著者
松木 則夫
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

海馬は記憶・学習に重要な役割を果たしていることはよく知られているが、海馬内回路に比べて海馬外からの調節機構解明は進んでいなかった。本研究において、後部扁桃体基底核および青斑核の活性化がそれぞれ海馬内のシャッファー側枝-CA1野錐体細胞、嗅内皮質-CA3野錐体細胞のシナプス伝達にダイナミックに影響することを示した。また、前者はストレスに対する感受性が高いことも明らかになり、うつ病との関連が示唆される。また、末梢刺激により海馬機能が影響され、それが糖尿病でも低下していることを明らかにした。さらに、新しいうつ病モデル動物としてコルヒチン投与動物を解析した。残念ながらうつ病モデル動物動物とはならない結果であったが、逆に、抗うつ薬の作用機序として歯状回顆粒細胞の新生や生存は関係ないことが示された。
著者
矢崎 義雄 栗原 裕基 小室 一成 湯尾 明 山崎 力 塩島 一朗 本田 浩章
出版者
国立国際医療センター(研究所)
雑誌
特別推進研究
巻号頁・発行日
1997

心臓の発生に必須な転写因子Csxは、成人においても心臓に発現しており、その成人心における役割が注目されている。我々は、Csxの成人心における役割を知るために、Csxを過剰発現するトランスジェニックマウス(Csx Tg)とホメオドメインのロイシンをプロリンに変えドミナントネガティブとして働くCsx(LP)を過剰発現するトランスジェニックマウス(Csx LP Tg)を作成した。成熟Csx Tgの心臓においては心臓特異的な遺伝子であるANP、ミオシン軽鎖、CARPなどの発現が亢進しており、Csxが出生後の心臓においても心臓特異的遺伝子の発現に関与していることが示唆された。一方Csx LP Tg心は組織学的に心筋の変性を示していた。以上のことより、Csxは成人心において心臓に発現している遺伝子の発現を調節していると同時に、心筋細胞の保護に働いており、Csxの機能が低下することにより、心筋障害が生じることが示唆された。本研究によって、エンドセリン-1(et-1)によるG蛋白を介したシグナルが、神経堤細胞から血管平滑筋への分化機構に、bHLH型核転写因子であるdHAND,eHAND、ホメオボックス遺伝子Goosecoidの発現誘導を介して関与していることが明らかになった。その発現部位から、ET-1は上皮-間葉相互作用を介して働いていると考えられる。さらに、CATCH22の原因遺伝子の候補遺伝子として同定されている細胞内ユビキチン化関連蛋白UFD1Lとの間に、「ET-1→ET-A受容体→dHAND→UFD1」というシグナル伝達経路の存在が示唆された。一方、我々は、アドレノメデュリン(AM)のノックアウトマウスにより、AMもET-1同様、胎生期の血管発生および胎生期循環に関与していることを見出し、ET-1とAMと二つの血管内皮由来ペプチドが血管形成に重要な役割を果たすことを明らかにした。
著者
〓 東風
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、中国四川省の安岳地方・湖北省の荊楚地方・江西省の宜春と〓州などの地域を中心として、各地の仏教遺跡の現地調査を行い、これに文献史料の考察も加えることによって、それぞれの仏教遺跡の確認や新しい史料の発見、また、明代前期四川仏教の代表的人物の思想や経歴、天台智者の出身地の所在、当陽玉泉寺関羽信仰の発生・変化の経過、江西地方の禅宗発達の原因等の解明、という成果を挙げた.
著者
堀端 克良 本間 正充
出版者
国立医薬品食品衛生研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

DNAtopoisomeraseI(Top1)は通常DNAに共有結合して一本鎖DNA切断(singlestrandDNAbreak ; SSB)を入れることでDNA複製や転写の際に生じるDNA超ラセンを解消し、SSBを閉じてDNAから解離するが、何らかの原因でSSBを閉じることができなくなるとTop1自身がDNAに共有結合したままになり、内在性DNA損傷のように振る舞うことが知られる。このようにTop1の酵素活性中に形成される"Top1-DNA間共有結合体"(Top1-DNAcovalentcomplex ; Top1-cc)の修復機構はDNA複製、転写、組換えDNA修復、プロテアソームによるタンパク質分解機構などと密接に関連していることが知られるが、それぞれがどのように相関しているのかなどの詳細は不明である。Top1とそれぞれの因子の相関関係の詳細を、遺伝学的、生化学的および細胞生物学的手法により網羅的に解析し、その詳細を明らかにする。
著者
大村 幸弘 松村 公仁 大村 正子 山下 守 吉田 大輔 中井 泉 赤沼 英男 増淵 麻里耶 大森 貴之 熊谷 和博
出版者
公益財団法人 中近東文化センター
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2010-04-01

