著者
石井 直恵
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.103-113, 2011 (Released:2011-04-01)
参考文献数
9
被引用文献数
1

純水・超純水は実験室で非常によく使用される試薬の一つであり,ブランク,サンプルの溶解や希釈,標準物質の調整,移動相や培地,バッファー調整などあらゆる用途に使用されている.そのため,実験に使用する純水や超純水の水質は結果に非常に大きな影響をおよぼす.そこで,超純水製造装置では使用目的に応じて特定の不純物を除去する技術を搭載することで,目的にそった水質を達成することが重要となっている.本報では,各種機器分析で必要とされる超純水の水質と適切な精製方法について述べる.
著者
山中 弘次
出版者
公益社団法人 日本表面科学会
雑誌
表面科学 (ISSN:03885321)
巻号頁・発行日
vol.35, no.9, pp.504-509, 2014-09-10 (Released:2014-09-27)
参考文献数
8
被引用文献数
3

The definition, property, application fields and purification facilities of ultra pure water are overviewed with the recent achievements in the technologies of water recycling and reductions in chemical consumption at first. Then the ion adsorption filter for removing ppt level of ionic impurities from ultra pure water, and the functionalized ultra pure water for precision cleaning in the fields of semiconductor and flat panel displays are described as the recent achievements in ultra pure water technology.
著者
本多 直人 松下 吉樹
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.75, no.4, pp.701-703, 2009 (Released:2009-10-09)
参考文献数
18
被引用文献数
4 5

海中を潜行するエチゼンクラゲをスキューバ潜水により追跡し,深度変化を計測することで,遊泳速力を求めた。傘径 0.6~1.6 m の 14 個体の遊泳速力は,最小 0.07 ms-1,最大 0.17 ms-1 であった。傘径を B とすると,遊泳速力=0.1 B s-1,一拍動あたりの推進距離=0.25 B の関係が求められた。傘径 1~1.5 m の大型個体でも遊泳速力は約 0.1~0.15 ms-1 となるため,対馬暖流の流軸上や強い潮流の中では,流向と逆方向への移動はできないと推測される。また,エチゼンクラゲの遊泳速力は,ほとんどの場合に漁獲対象とする魚類の遊泳速力より小さいと推測される。
著者
若尾 勝 福光 英彦 田中 勇治 徳村 拓哉 星 虎男 関根 義夫
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.509-513, 2012 (Released:2012-09-07)
参考文献数
12

〔目的〕Diagnosis Procedure Combination (DPC)導入前後での入院期間,理学療法開始時および終了時のBarthel Index (BI)への効果を分析すること.〔対象〕入院中に理学療法を実施した患者171名とした.〔方法〕DPC導入前後の,理学療法開始までの日数,理学療法実施日数,理学療法開始時および終了時のBIを比較した.さらにDPC導入と理学療法,それぞれの前後におけるBIの変化を,退院先別に分析した.〔結果〕DPC導入により,理学療法開始までの日数と理学療法実施日数の短縮,高いBIでの退院がみられた.また退院先四群間とそれぞれのBIで有意差を認めた.〔結語〕DPCが早期理学療法開始,入院期間短縮,高いBIでの退院につながり,さらに高いBIで理学療法を開始できれば,早い在宅復帰を見込むことができる.
著者
楠見 孝
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第7回大会
巻号頁・発行日
pp.12, 2009 (Released:2009-12-18)

本研究の目的は,ホワイトカラーの実践知と批判的思考の関係を明らかにするために29人のホワイトカラーに対して,質問紙調査をおこなった.評定結果に基づいて,仕事に関する実践知の構造を,テクニカルスキル,ヒューマンスキル,コンセプチュアルスキルに分けた.そして,それらのスキルの獲得は,省察と知識変換といった思考活動,批判的思考態度と柔軟性といった学習の態度が支えていることを明らかにした.さらに知識のリソースとして,自己経験,上司同僚の役割が大きいことを明らかにした.あわせて,対照群である教員と比較検討した.
著者
波床 正敏 塚本 直幸
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.599-608, 2005-10-31 (Released:2010-06-04)
参考文献数
22

本研究では、公共交通の輸送需要と運行頻度の関係に着目し、速度相当のパフォーマンス指標として期待サービス速度を定義した。この指標は輸送需要の増加にともない増大し、表定速度を漸近線とする。自動車交通についても輸送需要を人単位に換算し、公共交通と比較可能とした。次に、自動車交通と公共交通との両方が整備される場合、総合的に都市交通空間がどのようなパフォーマンスを示す可能性があるかについて考察した。その結果、公共交通の小規模な水準向上では道路渋滞が解消しないばかりか、乗客減少の可能性すらあること、車線増設で渋滞が発生する可能性があること、総需要減少で渋滞が発生する可能性があることなどがわかった。
著者
若森 参 マライヴィジットノン スチンダ 濱田 穣
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement 第31回日本霊長類学会大会
巻号頁・発行日
pp.52, 2015-06-20 (Released:2016-02-02)

