著者
高野 麻子
出版者
明治薬科大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2015-08-28

グローバル化が進行する現代において、指紋、静脈、虹彩、声紋、顔といった身体的特徴を利用して個人を識別する生体認証技術が世界的に普及している。そもそも19世紀末に植民地統治と国民国家形成ひいては帝国形成のもとで誕生し、使用されてきた生体認証技術が、今日ふたたび注目されている理由とは何か。そこで本研究では、近代から現代に至る身体管理の変容と特徴を、生体認証技術の歴史を軸に描き出した。
著者
加藤 弓枝
出版者
豊田工業高等専門学校
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、江戸時代において、身分的・空間的境界領域の人々による学問の営為がいかなるものであったのかについて注目し、とくに和歌を中心に考察した。その結果、とりわけ非蔵人の学芸活動の実態に関して明らかにすることできた。具体的には、彼らが「書籍講」という独特の「講」を営み、書物を共同購入していたことを明らかにすることができた。これらの成果によって、近世文壇史・文化史へ新たな視点を提示することができた。
著者
加藤 隆弘
出版者
九州大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

精神疾患への脳内免疫細胞ミクログリアの関与が最近の研究により示唆されているが、詳細は解明されていない。本研究ではミクログリアがヒトの社会的意思決定プロセスにおいて重要な役割を果たしているのではないか?という仮説の元で、健常成人男性を対象としてミクログリア活性化抑制作用を有する抗生物質ミノサイクリン内服による社会的意思決定プロセスの変化を計るための社会的意思決定実験(信頼ゲーム)を行った。ミノサイクリンを4日間内服してもらい、自記式質問紙による心理社会的項目を測定するとともに、信頼ゲームを実施した。ミノサイクリン内服により、性格や欲動依存の行動パターンが変容することを見出すことが出来た。
著者
岡本 由美子
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-07-19

研究5年目は、2つのことを行った。まず第一に、社会的インパクト調査の具体的な調査手法について、さらに詳細に学んだ。その知識を活用し、委託調査を通じて、フェアトレード(FT)を含めた国際認証制度の小規模農家組合員に与えたインパクト調査を行った。第二に、組合長に対して詳細なインタビュー調査を行い、2019年度までに得られていた調査結果の理解をさらに深めた。その結果、以下のことが明らかとなった。まず第一に、国際認証制度の存在は、収入の安定・増加のみならず、女性の地位向上、社会面での充実、環境への意識の高まり等により、SDGsの達成と人間の幸福感の向上をもたらす可能性が高いことが明らかとなった。具体的には、国際認証制度の中でもFTは組合の結成とあらゆる面での差別撤廃を求める国際基準であるため、FTをきっかけにしてジェンダー平等化が進展していることが分かった。これに加え、国際認証制度の存在により、環境に対する意識の劇的な向上が明確となった。収入の増加は確実に子供の教育や医療への支出の増加に向けられているが、これは必ずしも組合員の特徴だけではなく、純粋なインパクトとは言えない可能性はある。最後に、国際認証制度の取得を通したコーヒーの生産・販売に取り組む小規模農家組合員の方がメンバー以外の農家に比べ、確実に、well-beingの向上に繋がっているとの調査結果を得た。しかし、国際認証制度はいい面ばかりではない。もちろん、これは国際認証制度を取得した組合員だけの問題ではないが、コーヒーの価格が安定、又は、上昇することによって小規模農家がコーヒー生産に特化してしまい、それまで、自家生産をしていた食糧生産を減らす傾向が明確となった。フードセキュリティーの問題の深刻さが明らかとなった。今後は国際認証制度の負の側面を考慮に入れながら制度設計を行う必要性があることが明らかとなった。
著者
赤羽 英夫
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

自然界に存在する地磁気を用いた高感度な地磁気核磁気共鳴(NMR)装置、またはイメージング(MRI)装置の開発を行った。地磁気MRIの開発では、MRIの取得方法であるグラジエントエコー法を地磁気NMRに応用し、2次元、3次元での画像化に成功した 。また、NMR励起パルスに起因するNMR受信システムの不感時間を、 NMR共振器のQ 特性を電子的に変更することにより、短縮することが可能となった。その結果、緩和時間が短い(<100ms)生体サンプルの地磁気MRI画像を世界で初めて計測することに成功した。
著者
田口 勇 齊藤 努
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