当該研究の主目的「文化編年の構築」は、IV~VIII区で中間期のIVa層、前期青銅器時代のIVb層を中心に行なった。特にIVa層は、出土した炭化物の分析から2135calBC-1958calBC、2063calBC-1948calBCということが判明した。2014年はIVa層直下の火災を受けた建築遺構の発掘を行なったが、出土する土器には轆轤製がほとんど認められず手捏ねの粗製土器が中心であることなど、それまでの製作技法とは大きな差異が認められた。また建築遺構の形態も脆弱であった。先史時代の土器の形式編年等は未解明部分が多く、層序を中心とした研究によって先史時代の編年に大きく貢献できたと考える。
著者
谷 謙二
出版者
埼玉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009-04-01

本研究は、オブジェクト指向にもとづく時空間管理可能なGISの開発を行った。本研究の成果としては、時系列地形図閲覧サイト「今昔マップ on the web」の開発、Google Maps API v3に対応した「ジオコーディングと地図化」サイトの開発、地理情報分析支援システム「MANDARA」のMicrosoft .NET対応版の開発、および明治期の関東地行政界地図データの作成があげられる。これらのうち、前者2つは既にWebサイトで完成版が公開され、多くの利用者を集めている。
著者
茂木 栄 薗田 稔 島田 潔 杉山 林継 薗田 稔 宇野 正人 茂木 栄
出版者
国学院大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1990

日本に於ける祭礼形態の史的類型化のモデル作りを最終目的としてこの課題に取り組んできた。日本の祭り形態の流行には、歴史的に五回波があったと考えられる。第一は主として水田稲作地帯の「田遊び」、折口信夫によれば、この種の祭りは、奈良朝以前より存在していたという。第二は、平安時代後期から始まったとされる神楽、これは全国の山間地域に「霜月神楽」という形で伝承されている。第三は町の祭りとして国府がおかれた地方の中心都市において行なわれいた「国府祭(こうのまち)」である。十一世紀にはその存在が明確になっている。第四は、町の人々の間から発生し、全国の祓いの夏祭りとして広がっていった「祇園祭り」。これは山車をひく全員参加型の祭礼で、全国に爆発的に広がった。第五は、江戸型の神興を担ぎまわる威勢の良い祭り。関東を中心に大きな流行をみた。この中でも、本研究の重点を国府の祭りに置いて調査研究を続けた。平成三年度の現地調査は、長門の国府の祭・数方庭、隠岐総社、隠岐田楽、出羽総社などの調査を行なう。また、これまでの国府祭の調査と資料収集を通じて、ポイントとなる事象、文献、伝承などキ-項目を下記のようにまとめた。1、諸国国府におかれた総社 2、『白山之記』 3、『朝野群載』 4、『時範記』因幡総社、因幡三山、大伴家持 5、播磨総社射楯兵主神社、三ツ山神事、一ツ山神事 6、三輪山麓に鎮座する兵主神社、三山妻争い伝説 7、越中総社二上射水神社築山神事、大伴家持、人身御供伝説 8、下野総社明神お鉾祭、三輪神勧請、人身御供伝説 9、遠江総社淡海国玉神社、裸祭人身御供伝説 10 尾張総社尾張大国霊神社、裸祭人身御供伝説最後に、これまで得られた知見から、祭礼の史的類型の第一形態である国府の祭の共通要素を列記しておく。1,祭りには大和の風土を強く意識していること 2,本来暗闇の祭りであること 3,海での禊があること 4,裸の練り行事があること 5,人身御供伝説が存在していることが多いこと 6,稲に関する儀礼が存在したこと 7,産の信仰があることなどを指摘することが出来た。
著者
宇野 正人 小坂 勝昭 斗息 正一 宮島 千秋 斗鬼 正一
出版者
江戸川女子短期大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1991

