著者
中村 智
出版者
九州大学
雑誌
Comparatio (ISSN:13474286)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.119-130, 2001

This paper discusses why Shiga Naoya chose to write about Korea then a Japanese colony, in his novel "A dark night's passing". The question is not what part Korea played in the novel, but why Shiga was interested in Korea. A noteworth point is the relationship between Shiga and his friend, Yanagi Muneyohi. Yanagi was a scholar of Korean ceramics. In the 1930s, he criticized, through critical essays, in a roundabout way, the then Japanese Government for not considering and working for Korea sufficiently. One of the reasons Shiga wrote about Korea was that he shared Yanagi's opinion and wished to assist Yanagi's work. However, a more significant reason was that Shiga wanted to get readers of his own work to face the situation in Korea. He chose a different way from Yanagi's. He faced that problem not as an activist but as a novelist.
著者
岡 典子 中村 満紀男 米田 宏樹 佐々木 順二
出版者
東京学芸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、インクルーシブ教育についてその本質と課題を明らかにするため、インクルーシブ教育がもっとも盛んに議論されており、しかし同時に、インクルーシブ教育に関わる問題をもっとも深刻に抱えるアメリカ合衆国を対象として、インクルーシブ教育の理念的・制度的・方法論的出発点としての特殊学級の成立と展開の過程ならびにその教育的・社会的意味について検討した。特殊学級は、今日、インクルーシブ教育推進者によって、その対極に位置する特殊教育の象徴的存在として、特殊教育批判の重要な一角とみなされてきている。しかし、彼らの批判に反して、実は特殊学級には開設初期から既に、今日のインクルーシブ教育に連なる理念やそれを達成する方法あるいは実践が含まれていたのである。たとえば、インクルーシブ教育をめぐる現代の議論では、個別的ニーズへの着目と通常教育との一体化という理念のみが先行しているように思われるが、このような認識と議論は、特殊学級においても初期の段階から重要な課題として存在してきたし、障害種によって方法と程度は異なっていたが、その対応策も考案されてきた。アメリカの特殊学級は、すべての都市において、またすべての障害種について同一の様相を示していたわけではない。たとえば統合と分離(separation)あるいは隔離(segregation)をめぐる議論とその背景、特殊学級に対する障害当事者の見解、特殊学級の発展や挫折を生じさせた諸条件、教育内容や方法の開発・改善、スティグマなどは、いずれも時期によって、あるいは地域や障害種によって異なる実相をもつ。したがって、インクルーシブ推進者が主張するような特殊学級がすべて排除的・排他的であったという批判は正鵠を得たものではないし、むしろ特殊学級において何が達成され、何が実現できなかったのかを詳細に解明することで、インクルーシブ教育の実現に必要な課題と手段が具体化できるのである。
著者
石黒 浩 中村 泰 岩井 儀雄
出版者
大阪大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2009

22年度では,三者間の非言語コミュニケーションを用いた親和的な情報メディアの創出を目的として,病院の診察場面に陪席するアンドロイドを用いた実証実験に取組むと共に,ヒューマノイドロボットを用いたロボット演劇に取組み,アンケートを実施することで演出家による演技指導の中に含まれるロボットの自然な振る舞いについてのルールの抽出に取組んだ.さらに,小型で単純な構造を持つロボットを利用することで,人間がもつ対話に対する印象に与える影響を調査することで三者間でのコミュニケーションの仕組みの理解に取組んだ.これらの技術を支える動作認識機能を利用した動作生成メカニズムとして,視覚や聴覚に基づいた対話への陪席者として自然な自動動作生成法の開発も行った.病院での実証実験では,医師の後方に陪席アンドロイドを設置し,その振る舞いが患者の持つ診察に対する印象にどのような影響を与えるかを調査し,陪席者としてのアンドロイドが患者の笑顔や頷きに合わせてそれらの表情を表出することで,患者の診察に対する印象が向上することを明らかにした.この結果は,以前行った実験と整合性を取ることが可能なものである.また,以前の実験において課題となっていたアンケートの天井効果などの問題も克服した結果となっており,この知見に対する信頼性を向上することができた.ロボット演劇においては,動作生成システムに改良を加え,それを用いて40分の長編演劇である"森の奥"の上映を行った.アンケートにおいては特に共感性に着目した解析を行っており,人間の役者の共感に関わる評価と同様に,自身の共感性の高低によってロボットの共感に関する評価が分かれることが明らかになった.
著者
大西 仁 山崎 聡 望月 要 中村 直人 結城 皖曠
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MoMuC, モバイルマルチメディア通信 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.291, pp.7-10, 2003-08-28

マルチメディア通信における映像・音声の伝送遅延が与える心理的影響を客観的定量的に測定する方法を提案する。提案する手法では、潜在学習の一種である人工文法の学習を課題とし、学習時のフィードバック遅延を独立変数、被験者の学習パフォーマンスを指標として、遅延の与える心理的影響を測定する。実験では、人工文法学習において、フィードバックに300msの遅延がある条件の被験者のパフォーマンスを遅延がない条件の被験者のパフォーマンスと比較した。実験結果は、フィードバックに300msの遅延が入ると、被験者の学習パフォーマンスを低下することを示した。この結果は、被験者が気づかない程度の微小な伝送遅延がユーザに情動的影響だけでなく、認知的な影響を与えていることを示唆している。
著者
中村 義一
出版者
宝塚造形芸術大学
雑誌
Artes : bulletin of Takarazuka University of Art and Design : 宝塚造形芸術大学紀要 (ISSN:09147543)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.67-83, 1994-03-31