1)古代刀の調査 日本の代表的な古代刀である蕨手刀の現状について調査した。主として宮城県,岩手県,福島県,北海道の代表的な蕨手刀を現地で発掘時期,同場所,形状,寸法,保存状態などを調べ,さらに可能な場合には以下の自然科学的研究を実施した。2)古代刀の自然科学的研究 古代刀の自然科学的研究方法は確立されていなかったので、元素分析方法として化学分析方法とグロー放電質量分析方法を、観察方法としてX線マイクロアナライザー付き走査型電子顕微鏡法を研究し,さらに新たに鉄資料を対象とした鉛同位体質量分析法を研究した。この方法は青銅器の産地推定法に使用されている方法であるが,鉄資料中の鉛含有率は10ppm以下で少なく,分析技術上困難視されていた。研究者らは新たに乾式鉛同位体質量分析法を開発し,分析を可能にした。この鉄資料の鉛同位体分析法については、平成6年4月に,中国三門峡市で開催された国際冶金史会議(BUMA-3)で発表した。3)古代刀の製造技術の再現実験 平成5年6月26,27日に,岩手県大東町大原において,刀匠菅原平氏の協力を得て、小型製鉄炉を使用し,蕨手刀の再現実験を実施した。餅鉄(円礫状磁鉄鉱)23kgとほぼ同量の木炭を交互に入れ,約1300°C,3時間で一次還元鉄を得,再溶解後,鍛造し,研磨し,刀を造った。この実験の解析結果と,原料である餅鉄,刀,蕨手刀そのものなどの自然科学的研究結果から,新たにつぎのことがわかった。通常のように砂鉄使用ではなく,塊状鉄鉱石使用であること,餅鉄の純度は高いことなどの結果を得た。また,餅鉄は比較的低い温度で還元されて鉄になり,生成した鉄の炭素含有率は砂鉄原料の場合に比較して低いことなどもわかった。
著者
小野 秀樹 松本 欣三 太田 茂
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

フェニルエチルアミン(PEA)は生体内に存在する微量アミンであり, 精神機能と関わりがあると考えられている. その化学構造や薬理作用は覚醒剤であるメタンフェタミン(MAP)のものと類似しているが, その作用機序は不明である. 本研究においては, PEAのラット脊髄の単シナプス反射増強の機序をMAPと比較しながら研究した. 麻酔ラットの腰部脊髄を露出し腰髄第5髄節の単シナプス反射を記録した. PEA(1mg/kg, iv, )は単シナプス反射を増強した. この増強はα_1-アドレナリン受容体を選択的に遮断するプラゾシンにより抑制された. さらにアミン類を枯渇するレセルピン処理, ノルアドレナリンの合成を阻害するジスルフィラム処理, 下行性ノルアドレナリン神経を破壊する6-ヒドロキシドパミン処理, およびすべての下行性神経を破壊する慢性的な脊髄切断処理もPEAの単シナプス反射増強効果を抑制した. MAP(0.3mg/kg, iv, )もPEAと同様に単シナプス反射を増強した. この増強効果も, α_1-遮断薬, ノルアドレナリン枯渇薬, ノルアドレナリン神経の破壊処理によって抑制され, MAPがPEAと同様の機序で単シナプス反射を増強することが示された. PEAとMAPの作用はセロトニン拮抗薬およびドパミン拮抗薬によっては影響されなかった. またPEAの効果はB型MAO阻害薬のデプレニルによって増強, 延長され, PEAが代謝されないで作用していることが示された. さらにPEAとMAPの単シナプス反射増強作用は血圧変化に起因するものではないことも示された. 以上, PEAおよびMAPは, 脳幹から脊髄へ下行するノルアドレナリン神経の終末からノルアドレナリンを放出させることにより, 単シナプス反射を増強, すなわち, 運動系を亢進させることが示された. さらにPEAが脊髄に比較的高濃度存在することから, PEAが脊髄運動系の調節になんらかの役割を持っている可能性が示された.
著者
土井 正男
出版者
公益財団法人豊田理化学研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012

