著者
上野 耕平
出版者
鳥取大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究の目的は,運動部活動への参加を通じて形成されたライフスキルに対する信念を基に,生徒が時間的展望を獲得できるプログラムを開発し実践することであった。その内本年度は,1)これまでの研究期間内に明らかにしてきた成果をまとめ,国内外に広く公表する,2)諸外国におけるスポーツ活動への参加とライフスキルの獲得に関する先行研究の検討する,ことが活動の中心となった。昨年度は,研究初年度に行った調査研究の結果構築された仮説モデルに基づき,実際に運動部活動場面に介入した実践研究を行った。そこで研究成果については,研究初年度からの成果を体系的にまとめた上で,ヨーロッパスポーツ心理学会及び日本スポーツ心理学会で発表を行った。また,日本スポーツ心理学会では,アスリートを対象としたライフスキル研究に関するシンポジウムに指定討論者として参加し,今後の研究の方向性について言及した。さらに,運動部活動を対象とした実践研究の成果については,研究紀要において紹介した。他方,北米を中心に実施されている,スポーツ活動への参加を通じたライフスキル獲得に関する研究成果についてもまとめた。その結果,1)理論的背景を有する介入実践を伴う実証的研究,2)スポーツ経験の実質的な内容を扱う研究,3)ライフスキルの獲得と関係する心理的側面を変数として扱う研究,が求められていることが明らかになった。本年度までの研究により,運動部活動への参加を通じた時間的展望の獲得は,1)実体験や部活動経験の振り返りを通じたライフスキルに対する信念の形成,2)ライフスキルに対する信念に基づいた運動部活動経験の肯定的解釈,を通じて行われることが明らかにされた。今後はライフスキルの獲得も含め,運動部活動の指導現場で実施可能な方法について,より具体的な事例の提供が求められよう。
著者
上野 加代子
出版者
日本犯罪社会学会
雑誌
犯罪社会学研究 (ISSN:0386460X)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.22-37, 2006

リスク社会の統治論で知られるロベール・カステルらのポスト規律秩序の議論は,ひとりひとりの逸脱者の矯正や正常化を目的とする規律型統治から,人口を対象とした保険数理的なリスク統治への移行を説いている.しかし,現実にはリスク社会には,保険数理的なリスク統治だけでなく,規律型統治も認められるという指摘がなされている.本稿では,この両タイプがリスク社会の統治モデルとしてどのように関連しあっているのかを,日本の児童虐待問題からみていく.具体的には,1990年代から児童虐待問題への危機意識が形成されてきたなかで,個人の内面に焦点をあてた,規律型のテクノロジーの現代的形態である心理療法的なアプローチと,保険数理的なリスクアセスメントによる虐待防止の両方が,児童虐待対策のなかで不可欠なものとして位置づけられてきた過程を概観していく.児童虐待防止対策が,心理化と同時に保険数理化していることを,ケリー・ハナ-モファットの「ハイブリッド道徳・保険数理刑罰」から示唆をえて,「心理と保険数理のハイブリッド統治」として考察したい.
著者
岡坂 史紀 上野球
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.10, pp.1-8, 2007-01-30

アプリケーション,サーバー,カーネルの開発に統一のプログラミング環境を提供することによって容易に拡張可能なコンポーネントオペレーティングシステムを構築する手法として,システムコールおよびアップコールをC++言語の純粋仮想関数呼出しに基づいて定義し,それらをオペレーティングシステムのカーネルがリフレクションを使って処理する手法を提案する.また,この手法によって,ファイルサブシステムやTCP/IPプロトコルスタックを特定のオペレーティングシステムに依存しないアプリケーションプログラムとして開発した事例について報告する.We propose an extensible component operating system architecture in which an operating system kernel uses reflection to process C++ pure virtual function based system calls and upcalls to provide a unified programming environment for application, server, and kernel development. We found that we could even develop file subsystems and a TCP/IP protocol stack on an existing operating system based on this architecture.
著者
本同 宏成 上野 聡
出版者
一般社団法人 色材協会
雑誌
色材協会誌 (ISSN:0010180X)
巻号頁・発行日
vol.91, no.2, pp.58-62, 2018-02-20 (Released:2018-03-01)
参考文献数
35

