著者
柴田 憲一 向井 達也 中垣 英明 長野 祐久
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.7, pp.486-490, 2021 (Released:2021-07-30)
参考文献数
13

63歳男性.1か月前から発熱があり,左上肢の麻痺で入院した.MRIで右前頭葉,右頭頂葉,両側後頭葉に拡散強調像で高信号があり,急性期脳梗塞と診断した.左後頭葉病変はT2強調像で高信号だった.右中大脳動脈M1に狭窄が疑われた.塞栓症と考えられたが原因不明だった.胸部CTですりガラス影と,polymerase chain reaction(PCR)で新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)陽性だった.新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による凝固異常が原因の可能性があった.
著者
田戸岡 好香
出版者
心理学評論刊行会
雑誌
心理学評論 (ISSN:03861058)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.204-225, 2018 (Released:2019-11-06)
参考文献数
102
被引用文献数
3

In this paper, I focused on stereotype suppression strategies to prevent stereotypic responses because these strategies are commonly used in the context of person perception. Suppressing stereotypic thoughts ironically increases stereotypic accessibility and use (i.e., the rebound effect). First, I described the position of stereotype suppression in stereotype research. Second, I considered the strategies for stereotype suppression without a rebound effect. The study of stereotype suppression has been developed based on the mechanism of thought suppression. However, in this article, I suggest that some effective strategies used in thought suppression cannot be applied to stereotype suppression. Stereotypes are suppressed in the context of person perception; therefore, I reviewed past findings with regard to replacement thoughts and propose effective strategies for stereotype suppression. It is necessary to integrate theory and findings of related area for developing the research of stereotype suppression.
著者
久保田 進彦
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.52-66, 2020-01-11 (Released:2020-01-11)
参考文献数
34
被引用文献数
3 7

社会のデジタル化が急速に進展しつつある現在,そこにおけるブランド戦略のあり方について大局的に検討することは,非常に重要な課題である。しかしそのためには,まずデジタル化によって消費環境がどのように変化するかを的確に認識しておく必要がある。こうした考えに基づき,本研究ではデジタル社会における消費環境について検討していく。具体的には,まずいくつかの研究をレビューしながら,デジタル社会における消費環境の動向について確認する。つづいてBardhi and Eckhardt(2017)によって提示された「リキッド消費」について説明する。そしてさらにリキッド化が社会に浸透している様子を,通時的データを用いて観察する。なお本研究における議論はKubota(2020)へと引き継がれたうえで,こうした消費環境の変化に対応したブランド戦略のあり方へと展開されていくことになる。
著者
松田 ヒロ子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
文化人類学 (ISSN:13490648)
巻号頁・発行日
vol.80, no.4, pp.549-568, 2016 (Released:2017-02-28)
参考文献数
54

1945年8月に日本が無条件降伏した際、台湾には約3万人の沖縄系日本人移民(沖縄県出身かあるいは出身者の子孫)がいたといわれている。そのなかには、1895年に日本が植民地化して以来、就職や進学等のために台湾に移住してきた人びととその家族や親族、戦時中に疎開目的で台湾にきた人びとや、日本軍人・軍属として台湾で戦争を迎えた沖縄県出身者が含まれる。本稿はこれらの人びとの戦後引揚げを「帰還移民」として捉え、その帰還経験の実態を明らかにする。沖縄系移民は日本植民地期には日本人コミュニティに同化して生活し、エスニックな共同体は大きな意味を持っていなかった。にもかかわらず、米軍統治下沖縄に引揚げの見通しが立たないまま、台湾で難民状態におかれた沖縄系移民らは、はじめて職業や地域を超えて全島的な互助団体「沖縄同郷会連合会」を結成した。中華民国政府からは「日僑」とよばれた日本人移民らは、原則 として日本本土に引揚げなくてはならなかったが、米軍統治下沖縄への帰還を希望した人びとは、 沖縄同郷会連合会によって「琉僑」と認定されることによって引揚げまで台湾に滞在することが特別に許可された。すなわち、帝国が崩壊し引揚げ先を選択することが迫られたときに、それまで日本人移民コミュニティに同化して生活していた人びとにとって「沖縄(琉球)」というアイデンティティが極めて重要な意味を持ったのである。しかしながら、「琉僑」として引揚げた人びとが須らく米軍統治下沖縄社会を「故郷」と認識し、また既存の住民に同郷人として受け入れられたわけではなかった。とりわけ台湾で幼少期を過ごして成長した引揚者たちは、異なる環境に適応するのに苦労を感じることが多かった。また、たとえ自分自身は沖縄社会に愛着と帰属意識を持っていたとしても、台湾引揚者は「悲惨な戦争体験をしていない人」と見なされ、「戦後」沖縄社会の「他者」として定着していったのである。
著者
村田 浩一
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.41, no.11, pp.811-813, 1988-11-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
12
被引用文献数
8 7

