著者
島袋 充生 山川 研 益崎 裕章 佐田 政隆
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.100, no.4, pp.983-988, 2011 (Released:2013-04-10)
参考文献数
10
被引用文献数
1

遊離脂肪酸はエネルギー基質であると同時にさまざまなシグナル分子の基質でもあり,インスリン作用,インスリン合成・分泌に影響を与える.肥満症にともなう過剰な遊離脂肪酸は,耐糖能を悪化させる.遊離脂肪酸によるインスリン作用の障害を(広義の)脂肪毒性,インスリン分泌能に及ぼす悪影響を膵β細胞脂肪毒性(狭義の脂肪毒性)と呼ぶ.最近,脂肪組織以外の臓器に蓄積する脂肪(異所性脂肪)の動態に注目が集まっており,各臓器で何らかの病的意義を有する可能性がある.
著者
坂部 裕美子
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.199-202, 2020 (Released:2020-04-25)
参考文献数
3

宝塚歌劇団から、「虹の橋 渡りつづけて」という過去の在団者および主催公演のデータを完全網羅したアーカイブ本が発行されている。これの「人物編」掲載データのうち、1961年以降の入団者について、デジタルデータ化を行った上で、在団期間や各年次の退団者数の推移を集計した。2014年時点の既退団者の平均在団期間は7.92年だが、在団年数のヒストグラムを描くと最頻値は5である。歌劇団には入団後5~7年頃に退団を考えさせるような各種施策があり、実際にこの時期までに退団する者が多い。また、退団は自己判断で決められるため、各年次別の退団者総数にも多寡がある。この年次推移を見ると、ブームの到来や記念行事の開催といった歌劇団全体の動向が、各々の退団の判断に影響を及ぼしている、と考えられるような数値変動もある。このような、宝塚歌劇団の公演データ分析の、今後のさらなる進展を希望している。
著者
笠原 靖史 今井 千速
出版者
一般社団法人 日本小児神経外科学会
雑誌
小児の脳神経 (ISSN:03878023)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.211-219, 2021 (Released:2021-10-01)
参考文献数
59

膠芽腫は極めて速い増殖と強い浸潤性を併せ持ち,集学的治療によっても予後不良で新規治療の開発が待たれている.キメラ抗原受容体遺伝子導入T細胞(CAR-T細胞)療法は,モノクローナル抗体の抗原認識能力をT細胞へ付与する養子免疫細胞療法で,MHC非拘束性に強力な細胞傷害性を発揮する.近年,膠芽腫を対象としたCARが数多く報告され臨床応用が期待されている.本稿ではCARに関する基礎事項および造血器腫瘍での臨床使用に至る歴史につき紹介し,引き続き膠芽腫に対するCAR-T細胞療法の最近の発展につき概説する.
著者
飯島 茂子
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.121, no.9, pp.1847-1854, 2011-08-20 (Released:2014-11-13)

尋常性痤瘡には遺伝素因,皮脂分泌の亢進,男性ホルモンなどの内分泌的因子,毛漏斗部の角化異常,Propionibacterium ancesなどによる細菌学的素因,炎症反応などが関連して発症する.その結果,毛包内に角質・皮脂が充満した面皰が形成され,細菌性リパーゼ・菌体外酵素・活性酸素などによる炎症性の紅色丘疹,膿疱が出現する.治療にはこれらの病態生理を理解した上での戦略が必要である.その他の痤瘡性疾患や鑑別すべき疾患についても言及した.
著者
井上 雅彦 中谷 啓太 東野 正幸
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.78-86, 2019-08-31 (Released:2020-08-31)
参考文献数
11