チョコレートは,カカオ脂(ココアバター)にカカオマス・砂糖・乳粉末などの固体粒子が分散した固体コロイドである。チョコレート独特の物性はすべてチョコレート中のココアバターの物性が担っている。ココアバターには,六種類(I ~VI型)の異なる結晶(多形)があらわれ,多形によりテクスチャー(口溶け感や舌触り感)が異なる。すなわち,結晶多形制御が,チョコレートの美味しさと密接に関係している。結晶多形のうち,V型多形が,美味しいチョコレートを作り,したがってV型多形への結晶化法が重要である。この結晶化法は,テンパリングと呼ばれる温度制御法としてよく知られている。ところで,ココアバターは温度変化や時間経過により,結晶状態が変化し,粗大な結晶が出現しチョコレート表面が白くなる,ブルームと呼ばれる劣化現象があらわれる。この白くなる程度を計測し,ブルームの進み具合を調べるのに白色度計が用いられている。
著者
卯田 卓矢 矢ケ﨑 太洋 石坂 愛 上野 李佳子 松井 圭介
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.100193, 2014 (Released:2014-03-31)

初詣や初宮、七五三などの年中行事・人生儀礼を通じた地域の社寺との関わりは、日本人の宗教的行動の一つとして位置づけられる。この行動に関しては、主に宗教社会学において各種の宗教意識調査を用いた経年的分析が行われてきた。ただ、既往の研究では日本人全般を分析対象とする傾向が強く、特定の地域に視点を置いた考察は十分ではない。特に、農村部とは異なり地域の社寺との関係が希薄な居住者が多く存在するニュータウン地区については、現代日本の宗教的行動と地域との関係を検討する上で重要な対象地域であるが、これまで本格的に論じられることはなかった。一方、宗教地理学では、特定の宗教の地域受容過程や信仰圏を主なるテーマとしており、地域住民の宗教行動(参拝行動)に主眼を置いた研究は行われていない。 以上を踏まえ、本研究ではニュータウン地区を対象に、住民の年中行事(初詣)および人生儀礼(初宮、七五三、厄除け)をめぐる参拝行動と地域との関係について検討することを目的とする。対象地域のきぬの里は常総市の南西部に位置し、常総ニュータウンの一部として1990年後半ごろより開発が行われた。
著者
上野 満帆 中間 由紀子
出版者
地域農林経済学会
雑誌
農林業問題研究 (ISSN:03888525)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.205-212, 2019-12-25 (Released:2019-12-27)
参考文献数
51
被引用文献数
1 1

This study examined the policies and development concerning women’s education in occupied Japan (1945–1952), particularly Shimane Prefecture. The Ministry of Education had developed a plan to cultivate voluntary women’s groups. However, because the plan made it possible to use existing groups, it was withdrawn by the Civil Information and Education Section (CIE). CIE insisted that women’s groups should be composed entirely of volunteers. Based on the policies of the Ministry of Education and CIE, Shimane Prefecture encouraged the formation of voluntary women’s groups. However, in fact, it did so by using existing women’s associations to promote women’s education. The reasons for the responses were the connection between the Ministry of Education and Shimane Prefecture, the feudal character of rural society, and the existence of the Chugoku Civil Affairs Region. As women’s education developed in Shimane Prefecture, women gradually began acting with voluntary consciousness.
著者
根岸 悦子 土門 由佳 上田 まなみ 門脇 京子 上野 光一
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.125, no.10, pp.821-827, 2005-10-01 (Released:2005-10-01)
参考文献数
15
被引用文献数
4 3

In recent years, the concept of gender-specific medicine has become generalized in Japan. We need to understand gender differences in the pattern of use prescription drugs for the appropriate use of medications. We therefore investigated gender differences in the use of prescription drugs based on data form nine hospitals in Japan. The data were extracted from their drug ordering systems in the month from March 1 to 31, 2003. We analyzed the data from the viewpoints of sex and age. The frequency of prescriptions for central nervous system drugs and Kampo medicines was higher for women than for men. The same trend was seen for hormones and vitamins. On the other hand, the frequency of prescriptions for cardiovascular drugs for men was higher than that for women. The same trend was found for unclassified metabolic drugs such as arthrifuges. As a result of detailed analysis by age-group, it is suggested that a correlation exists between the age specificity of prescription drugs and gender differences in disease occurrence. This information had not previously been investigated in Japan. Since the results appear useful, we to improve perform more detailed analyses and accumulate evidence to improve drug therapy.
著者
長澤 和也 上野 大輔 何 汝諧
出版者
広島大学大学院生物圏科学研究科
巻号頁・発行日
vol.52, pp.117-143, 2013 (Released:2014-05-12)