神戸市近郊で保護された傷病野生イノシシ17頭について, ラテックス凝集 (LA) 反応によるトキソプラズマ (Tp) 抗体保有状況の調査を行った. 17頭中9頭が陽性 (32≤) であった. さらに, Tp抗体価128倍を示した5個体について, 免疫グロブリンの分画を行い各分画の抗体価を測した.生後2日齢および20日齢の個体のTp抗体は, IgGを示す単峰性のピークであることから, 母体よりの移行抗体であると考えられ, 母体の感染が凝われた. IgMとIgGを示す2峰性のピークをもつ成獣は, Tp感染の初期の状態にあると考えられた.これらの結果から, 野生下のイノシシも広範にTp感染を受けていることが示唆され, 野生動物との接触ならびに捕獲, 摂食については十分な配慮が必要であると思考された.
著者
盛田 常夫
出版者
比較経済体制学会
雑誌
比較経済研究 (ISSN:18805647)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.2_1-2_10, 2009 (Released:2011-01-21)
参考文献数
12

体制転換(移行)によって経済学の存在意義が問われている。社会主義崩壊が計画経済崩壊であるとしたら,経済学は国民経済の計画化を支える科学たり得なかったことを意味する。「不足の経済学」を打ち立てたコルナイ経済学は,いったい何を分析し,どのような理論成果を生み出したのだろうか。経済学ははたして科学か,レトリックか,あるいは論理学か,応用数学の一分野か。また,体制転換過程におけるコルナイの政策提案を批判的に検討する。
著者
Kazuo Yamada Atsushi Watanabe Haruo Takeshita Atsushi Fujita Noriko Miyake Naomichi Matsumoto Ken-ichi Matsumoto
出版者
The Pharmaceutical Society of Japan
雑誌
Biological and Pharmaceutical Bulletin (ISSN:09186158)
巻号頁・発行日
vol.42, no.9, pp.1596-1599, 2019-09-01 (Released:2019-09-01)
参考文献数
15
被引用文献数
5 5

Joint hypermobility syndrome (JHS) (also termed hypermobility type Ehlers–Danlos syndrome, hEDS) is a heritable connective tissue disorder that is characterized by generalized joint hypermobility, chronic pain, fatigue, and minor skin changes. Initially, it was reported that there is a small subset of patients with JHS/hEDS who have haploinsufficiency of tenascin-X (TNX). However, the relationship between TNXB and JHS/hEDS has not been reported at all afterwards. EDS was reclassified into thirteen types in 2017, and the causative gene of JHS/hEDS remained to be identified. Therefore, in this study in order to determine whether JHS/hEDS can be diagnosed by the concentrations of serum form of TNX (sTNX), we measured the concentrations of sTNX in 17 JHS/hEDS patients. The sTNX concentrations in half of the JHS/hEDS patients were significantly lower than those in healthy individuals. No mutations, insertions or deletions were detected in the TNX exon sequence of the JHS/hEDS patients except for one in patient. That patient has a heterozygous mutation. A correlation between sTNX concentration and mutation of the TNXB genomic sequence was not found in the JHS/hEDS patients. These results indicate that the decrease in sTNX concentration could be used as a risk factor for JHS/hEDS.
著者
安積 徹
出版者
分子科学会
雑誌
Molecular Science (ISSN:18818404)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.AC0005, 2011 (Released:2011-06-14)

注釈:この講義ノート前編は 2007年11月に発表され,元となる講義ノートについては分子科学会のhttp://j-molsci.jp/archives/index.htmlの頁にて公開している。
著者
渡辺 明治 川崎 康弘
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.44, no.7, pp.317-332, 2003-07-25 (Released:2009-03-31)
参考文献数
94
被引用文献数
1
著者
三浦 航太
出版者
独立行政法人 日本貿易振興機構アジア経済研究所
雑誌
ラテンアメリカ・レポート (ISSN:09103317)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.1-15, 2020 (Released:2020-01-31)
参考文献数
22
被引用文献数
3

