著者
松本 吉郎
出版者
一般社団法人 日本総合健診医学会
雑誌
総合健診 (ISSN:13470086)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.344-351, 2018 (Released:2018-05-01)
参考文献数
8

近年、職場での強い不安や悩み、ストレスを感じている労働者が5割を超える状況がある。仕事によるストレスが原因で精神障害を発症し、労災認定される労働者がその後も増加傾向にあり、メンタルへルス不調の防止が益々重要な課題となってきた。 こういった背景を踏まえ、平成27年12月より、「ストレスチェック」及びその結果に基づく面接指導を実施する制度が導入された。 日本医師会では、ストレスチェックの導入に伴う産業医の契約や活動の影響について把握することを目的として、平成29年3月1日から3月31日までアンケート調査を実施した。認定産業医(63,879人、2017年1月24日現在)から無作為に抽出した5,000人(抽出率7.8%)を対象に実施した。その4割を超える医師から回答を得、本調査結果から、ストレスチェックの導入に伴う現在の認定産業医が置かれている状況、ストレスチェック制度について考察する。 ストレスチェックはすでに法令で規定されたものではあるが、その有効性については多くの認定産業医から依然として疑問があるとする意見が本調査で示されている。今後、この制度を活用して職場でストレスを感じている労働者のうつ状態をはじめとする健康障害や就業困難な状況の防止や改善に役立つものにするためには、科学的な調査研究を実施して効果を検証し、この制度に必要な改善を行う必要があると思われる。その際には、実質的に関与している多くの産業医にとって、ストレスチェックに積極的に取り組むことが医師としての責任や時間的拘束を増大させるだけではなく、応分の報酬ややりがいにつながるような改善が図られることが望ましい。 現在、日本医師会産業保健委員会で検討を行っており、委員会からの提言については、将来厚生労働省に要望していきたい。
著者
藤代 裕之
出版者
一般社団法人 社会情報学会
雑誌
社会情報学 (ISSN:21872775)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.15-28, 2020-07-01 (Released:2020-08-27)
参考文献数
12
被引用文献数
1

ファクトチェックは,2016年のアメリカ大統領選挙をきっかけに世界的に拡大しているが,党派的な偏りや人々に適切な情報を届ける難しさといった課題が指摘されている。国内では,政府がフェイクニュース対策のためファクトチェック推進を求めているが,課題に関する議論は置き去りとなっている。本研究では,2018年に行われた沖縄県知事選挙を対象に,地元新聞社が行ったファクトチェックに対するソーシャルメディアの反応を定性的に分析することで課題を明らかにする。その結果,一部のファクトチェック記事が党派的な反応を引き起こし,政党関係者により対立候補の攻撃に利用されていた。ファクトチェック記事を紹介するツイートとフェイクツイートの反応を比較したところ,党派的な分断が存在することが明らかになった。党派的な反応を引き起こす要因は,ファクトチェックの国際基準違反とファクトチェックとうわさ検証の区分の曖昧さにあった。ファクトチェックにおけるジャーナリズムの役割は,有権者に判断材料を提供することにある。その実現のためには,ファクトチェックという言葉を整理すること,確認・検証する対象を分かりやすく有権者に提示して透明性を高めること,ファクトチェックの取り組みが中立・公正であることを有権者が確認できる仕組みの導入が必要である。
著者
衣川 雛 瀧澤 重志
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
日本都市計画学会関西支部研究発表会講演概要集 (ISSN:1348592X)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.9-12, 2019 (Released:2019-07-22)
参考文献数
12
被引用文献数
1

本研究では、コンピュータグラフィックスにより作成された深度画像と全方位RGBの各ペアをpix2pixを用いて学習することにより、街路景観の全方位RGB画像から全方位深度画像を生成する方法を開発した。 次に、さまざまな場所や気象条件の下で撮影されたさまざまな一連の画像で学習されたモデルを、Googleのストリートビュー画像に適用して深度画像を生成し、生成された深度画像の妥当性を視覚的に評価した。さらに、複数の参加者を使用してGoogleのストリートビュー画像の評価実験を行った。 DCNN(Deep Convolutional neural network)を用いたランク付け学習法を用いて、深度画像の有る場合と無い場合による画像の評価値を推定するモデルを構築した。 結果は、街路景観評価モデルの性能が深度画像の有無によって変化すことを示している。
著者
荒牧 礼子 廣内 智子 佐藤 厚
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.107-111, 2011 (Released:2011-06-10)
参考文献数
9