マカク属のサルでは尾長に変異性が高いことが知られている。種群内に見られるバリエーションは、それぞれの種の分布域緯度に相関し寒冷適応と考えられるほか、位置的行動と支持基体、あるいは社会的行動(専制的-平等的社会)などの要因が推測される。相対尾長が35~45%の同程度の中長尾を持つカニクイザル種群のアカゲザル(Macaca mulatta)、シシオザル種群のブタオザル(M. nemestrina/leonina)、トクマカク種群のアッサムモンキー(M. assamensis)の間で尾の比較を行った。我々は、尾長は尾椎数と最長尾椎長に依存し、ブタオザルとアッサムモンキーは、アカゲザルよりも短い尾椎を数多く持つことを明かにした。この違いが行動面でどのように見られるか、自由遊動群で尾の運動観察を行った。今回は、アッサムモンキーの観察結果について発表を行う。アッサムモンキーは、大陸部アジアの中緯度域の常緑広葉樹林に分布し、キタブタオザルとの共存域では、急傾斜山林や岩崖地に生息する、比較的、平等主義的社会を持つ。フォーカルアニマルサンプリング法で、尾の保持姿勢(脊柱に対して水平、垂直、背方屈曲、下方)と運動の位置的行動(座る、立つ、歩く、走る、寝そべる、跳躍、登る、降る)と社会的行動の組み合わせで記録した。また、ビデオによる尾の運動観察も行った。アッサムモンキーは、尾の最大拳上時の角度が垂直と背方屈曲の中間で、これは近位尾椎の形状から予想された。アカゲザルとキタブタオザルで見られた社会的上位の個体が尾を上げて優位性を示すという行動は、見られなかった。逆にアッサムモンキーの劣位の個体が餌場への接近などで上位個体に近接する等の社会的場面において尾を垂直に上げる様子が見られた。またアカゲザルとキタブタオザルではほとんど観察されない尾を左右に振る行動が見られた。これは単独で枝に座り振り子のように尾を振る場面と、劣位の個体が上位の個体に接近する際に尾を脊柱に対して垂直に挙げ振る場面が見られた。
著者
友永 雅己
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement 第30回日本霊長類学会大会
巻号頁・発行日
pp.72-73, 2014 (Released:2014-08-28)

ヒトでは、同一の顔写真が上下に並べられた場合、下の方が太って知覚される(あるいは上の方がやせて知覚される)。この現象は北岡(2007)やSunら(2012)が独立に見いだされている。この現象を北岡(2007)は「顔ジャストロー効果」とも呼んでいる。これは、現象的にはジャストロー図形と同じ方向の錯視が生じているためである。最近、顔の内部の要素よりも輪郭線が重要であるという報告もなされているが(Sunら, 2013)、この顔ジャストロー効果がなぜ生じるのかについては、まだまだ不明な部分が多い。一つの可能性は、顔刺激の処理様式によるものであろう。また、比較認知科学的な観点からの研究も全く行われていない。そこで、本研究では、ヒトとチンパンジーを対象に、ジャストロー錯視と顔ジャストロー錯視について検討し、2種類の錯視の関係と種間差について検討した。タッチスクリーン上に2つの図形(長方形、ジャストロー図形、またはチンパンジーとヒトの顔写真)を上下に並べて提示し、より横幅の短い(やせた)方の図形を選択することが、チンパンジーおよびヒトの参加者には要求された。その結果、ヒトではジャストロー図形、ヒトの顔、チンパンジーの顔、いずれにおいても、従来報告されていた錯視(上の方がより短く/やせて知覚される)が見られたのに対し、チンパンジーでは、ジャストロー錯視のみが見られ、顔ジャストロー錯視は生じなかった。この結果は、ヒトとチンパンジーにおける顔処理のある側面における種差を反映しているのかもしれない。
著者
矢形 寛
出版者
日本家族性腫瘍学会
雑誌
家族性腫瘍 (ISSN:13461052)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.11-13, 2016 (Released:2016-07-15)
参考文献数
5
著者
坂崎 貴彦 久保田 正和 押田 芳治
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.321-324, 2007-10-25 (Released:2011-02-07)
参考文献数
6