本稿は、2019年10月中旬以来チリで発生した社会危機を、2011年の学生運動や新しい左派勢力という視点から検討する。軍政下に導入され民主化後も継続してきた既存の政治経済社会システムは、経済格差や社会と政治の乖離を生み出し、それは市民の不満の蓄積、そして近年の抗議行動の増加へとつながった。2011年に大規模な学生運動が発生したことや、そこから生まれた新しい左派勢力である広域戦線が2017年総選挙で台頭したことは、2019年の社会危機の以前から既存のシステムに対する問題提起がなされていたことを示している。これまで学生運動や新しい左派勢力が示してきた変革への意思は、2019年の社会危機を通じてチリの多くの人々からも示され、新憲法制定に向けた合意へとつながった。2020年4月には新憲法をめぐる国民投票が実施される。既存のシステムを修正して維持するのか、新しいシステムへ変革していくのか、チリは大きな岐路に立たされている。
著者
大槻 秀樹 五月女 隆男 松村 一弘 藤野 和典 古川 智之 江ロ 豊 山田 尚登
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.9, pp.763-771, 2009-09-15 (Released:2009-11-09)
参考文献数
19

精神疾患のいくつかは,季節性に寛解・増悪することが指摘されており,とくに気分障害における季節性がよく知られている。自殺企図患者や入院患者における季節性の変動を示すデータは散見されるものの,一般救急外来を受診する患者に関するデータは少ない。我々は平成17年 9 月から 1 年間,滋賀医科大学附属病院救急・集中治療部を受診した3,877例(救急車により搬送された患者2,066例を含む)を調査した。精神科疾患は299例(7.7%)であり,その中でF4(神経症性障害,ストレス関連障害および身体表現性障害)が158例と最多であった。精神科疾患で受診する患者数は, 6 ~ 7 月と 9 ~10月にピークがあり, 1 月に最も減少していた。精神科疾患で受診する患者数は,日照時間や降水量との間に関連性は認められなかったが,気温が上昇すると精神科疾患により来院する患者数が増加することが示された。これらの結果は,救急外来を受診する精神科疾患の特徴を示すと共に,今後,救急外来において精神科疾患を早期に発見する手助けの一つとなりうると思われる。
著者
正畠 和典 東堂 まりえ 岩崎 駿 安部 孝俊 山道 拓 村上 紫津 曹 英樹 奥山 宏臣 臼井 規朗
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.815-822, 2019-06-20 (Released:2019-06-20)
参考文献数
39

【目的】先天性喉頭閉鎖症(以下,本症)は,出生直後から上気道閉塞症状をきたし,致死的な経過をたどる予後不良な疾患である.本症の治療経験から,本症の治療成績と問題点について検討した.【方法】1982年から2017年までの35年間に当院と関連施設で経験した本症9例を対象とした.各症例の臨床的背景,出生前画像診断,周産期経過,出生後の治療経過,転帰などにつき,診療録に基づいて後方視的に検討した.【結果】本症9例のうち7例に胎児腹水を認めており,7例中5例は中央値在胎21週時にCHAOS(congenital high airway obstruction syndrome)として出生前診断された.CHAOSとして出生前診断されていた5例のうち,心不全の悪化により子宮内胎児死亡した1例を除く4例に対して,出生時の気道確保のため,ex utero intrapartum treatment(EXIT)による気管切開を施行した.EXIT下に気管切開した全例が出生時に救命され,母体にも合併症は認めなかった.CHAOSとして出生前診断されていなかった4例中3例は出生直後に気管切開で気道確保を行ったが,食道閉鎖症を合併した症例のみが救命され生存退院した.出生した症例の在胎週数の中央値は37週,出生体重の中央値は2,015 gで,5例に本症以外の先天異常の合併を認めた.生存退院できた4例のうち,他の先天異常を伴わない2例と食道閉鎖症を合併した1例が人工呼吸器から離脱して長期生存した.【結論】本症のうちCHAOSとして出生前診断された症例に対して,EXIT下の気管切開は児を救命する有効な治療法であった.
著者
中江 啓晴 熊谷 由紀絵 小菅 孝明
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.1-4, 2014 (Released:2014-07-22)
参考文献数
16