野菜摂取量増加を目的とした栄養教育において, 喫食者に野菜摂取目標量, および自己の日常的な野菜摂取量を把握させることは重要である。喫食者が野菜と認識する食品素材が, 日本食品標準成分表において野菜として定義・分類されている食品素材とどの程度異なっているのかを調査し, その違いが日常的な野菜摂取量把握に及ぼす影響の検討を行った。成分表に収載されている主要野菜25品目, および非野菜15品目の計40品目を抽出し, 野菜, および非野菜かの認識を質問した。その結果, 平均正解率は, 野菜類93.6%, 非野菜類57.8%, 正解率の最も低かった食品は, じゃがいも14.9%, 次いで, やまいも18.9%, さつまいも24.2%であり, いも類を野菜と誤認識している者が非常に多いことが明らかとなった。また, 市販弁当78種類の副食に使用されていた食品素材の重量を秤量し, 分類した結果, 野菜実重量は47±26 g, 認識野菜重量は57±29 gと実重量に比較し21%高値を示した。
著者
中島 健介
出版者
九州大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1999

積雲による励起の季節変化・日変化についての検討励起源と見られる積雲対流の指標(降水量・雲量)について衛星観測から客観解析されたデータを入手して、検討してみた。残念ながら、日変化については信頼できる直接の観測は得られていないことがわかった。しかし、積雲の活動が活発な地域の季節的変動と、典型的な積雲日変化の特性を組み合わせると、日変化の季節変動が推定できる。これと、常時励起振幅の日変化の季節変動の特性とは、かなり一致していることがわかった。このことは、本研究の核心すなわち積雲が常時励起の主体であることを、強く支持するものである。木星における枇曇対流と自由振動の関係についての考察ガリレオなどによる探査の結果、木星大気でも積雲対流が生じていることが分かっている。この積雲対流が木星全体の自由振動を常時励起することが考えられるので、予備的な考察を行った。地球の場合には、積雲が存在する大気と自由振動する固体部分との間には明確な境界があり、力学的性質も非常に異なるので、両者を区別して取り扱うことが適当であった。しかし、木星の場合には「大気」と「内部」は連続しており、地球の手法をそのまま用いることが出来ない。それでも、過去に行われた木星自由振動の理論をレビューした結果では、常時自由振動は積雲によって比較的高い効率で励起されるように思える。ただし、木星の場合には、観測によって常時励起を検出できるかどうかが大きな問題である。しかし、もし観測出来れぱ惑星内部構造を制約する有力な情報を提供できるので、今後とも検討していく予定である。
著者
井田 正道
出版者
明治大学政治経済研究所
雑誌
政経論叢 (ISSN:03873285)
巻号頁・発行日
vol.78, no.5, pp.579-602, 2010-03
著者
西澤 和義 大島 弓子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.132-140, 2021
被引用文献数
1

<p><b>目的:</b>看護職が嚥下障害を臨床判断するための内容妥当性のある診断指標を明らかにし,major指標とminor指標も明らかにする.</p><p><b>方法:</b>本研究はFehringのDCVモデルを使った.嚥下障害の看護診断に精通した専門家672人に質問紙調査を行った.診断指標78項目が,どの程度嚥下障害を表すか,5段階のリッカート尺度で評価をうけた.各診断指標で,回答を点数化してDCV値(平均値)を算出した.DCV値でmajor指標,minor指標,除外する指標に分けた.</p><p><b>結果:</b>有効回答数は327人だった.major指標は11項目(食事中のチアノーゼ,嚥下後の呼吸切迫,嚥下テスト時の咽頭相の異常,嚥下後の湿性の呼吸音,むせる,食事中や食後に濁った声にかわる,喉頭挙上の不良,嚥下の遅延,嚥下前にむせる,嚥下後の嗽音の呼吸音,鼻への逆流)だった.minor指標は52項目,除外する指標は15項目だった.</p><p><b>結論:</b>嚥下障害の看護診断に精通した専門家の意見に基づく,内容妥当性のある嚥下障害の診断指標が明らかとなった.</p>