1918-2013年に出版された文献に基づき,日本産魚類から記録されたツブムシ科Chondracanthidaeカイアシ類の20属48種,未同定種(4種),未確定種(3種)に関する情報(異名リスト,宿主,寄生部位,地理的分布,文献)を種ごとに整理した。Acanthocanthopsis,Acanthochondria,Bactrochondria,Brachiochondria,Brachiochondrites,Chelonichondria,Chondracanthodes,Cryptochondria,Diocus,Hoia,Jusheyhoea,Markevitichielinus,Praecidochondria,Prochondracanthopsis,Prochondracanthus,Protochondria,Pseudacanthocanthopsis,Pseudochondracanthus,Ttetaloiaの各属に対して,コブツキツブムシ,トゲナシツブムシ, ドウナガツブムシ,ウデツブムシ,クビナガツブムシ,カメガタツブムシ,ツブムシモドキ, ミツオツブムシ,フクヨカツブムシ,ワキバラトゲツブムシ,タマガシラツブムシ,イカリツブムシ,スンヅマリツブムシ,ツツガタツブムシ, ヒメツブムシ, ヒョウタンツブムシ,ダルマツブムシ,ニセツブムシ,ハナビラツブムシの新標準和名を提唱した。また,和名をもたない種に対して新標準和名を提唱した。
著者
上野 健爾 土屋 昭博 河野 俊丈 伊達 悦朗 神保 道夫 柏原 正樹 松本 尭生 三輪 哲二
出版者
京都大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1992

本研究は重点領域研究「無限自由度の可積分系の理論とその応用」の成果取りまとめのために行われた。平成4年度から5年間にわたって行われた本重点領域研究では無限自由度の可積分系の理論を中心に数多くの重要な成果が得られたが、これらの成果を有機的にまとめ、今後の研究へのひとつの指針を与えることが本研究の目指したものである。具体的には2次元格子模型、共形場理論、量子群、3,4次元トポロジー、無限自由度の可積分系と関係した代数幾何学に関してさらに研究を進め、今までに得られた成果をさらに高い立場から見直すことを行った。この結果、Calabi-Yau多様体のミラー対称性や量子コホモロジー群、量子群の表現と古典関数のq類似、3,4次元多様体の位相不変量などに関する研究において新しい知見が得られた。さらにこれらの成果は、非線型幾何学とも呼ぶべき新しい幾何学が背後にあることを強く示唆している。特に深谷のグループはCalabi-Yau多様体のミラー対称性を幾何学的に新しい見地から論じ、今後の研究に重要な一歩を踏み出した。また本年度の研究によって、神保のグループを中心に離散的Painleve方程式が幾何学的な構造を持つことが明瞭にされ、可積分系のもつ幾何学的構造の豊かさが改めて明らかになった。今後は、本重点領域研究の成果に基づき、非線型幾何学の建設へ研究が大きく前進していくことが期待される。
著者
佐藤 周之 上野 和広 長谷川 雄基 珠玖 隆行
出版者
高知大学
雑誌
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
巻号頁・発行日
2019-02-07

本研究課題は,ベトナム社会主義共和国内における農業水利施設のコンクリートを対象とし、品質評価ならびに農業水利施設の機能不全の原因究明を行うとともに,材料学的な見地から最適な施工・維持管理手法の提案を行うものである。本研究の遂行には、ベトナムにおける現地調査が不可欠である。そのため、2019年度中に原位置調査を実施するための発電機や変圧器、その他様々な資・機材の手配や調査計画の立案を進め、2019年度末からの実行へと移るだけの状態としていた。ところが2019年度末からの世界的なコロナ感染拡大の影響を受け、まず2020年3月のベトナムへの渡航を中止した。その際は、ベトナム側の入国禁止措置が主たる理由であった。2020年度初以降、日本での感染拡大も続き、海外への渡航が全面的に困難となっていった。2021年度は、我が国ではようやく11月、12月に感染拡大が収束したため渡航を計画したが、今度はベトナム側が再度のロックダウンとなり、研究協力者であるVinh大学側の研究者にも感染者が出たとの連絡があった。我が国でもオミクロン株の流行が起こり、そのまま年度末を迎えた。そこで、研究分担者ならびに現地カウンターパートの了承を得た上で、当初予定であった研究終了期間を2021年度末から2022年度末へと、再度の研究期間の延長申請を行った。以上の理由から、本年度(2021年度)は具体的な研究成果を上げることができなかった。そこで、2022年度への延長申請を行った。研究活動としては、研究手法と想定する内容の基礎研究を国内で進め、一定の進捗をみることができた。
著者
網干 光雄 大浦 泰 小林 輝雄 円谷 哲男 上野 勝禧 金子 誠
出版者
The Institute of Electrical Engineers of Japan
雑誌
電気学会論文誌D(産業応用部門誌) (ISSN:09136339)
巻号頁・発行日
vol.116, no.4, pp.490-496, 1996-03-20 (Released:2008-12-19)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1

