著者
吾妻 祐哉 中川 暢彦 佐藤 敏 石山 聡治 森 俊明 横井 一樹
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.78, no.3, pp.548-551, 2017 (Released:2017-09-30)
参考文献数
16
被引用文献数
1

症例は72歳,女性.もともと直腸脱を指摘されていたが放置.排便後に温水洗浄便座を使用した.ノズルの先端が直腸内に入ったため立ち上がったところ,いつもと違う感覚があった.その後,経肛門的に小腸の脱出があり当院救急外来を受診した.来院時所見でも経肛門的に小腸の脱出を認めた.脱出した小腸は徒手整復困難であり緊急手術の方針となった.直腸前壁に3cm長の全層性裂傷を認め,外傷性直腸穿孔とそれに伴う経肛門的小腸脱出と考えられた.腹腔内の汚染は軽度.小腸の還納と直腸低位前方切除を施行.術後経過は良好で術後10日目に独歩で退院した.肛門からの小腸脱出は,直腸脱や子宮脱などの既往がある場合が多い.今回はさらに温水洗浄便座のノズルが原因と考えられる症例であり,直腸脱患者の温水洗浄便座使用に対しては注意喚起が必要である.
著者
Takahashi Kazutoshi Yamanaka Shinya
出版者
Elsevier Inc.
雑誌
Cell (ISSN:00928674)
巻号頁・発行日
vol.126, no.4, pp.663-676, 2006-08-25
被引用文献数
20074

This article is related to the Nobel Prize in Physiology or Medicine 2012
著者
向阪 保雄 野村 俊之 内藤 牧男
出版者
一般社団法人 粉体工学会
雑誌
粉体工学会誌 (ISSN:03866157)
巻号頁・発行日
vol.57, no.10, pp.526-529, 2020-10-10 (Released:2020-12-09)
参考文献数
5
被引用文献数
2

Aerosol infection issues by COVID-19 were discussed from the viewpoint of particle technology, and the following conclusions were obtained: 1) Number of virus contained in a 10 μm droplet is very few, only 1 virus per 2000 droplets, whereas 0.5 virus in a 100 μm droplet, if 106 copies/mL of viral load in saliva is assumed. 2) Droplets larger than 100 μm can quickly settle down by gravity. 3) The possibility of aerosol infection is very low unless in unusual environments. 4) Mask is very effective, but the leakage from the space between mask and face has risk in heavy exhalation.
著者
北原 モコットゥナシ
出版者
北海道大学アイヌ・先住民研究センター
雑誌
アイヌ・先住民研究 (ISSN:24361763)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.3-33, 2023-03-01

本稿では、アイヌ民族の就労・学習環境のうち、大学組織を例にマイクロアグレッションの態様と対策を検討する。大学におけるマイクロアグレッションは、教職員から同僚へ、教職員から学生へというケースに加え、学生から学生へ、学生から教職員へというケースも存在する。学生の認識が形成された過程について本稿では詳しく検討していないが、言動の内容としては教職員が発するものと酷似していること、一部に保護者や教職員を含む社会の認識を取り込んだ経験が語られていることから、学生の発話は社会全体の認識を映していることが予想される。大学を構成する者に、マイクロアグレッションのタイプや発生過程、その影響、眼前で発生した際の効果的な介入を啓発することで、予防や事後的な対応が可能になると考えられる。
著者
新井 紀子 影浦 峡 菅原 真悟 松崎 拓也 犬塚 美輪 尾崎 幸謙 登藤 直弥 藤田 彬
出版者
国立情報学研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2016-04-01

科目や分野によらない汎用的な読解力を短時間かつ高い精度で推定するリーディングスキルテストについて引き続き研究開発を続けている。リーディングスキルテストβ版については、そのアイデア等を論文や口頭発表、書籍等で公開した上で、一般社団法人「教育のための科学研究所」に移転し、リーディングスキルテストとして社会実装された。令和元年度末までで(リーディングスキルテストβ版と合わせて)のべ20万人以上が本テストを受検した。これまでの知見を2冊の書籍として出版した。少ないサンプルで問題の難易度を推定する方法や、より少ない問題数で高い精度で汎用的読解力を推定する方法等について、テスト理論の観点から尾崎・登藤らが検討を行った。板橋区および戸田市と連携し、汎用的読解力を児童・生徒に身に着けさせるための授業や学習支援についての検討を行っている。特に板橋区においては、「読み解く力の育成」として、板橋第一中学校に入学する小学校を含めた「学びのエリア」を指定し、その中で、学年進行に応じて、どのような汎用的読解力をどのような授業や支援で身に着けさせるかについての検討を行っている。板橋区と連携して行った研究授業および研究会は計5回である。加えて、検定教科書に関する計量国語学的観点からの分析を進め、小学校と中学校の教科書において記述方法にこれまで発見されていなかった量的なギャップがあることを発見し、査読付き論文および国際会議プロシーディングスで発表した。
著者
石原 真衣
出版者
北海道大学大学院文学研究科北方研究教育センター
雑誌
北方人文研究 (ISSN:1882773X)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.3-21, 2018-03-31