自閉症や知的障害のある人々の問題行動に関する機能分析的アプローチは多くの研究でそのエビデンスが示されている。近年これらの治療研究は、家庭、学校、施設などコミュニティで実施されるものが増加しており、非専門家による行動記録の収集と評価が課題となっている。本研究の目的は、日常場面において非専門家が行う行動記録を援助するアプリケーションを開発することであった。本アプリケーションは、Android(アンドロイド機器用)とiOS(iPhone, iPad用)の2つのOS版を各OSの配布サイトからダウンロードし、スマートフォンやタブレットなどのデバイスで利用可能である。記録者は観察時間や標的行動などを設定し、行動の出現に合わせてカテゴリーをタップすることで記録される。入力された行動観察データは即時にグラフ化して表示させることが可能である。データは各デバイス内に格納蓄積され、必要に応じてcsv形式でメール送信可能なため、パソコンなどでのデータの編集加工が可能となっている。家庭と事業所での試用から、本アプリケーションの有効性と課題について考察した。
著者
矢野 真沙代 橋本 英樹
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.67, no.11, pp.811-818, 2020-11-15 (Released:2020-12-23)
参考文献数
29

目的 高齢運転者による交通事故を防止するべく,免許の“自主”返納をめぐる議論が進んでいる。しかし,“自主”返納の意思決定プロセスやだれがそれに関わっているのかについて現状では情報が乏しい。本研究では,高齢による運転免許の“自主”返納を経験した高齢者を中心に,それを取り巻く人々や環境との間の関係,高齢者の身体認識の変化に注目しつつ,意思決定のプロセスと“自主”の意味を明らかにすることを目的とした。方法 探索的目的を鑑み質的研究法を選択した。日常生活で自動車運転の頻度が高く,自主返納率が全国に比し低い茨城県に着目した。同県A市の一般医療機関を受診中の高齢者のうち,配偶者と暮らしており,運転免許を返納ないし返納を検討中の男性8人を対象に半構造化面接を行った。個別インタビューにて免許取得・返納時期,生活内での運転の意義,免許返納に至る過程と相談者の有無,免許返納後の生活等を尋ねた。インタビュー結果を録音し逐語録に起こしたのち,グラウンデッド・セオリー・アプローチに基づき分析した。結果 当事者は,運転中や日常生活において自分の意思に身体が伴わない《身体の乖離》を経験することで,これまで《身体》は《自分》に内在化され意識していなかった状態から,《身体》を操作する《自分》を日常的に意識しなくてはならないことに戸惑っていた。家族や周囲からの運転技能に対する疑念,運転事故のリスクをめぐるやり取りは,意識化された《自分》にどう対峙するかによって,異なる形で《自主》返納のプロセスにつながっていた。《自分》が事故リスクを抱えた《身体》として内在化された場合,《自分》は喪失され《自主》返納は周囲の意見に折れる形で決定されていた。一方《自分》を過去の人生経験に照らして《再評価》した場合,《自分》を社会のなかで実現する手段として《自主》返納は選択・実行に移されていた。いずれも返納後に生じる《不便》は生じていたが,《自分》の《再評価》がなされたケースでは,返納の判断を積極的に意味づけることができていた。結論 高齢による運転免許返納の意思決定過程は障害の受容過程と近似しており,《自主》返納は,加齢をきっかけとした,《自分》と《身体》,そして社会との関係性の断絶事象であると考えられた。以上から,自分・身体・社会の関係性の再構築を促すことが“自主”返納による心理的影響を緩和するうえで必要であることが示唆された。
著者
山崎 嵩拓 宋 俊煥 泉山 塁威 横張 真
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.136-143, 2019-10-25 (Released:2019-10-28)
参考文献数
20
被引用文献数
3 2

2017年の都市公園法改正により、民間活力の導入を目的に公募設置管理制度(Park-PFI)が施行された。そのため今後は、全国各地で自治体主催の公募を通じ、飲食店等の収益施設を、都市公園内に設置・管理する事業者の選定が展開される見込みを持つ。ここで事業者は、自ら施設を整備し、公園使用料を支払うことで収益事業の実施が認められる。つまり、一般の商業施設と同様に立地条件の影響を受ける事が推察される。そこで本研究は、都市公園における公募を通じ設置された収益施設の実態が、立地条件から受ける影響を明らかにすることで、Park-PFIの普及時における留意点を考察する事を目的とした。研究対象は19都市公園に設置された25の収益施設である。研究の結果、固定資産税路線価や駅からの距離等を立地条件の指標とした場合に、立地条件の良し悪しに応じて、収益施設の業種や施設計画、事業者の応募数の傾向が変化することが明らかになった。
著者
アブディン・モハメド
出版者
独立行政法人 日本貿易振興機構アジア経済研究所
雑誌
アフリカレポート (ISSN:09115552)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.41-53, 2020-05-14 (Released:2020-05-14)
参考文献数
17

