吉田 雅子 小島 千裕
出版者
岩手大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

近代国語観の変遷に関して、各地に散在する全国各県の地方教育会資料から方言関係記事を抽出した戦前期地方教育会雑誌方言関係記事データベース(PDF形式1527ファイル)を作成した。戦前期地方教育会資料が収載された膨大な方言情報の活用に関して、岩手県郷土教育資料(昭和11年・15年)に反映した岩手の小学校教師たちの草の根的な国語観を分析した上で、岩手県郷土教育資料に収載された14681点の方言情報についてデータベース化を行い、これを活用して昭和初期の岩手県方言地図の電子的復元を試行した。これらの研究成果の報告会を岩手県立図書館と共催で開催した。
著者
梅山 伸二
出版者
独立行政法人産業技術総合研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

(1)計算機制御可能な回転偏光フィルタと高精度デジタルビデオカメラを組み合わせた観測システムの試作を行い、これを用いて、物体の見えからの拡散/鏡面成分の分離実験を行った。その結果、2成分の分離が良好に行われることを確認し、これを画像の認識・理解シンポジウム(MIRU2002)において発表した。この実験においては、問題モデルの特殊性や、分離すべき成分が2個しかないという性質を利用して、分離アルゴリズムを作成した。作成したアルゴリズムは、2成分間の相互情報量を直接評価するものであり、一種の全探索アルゴリズムとなっているため、パラメータの設定等が容易であり、また安定なアルゴリズムとなっている。(2)独立成分分析を利用した物体の表面反射からの拡散/鏡面反射成分の分離手法を、対象物や照明源が移動する場合にも適用可能とするため、ハーフミラープリズムを利用した2画面同時観測システムの試作を行った。入力光はプリズムで2本に分離され、それぞれ相異なる偏光方向を持つ偏光フィルタを装着したデジタルカメラで観測される。このことにより、拡散/鏡面反射の成分比の異なる2枚の観測画像の同時観測が可能となった。このシステムにより、画像の取得だけであれば16枚/秒程度の観測が可能となり、拡散/鏡面反射の1準)実時間分離システムの可能性が開かれた。この成果は、第9回画像センシングシンポジウムおいて発表を行った。(3)手法全体のまとめを、IEEE Trans.on PAMI誌に投稿し、再録が決定した。
著者
成田 正明 宮本 信也
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

研究代表者は自閉症患者の血中に存在存在する神経栄養因子(BDNF,brain-derived neurotrophic factor脳由来神経栄養因子,NT-4 neurotrophin-4)の異常について報告し、初年度(平成19年度)は研究分担者とともにその異常値とサブタイプとの関連について臨床プロフィールから検討を重ねてきた。これら血中因子の異常は生下時からすでに認められることから、自閉症の発症は胎生期に起因すると考えられる。この考えに基づいて研究代表者は妊娠ラットを用いた実験で自閉症モデル動物を作成しその胎仔期からの異常、即ちセロトニン神経系の発生分化異常を明らかにしてきた。上記神経栄養因子はセロトニン神経の正常な発生分化に必須であることは分かっている。当該年度は自閉症モデル動物において、セロトニン神経の発生分化を司っている因子の異常について、検討した。胎生12日目の自閉症モデルラット胎仔では、セロトニンシグナルの上流に位置するソニックヘッジホッグ(shh)の発現が頭部で低下していることを、ホールマウントin situ hybridization法で明らかにした。またセロトニン発現関連の遺伝子をリアルタイムPCR法で調べたところ自閉症モデルラットで発現が低下していた。これらの異常は研究代表者が以前ES細胞を用いて行った実験結果と一致する。今後はES細胞で見られたshhによるレスキュー効果、即ち発生段階でのセロトニン神経細胞に対し、shh添加によるセロトニン神経の再生を見据え、自閉症治療法を模索したい。
著者
椹木 哲夫 土屋 和雄 門内 輝行 冨田 直秀 横小路 泰義 尾形 哲也 青柳 富誌生 水山 元 中西 弘明 堀口 由貴男 青井 伸也 谷口 忠大
出版者
京都大学
雑誌
学術創成研究費
巻号頁・発行日
2007