2 0 0 0 OA 淳化閣帖第1-10

著者
淳化三年宋王著奉敕輯
出版者
肅藩刊
巻号頁・発行日
vol.[2], 1615
著者
藤原 雄太 佐々木 翔 岩倉 敏夫 松岡 直樹 小林 宏正 日野 恵 古川 裕 石原 隆
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.45, no.9, pp.1101-1109, 2013-09-15 (Released:2014-09-17)
参考文献数
20

背景:アミオダロンはヨードを大量に含有するため,甲状腺機能異常をしばしば起こす.さらに末梢および下垂体でサイロキシン(thyroxin;T4)の代謝と甲状腺刺激ホルモン(thyroid stimulating hormone;TSH)分泌に影響するため,甲状腺機能の正確な解釈が困難になる.対象:2009年6月から2010年6月までにアミオダロンを1カ月以上処方されていた341名を対象とした.方法:対象患者の2003年1月から2010年6月までの甲状腺機能検査結果を調査し,また診療録より臨床的特徴を検討した.結果:測定キットの正常域では血中FT4とTSHはともに高値となり解釈不可能な異常値を呈する症例が多数あったため,両者の分布に基づき基準域を1.0≦FT4<2.4 ng/dL,1.0≦TSH<20.0 µU/mLと設定した.機能低下症例は疑いを含めて34名(10.4%)認めた.中毒症例は17名(5.2%)認め,type 1(機能亢進)例はなく,ほとんどの例がtype 2(破壊性)であった.死亡例とバセドウ病合併例を認めた.考察:アミオダロン治療中には甲状腺機能低下症も破壊性中毒症も高頻度に発症するが,軽症例では通常の正常域を用いて正確な診断を行うことは非常に難しい.アミオダロンによるT4代謝とTSH分泌への影響が大きく,甲状腺機能解釈時には従来の正常域にとらわれず本病態を考慮した特別の基準域を用いたほうが甲状腺機能を正しく評価でき,適切な対応が可能になると考えられる.
著者
中島 格 田中 資介
出版者
日本喉頭科学会
雑誌
喉頭 (ISSN:09156127)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.83-88, 1989-12-01 (Released:2012-09-24)
参考文献数
20

The local immune system of human laryngeal tissues was reviewed. Attention was focused to the distribution pattern of the glandular tissue and SIgA production in each structure of the larynx. Glandular acini and ductules were distributed mainly at the level of the false vocal colds and sub-glottis. Glandular buds made their appearance in fetal larynges. IgA and other immunoglobulins were found in adult larynges. In fetal larynges, however, IgA and secretory IgA could not be detected. In adults, diffuse fluorescence for IgA was observed not only in the submucosal or peri-glandular connective tissue but also in the glandular tissue. IgA producing plasma cells were numerous. Secretory component (SC) synthesis was found in the glandular acini and epithelium. SC synthesis was noted also in the glandular tissue of fetuses. These observations indicate that, in human larynges, the local immune function conducted by SIgA starts working shortly after birth.
著者
佐藤 朝美 佐藤 桃子
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.37, no.Suppl., pp.49-52, 2013-12-20 (Released:2016-08-10)

本研究では,子どもを取り巻くメディアに対する親の意識調査と,タブレット用デジタル絵本について「読み聞かせ」の観点から分析を行う.親子による絵本の読み聞かせは,親子のコミュニケーションを促すとともに,子どもの認知発達を促す場としても重要な役割を果たすという.紙媒体からタブレットに変化する事で,どのような差異が生じるか把握するために,紙絵本とタブレット用デジタル絵本の親子による読み聞かせ場面を記録し,質的に分析を行った。その結果,紙絵本では親主導で読み聞かせが行われるのに対し,タブレットでは子ども中心で操作が行われるケースが多く見られた.いっぽう,タブレットでは絵本に接する時間が増え,子どもからの発話数も増える傾向にあった.親子の対話も紙絵本と異なる内容が生じており,飽きずに物語世界を繰り返し堪能している様子がみられた.
著者
鳥飼 香代子
出版者
熊本大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
熊本大学教育実践研究
巻号頁・発行日
vol.26, pp.117-119, 2009-02-27