○現地調査における進捗状況。(1)本研究のため、調査地域に関する文献および資料のリストを作成し、加えて、できるかぎり文献収集をおこなっていたが、本年度もその拡充をおこなった。(2)ゆえに、収集した文献に関して、その文献リストおよびその内容のコンピュータによるデータベースをも拡充した。(3)研究代表者や分担者は、現地で面接調査をおこない、資料収集につとめ、より資料の精度化をはかった。具体的には「隠岐アイランドトライアル」の開催実行の状況、島内外を結ぼうとする試みである「ふるさとNETWORKJOURNAL隠岐国」編集発行の様子、各地区の神社の祭および盆行事の見学などである。○新たに得られた知見。初年度は、文字を中心にした文献・資料の収集に力点を置いた。それゆえに、われわれの知見は従来の研究の範囲を越えていないのが現状であった。2年度においては、現地での面接調査をおこなった。現地の方々の非常な協力により、かなり精度の高い資料を得ることができた。3年度は、彼ら、若者が具体的に活動している行事および各地域における伝統的行事などの現状をみた。その中で、若者を中心にした行事および事業と伝統的な行事をつなぐ「キー」となる人物の存在があった。彼は神社の神職であるものの、トライアルの実行委員会事務局長、のちに大会実行委員長となっている。ゆえに、宗教的コミットメントは個人のレベルであるが、その役職、発言力にはみるものがあり、到底無関係とはいえない。彼の神社では、その立地条件も加味されて、祭への参加が減少の一途をたどっていた。ところが、トライアル開催以降、それまで神社の祭典に参列がなかった青年たちの参列があった。また、ふるさとネットワーク事業に関しても、青年たちを中心に、島の伝統的祭や行事への再認識もあった。このように、経済的側面が強調される場合が多い地域活性化の問題も、宗教の問題を加味すると、少し変わった観点からみることもできよう。
著者
小坂 勝昭 斗鬼 正一 阿南 透 宇野 正人 越智 昇
出版者
江戸川大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1993

平成6年2-3月、5月、7〜8月と数次にわたる現地調査を実施した。調査対象地は島根県隠岐郡西ノ島町浦郷地区を中心に、必要に応じて西郷町、五箇村、島前中ノ島の海士町も併せて調査対象とした。調査手法は徹底した「聴き取り、面接法」をとり、部落のキ-・パースンから情報収集し、それらを基礎に分析枠組を構想した。これまでおこなった調査研究の内容は(1)隠岐諸島の社会史研究、(2)各研究分担者の研究領域に従い、文化人類学的、社会学的、文化史的、宗教社会学的な研究をおしすすめてきた。具体的には、(1)隠岐の近代化の進行の中で、マスコミ情報の与えてきた影響とともに近代以降の第三次産業の発展、とりわけ観光産業の振興は隠岐の発展と産業化に影響を与えてきたが、とくに若者人口の流出(向都現象)に典型的にみられる人口流出の増加とともに観光客の流入増などが全体としての人的交流の著るしい増加を結果した。とくに観光地化にともなう隠岐社会の変動の分析をおこなった。(2)隠岐の過疎化対策としての若者宿の新築と地域振興に及ぼす効果の測定、町起こし運動としての隠岐全国トライアル大会」の町の活性化に及ぼした影響と効果分析。(3)隠岐諸島の種々の祭札や宗教的行事の社会的機能を宗教社会学的、文化人類学的な観点から明らかにすること。(4)町村合併にともなう部落組織の変容、及び便益の配分をめぐる政治的勢力関係の分析、(5)明治維新時の文化変動ともいうべき宗教改革(廃仏毀釈)の影響、以上のような問題意識にもとづき研究をすすめてきた。そして研究成果の一部として、越智、小坂、斗鬼、阿南の共著として「隠岐諸島の社会変動に及ぼした諸要因-隠岐郡西ノ島町の調査研究ノートから-」を著わした。この論文は江戸川大学紀要「情報と社会」NO.5.1995.(2月20発行)に発表された。(13-35頁。)
著者
関口 洋美 吉村 浩一
出版者
大分県立芸術文化短期大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究の目的は大きく分けて2つであった。1つは、鑑賞授業における鑑賞文の作成を支援する鑑賞シートを開発することである。なお、鑑賞シートは、オノマトペによる感性評価を中心として、子どもたちが答えやすいものを目指した。もう1つの目的は、完成した鑑賞シートを授業で使用してもらい、鑑賞文の作成に効果があるかを検証することである。結果、21語のオノマトペから構成される鑑賞シートが完成した。本鑑賞シートの実証授業では、多くの子どもたちが鑑賞文の作成がしやすくなったと回答してくれた。特に、普段鑑賞文を書くのが苦手な子どもたちに有効に働くことが実証された。
著者
佐藤 毅 相田 敏彦 安川 一 川浦 康至 栗原 孝 市川 孝一 草津 攻
出版者
一橋大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1987