本論では、多くのアイヌ出自の人々が沈黙する現状に注目し、その歴史的経緯と、近現代の<アイヌ>が経験したもう一つの喪失を探ることを目的とする。現代ではアイヌ文化に対する理解や、先住民族の人権等に関する問題意識は多くの場合、市民に共有されているかに見える。しかし、近年の実態調査では、アイヌ民族の人口は減少傾向にある。それは、アイヌ民族の消滅を意味するのではなく、沈黙する人々が増加していることを示している。その背景には、いかなる歴史的要因があるのかを明らかにするために、事例として、「サイレント・アイヌ」である筆者自身の家族などの語りによるファミリーヒストリ―を扱う。発言しやすくなった現代において、なぜ「周縁的なアイヌ」が沈黙しているのか、その背景について分析することによって、このような現状をもうひとつの先住民問題、そして北海道におけるポストコロニアル状況として捉え直すことが可能となる
著者
村山 貢司 馬場 廣太郎 大久保 公裕
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.47-54, 2010-01-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
10
被引用文献数
1

【目的】我が国におけるスギ花粉症の有病率は馬場の2008年の調査により,平均26.5%とされているが各地域の有病率には大きな差が存在する.これまで,中村,Okudaらによって全国のスギ花粉症有病率の調査が行われてきたが,主に抗体陽性率や発症率との観点から分析が行われており,わずかにOkudaによって飛散花粉数と有病率の関係が述べられているにとどまっている.大気汚染との関連では特定地域における調査はあるが全国的な解析はほとんどないのが現状である.本研究では花粉数,大気汚染,気象条件など外部条件が,地域間の有病率にどの程度影響を与えているかについて検討を行った.【方法】馬場の調査による各都道府県のスギ花粉症有病率と各地域の平均花粉数,花粉の飛散期間,2月および3月の湿度,SPM,NOx,Oxなどについて相関を求め,有病率の差に関与する因子を検討した.花粉数についてはスギおよびヒノキ科花粉の合計値とスギ,ヒノキ科に分けた場合についても検討した.相関の高い因子については1998年と2008年の有病率の差について同様の結果になるかを検討した.【結果】有病率と最も相関が高くなったのは花粉の飛散期間で,次いで花粉数,湿度の順であった.1998年と2008年の有病率の増加に関与したと考えられる因子は同様に花粉飛散期間,花粉数,湿度の結果であった.SPMなどの大気汚染に関しては有意な関係は見られなかった.湿度に関しては森らの調査による高湿度におけるダニ増殖の影響とは異なる結果になった.
著者
朴 恩姫
出版者
筑波大学比較・理論文学会
雑誌
文学研究論集 (ISSN:09158944)
巻号頁・発行日
no.20, pp.258(1)-242(17), 2002-03-31

一 はじめに 崇徳院怨霊は、院政期の人々に最も畏怖された怨霊である。崇徳院の死や怨霊化の過程は物語の恰好の素材になり、以後崇徳院怨霊は『保元物語』を始めとして『平家物語』『太平記』などの軍記物語や『松山天狗』『雨月物語』などに登場し、 ...
著者
福家 悠介 岩﨑 朝生 笹塚 諒 山本 佑治
出版者
日本甲殻類学会
雑誌
CANCER (ISSN:09181989)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.63-71, 2021-08-01 (Released:2021-08-26)
参考文献数
54

Neocaridina denticulata (Decapoda: Atyidae) is a freshwater shrimp with a land-locked life-history and is widely distributed in western Japan. The taxonomic confusion of this species, caused by the loss of type specimens, unknown type locality, and genetic and morphological geographical variation, has led to inconveniences in biodiversity conservation and the identification of exotic species that recently invaded Japan. Therefore, it is important to clarify this species’ distributional range and regional genetic and morphological characteristics to solve the problem. Here we report the first record of N. denticulata from Fukue-jima Island in the Goto Islands, Nagasaki Prefecture, Japan. Morphological analyses identified the population as N. denticulata, and mitochondrial DNA-based analyses suggested that the population was distinctly differentiated from the Kyushu populations. This population is essential for inferring the N. denticulata distribution formation and biota formation processes in the Goto Islands. On Fukue-jima Island, N. denti­culata has only been found in one pond; thus, the Fukue-jima population is likely to be in critical condition.
著者
池田 緑
出版者
大妻女子大学
雑誌
社会情報学研究 (ISSN:13417843)
巻号頁・発行日
no.15, pp.39-61[含 英語文要旨], 2006