1) 保健師・看護師と, 助産師・看護師のそれぞれの統合カリキュラムは, 1997年4月に同時に制定された. 2006年4月現在, 前者は10校開設されているが, 後者は1校も開設されていない.2) 助産師・看護師統合カリキュラムについては, 地域看護の単位数が少なく, 病気や高齢を伴うことが少ない助産師教育を統合させること自体に無理があったのではないだろうか.3) 助産師・看護師統合カリキュラムは, 実用性の検証が不十分なままに制定されたと考えることも可能であるが, 助産師不足が叫ばれている昨今, 制度を活用する学校が現れることを望みたい.
著者
Yuki INOUE Yuta OKAZAKI Hitoshi MUGURUMA Hitoshi INOUE Tatsuya OHSAWA
出版者
(社)日本分析化学会
雑誌
Analytical Sciences (ISSN:09106340)
巻号頁・発行日
vol.32, no.7, pp.797-799, 2016-07-10 (Released:2016-07-10)
参考文献数
20
被引用文献数
2

Simultaneous electrochemical determination of nicotinamide adenine dinucleotide (NADH) and ascorbic acid (AA) at a carbon nanotube electrode is presented. The discrimination of NADH and AA is conducted with the difference of peak potential by differential pulse voltammetry. Two well-distinguished anodic peaks, +0.56 and +0.26 V, due to NADH and AA are observed. The characteristics of those peaks were independent from each other. The attained characteristics for simultaneous determination of NADH and AA are (i) NADH measurement at the concentration range of 0.030 – 2.0 mM in the presence of 1.2 mM AA, and (ii) AA measurement at the concentration range of 0.030 – 2.0 mM in the presence of 2.0 mM NADH.
著者
小島 弘敬 高井 計弘
出版者
社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.68, no.10, pp.1237-1242, 1994-10-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
16
被引用文献数
4 2

咽頭, 直腸からの淋菌, C.tnchomatisの検出は, 分離培養では偽陰性, 非培養検出法では偽陽性の誤った結果を呈しやすく正診率がひくく, これまで臨床的知見の蓄積が少ない.各種の非培養検出法の咽頭, 直腸スワブを検体としての偽陽性反応の出現率を検討した.Gen-Probe Pace2®のみが他の非培養検出法と異なって, 咽頭, 直腸スワブを検体とする淋菌, C.trachomatisの検出について偽陽性が認められなかった.Gen-Probe Pace2®による淋菌生殖器感染症患者の淋菌陽性率は男子咽頭29.4%, 女子咽頭33.3%, 男子直腸0%, 女子直腸46.7%, C.tmchomatis生殖器感染症患者のC.tmckomatis陽性率は男子咽頭3.9%, 女子咽頭10.5%, 男子真腸0%, 女子直腸53.3%であった.淋菌, C.trachomatisの女子直腸炎は頚管分泌物の汚染による直腸への感染拡大と考えられ, C.trachomatisの咽頭感染合併率は淋菌に比してひくく, C.tmchomatisの咽頭感染性は淋菌よりひくいと考えられた.
著者
糠谷 明 増井 正夫 石田 明
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.73-81, 1979 (Released:2007-07-05)
参考文献数
21
被引用文献数
2 8

希釈した海水が, トマトの発芽, 生育, 収量に及ぼす影響について調査した.(1) 発芽試験開始2日後, Cl濃度の100ppmにより発芽率は減少した. 6日後の発芽率は0から1000ppm Cl間で有意差がなかったが, 2000ppm Clでは80.5%, 3000ppm Clでは21.5%で, 0から1000ppmClより低かった.(2) ホーグランド液で希釈された海水で育てられたトマトの蒸散量は, 海水濃度が増すにつれ減少した.(3) トマトを本葉2枚のステージより40日間, ホーグランド液で希釈された海水で育てた. 葉の新鮮重は250, 500ppm Clで0,100ppm Clより大であったが, 果実収量は0ppm Clで最大であった. 6000ppm Clで枯死株がみられた. 葉の浸透ポテンシャルは海水濃度の増加により減少した.(4) トマトを砂耕で栽培した結果, クロロシスとネクロシスは2000ppm Clでは下位葉にみられた. これらの症状は3000ppm Clではさらに激しく, 下位葉から上位葉にまで認められた. 3000ppm Clでは枯死株もみられた. また, 海水濃度の増加とともに, 葉の新鮮重と果実収量は減少し, 葉のCl, Na含量は増加した.(5) トマトを土耕で栽培した結果, 葉の周縁ネクロシスは海水の濃度が高い場合, 下位葉にみられたが, 3000ppm Clにおいても枯死株はなかった. また, 海水濃度の増加とともに, 葉の新鮮重と果実収量は減少し, 葉のN, P, K, Na, Mg, Cl含量は増加する傾向がみられた. 実験終了時の土壌のCl, 置換性Na, Mg含量及びECは, 海水濃度が高まるにつれて増加した.
著者
齋藤 剛 濱島 京子 芳司 俊郎 木村 哲也 清水 尚憲
出版者
独立行政法人 労働安全衛生総合研究所
雑誌
労働安全衛生研究 (ISSN:18826822)
巻号頁・発行日
pp.JNIOSH-2015-0024-CHO, (Released:2016-07-19)
参考文献数
24