1.調査の概要 (1)目的-子どもの社会化、とくにしつけの局面における親子(父、母、子)の相互行為の実態を明らかにすること。(2)対象-武蔵野市と長野市の小学5年生(271名)、中学2年生(208名)それぞれの親(父母、合計952名)から回答を得た。(3)方法-質問紙によるアンケート調査(一部で投影法を用いた)。2.調査による主な知見 (1)親の産育意識-育児の苦労や次の社会を担う世代という意識が強く、今や親の都合や家の存続を前提とした観念は薄くなっている。(2)親の子どもへの期待像、子ども自信の期待像-「やさしい子ども」をあげる回答が最も多いが、親子のズレも多く見られた。(3)子どもの将来の理想像-親子ともに「幸せな家庭生活」をあげるものが最も多い。(4)親の親子観-「子どもを独立した人格」と見なす回答が最も多かったが、父親の親子観が相対的に未分化なのにたいして、母親のそれには依存と干渉、放任と独立というカテゴリーがより明確に意識されている。(5)親子のコミュニケーション関係-子どもは母親に比べて父親に対して、あまり話しかけないし、また、自分の話をきいてくれるとも思わないこと、さらに、相互理解という点でも父親は疎遠な存在である。(6)しつけの担い手-母親が主たる担い手となっている。(7)しつけの重点-父親は「礼儀作法」「勉強」「ものを大切に」、母親は「勉強」「礼儀作法」「家事」の順に多くあげる。(8)叱り方-父親では「怒鳴る」が「よくわかるように説明する」を上廻り、母親では「小言やぐちを言う」を多くあげる傾向がある。(9)叱り言葉-「早くしなさい」が親の言葉として最も多いが、子どものあげる叱られ言葉との間にギャップがある。(10)ほめ言葉-親は子どもの学業成績に関してほめている言葉が目立つ。(11)慰め言葉-親は子どもにリターンマッチをすすめる言葉を多く発する傾向があり、親子のギャップがある。
著者
深尾 良夫 ゲラー ロバート 山田 功夫 武尾 実 島崎 邦彦
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(A)
巻号頁・発行日
1993

本計画は、世界最大の沈み込み帯である西太平洋域の地球内部構造を解明するために、(1)カムチャッカに新しい高性能地震観測点を建設し、(2)ミクロネシア観測点のバ-ジョンアップを行ない、(3)これまでに得られた記録から地震学的トモグラフィーを行ない従来より鮮明な地球内部イメージを得ること、が目的であった。以下に、成果の概要を報告する。(1)カメンソコエ観測点の建設平成5年度中は観測点建設のための様々な準備(観測システムの構成部品の入手・組立及び調整、相手側研究者との連絡、相手側研究者による観測壕の建設など)を行なった。平成6年度は、建設された観測壕に地震計システムを設置し運転を開始したが、機材の輸送トラブルにより地震計1成分の部品が足りず2成分観測で出発せざるをえなかった。平成7年度にようやく残り1成分も動きだし、現在は順調に稼働を続けている。データは光磁気ディスクの形で送られてきている。(2)ミクロネシア観測点のバ-ジョンアップ平成5年度、ミクロネシア連邦ポナペ観測点において別途予算で高性能地震観測を開始した。この間、ミクロネシアでは全島に光ケーブル電話回線を敷設する工事が進められた、その結果、平成6年度には電話事情が格段に改善され、日本からの電話呼出しによる地震計のシステムコントロールや準オンラインでの主要地震記録の取り込みが可能となった。平成7年度は、観測壕のかぶりを深くし引込用電柱を撤廃してケーブルを埋設化した。ポナペ観測点は計画期間中総じて順調に稼働し良好なデータを得ることができた。地震学的トモグラフィーによる地球内部解明全マントルP波トモグラフィー(平成5年度):Fukao et al.(1992)が行なったよりもデータ数を5倍にして全マントルトモグラフィーを行ない、特に西太平洋全域で「マントル遷移層によどむスラブ」のより鮮明なイメージを得た。一方、1994年のデジタル波形を用いて相関法によってP-PP波到達時刻差を測定し、全マントルP波トモグラフィーで分解能の高い地域ではモデルと測定とがよく一致すること、逆に分解能の低い地域では一致が悪いことを示した。表面波群速度測定(平成6年度):ポナペ島及び父島において西太平洋の最も古い海洋底(160Ma)と最も若い海洋底(`0Ma)のレイリー波群速度を測定し、従来実測された如何なる地域よりも早い群速度及び遅い群速度を得た。コア・マントル境界P波トモグラフィー(平成7年度):グローバルなP波及びPcP波到達時刻データを用いて、コア・マントル境界付近の水平不均質構造を求めた。特に、新しいモデルを提出するよりも用いたデータから確実に抽出できるイメージを明らかにすることに焦点を絞り、東南アジアと中南米の低速度異常と北極域の高速度異常を見いだした。
著者
久松 洋介
出版者
東京理科大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