本稿では、2019年4月11日にスーダンのバシール大統領が失脚してから8月17日に暫定政府の設立合意が成立するまでに、国内の主要な政治主体間にいかなる権力闘争があったのかを分析する。そのために、暫定軍事評議会を支援したサウジアラビア・UAE・エジプトの三国陣営、そしてエジプトがスーダンに対する影響力を拡大することを危惧したエチオピアといった地域大国の役割にも注目した。主な結論は以下の3点である。(1)6月3日にスーダン軍部がデモ隊を強制排除する以前には、サウジアラビア陣営はスーダン国内政治に影響を及ぼすことができたが、(2)6月3日の事件以後には、エチオピアが、対立する国内主体間の交渉を仲介することに成功したため、サウジアラビア陣営の影響が限定的になり、(3)その結果、デモ隊の強制排除を通して軍政の復活を目指した暫定軍事評議会と、エチオピアの介入によって息を吹き返した民主化勢力との権力関係が拮抗するようになり、8月には暫定政府の設立に関する合意が可能となった。
著者
山口 昌樹
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.129, no.2, pp.80-84, 2007 (Released:2007-02-14)
参考文献数
18
被引用文献数
31 26 14

厚生労働省の人口動態統計資料によると,1977年から1997年までは年間20,000-25,000人で推移していた自殺者数は,1998年に一気に年間3万人を越え,それ以降3万人前後で推移している.このことからも,自殺に至る一因であるストレスが原因の神経精神疾患は,既に深刻な社会問題となったことが窺われる.さらに,ストレスは,神経精神疾患以外にも生活習慣病など様々な疾患の引き金のひとつと考えられている.そこで,ストレスの状態を遺伝子レベルで診断し,疾患の予防や治療につなげようとする試みが始まっている(1).これは,慢性ストレスの検査と言い換えることができよう.一方で,疾患の前段階,すなわち人が日常生活で感じているストレスの大きさを客観的に把握する試みもなされている.その目的のひとつは,自らのストレス耐性やストレスの状態をある程度知ることによって,うつ病や慢性疲労症候群などの発症を水際で食い止めようという予防医療である.もうひとつは,五感センシングが挙げられる.独自の価値観で快適性を積極的に追求する人が増えてきており,それと呼応するように,快適さを新しい付加価値とした製品やサービスが,あらゆる産業分野で創出されている(2).消費者と生産者の何れもが,味覚や嗅覚を定量的に知ることよりも,それらの刺激で人にどのような感情が引き起こされるかということ(五感センシング)に興味がある.これを可能にするためのアプローチのひとつが,唾液に含まれるバイオマーカーを用いた定量的なストレス検査である.これらは,急性ストレスの検査が中心的なターゲットといえよう.ストレスとは,その用語が意味する範囲が広く,研究者によっても様々な捉われ方,使われ方がなされていることが,かえって混乱を招いているようだ.代表的な肉体的ストレスである運動とバイオマーカーの関係については,これまでに様々な報告がなされている(3).筆者が注目しているのは,主として精神的ストレスであり,人の快・不快の感情に伴って変動し,かつ急性(一過性)もしくは慢性的に生体に現れるストレス反応である.ここでは,唾液で分析できるバイオマーカーを中心に,このようなストレス検査の可能性について述べてみたい.
著者
宮内 正厚 中島 英彰 平井 千津子
出版者
公益社団法人 日本ビタミン学会
雑誌
ビタミン (ISSN:0006386X)
巻号頁・発行日
vol.88, no.7, pp.349-357, 2014-07-25 (Released:2017-08-10)
被引用文献数
1