複雑なシステムの中におかれたヒトや生体は,自らを取り巻くところの環境や社会を能動的に意味づけ,価値づけ,自らの棲む世界として秩序化していくことができる.本研究課題では,このような自律的主体の「多様性の生成と選択」の機構を「記号過程」に求め,記号の生成・利用のダイナミズムの観点から,生体細胞から環境適応機械(ロボット),社会組織に亘る様々なレベルにおける適応システムの同型性を見いだし,個々のシステム要素が外部・内部の物理的環境との相互作用を介して機能が形成される一般的過程について追究した. 5カ年の成果により,目的をもって生きる存在としての自律的な主体(人,ロボット,細胞)が, 他者主体を含む環境との相互作用を通して,意味の世界を創出して伝達する仕組み(記号過程)を解明し,システムが人を育て,人がシステムを育てる相互主導性を担保できるシステムの設計論を確立することができた。
著者
飯田 元
出版者
奈良先端科学技術大学院大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

広汎性発達障害(しょうがい)をはじめとする様々な障害レベルにある、いわゆる自閉症スペクトラムを有する未成年児を対象に、メールやブログ、SNS(ソーシャルネットワーキングシステム)といった電子的コミュニケーション手段に対するリテラシを障害レベルに応じて適切に教育し、また、実践を支援・補完する専用SNSプラットフォームを試作し、模擬的な療育プログラムの思考を通じて評価した結果、発達障害児の療育と社会参画支援のためのSNSプラットフォームが有するべき具体的機能要件および非機能要件をあきらかにした
著者
佐藤 清治
出版者
佐賀医科大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1995

これまで我々は、多剤耐性に最も関与している多剤耐性遺伝子MDR1の発現誘導に関し研究を続けており、種々の抗癌剤や紫外線等によってこの遺伝子の発現誘導がかかるエレメント(inverted CCAAT box)をプロモーター上に決定している。そして、これらのストレスによりこのエレメントに、ある転写因子が結合しMDR1遺伝子の発現を誘導している事実を見出していた。今年度は、サウスウエスタン法を用いてλgt 11 cDNAライブラリーよりスクリーニングを行い、この転写因子(MDR-NF1と命名)のcDNAを分離・同定した。そこでクローニング出来たMDR-NF1のDNA結合領域であるcDNAの塩基配列を決定すると、ヒトMHCクラスII遺伝子プロモーター上のY-boxに結合する転写因子YB-1と同一である事が示唆された(論文作成中)。また、この転写因子がリン酸化に関与していることこともすでに見出していた為、今回は、MDR1プロモーターの発現誘導におけるリン酸化阻害剤(H-7)の関与を調べてみた。その結果、H-7はMDR1プロモーターの発現誘導において、高濃度では紫外線や制癌剤によるMDR1promoterの発現誘導を、恐らく転写因子のリン酸化を阻害することによって抑制していることが推察され、逆に、低濃度ではMDR-NF1とinverted CCAAT boxとの結合を増すことによりMDR1promoterの発現を誘導するという、濃度特異的な2つの作用を持つことが判明した(Cellular Pharmacology,2:153-157,1995)。これにより、治療を含めた薬剤などによるこの耐性遺伝子の調節には、その使用法に詳細な検討を必要とすることが示唆された。今後この転写因子(MDR-NF1)の抗体の作製、臨床サンプルへの応用へと進める予定である。
著者
江口 一久
出版者
国立民族学博物館
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2001