デスリガンドの一種であるTRAILとデスレセプターを介するシグナル伝達は、がん細胞選択的にアポトーシスを誘導するため、副作用の少ない抗がん剤開発のための標的経路として注目されている。本研究は、生体内に存在する亜鉛イオンもしくは鉄イオンを用いて、Zn^<2+>(bpy)_3もしくは、Fe^<2+>(bpy)_3錯生成に基づくC_3-対称性の自己集積型TRAIL様人工デスリガンドの創製を目的として取り組んだ。採用1年目である本年度、C_3-対称性構造を有する自己集積型TRAIL様人工デスリガンドを開発するための配位子の選定を行い、1,10-フェナントロリン配位子に対してデスレセプターとの相互作用部位であるPatchA、PatchBペプチドを導入したリガンドの合成を行った。今後、合成した人工デスリガンドの精製およびTRAIL様活性評価と課題は残っているものの、一定の進展はあったと判断する。さらに、C_3-対称性構造に固定化されたトリスシクロメタレート型イリジウム錯体に関して、種々の誘導体化を行い、特徴的な発光特性を有する新規イリジウム錯体を見出した。この知見に基づき、イリジウム錯体にPatchAペプチドを導入したリガンドを合成し、現在、TRAIL感受性細胞を用いた活性評価に取り組んでいる。ドイツでの半年間の留学では、人工トランスフェクション試薬および4点型双生イオン部位を導入した自己集積型分子の創製研究に取り組んだ。特に後者では、高極性溶媒中で外的な刺激に応答可能な超分子ポリマーの生成に関して有用な知見を得た。
著者
山口 忍
出版者
茨城県立医療大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

水俣病発生した後1965年以降に公衆衛生看護活動に類似する活動が行われていたことを発掘することができた。それは「移動診療所の活動」であった。活動を行っていたのは、看護職、医療職、資格を持たない人々である。その中でも、看護師である堀田静穂氏が行っていた訪問活動は、保健師の「家庭訪問」と酷似していた。その訪問活動を受けた患者から「家族関係がよくなった」「不安が軽くなった」「地域の活動に患者が出向くようになった」という評価を得ることができた。
著者
最所 圭三
出版者
香川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

Webサーバへのアクセス集中により十分な応答ができないとき,クラウド上で提供されるキャッシュサーバをアクセス量に応じて用いてサービスを提供するWebシステムを構築するための機能の開発を行った.具体的には,Webサーバの負荷量を監視する負荷監視機能,アクセスの振り分け先を設定する振分先設定機能,キャッシュサーバの起動・停止を行うキャッシュサーバ管理機能を開発した.これらの機能をソフトウェアロードバランサやDNSと組み合わせることで目的のシステムを構築できる.さらに,キャッシュサーバでのサービスの質を向上させるために,キャッシュサーバからのアクセスをWebサーバで優先的に処理する機能も開発した.
著者
乾 直輝 渡邊 裕司 千田 金吾
出版者
浜松医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