For Projected Shinkansen, it is necessary to develop an economical overhead catenary system allowing stable train operation at high-speed and meeting the transport demands. In order to develop a new overhead catenary system for this purpose, we designed a high tension simple catenary system with CS contact wire (Copper contact wire with Steel-core), and constructed this system on Tohoku Shinkansen line for operation test. During 4 years, we measured contact loss of pantograph, uplift and stress of contact wire, its maintainability including the wear of contact wire, and others. The test results so far obtained prove that its performance is as high as that of high-tension heavy compound catenary system.
著者
細川 悠紀 福本 まりこ 吉田 陽子 岡田 めぐみ 藥師寺 洋介 上野 宏樹 川崎 勲 依藤 亨 三田 育子 中本 収 林下 浩士 細井 雅之
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.113-117, 2014-02-28 (Released:2014-03-11)
参考文献数
7

症例は20歳女性.非妊時BMI 32.0.妊娠28週に腹痛を発症,血清アミラーゼ上昇,高中性脂肪(TG)血症,高血糖,腹部超音波検査で膵腫大を認め,急性膵炎と診断された.治療を開始したが糖尿病性ケトアシドーシス(DKA),DICを併発,第3病日子宮内胎児死亡が確認された.帝王切開にて死児の娩出後,高TG血症,DKAに対しヘパリン,インスリン持続投与に加え血漿交換を施行,急性膵炎に対する治療を行い臨床所見の改善を得た.妊娠中はリポ蛋白リパーゼ(LPL)活性が低下するため,正常妊娠においてもTGは高値となるが,特に糖代謝異常合併妊娠においてはTGの上昇が顕著である.本症例は膵炎発症時,すでにHbA1cが高値(NGSP値 9.8 %)であり,未診断の糖代謝異常を基礎として高TG血症となり,急性膵炎に至ったと考えられた.妊娠初期に糖代謝異常を早期診断し適切な管理を行うことで胎児死亡を防ぐことができた可能性がある.
著者
横山 咲 由利 かほる 森田 祥司 上野 真菜 河端 美玖 雨宮 あや乃 中村 進一 服部 浩之 頼 泰樹
出版者
根研究学会
雑誌
根の研究 (ISSN:09192182)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.35-41, 2018 (Released:2018-06-26)
参考文献数
11

作物は無機態窒素だけではなく遊離アミノ酸を吸収し,窒素源として利用している可能性がある.しかし,植物の窒素吸収における根のアミノ酸吸収能の寄与は明らかにされていない.我々はまず土壌のアミノ酸動態を明らかにするために,アミノ酸混合液および3種類の有機質肥料を施用し,アミノ酸濃度の変化を経時的に追跡した.アミノ酸混合液の添加ではいずれのアミノ酸も12時間以内に10%以下に分解された.また,有機質肥料の添加では,添加直後のアミノ酸の濃度は最も高く,3日程度で大幅に低下したが,30日目まで高い濃度が維持された.アミノ酸組成は,有機質肥料添加直後には添加した有機物ごとに異なっていたが,時間の経過とともにいずれの有機物の添加でもGln,Arg,Lys,Thr,Glu,Asn,Alaが高い割合で検出されるようになった.これらは土壌微生物の細胞壁の主な構成アミノ酸であり,微生物バイオマスの代謝回転によって,比較的早期 (3日以降) から土壌に供給されることが明らかとなった.有機質肥料添加土壌のアミノ酸は2時間以内の半減期で分解されており,土壌のアミノ酸存在量の約15~20倍のアミノ酸が1日に供給されることが示唆された.植物のアミノ酸吸収能は高いことがすでに示されており,本研究の有機質肥料添加による土壌のアミノ酸濃度・供給量は植物根が利用可能なレベルであると考えられた.
著者
上野 光一
出版者
一般社団法人 日本臨床薬理学会
雑誌
臨床薬理 (ISSN:03881601)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.165-169, 2006-05-31 (Released:2010-06-28)
参考文献数
12