- 著者
-
中川 公恵
- 出版者
- 公益社団法人 日本薬学会
- 雑誌
- ファルマシア (ISSN:00148601)
- 巻号頁・発行日
- vol.51, no.3, pp.220-224, 2015 (Released:2018-08-26)
- 参考文献数
- 24
薬学の分野においては,ビタミンKが血液凝固に必須の役割を担うことは周知の事実であり,常にワルファリンとの相互作用を考慮しなければならないことはよく知られている.また,骨粗しょう症の予防や治療においても重要な栄養素であり,ビタミンK2(メナキノン-4(menaquinone-4:MK-4))は,骨粗しょう症治療薬として臨床応用されている.ビタミンKは栄養素として摂取しないといけないもの,摂取不足により欠乏症になるビタミンである.しかし,ただ単に摂取したものが,そのまま生体内で利用されているだけではない.MK-4が,我々の体内で作られることを,どれだけの人が認知しているであろうか? 日常的に摂取するビタミンKの大部分は,植物由来のビタミンK1(フィロキノン(phylloquinone:PK))であり,これが生体内でMK-4に代謝変換され,PKにはない様々な生理作用を発揮しているのである.最近我々は,ビタミンK同族体が体内でMK-4に変換されること,その変換を担う酵素を明らかにすることに成功し,さらにMK-4を合成する酵素が個体発生に必須であることを見いだした.本稿では,この研究成果を含めて,生体内でMK-4が変換生成する機構とその意義について概説する.