肺癌患者46名を対象にS-1代謝に関与する薬物代謝酵素CYP2A6の遺伝子多型を検討したところ、CYP2A6*4アレルが17.4%の割合で認められた。CYP2A6*4アレルを持つ患者では、多型を持たない患者に比べ、5-FUの最高血中濃度や濃度曲線下面積が低く、プロドラッグであるテガフールの血中濃度が増加していた。CYP2A6遺伝子多型に関する知見は効率的なS-1の投与法の確立のための有用と考えられた。
著者
重田 眞義 伊谷 樹一 山越 言 西 真如 金子 守恵 篠原 徹 井関 和代 篠原 徹 井関 和代 峯 陽一 西崎 伸子
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

本研究プロジェクトは、エチオピアにくらす人々によって絶え間なく創り出される様々な知(=在来知)の生成過程をこれまで認識人類学がふれなかった「認識体系と社会的な相互交渉の関係」と、開発学が扱わなかった「有用性と認知の関係」の両方を射程に入れて、グローカルな文脈に位置づけて解明した。さらに、この研究であきらかになった点をふまえて、研究対象となる社会への成果還元に結びつくような研究活動を展開した。
著者
梶谷 桂子
出版者
広島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

我々は、浸潤生乳管癌178例に対して免疫組織化学的染色によってWnt5aの発現とER, HER2などの臨床病理学的因子との関連性を検討した。その結果(1)全178例中、Wnt5a陽性乳癌は69例(39%)であり、Wnt5a発現とERは有意に相関していた。(2)ER陽性乳癌153例におけるWnt5a発現の意義を検討したところ、リンパ節転移、核グレード、リンパ管侵襲、脈管侵襲との間に有意な相関を認めた。(3)無再発生存期間を比較すると、Wnt5a陽性乳癌はWnt5a陰性乳癌よりも短かった。以上より、Wnt5aはERの発現と相関が強く、ER陽性乳癌においては予後予測因子になることが明らかになった。
著者
牛島 光一
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

本研究プロジェクトの目的は健康と教育間の因果関係を明らかにすることである。平成24年度は本研究フロジェクトの第二年目であり、教育が健康に与える影響について研究を進めた。この研究では、親の教育水準が高いほど子供の病気を正確に評価できるという仮説を、二つの自然実験的状況((1)医療保障制度改革、(2)教育制度改革)を利用することで検証する。現在、親の教育水準と子供の健康間の除外変数(遺伝的な健康状態、時間選好など)を考慮した研究の蓄積は進んでおらず僅かに、母親の教育水準と乳幼児の健康の因果関係が明らかになりつつある状況である。本研究の分析方法を用いることで、これまで因果関係が明らかになっていない、母親の教育水準と小児の健康の因果関係を明らかにすることができる。本年度は、前年度にタイの家計調査データ(Health and Welfare Survey、2000、2003、2004、2005)から構築したデータセットを用いて分析を行った。このデータセットを用いて、観察された子供の入院率の医療保障制度改革前後の変化と親の教育水準の関係について分析を行った。分析の結果、以下の4点が明らかになった。(1)就学前の子供は、母親の教育水準が低い場合のみ制度導入によって、他のグループよりも入院率が有意に高くなった。(2)この入院率の上昇によって、就学前の子供の入院率は、就学後の入院率と同程度なったので、就学前の子供が過剰な医療サービスを受けたわけではない。(3)父親の教育水準は子供の入院率の変化とは、有意な関係ではなかった。(4)全国レベルの死亡統計によると、制度改革によって、就学前の子供の死亡率のみが減少していた(約43%減少)。従って、分析の結果より母親の教育水準が低いほど子供の健康評価能力が低く、その結果として、子供の健康資本の蓄積が阻まれることが示唆される。
著者
伊藤 友孝 谷 重喜 鈴木 みずえ
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は,高齢者の転倒予防を目的に,(a)個々の歩行状態を定量的かつ的確に診断できる手法の開発と(b)屋外の不整地でも安心して使用できる受動アシスト杖の開発の二点を重点課題とした.課題(a)に関しては,歩行を簡便に計測して個々の歩容の特徴量を自動抽出し,歩行タイプやバランス状態などの診断を行える「歩行計測・診断システム」を開発した.実際に72名の診断を行い,高齢者の歩容の実態や転倒の要因を把握することができた.課題(b)に関しては,伸縮式の支持脚を有し不整地での段差吸収とバランス制御機能を併せ持つ「ロボット杖」の開発に成功した.本研究により今後の高齢者の転倒予防に関する重要な知見が得られた.