ベトナム木版画のなかに仏教、道教、儒教、その他とかかわる民間の生活と密接した民間版画がある。現存する民間版画としてもっとも有名なのは、ドン・ホー版画とハン・チョン版画、それに「ハン・マー版画」がある。すでに、生産されていないものに、キム・ホアン版画がある。ドンホー村ではおもに、グエン・フウ・サム、グエン・ダン・チェとチャン・ニャット・タンの三人とその家族が年画をつくっている。今日、年画が一般のあいだで利用されていないのは、現代人の考え方や思いをあらわすことができないからといえる。ハン・チョン版画の後継者は今、グエン・バン・ギエン一人しかいない。民間版画は字句による祈願、象徴による祈願、同音が吉祥をしめすものによる祈願、字句と象徴による祈願、護符、新年の宗教的絵、滑稽な絵、愛国的な絵、鑑賞用の絵、霊媒信仰の神の絵に分類される。ドンホー版画はおもにツーリスト・アート(観光用の土産物)に活路をみいだしているが、もはや、民衆のなかではいきていない。ハン・チョン版画は国立美術館で制作されており、高価で、美術愛好家によって購入されている。ハン・マー版画は霊媒信仰の神の絵が中心となっており、今日でも、民衆のなかでいきている。仏国遠東学院にはドン・ホーとハン・チョン版画が所蔵されており、どれも、1960年以前のもので、紙や絵の具の質がわるいが、版画の全盛期を彷彿させる。
著者
小倉 幸雄 三苫 至 半田 賢司
出版者
佐賀大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、まず一次元拡散過程について強マルコフ性の条件は満たさないが、マルコフ性を満たす多くの新しい確率過程を解明し、それらのクラスを決定した。つぎにファジィ集合値確率変数について大数の法則の拡張を行い、大偏差原理を導出した。さらに、ファジィ集合や集合を係数にもつ確率微分方程式の確率1でファジィ集合や集合の値をとる解の一意的な存在を証明した。Chern-Simons解析における指数3次の項を被積分関数とする漸近剰余の評価を行った。2パラメータPoisson-Dirichlet分布について新たな特徴づけを与えた。
著者
三木 祥治
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2013-04-01

本年度は、昨年度単離を行った腸管内の常在性細菌及びその菌に感染する腸内常在性バクテリオファージを用いて、それらの混在によってin vitroで免疫細胞に対してどのような遺伝子誘導を引き起こし、in vivoでどのような生理現象を引き起こされるか明らかにすることを目的に実験を行った。まず昨年度マウス腸管内内容物から単離した菌についてPCR法を用い菌種同定を行ったところ、この菌が腸球菌の一種(En.)であること、またファージについて全ゲノムシークエンス解析を行ったところ、新規ファージ(E.ファージ)であることが明らかとなった。次にin vitroの検討として、qRT-PCR法を用い解析を行った。Raw細胞をEn.及びE.ファージで刺激したところ、En.単独刺激と比較して、IL-6の遺伝子誘導が約5倍増強されることが明らかとなった。一般的にファージが宿主菌に感染すると溶菌が引き起こされることが知られていた為、このRaw細胞をEn.及び溶菌を引き起こす抗生物質を用いて刺激したところ、E.ファージを用いた検討と同様に、En.単独刺激と比較して、約4倍IL-6の遺伝子誘導が増強された。一方、溶菌を引き起こさない抗生物質を用いた検討ではIL-6の遺伝子誘導の増強は全く見られなかった。これらの検討から、En.の溶菌によって免疫細胞からIL-6の遺伝子誘導が引き起こされることが示された。さらにin vivoの検討としてDSS誘導性大腸炎を引き起こしたマウスにおいてE.ファージを投与したところ、E.ファージを投与した群ではcontrol群と比較してDSS誘導性大腸炎に対し感受性を示すことが明らかとなった。この結果について、IL-6はDSS誘導性大腸炎の増悪因子であることから、En.の溶菌により腸管内免疫細胞からIL-6の遺伝子誘導が強く引き起こされた為ではないかと考えられる。
著者
山崎 博
出版者
久留米大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

動物実験においては局所TNBS腸炎モデルラットを作成し、自己組織化ペプチド局所投与単独でのその効果を検討した。投与7日後の潰瘍面積、腸重量は有意に減少した。 次にヒト検体においては、健常人、IBD患者での、TRPチャネルファミリーの発現について検討した。末梢血単球中において、UCでは健常人に比べTRPV2が低く、TRPM2が高かった。また疾患活動性とADM,IL-1β,TRPV2,ALBに有意な相関を認めた。臨床検査値については、UCではTRPV2と白血球数に有意な相関がみられた。血球成分除去療法において、TRPV2では、検体数が少なく有意差は認めなかったものの改善群で上昇傾向がみられた。
著者
江田 真毅
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