印刷・塗布・乾燥などの工業プロセスにおいて、ソフトマターの界面や接触線近傍の微小領域におけるレオロジー現象は極めて重要である。本研究では、界面近傍で起こるレオロジー現象をソフトマターのミクロ構造と結びつけて理解することを目的とする。平成24年度は以下に述べる研究成果を挙げた。(1)粘着剤やゴムなどの高分子弾性体と基板界面で見られる粘着、剥離現象:対称な平行基板にはりつけた両面テープを平行に引き離した時の粘着剥離の様子を観察し、剥離における中芯の影響について理論的な解析を行い、剥離エネルギーを最大にするには、適度な曲げ弾性を持つことが必要であることを示した。(2)高分子溶液の乾燥にともなうスキン層の影響:シャーレの中に置かれた高分子溶液が乾燥するとき、溶液表面にスキン層と呼ばれる膜ができることがある。スキン層ができると、内部に泡が生成されることがしばしば観察されるがその原因についての詳しい研究話。本研究では、乾燥にともなう泡の成長と高分子溶液内部の圧力変化の測定から、泡が溶液に溶けている空気によるものであることを示した。(3)粘性流体から基板を引き上げた時、一定速度以上では、流体は完全に基板を濡らすことが知られているが、我々は、ある種の粘弾性流体においては、臨界速度を超えると逆に脱濡れが起こることを見出した。この現象についての理論的な仮説を提示し、臨界速度の見積もりを行い、仮説の正当性を検証した。
著者
森田 理仁
出版者
総合研究大学院大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2013-04-01

適応度に最も強く影響を与える出生率の自発的な低下を伴う少子化は,ヒトの行動や生態を理解する上で大きな課題である.以下,特別研究員研究報告書に記載した内容をもとに,主要な成果を中心に報告する.研究1:子どもの数をめぐる父母間(夫妻間)の性的対立ヒトにおいても,出産や子育てに伴うコストは男性よりも女性の方が大きいため,父母間で性的対立が生じていると予測される.そして,配偶者の変更が可能な配偶システムのもとでは,欲しい子どもの数は男性よりも女性の方が少なくなると予測される.これらのことから,「女性の社会進出により,少ない子どもを望む女性の意思決定が男性より大きな影響力をもつようになれば,出生率は低下するのではないか」という仮説を立て,アンケート調査を子育て支援施設において行い検証した.その結果は,予測に反して,多くの場合,父母間で欲しい子どもの数は一致していた.また,子どもをもつことに対して,両親の希望が等しく重視された夫婦が最も多かった.これらの結果から,現在の社会では養育費の負担などによって,配偶者の変更に伴う男性のコストが非常に大きいことが考えられる.研究2:出産の起こりやすさに影響を与える要因生活史戦略の理論からは,子育てにとって好条件になった時に出産が多く生じていると予測される.本研究では,『消費生活に関するパネル調査』のソースデータを用いて,この予測を検証した.分析の結果,こちらも予測に反して,子育てにとって好条件になった時に出産が多く生じていることはなかった.さらに,子どもがすでに二人居ると,その後の出産が急激に起こりにくくなることがわかった.二人という子どもの数は,進化的には非適応的なレベルに少数であるため,今後はこの背景をさらに探求する.その他,数理モデルを用いて,子どもの質をめぐる競争的社会環境や,繁殖以外の選択肢の魅力が出生率に与える影響を研究した.
著者
木戸 博 高橋 悦久 澤淵 貴子 IL Indalao
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