In recent years, the importance of solar exposure for vitamin D synthesis in the human body has been pointed out. The solar exposure time necessary for the synthesis of vitamin D depends largely on geographical location, season, time of day, weather, exposed skin area, etc. Using numerical simulations we estimated that if 10 μg vitamin D were to be synthesized entirely by solar exposure to skin type III (SPT), which is considered to be the most typical skin type for Japanese people, it would necessitate 6.4 min horizontal exposure of a 600 cm^2 skin area, corresponding to the face and the back of both hands, under cloudless sky at 12:00 o'clock in July in Tsukuba. Under the same conditions, it would take 20.8 min to reach 1 MED (Minimum Erythemal Dose) which is thought to be the harmful UV exposure level for human skin. In other words, approximately 31% of the time before the skin gets red is enough for the synthesis of 10 μg vitamin D a day. On the other hand, in Sapporo which is located in the northern part of the Japanese Archipelago, the corresponding durations are 8.4 min and 27.0 min, respectively under the same conditions as in Tsukuba, whereas the necessary time in December would be 139 min and 296 min, respectively. Although the sufficient amount of vitamin D cannot be obtained by short-time exposure to solar radiation, it is thought that long-time exposure might not damage the skin. It can be concluded that for a skin area of 600 cm^2 in horizontal position, exposure time until damage would occur is generally 3 times larger than what is necessary for the synthesis of 10 μg vitamin D under strong UV radiation. It should be noted that generally, with a larger exposed skin area the solar exposure time for vitamin D synthesis could be considerably shortened.
著者
Zhihui Liu Pingying Qing Yi Zhao Yi Liu Tony N. Marion
出版者
Tohoku University Medical Press
雑誌
The Tohoku Journal of Experimental Medicine (ISSN:00408727)
巻号頁・発行日
vol.255, no.2, pp.143-146, 2021 (Released:2021-10-20)
参考文献数
11
被引用文献数
3

Antibody deficiency is a type of primary immunodeficiency that often manifests as primary hypogammaglobulinemia, with or without repeated infections. Although primary immunodeficiency appears to be contrary to autoimmunity, they usually occur simultaneously, and the specific pathogenesis remains unknown. We herein describe an adult patient with autoimmune manifestations and recurrent infections. The case was characterized by a sustained decrease in serum immunoglobulin A, accompanied by decreased T lymphocytes, B lymphocytes, monocytes, and platelets in the peripheral blood and the presence of antinuclear and anti-SSA antibodies. Whole-exome sequencing for the patient revealed two spontaneous mutations in GATA2 (c.1084C>T) and STAT5B (c.1924A>C). This case report provides evidence that mutations in the GATA2 and STAT5B genes may be pathogenic in primary immunodeficiency and provides genetic evidence for the possible pathogenesis of primary immunodeficiency with autoimmune symptoms. However, further studies are needed to confirm the causal relationship.
著者
八木 優英 建内 宏重 栗生 瑞己 水上 優 本村 芳樹 市橋 則明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0278, 2017 (Released:2017-04-24)