家禽(ニワトリ、シナガチョウ、アヒル)の飼育は、新石器時代の中国北部で最初に始まったとされ、とくにニワトリの飼育は約10,000年前まで遡るとされてきた。本研究では、家禽化プロセスの解明のために、中国中部・北部の新石器時代と青銅器時代を中心に計23遺跡から出土した鳥類骨を調査した。その結果、新石器時代前期および中期の遺跡ではニワトリの可能性のある骨は皆無であり、また新石器時代後期や青銅器時代の遺跡でもニワトリの可能性のある骨の出土は稀だった。このことは、新石器時代前期や中期におけるニワトリの飼育を否定するとともに、青銅器時代においてもニワトリの利用は稀であったことを示唆すると考えられた。
著者
池田 富士雄
出版者
高知工業高等専門学校
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

分数階微分(Fractional Calculus)を用いた数理モデルである分数階微分方程式モデル(FCモデルとよぶ)に基づく制御系は、従来の整数階微分方程式モデルに基づく制御系に比べて、本質的に非線形要素に対してロバストであることが理論的に明らかにされつつあり、実験的にもその有効性が確認されている。本研究での目的は、非線形要素の種類を陽に考慮することなく設計することができ、かつ調整も容易な、FCモデルに基づく制御系設計法を提案することである。そして非線形要素の一種であるアンプの飽和や、ギアのバックラッシ、摩擦などに対してFCモデルを適用し、計算機シミュレーションおよび実験的検証により、提案した設計法の有効性を示すことである。昨年に引き続き本年度は、当初の研究計画に従い以下の研究を実施した。1.従来の制御系設計法を拡張することにより、制御対象の非線形系に対して適切なFCモデルに基づく制御器による設計法を提案し、具体的なアルゴリズム、設計手順を開発した。2.製作した実験装置に対して制御実験を行い、さらにより良い性能が得られるためのパラメータの調整等を行い、制御器の改良を進めた。3.学術論文への投稿および掲載(1件)、国際会議等での発表(2件)を行った。
著者
斉藤 昭
出版者
電気通信大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

2017年度の目標として(1)より単一モードに近い放射パターンを有するアンテナの開発継続、(2) 受信メカニズムの解析 (3)集中定数素子を用いたOAMモード次数の制御の3点を挙げた。(1)のモード単一性改善に関しては、電流分布をフーリエ展開した展開係数を単一にする検討を行った。この展開係数は、OAM各次数に関する自己インピーダンスの絶対値の逆数に比例することから、自己インピーダンス虚部が0となるようにすることで単一に近づくが、さらに実部も低下させると一層単一性が改善する。4素子ループアンテナアレイに5mm間隔で近接して反射板を設けた構成を解析し、所望のOAMモードと他のモードの放射電力比が27dB以上とほぼ単一モードとなることを、下記(2)の項目で開発した解析プログラムを用いて示した。また、この1対の4素子アレイを送信・受信に用い、通信距離3cmで所望のモードの通過が他モード(干渉波)と比べ、シミュレーションで28dB以上、実測でも19dB以上大きいことを確認した。(2)の受信メカニズムの解析に関しては、ループアレイ間の通過特性を次数ごとに解析できる、一般化Z行列の手法を用いて解析した。数値計算ソフトMathematica上にこの解析プログラムを作成した。また一般化Z行列の解析から、OAM多重度はループ半径が同じでも2つの自由度があることを導出し、数値計算でループ半径数の2倍のOAM多重度が実現できることを解明した。(3)の集中定数素子を用いたOAMモード次数制御に関しては、ループアンテナ内に容量を複数配置した構成をシミュレーションで検討した。容量を最適化することで、異なるループ半径で通過が大きくできた。しかし、容量がなく同じループ半径間の通過と比べると通過量が小さく性能が劣った。来年度は、性能とループ半径制御性の両面を勘案し有用性を判断する。
著者
越前 宏俊 大西 明弘
出版者
明治薬科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