インフルエンザ感染重症化は、「インフルエンザ─サイトカイン─プロテアーゼ」サイクルと「サイトカイン─代謝不全」サイクルが共に回転した時に生じる。両サイクルの共通因子のサイトカインの中で、IL-1βが中心的役割を演じ、ミトコンドリアのエネルギー代謝を抑制して細胞機能障害と生体防御機能の低下を引き起こす。これまでの研究から、糖代謝障害修復にPDK4阻害剤が、脂質代謝修復にBezafibrateが有効であることを明らかにした。抗体産生能の低下には、イムノモデュレータ機能を有するマクロライドとR-1乳酸菌が有効であることを見出した。これら薬剤はインフルエンザ感染重症化の治療に有効であった。
著者
春田 直紀 佐藤 雄基 薗部 寿樹 小川 弘和 榎原 雅治 呉座 勇一 湯浅 治久 高橋 一樹
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2018-04-01

令和2年度は、以下の研究活動で成果をあげた。(1)10月3日にオンラインで研究会「中世肥後の文字史料と地下社会」を主催した(熊本中世史研究会と共催)。この研究会では、池松直樹氏と兒玉良平氏が「「肥後国中世地下文書・銘文史料」概観」、春田直紀氏が「大百姓の文書と水利開発―舛田文書と現地の調査成果から―」、廣田浩治氏が「地下文書論からみた中世の肥後~肥後国中部を中心に~」という題目で研究報告し、総合討論も行った。この研究会に先立ち、池松直樹氏・杉谷理沙氏・兒玉良平氏により、肥後国中世地下文書・銘文史料目録が作成された。 (2)2月20日にオンラインで第11回中世地下文書研究会(諏訪ミニシンポジウム)を主催した。この研究会では、岩永紘和氏が「「大祝家文書・矢島家文書」原本調査報告」、金澤木綿氏が「「守矢家文書」原本調査報告」、佐藤雄基氏が「「守矢家文書」における鎌倉時代の文書」、湯浅治久氏が「戦国期の諏訪社造営と「先例」管理―地域権力と地下文書の接点―」という題目で研究報告し、村石正行氏のコメントの後全体討論も行った。(3)畿内・近国班が連携している神奈川大学国際常民文化研究機構の奨励研究のフォーラム「中世熊野の海・武士・城館」が1月23日にオンラインで開催され、本科研グループからは坂本亮太氏が「紀州小山家文書の魅力と可能性」と題して報告し、村上絢一氏がコメント報告を行った。なお、この奨励研究の成果報告書として、3月に『熊野水軍小山家文書の総合的研究』が神奈川大学より刊行された。(4)3月27日にオンラインで中世の荘園制と村落に関する研究会を主催し、朝比奈新氏と似鳥雄一氏が報告して、討論も行った。(5)研究協力者(熊本大学教育学部日本史研究室所属)の協力を得て、日本中世の「浦」関係史料に関するデータベース(全国版)を作成した。
著者
中室 牧子 藤澤 啓子 グリフェン アンドリュウ 澤田 康幸 真野 裕吉 佐々木 みゆき 樋口 裕城 奥村 高明
出版者
慶應義塾大学
雑誌
挑戦的研究(開拓)
巻号頁・発行日
2020-04-01

厳密な政策評価の方法を用いた効果検証はほとんど行われて来なかった。そこで本研究では、政策評価の専門家で構成される研究者グループが、文部科学省・埼玉県教育委員会・埼玉県和光市・兵庫県尼崎市、アジア開発銀行と協力し、政策主体が実際に実施している下記の5つの教育政策の効果測定を実施し、「エビデンスに基づく教育政策」の先行事例をつくり、その定着に貢献することを目的とする。
著者
岩佐 峰雄 的場 梁次
出版者
名古屋市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