【はじめに,目的】トーマステスト変法(MTT)は片側股関節屈曲により対側股関節を伸展位にし,その際に生じる股関節内外転運動や可動域制限を捉えることで,筋張力が優位に高い股関節屈筋を推定する評価方法である。この推定は各股関節屈筋が有する,解剖学的肢位での股関節屈曲以外の運動作用を基に行われる。しかし股関節伸展位では股関節内外転運動などで,どの股関節屈筋の筋張力が優位に増加するかは明確でないため,MTTの評価結果に科学的な裏付けがあるとは言い難い。そこで股関節伸展位での股関節運動時に筋張力が増加する股関節屈筋を明示し,MTTの解釈についてのエビデンスを得ることを目的として本研究を行った。【方法】対象は健常成人男性12名(23.8±2.7歳)であった。測定肢位は膝関節より遠位をベッドから垂らした背臥位で,骨盤を非弾性ベルトでベッドに固定した。腰椎の前弯が消失するまで非利き足の股関節を屈曲させ,その位置で被験者に両手で大腿部を保持させた。利き足を股関節伸展10°,外転0°,外旋0°,膝屈曲90°の肢位(基準条件)で検者が保持した。利き足股関節角度を基準条件から他動的に動かした外転条件(外転20°),内転条件(内転15°),外旋条件(外旋15°),内旋条件(内旋15°),伸展条件(伸展25°)の5条件と基準条件の計6条件で筋張力を測定した。測定筋は腸骨筋(IL),大腿直筋(RF),縫工筋(SA),大腿筋膜張筋(TFL),長内転筋(AL),中殿筋前部線維(GM)とした。筋へのストレッチ効果を除外するために,条件間に1時間以上休憩し,筋の測定順と測定条件順は無作為に決定した。硬さの指標である筋弾性率により筋張力を推定可能なせん断波エラストグラフィー機能(Super Sonic Imagine社製)を用いて各筋の筋張力を評価した。本研究では伸張による筋張力増加を評価した。そのため各条件で筋張力の増加した筋はMTT時に,測定条件と逆の運動方向に影響することを示す。統計解析は反復測定分散分析後,計画的検定として基準条件と他条件間でWilcoxonの符号付順位検定を用いて筋弾性率を比較した。有意水準は5%とし,計画的検定では筋毎にHolm法で補正した有意水準を用いた。【結果】一元配置分散分析の結果,全筋で条件間に有意差を認めた。ILでは基準条件(23.9:kPa)に比べ外転条件(41.6),外旋条件(35.8),伸展条件(43.0)で,TFLでは基準条件(18.7)に比べ内転条件(43.2)で,RFでは基準条件(30.1)に比べ内転条件(36.7),伸展条件(37.3)で,ALでは基準条件(12.7)に比べ外転条件(20.2)で筋弾性率が有意に高かった。【結論】本研究結果から,MTTでの伸展制限はIL,RFの,外転運動・内転制限はRF,TFLの,内転運動・外転制限はIL,ALの,内旋運動・外旋制限はILの筋緊張亢進または短縮を示す所見であることが示された。本結果は健常成人を対象とした研究ではあるが,MTTの解釈に有用な知見である。
著者
甲斐 哲也
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.369-379, 2017-05-15 (Released:2017-06-17)
参考文献数
10
被引用文献数
1

麻酔科医にとって手術室の管理は仕事の一部であり,麻酔科医は手術室の環境整備に関する知識を備えておく必要がある.CDCの手術部位感染防止ガイドライン1999は,当時のエビデンスに基づいた勧告であり,十数年経った今もわれわれ手術に関わる者の拠り所である.本ガイドラインを基にしながら,手術室の空調と清掃・滅菌など手術室環境の整備に関して,現在の日本のガイドラインを交えて概説する.
著者
苅谷 康太
出版者
日本アフリカ学会
雑誌
アフリカ研究 (ISSN:00654140)
巻号頁・発行日
vol.2016, no.89, pp.1-13, 2016-05-31 (Released:2017-05-31)
参考文献数
37

19世紀初頭,現在のナイジェリア北部一帯に相当するハウサランドにおいて大規模な軍事ジハードが開始された。このジハードは,数年のうちに次々と同地のハウサ諸王権を圧倒し,一般にソコト・カリフ国と呼ばれる,イスラームを統治の基盤に据えた国家の建設を実現した。ジハードと国家建設の中心にいたイスラーム知識人ウスマーン・ブン・フーディー(1817年歿)は,複数の著作の中で,ハウサランドもしくはスーダーンに住む人々を信仰の様態に基づいて分類し,更に,その分類において不信仰者と見做した人々の捕虜・奴隷化に関する規定を論じている。本稿では,国家の基盤建設期にあたる1808年以降のウスマーンが,ウラマーの多くが認めていない法学的見解に依拠することを容認する「寛容の思想」を導入し,上述の信仰の様態に基づく人間の分類を操作することによって,捕虜・奴隷化し得る不信仰者の範疇を如何に拡大したのかを明らかにし,更に,その背景に如何なる理由が存在したのかを考察する。