標準的なヘリコバクターピロリ(HP)菌除菌療法はプロトンポンプ阻害薬、アモキシシリン、クラリスロマイシンの3剤併用であるが、抗HP作用の中心であるクラリスロマイシン(CAM)は、シトクロムP450(CYP)3A4分子種の代謝活性を阻害することが知られており、多くのCYP3A4基質薬物との薬物相互作用が報告されている。この薬物相互作用機構をin vitro実験系とHP菌除菌療法施行中の患者で検討した。ヒト肝ミクロゾーム実験系を用いた検討では、CAMはCYP3A4選択的な阻害作用を有するものの、その阻害作用は弱く、治療量のCAMで得られるヒトの血漿中薬物濃度においては、わずか5%内外のCYP3A4活性阻害の影響しか示さないことが判明した。一方、HP除菌療法に標準的に用いられる投与量(400-800mg/day)と投与期間(1週間)で、CYP3A4活性の指標である内因性コルチゾールの6β位水酸化体への代謝クリアランス(CLm_<6・OHC>)が50%程度低下した。この矛盾は、ヒト肝ミクロゾーム実験系における競合的な酵素阻害では評価できない、薬物代謝酵素に対するmechanism-based阻害によるものであることを明らかにした。その結果、CAMは、時間依存的および濃度依存的なmechanism-based機構のCYP3A4阻害作用を有しており、種々の仮定をおいてin vitroからin vivoへの阻害強度の予測を行うと、ほぼin vivoでの阻害強度が予測できた。以上の結果から、標準的なピロリ菌除菌療法に用いられる投与量でのCAMは、肝薬物代謝酵素CYP3Aを有意に阻害するが、その機構はいわゆるmechanism-based阻害機構であり、その強度予測には、通常の基質競合に基づく検討のみならず、mechanism-based阻害の検討が必要であることが明らかとなった。
著者
井上 元男
出版者
東海大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

本研究の目的は濃縮海水馴化クロレラ(高温株,中温株)を冬眠化(休眠化)処理をほどこし,高密度な液状,ゼリー状,乾燥粉末化して生体保存する基礎的研究を行なうことにある.方法,材料:本実験は1991年4月から1993年1月まで、折戸校舎内研究室で行なわれた。実験材料として用いられたクロレラは高温株(適温35℃)Chlorella sp.中温株(適温25℃)Chlorella elipsoideaである。濃縮には遠心分離株が使用され,冬眠化(休眠化)処理がほどこされ,塩分濃度別10%,30%,35%,50%,70%のクロレラにつき1週間〜1ヶ月間の液状,ゼリー状,乾燥粉末の保存実験がなされ,復元培養クロレラの細胞数,細胞径の測定がなされた、得られた主な結果は次の如くである.結果:1).高温株,中温株に対する階温別休眠化処理実験から,最適休眠処理温度は高温株に対して5℃,中温株は0℃であった.2).濃縮海水馴化クロレラ(1×10^8cells/ml)を利用し,遠心分離株を使用し,更に濃縮したクロレラを液状,ゼリ状化して保存実験を行ない、高温株を5℃,中温株0℃で休眠化処理および同温度で低温保存したものは塩分濃度30%,50%,70%のクロレラを1ヶ月保存出来ることが判明した.3).塩分濃度50%,35%,70%の高温株を乾燥粉末(常圧乾燥)にさせたものは中温株と同様、休眠化処理をしたものはしないものよりも保存後の復元培養で高い増殖を示し、1ヶ月以上保存可能の見通しが得られた.4)コペボウダに対して,基本食としての保存クロレラ利用を試み,成果を見た.また、耐温性の高い高温株の採集にも成果を見た。5)以上の成果から特に高温,高塩な海水馴化クロレラを乾燥させて冬眠化保存させ1ヶ月以上の保存させられる可能性を見出したことは特筆されよう.
著者
三浦 孝一 蘆田 隆一 河瀬 元明 LI Xian
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究は,我が国のエネルギー消費量の大きな部分を占める製鉄業の高炉プロセスの効率化を目指し,高炉内の反応のうち,極めて速度の遅い鉄鉱石をコークスで直接還元する固固反応を工業的に促進する実現可能な方法を提案したものである。具体的には,まず,ナノサイズの酸化鉄粒子を用いて,実際に反応界面積を増加することによって固固反応が600℃の低温で進行することを明らかにした。次いで,それを工業的に実現可能な方法として,300℃程度まで加熱すると結晶水が脱離しナノサイズの細孔を形成する低品位鉄鉱石の性質を利用し,形成された細孔に低品位炭やバイオマス由来の熱可塑性炭材を多量に装入する方法を提案した。
著者
山本 裕之 小寺 香奈
出版者
愛知県立芸術大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