Y染色体上のSTR多型による親子鑑定システムの開発の一環として、本年度は特にDYS390の日本人集団におけるアリル頻度を調査した。血縁関係のない日本人117名の血液からChelex-100によりDNAを抽出した。PCR増幅は3ngの鋳型DNAを用い、総量25μlの反応液中で定法に従って行った。用いたプライマーは、P1:5'TATATTTTACATTTTTGGGCC3'およびP2:5'GACAGTAAAATGAACACATTGC3'で、型判定はポリアクリルアミドゲル電気泳動と銀染色によった。また、各アリルの塩基配列は、Dye Terminator Cycle Sequencingキットによった。今回の調査で認められた6種類のアリルの塩基配列は、5-primer(23bp)-27bp-(CTAT)_2-(CTGT)_8-(CTAT)_n-CTG(TCTA)_3-TCAATC-(ATCT)_3-25bp-primer(22bp)-3'であり、CTATの4塩基(アンダーラインで示した)の繰り返し数は8回から13回(即ち、n=8-13)で、各アリルの総塩基数は、8;202bp;9;206bp;10;210bp;11;214bp;12;218bp13;222bpと算出された。CTATの繰り返し数を各アリルの名称とすると、アリルの出現頻度は、8;0.017;9;0.154;10;0.248;11;0.291;12;0.239;13;0.051であり、以前調査したドイツ人集団における成績(8;0.026;9;0.158;10;0.263;11;0.368;12;0.175;13;0.051)との間に有為な差は認められなかった(x^2=5.370,df=5.P>0.05)。一方、DYS389の日本人集団におけるアリルの頻度は、DYS389Iでは、8:0.018;9;0.161;10;0.268;11;0.527;12;0.027であり、DYS389IIでは、23:0.029;24:0.105;0.229;26:0.324;27:0.248;28:0.048;29:0.010;30:0.010であった。Jones(1972)によるDiscrimination powerはDYS389Iでは0.624、DYS389IIでは0.767で、両者のCombined discrimination powerは0.912と算出された。ダイレクトシークエンス法でDYS389アリルの塩基配列を決定しようとすると、判読不可能な個所が複数個所あらわれ、各アリルの塩基配列の全体像を把握することはできなかった。Y染色体上のSTRの法医学実務における応用として、司法解剖得た膣内容からDYS390およびDYS389の検出を試みた。試料とした15例のうち4例でDYS390の増幅が認められ、これらの試料では顕微鏡検査によって精子も確認された。なお、DYS389はいずれの試料でも増幅することができなかった。次に環境変化の影響を検する目的で、加熱処理した歯牙から得た歯髄よりDNAを抽出し、DYS390およびDYS389の検出を試みた。DYS390は、300℃2分の加熱では6例全例で、400℃2分の加熱では7例中1例で増幅可能であった。海中にほぼ1年間放置され、白骨化した遺体の長官骨骨髄のDNAについてDYS390が増幅可能であった。Y染色体上のSTRによる親子鑑定では、父親と男子間のみに限定されるものの、そのシステムは極めて単純化される。即ち、男子の型から父親の型は常に1つに決定されるので、母子結合確率と擬父と同じ遺伝子型の真の父の出現頻度は等しいことから、父権肯定確率=1/(1+擬父の型の遺伝子頻度)として計算されることとなる。
著者
大沼 保昭 斎藤 民徒 川副 令 豊田 哲也 伊藤 一頼 申 惠〓 王 志安 伊藤 剛
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本共同研究は、多極化・多文明化へと向かう今日の国際社会の現実が、欧米中心の現行国際法秩序の再考を迫っているという問題意識の下、21世紀の国際社会の現実に即した国際法秩序のあり方を模索し、研究の公刊を通じてその理解を広めることを目指すものであった。その際特に、世界人口の過半数を占め、歴史的に豊かな文明を生み出しながらも、国際法秩序の形成にその地位に見合った役割を果たすことなく、欧米中心の国際法秩序の消極的受容者と見なされてきたアジアの存在に着目し、21世紀の国際法秩序におけるアジアの位置、その貢献可能性を明らかにした。
著者
松井 大輔 尾崎 悦子 渡邉 功 小山 晃英 栗山 長門 上原 里程
出版者
京都府立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