女子大学の教育目的には、「地位形成機能」と「地位表示機能」が存在するといわれてきた。しかし男女共同参画社会の趨勢のなかで、女子大学には改めて「地位形成機能」の充実が求められている。しかしながら目を転じれば、女子大学では古風な性別役割観が再生産され、家父長制的価値観に学生を回収しようとする企図も、いまだ根強く残っている。そのような企図は、女性へのセクシャルなまなざし、ミソジニー(女性嫌悪)と共に存在している。同様な視点は女子大学を取り巻く環境にも、また女子大に勤務する教員にも共有されている。家父長制的価値観は、女子学生の「成功不安」を喚起し、学生の自己評価を貶め、男性依存への道を準備する。その結果、女子大学においては「地位表示機能」が重視され、そのことが彼女らを学問から遠ざけてしまう。このように伝統的性別役割観が再生産され、学生たちの学問への動機が奪われてゆく過程は、一種の「温室効果」に似ている。そのような状況を打ち破るためには、「温室」を、ジェンダーの政治が露見する「戦場」に作り変える必要がある。そのためには、最初に男性教員を中心に、ジェンダーを克服することが、学生自身に学業の意義を理解させるための第一歩であり、そのような学問が社会的需要とも合致していることを理解することが必要である。そのような認識の共有のためには、男性教員をジェンダーに意識的にするための制度作りが必要である。そしてすべての授業において、ジェンダーの視点から男性中心の学問体系を再構築することが求められており、その結果として行われる教育は「女性支援教育」と呼ばれるにふさわしいものとなるだろう。
著者
沢村 信一
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 = Journal of cookery science of Japan (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.231-237, 2011-06-05
参考文献数
18

現代の抹茶は,微細に粉砕され,滑らかな食感である。このように微細になったのは,茶の栽培技術や粉砕道具の発達を考慮すると近世になってからと考えられる。粉砕の面から抹茶を4期に分けて再現し,その粒度を測定し味の評価を行った。薬研で粉砕した2種類の抹茶は,粒度が粗く,ざらつきを感じた。味は,強い苦味を感じた。2種類の茶臼で粉砕した抹茶は,微細に粉砕され,滑らかな食感であった。味は,まろやかでうま味を感じた。
著者
坪見 博之 齊藤 智 苧阪 満里子 苧阪 直行
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.90, no.3, pp.308-326, 2019 (Released:2019-08-25)
参考文献数
139
被引用文献数
1 4

Working memory (WM) is a capacity-limited cognitive system that strongly relates to higher-order cognitive abilities including fluid intelligence. It has been suggested that WM training can increase memory capacity, which in turn, improves general intellectual abilities. To evaluate these claims, the present review critically re-assessed nine meta-analysis studies, and revealed that the effect of WM training on fluid intelligence (Gf), executive function, and academic performance is relatively small (averaged Hedges’ adjusted g < .20). Moreover, there were several methodological issues regarding the study design (placebo effect, small sample size), analytical approach (inadequate group comparison, lack of correction for multiple comparisons), and theoretical framework (lack of theoretical account of the training mechanisms) in previous WM training studies. We propose a set of recommendations for future training studies that go beyond training the WM ability per se. This includes theoretically possible methods to enhance intellectual abilities by, for example, learning strategies to effectively encode and recall information into long-term memory.
著者
曽宮 正晴 黒田 俊一
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.35-43, 2016-01-25 (Released:2016-04-25)
参考文献数
30
被引用文献数
2

核酸医薬の本格的実用化には、生体内標的へ高効率で送達する安全なナノキャリアの開発が不可欠である。これまでは主にカチオン性キャリアが核酸医薬に使用されているが、電荷に由来する細胞毒性、生体内での動態と安定性に問題があった。一方で、非カチオン性キャリアは生体適合性が高く、生体内での動態や安定性も制御しやすく好ましいが、核酸分子の効率的な内封法の開発が必要であった。本稿では、各種の非カチオン性キャリアによる核酸医薬送達技術について紹介するとともに、最近筆者らが開発した簡便で高効率な非カチオン性リポソームへのsiRNA内封法とそれを用いたsiRNA送達技術を概説する。
著者
樋口 匡貴 中村 菜々子
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.61-69, 2009-08-31 (Released:2017-02-20)
被引用文献数
1

The proper use of condoms is one of the most effective types of protection against HIV. One of the major factors that negatively affect the use of condoms is embarrassment caused by the purchasing of condoms. To clarify the causes and effects of embarrassment on the purchasing of condoms, 522 undergraduate student volunteers were investigated. The results showed that both males and females experienced two types of embarrassment, 'Basic embarrassment' and 'Awkwardness,' when they purchased condoms. Moreover, structural equation modeling revealed that the purchasing of condoms by males was strongly inhibited due to vagueness in the guidelines of condom-purchasing behavior, and the purchasing of condoms by females was strongly inhibited due to inconsistency with self-image and the purchasing of condoms. Implications of this study for HIV prevention, especially the intervention method of promoting condom purchasing, are also discussed.