【緒言】眼瞼痙攣(眼瞼攣縮)は眼輪筋,皺眉筋など眼瞼運動に関与する筋肉の不随意の収縮により開瞼が困難となる状態で,局所性ジストニアに分類される。【症例】患者は61歳女性,半年前から出現した眼の違和感を主訴に当科受診。眼瞼痙攣と診断,柴胡加竜骨牡蠣湯の内服を開始したところ改善傾向となり,少量の芍薬甘草湯を追加したところ更なる改善が得られた。患者の希望により芍薬甘草湯を増量し芍薬甘草湯単剤投与に変更したところ症状が悪化,以前の処方に戻したところ改善が得られた。【考察】眼瞼痙攣を含む頭部ジストニアの発症機序として中枢神経系にある基底核運動ループの障害が提唱されている。柴胡加竜骨牡蠣湯は中枢神経系に作用すると推測されることから眼瞼痙攣を改善した可能性がある。【結語】柴胡加竜骨牡蠣湯の眼瞼痙攣に対する有効性が示唆された。

8 0 0 0 OA 新刊短評

出版者
日本人口学会
雑誌
人口学研究 (ISSN:03868311)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.71-83, 2021 (Released:2021-11-18)
著者
天野 光三 前田 泰敬 二十軒 起夫
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
日本土木史研究発表会論文集 (ISSN:09134107)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.88-95, 1988-06-20 (Released:2010-06-15)
参考文献数
19

関西地方には、古来よりの伝統と格式を持ち、多くの参詣客で賑わう寺社・仏閣が数多く存在している。これらの寺社への参詣客輸送を主な目的として、明治から昭和初期にかけて多くの地方鉄道・軌道や軽便鉄道が設けられた。関西鉄道 (現JR関西線) に接続して、伊勢神宮と結ぶ「参宮鉄道」(現JR参宮線) が、明治26年に開業したのを始めとして、明治31年には高野山と大阪を結ぶ高野鉄道 (現南海高野線) が開業した。その後、能勢電車、水間鉄道、天理軽便鉄道 (現近鉄天理線)、生駒ケーブル、参宮急行電鉄 (現近鉄大阪線・山川線) など数多くの路線が次々と生まれた。これらの鉄道の中には、第二次大戦末期に不要不急路線として資材供出の犠牲となったものも少なくない。このような寺社参詣鉄道は、安定した寺社参詣旅客の輸送需要に支えられて発展していき、大軌 (現近鉄) 系のように次々と路線の拡大をはかっていった会社も見られる。しかし、戦後、昭和30年代に入り、観光ニーズの多様化や、急速なモータリゼイションなどにより乗客の大幅な減少が引き起され、経営基盤が揺り動かされている鉄道路線も少なくない、また一方では、能勢電鉄や水間鉄道などのように、都市化の波に洗われ、通勤通学輸送を主体とした都市近郊鉄道に脱皮しつつある路線も出てきている。これらの鉄道について路線の成立と発展過程をふりかえり、大阪都市圏の鉄道綱整備に果たした役割について、その意義を考察するものである。
著者
清水 典史
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.54, no.7, pp.715, 2018 (Released:2018-07-01)
参考文献数
3

大うつ病性障害(MDD)の発症には慢性ストレスが関与していることが知られているが,その詳細なメカニズムは未だ不明である.近年,MDD患者では血中インターロイキン-6(IL-6)が高値を示すことが報告されており,また動物実験においても,マウスへの慢性ストレス負荷が血中IL-6を増加させることが報告されている.これらの報告は,慢性ストレスにより誘導されたIL-6がうつ病の発症に関与している可能性を示唆している.しかしながら,末梢血中のIL-6と中枢性疾患であるMDDの発症とを直接的に結び付ける証拠はない.本稿では,慢性ストレスが血液脳関門(BBB)の透過性を亢進させることによりIL-6の脳実質への侵入を許し,これがうつ様行動の発現につながることを明らかにしたMenardらの報告を紹介する.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) O’Donovan A. et al., Depress. Anxiety., 30, 307-314(2013).2) Hodes G. E. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 111, 16136-16141(2014).3) Menard C. et al., Nat. Neurosci., 20, 1752-1760(2017).