現代音楽において一般的な楽器による特殊奏法はよく知られているが、ユーフォニアムについては研究や活用が成されてこなかった。そこで本研究では、ユーフォニアムにおける特殊奏法について調査分類し、作曲家や演奏家が利用可能な資料としてまとめ、また奏法習得のための教材を制作した。これらの研究の結果、他の楽器と同じようにユーフォニアムにおいても現代的作品が書かれやすくする土台を整備することができた。
著者
浅井 昭博
出版者
愛知学院大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1995

歯周病の原因である細菌は、Porphyromonas gingivalis, Actinomyces viscosus等の嫌気性細菌が有力とされているが、従来の方法による細菌採取では、歯周ポケットに限局した採取とならざるを得なかった。外科療法は歯周治療に占めるウエートは大きいが、歯周外科処置の細菌学的考察は困難とされていた。歯周病の発症や進行の機序解明に関する分野において、歯周ポケットのみならず、ポケット以外の歯周組織への細菌の侵入による局在の様子を明らかにし、実際に歯周病関連菌の侵入を受けている歯肉組織を歯周外科処置にて除去し得ているか、in situ Hybridization(ISH)法を含めて細菌学的に観察をすることを目的とした。歯周外科処置により除去した歯周組織を標本とし、P. gingivalisのFim遺伝子の約0.96kbp HincII-BsmI断片DNAプローベをもとに、従来検出不可能あるいは極めて困難であった歯周組織内への細菌の侵入、局在の様子を観察する方法を得た。その有効性を検証するために、歯周ポケット内においては従来の培養法を用い、歯周外科療法の効果実証を行った。細菌検査は歯周外科処置前後および対照菌について実施し、併せて臨床効果判定を行った。現在、歯周外科処置時に標本を採取することにより、P. gingivalisが歯周ポケット内のみに限局せず、歯周組織内に広範に侵入していることを明らかにしつつある。また、各種歯周病関連菌に対する培養法による結果を基に薬剤投与法の検討を行い、Local Drug Delivery System応用による塩酸ミノサイクリンの歯周局所への投与の有効性を細菌学的・臨床的に実証し、塩酸ミノサイクリンを含有したストリップスタイプ歯周病薬「SDP」を開発し、発表した。今後、“Checkerboard"DNA-DNA Hybridizationを行い、観察可能な歯周病関連菌の菌種を増やす予定である。
著者
豊田 太郎 本多 智
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究は,水中で化学エネルギーを運動エネルギーに変換する有機微粒子(ここでは有機アクティブマターと呼ぶ)が,多数の集団になったときに初めて現れる群れの現象と,過去の動きの履歴が時間発展の中に現れる現象を,バクテリアモデルとして構築し,その中での分子レベルのダイナミクスの時空間発展を理解することが目的である。有機アクティブマターの中でも,バクテリアサイズの等方相液滴や液晶滴に焦点を絞り,群れの動きや個々の時間発展に内在する,分子-微細構造形成-アクティブマターの動きという,動きの階層性の時空間発展の本質に迫る。本年度は,有機アクティブマターを観察するためのデバイスに用いる材料開発を主眼に研究を行った。粒径が数十マイクロメートルの有機アクティブマターの動きの履歴現象を追跡するためには,同じ空間を動きまわるだけでなく,動いている間に空間そのものが変化する摂動を加えてその応答を観察する必要がある。デバイスの材料として用いられるポリジメチルシロキサンは熱によって形状可変であるが,観察系への加熱はアクティブマターの動きにも影響を与える。そこで,光によって局所形状可変な新規ポリジメチルシロキサンを開発した。このポリジメチルシロキサンは,主鎖末端のヘキサアリールビイミダゾールの光による切断と再結合によって,星型ポリマーとネットワーク型ポリマーとを繰り返し行き来できるものである。紫外線照射によって,このポリジメチルシロキサンが無溶媒下でも,流動化と非流動化を繰り返すことができることを実証した。
著者
竹村 典良
出版者
桐蔭横浜大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

複雑系グリーン犯罪学は、複雑系理論の研究方法に基づいて、時空横断的な環境犯罪・エコ犯罪を研究し、その対策を考える。地球環境を危機に陥れ破壊する環境犯罪は、先進国と途上国の間で不平等・不公正に配分されており、グリーン社会正義という理念と実践がますます重要になっている。水紛争を回避するための環境的正義と民主主義、生物多様性の危機・喪失を回避するための環境保全、原発事故による放射能汚染の拡大阻止等、課題は山積している。