熊本駅前東A地区の再開発計画として建設予定の構想案が昨年4月明らかになった.新幹線全線開通に向けて建設されるのは,「森ピル」提案の108メートル,33階建の超高層ビルである1,2階部分は熊本市の情報発信基地や小売店になる予定だが,それ以外の上層階は分譲マンションである.比較的地価も安く,空地も多い熊本で,なぜ超高層の分譲マンションなのか.本稿では,超高層の住宅はどのように評価されているのかを,子育ての場として適切かどうかという視点から,文献を中心に検討する.
著者
井田 泰人
出版者
近畿大学短期大学部
雑誌
近畿大学短大論集 = The Bulletin of The Junior College of Kinki University (ISSN:03867048)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.31-38, 2004-12-01

本稿では株式会社コーセーの発展過程を概観する。化粧品製造業に長らく従事してきた小林孝三郎が第二次世界大戦後、独立・創業し「小林合名会社」を設立した。その後、同社は「株式会社小林コーセー」に改組する。さらにイメージの刷新をはかり、CI活動の一環で「株式会社コーセー」に社名を変更する。同社の経営の実権は小林家によってかなりの部分が握られている。同社は高品質の化粧品を製造し、国際化戦略の積極的展開によって発展している。 (英文) The purpose of this paper is to take a look at the KOSE Co., Ltd. development process. Kobayashi Kozaburo established Kobayashi patnership, a cosmetic maker, after World War II and reorganized it into Kobayashi KOSEI Co., Ltd in 1948. Kobayashi KOSEI Co., Ltd changed its name to KOSE Co., Ltd for its Corporate Identity campains. An initiative of KOSE is had by Kobayasi family. KOSE is developing ever year and its status is high in the cosmetic industory. These days KOSE actively promotes an internationalization strategy.
著者
濵田 愛 中島 直人 西村 幸夫
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.83, no.750, pp.1469-1476, 2018 (Released:2018-08-30)
参考文献数
25
被引用文献数
1 1

Recently developments in the existing urban & local industry area destroy the local community network and the spatial characteristics, and the local industries are getting weaker according to the change of industrial structure, so that there is a need to make the sustainable urban & local industry space. Aims to get suggestions for that, this study focuses on the leather industrial area, which has mixed use spaces from modern times in the existing urban area of Tokyo. The target area, Northern Taito Ward, is an area where the leather industry is located from early modern times which has been dominated the wholesale and secondary processing industry on a Family scale (integration & specialization of small scale industry). So that individual buildings in which residence and workshop functions are combined have been popular style in this area. The methodology of this study (“A study on the fact and inheritance of urban Residential-Industrial mixed-use area from the view of Regional-Industrial structure”) is to incorporate the perspective of industrial structure with the discussion on the living environments of mixed-use spaces. So that the final goal is to disclose about the spatial characteristics of the target area and the importance of having view point of not only living but also industry networks in the argument on the mixed-used buildings. As the First step, this paper discusses about the transition of regional-industrial structure in the target area, northern Taito-Ward from high economic growth period to the present in 4 steps. In the first method, the statistical survey revealed the position of the target area; the northern part of Taito Ward, seen from the leather industry structure. Located in Tokyo, one of Japanese 2 major leather production areas, it is a region where the production of processed products of pigskin (especially shoes industry) is thriving and features a division of labor system. Secondly, to catch the movement of transactions inside the area, we quantified the business relationships in the lists in 1970 and dropped them on the maps. Within the area, establishments located separately depending on the type of industry as well, and it was found that there was a high-density business relationship at short distance inside the area at that time. Thirdly, we extracted the leather industrial establishments from the town page and made the current list. And finally, by comparing the location and business relationship of the establishments in 1970 with the current location, we caught the transition of the regional-industrial structure. There was no major change in the total number of leather establishments, but the number of manufacturers declined and the number of affiliated material stores increased. Distribution of the area by the industrial position tends to be distributed, and it turned out that commercialization occurred in the whole area. In order to disclose that how the spatial elements of this area accepted the change of transactions, and how the influence form the town by appearing in the landscapes, we will investigate the fact situation of urban space of this area and compare the result with the transition of regional-industrial construction.
著者
上田 護國
出版者
日本醸造協会
巻号頁・発行日
vol.115, no.2, pp.70-74, 2020 (Released:2020-09-04)