申請者らは2003年より前向き研究として約500名(現在平均年齢:74.8歳、5年毎の追跡調査)のコホート集団を対象とした脳ドック検診を実施し、生活習慣・動脈硬化症・口腔内細菌と認知機能低下や大脳白質病変・微小脳出血との関連を明らかにしてきた。本研究は、これまでの申請者らの研究成果を基に、認知機能低下、脳の器質的変化、腸内細菌叢および口腔内状態と、唾液中の口腔内細菌叢(16Sメタゲノム解析)の関連を明らかに、解明を目指すことを目的とした。得られる研究成果は超高齢社会で増加する高齢者の認知症、脳血管疾患を口腔衛生の観点から予防するエビデンスとなり、ひいては口腔保健施策の発展に寄与する。
著者
田中 ゆり
出版者
東京藝術大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

実験物理学者とサウンドアーティスト/デザイナーの協働によって、宇宙の音(エネルギーの振動)を人間が享受する体験を創造できるのではないか。そうした問いのもと、本研究の目的は、地球上に降り注ぐ宇宙線に含まれる素粒子の検出器を用いた楽器のプロトタイプを国際・学際協働して制作し、ユーザ体験と演奏を通じた検証を繰り返すことで、素粒子楽器の研究・実践を発展させる基盤をつくることである。また、本研究は素粒子物理と音楽をつなぐ方法をアートディレクションの視点から模索し、社会に展開するものである。
著者
徳永 光
出版者
獨協大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

日本において再鑑定資料の保存機関・方法・期限等に関するルールがなく、かつ再鑑定の実施の要否は裁判所の裁量に任されているため、被告人側が独自に鑑定の実施を望んでも実現に困難が伴うことが把握された。再鑑定の実施を被告人の権利の一つと捉えないため、再鑑定資料の保存義務という問題が生じてこないのが現状であろう。しかし、当事者主義を採用する以上、残存資料へのアクセス権が認められるべきであり、また再鑑定が、雪冤の決定的証拠となりうることから、有罪確定後、刑期が終了するまでの間における鑑定資料保存の義務づけが必要である。
著者
近藤 良享
出版者
中京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究ではRTP選手ではなくドーピング検査対象になっていない学生/選手(非RTPA)を対象にドーピング問題を検討した。結果として、検査方法などに抜け道があればドーピングに手を染める選手の現状は防止教育の難しさを物語っていた。問題解決に厳罰主義か、緩和主義かがある中、日本の「世間」という個人と社会の媒介を利用した、教育的スポーツを連帯責任システムによって堅持する方法論は検討に値する。伝統や美徳を大切にする共同体主義的傾向が強い日本社会では、教育的スポーツをベースにして、正しいスポーツ教育、スポーツのインティグリティ教育、ドーピング防止教育を推進することが必要と考えられる。
著者
櫻井 義秀
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

本研究では、第一に、現代の情報化社会で言説がいかに生成されるか、その過程をオウム真理教事件に関わる言説に則して見ていき、現在流通している様々な言説を共通の概念枠組みで記述した。第二に、オウム真理教がなぜかくも急速に信者を獲得・動員して犯罪を行い得たのかという疑問への説明として最も流布し、しかも社会的影響力を持ったマインド・コントロール論を取り上げ、オウム真理教現象の構成のされ方、論者の視点の問題点を社会学的に吟味した。また、川瀬カヨ氏によって設立された天地正教が、1995年に十勝清水町御影地区において教団の宿泊施設を建設しようとしたが、地域住民の反対運動が起き、町議会も建設中止の陳情を採択するに至った。天地正教は1988年の宗教法人化以来、霊感商法との関係が弁護士会等で問題にされていたが、1996年の弥勒祭、浄火祈願祭において二代目教母が下生した弥勒として統一教会の創始者文鮮明夫妻を迎えると宣言した。本事例は、新宗教教団が地域社会にいかに定着していくかという問題を示していたが、天地正教はこれに失敗した。本論文集には、上記の2論文以外に、新宗教教団の形成過程と地域社会変動の当初の研究対象教団であった、天照教調査の経過報告と、猪瀬優理「宗教とジェンダー -創価学会を事例に-」、大倉大介「情報受容に関する一考察-オカルトに関する情報を中心に-」、蔭山茂樹「新宗教教団における入信・回心・献身-統一教会・原理研究会を事例に-」の4論文を加えて、現代宗教を考察する視角を多方面から検討してある。