機械災害防止に関わる行政施策でリスクアセスメントの普及が強く推進されているが,リスクを評価・判断するうえで公に受け入れられ統一された基準はまだ確立されていない.このため,リスクアセスメントの結果導かれる対策は,リスクアセスメントを実施する者の主観に依存し,その妥当性については必ずしも担保されない.本研究では,この問題を考察し,一事業場内の自主的労働安全衛生活動の範囲で回避するには限界があり,よって,最新の機械安全国際規格や他事業場等での成功事例に精通した第三者が機械のリスク低減状態を個別具体的に確認する仕組みが必要であることを示し,これを「妥当性確認」と定義した.そして,リスクアセスメントに基づく機械安全を日本に先行して推進してきた欧州4ヵ国を対象に調査を行い,リスクアセスメント結果の妥当性をいかに担保してきたかについて各国の実態を日本国内での場合と比較した.その結果,現在の国内の社会制度の枠組みで妥当性確認に相当する活動を実施するとすれば,労働基準監督機関が行う指導監督業務での実施が考えられることを示し,そのうえで,①機械安全に関わる法規制と機械安全国際規格との関係を明確にし,両者が強く結びつく方向へ整備すること,②指導監督業務を通じて知り得た災害の未然防止に成功した好事例について情報を収集し,広く一般へ公表・展開を図ることの2点を特に検討すべき課題として抽出し,提言としてまとめた.
著者
山崎 秀樹 鈴木 良徳 飯田 貴之
出版者
一般社団法人 日本接着学会
雑誌
日本接着学会誌 (ISSN:09164812)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.124-131, 2008-04-01 (Released:2014-06-30)
参考文献数
9

ミクロンオーダー以下の厚みで制御された積層材料中間層の組成分析を行うために,その前処理として,低角斜め切削法を検討した。その結果,厚み数10nm~10μm以下の中間層について,低角斜め切削法による前処理を行うことで,顕微FT-IRやTOF-SIMSなどの既存の分析機器を用いて,その組成を評価することが可能となった。さらに,斜め切削を行う前に対象試料に染色処理を施すことや,対象試料を冷却しながら切削を行うことが,中間層を適切に斜め切削するための条件として有効であることを見出した。
著者
成瀬 昂 有本 梓 渡井 いずみ 村嶋 幸代
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.402-410, 2009 (Released:2014-06-13)
参考文献数
21
被引用文献数
1

目的 少子化の進む日本では,健やか親子21などの政策により父親の育児参加が推奨されている。父親の育児参加に関する研究では仕事の影響を考慮する必要があるが,仕事と家庭における役割の関係性(スピルオーバー)が父親の育児参加にどのように影響するのかは,明確にされていない。本研究では,父親の育児参加を育児支援行動と定義して,その関連要因を検討し,父親の育児支援行動と役割間のポジティブスピルオーバーとの関連を明らかにすることを目的とした。方法 A 市内の公立保育園17園と私立保育園14園に通う,1,2 歳児クラスの父親880人を対象に,無記名自記式質問紙による留め置き・郵送調査を行った。父親・家庭・多重役割に関する変数を独立変数とし,「母親への情緒的支援行動」,「育児家事行動」を従属変数とする階層的重回帰分析を行った。父親に関する要因,母親の職業を独立変数として投入した後(モデル 1),さらに仕事と家庭の両役割間のポジティブスピルオーバーを追加投入(モデル 2)した。結果 189人の有効回答を得た(有効回答率21.4%)。重回帰分析の結果,母親への情緒的支援行動の実施にはポジティブスピルオーバーの高さ,平等主義的性役割態度の高さが有意に関連していた。育児家事行動の実施にはポジティブスピルオーバーの高さ,母親が会社員・公務員であることが有意に関連していた。結論 父親の育児支援行動は,父親の持つ特性や経験などの背景要因よりも,仕事と家庭の両立におけるポジティブスピルオーバーとの関連性が強かった。また,ポジティブスピルオーバーが高いほど母親への情緒的支援行動,育児家事行動を行っていた。父親の育児支援行動を促進するための働きかけや政策を検討するためには,父親が仕事と家庭をどのように両立しているか,それによる影響を本人がどう捉えているかを考慮する必要性が示された。