〈大いなる賭〉は,長い間シュルレアリスムの単なる亜流の小グループのように見なされるか,あるいはまったく無視されてきた。近年になって,アンドレ・ブルトン派シュルレアリスムに対するその独自の批判的立場が,西欧同様に日本でも見直されはじめている。しかし,〈大いなる賭〉の文学グループの創設に参加したただ一人のチェコ出身の画家ジョセフ・シマについては,彼の画業の全体はもちろん,<大いなる賭>時代の絵画も,日本では知られていないままである。このすぐれた画家の名と,彼の魅力的な数多くの作品が,いまだにわが国に知られていないのは不思議である。それは,日本の近代美術の成長過程における偏頗な西欧主義の特性に起因すると思われる。この試論は,このような観点から,日本の近代の美術の,特に30年代のシュルレアリスム絵画の,西欧主義的な典型的性格,すなわち非地方主義的な首都志向の矛盾した教条主義の問題を論じる。
著者
池上 良正 中村 生雄 井上 治代 岡田 真美子 佐藤 弘夫 兵藤 裕己 松尾 剛次 池上 良正 中村 生雄
出版者
駒澤大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

「供養の文化」を日本の民俗宗教の重要な特徴のひとつとして位置づけることによって、古代・中世から近現代にいたる、その歴史的変遷の一端を解明することができた。さらに、フィールドワークを通して、中国・韓国を含めた現代の東アジア地域における「供養の文化」の活性化や変貌の実態を明らかにした。
著者
中村 一平 奥田 昌之 鹿毛 治子 國次 一郎 杉山 真一 藤井 昭宏 松原 麻子 丹 信介 芳原 達也
出版者
山口大学医学会
雑誌
山口医学 (ISSN:05131731)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.279-289, 2004-12-31
被引用文献数
1 1

【目的】現在まで高齢者の介護予防や体力増進に関する多くの研究が行われているが,コントロール群との比較を行っているものは数少ない.今回,運動介入の効果を検証するため,同一町内に居住し,同じ介護老人福祉施設で同じサービスを受けている高齢者を居住地区と通所曜日により2群に分け,対照群をおき非介入期間を設け運動介入時期をずらしてクロスオーバー研究を行った.【方法】ある介護老人福祉施設の「生きがい活動支援通所事業」の参加者に,研究調査に関して文書で説明を行い,書面で同意を得た女性25名(80.3±3.4歳)を対象とした.2003年6月〜2004年1月に,介入先行群10名に3ヵ月間に5回の運動介入を行い,3ヵ月後に介入する群を入替え,介入後行群15名に同様の運動介入を行った.また,介入期間中はホームプログラムを促した.運動は特別な道具が要らず簡単なものとし,ウォーミングアップ5分,ストレッチング15分,筋力増強15分,クールダウン5分の計40分間で,デイサービスの時間に行った.測定項目は,握力,背筋力,10m歩行速度・歩数,40・30・20cm台からの立ち上がり,40cm台昇降,開眼・閉眼片足立ち,タンデム歩行安定性,Danielsらの徒手筋力検査法,老研式活動能力指標とした.【結果と結論】クロスオーバー研究でコントロールとなる非介入期間と比べて介入期間のトレーニング実施により背筋力(p=0.032)が増強した.介入期間の前後では背筋力の他に,股関節屈曲力,膝関節屈曲力・伸展力,足関節底屈力が増加したが,これらも非介入期間と比較すると有意差はなかった.クロスオーバー研究の制限はあるが,地域高齢者のデイサービス利用者で平均80歳の高年齢の場合には,月2回の運動指導のみで自宅でのトレーニングを促しても身体能力の向上という効果はでにくいと考えられる.
著者
吉田 裕 糟谷 憲一 池 享 渡辺 治 加藤 哲郎 李 成市 中村 政則
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

1.平成14〜17年度の各年度に、分担研究者がそれぞれの分担研究を推進するために、韓国及び日本各地において史料調査・収集を行った。2.分担研究者が集う共同研究会を18回開催し、日本史、朝鮮史、日朝関係史に関する報告・討論を行った。また研究の進め方、総括のために分担研究者による会議を7回行った。3.共同研究の総括と、韓国の日本史・朝鮮史研究者(ソウル大学校等に所属している)との研究交流のために、2002年8月23日〜25日、2003年8月22日〜24日、2004年8月20日〜22日、2005年8月26日〜28日に、第5回〜第8回の日韓歴史共同研究プロジェクトシンポジウム(2002年・2004年は一橋大学において、2003年・2005年はソウル大学校において)開催した。日韓両国における歴史研究の現状と課題に関して相互に認識を深めるため、日本史、朝鮮史、日朝関係史上の重要な論点を逐次取り上げて、率直に議論を行っていくという方針により、毎回の準備と報告・討論が行われた。報告数は第5回〜第8回を通じて20本であり、韓国側は12本、日本側は8本である。4.シンポジウムを通じて、日韓両国の研究者のあいだで、「東アジア世界」という視座を設定して、日本社会と朝鮮社会を比較するという方法が有効であることを確認しあうことができた。今後も比較研究をさらに推進・深化させるために、平成18年度に向けて「日本・朝鮮間の相互認識に関する歴史的研究」という共同研究を準備することとなった。5.糟谷憲一が編集担当となり、第5回〜第8回シンポジウムの報告書を作成し印刷した。
著者
宮永 健史 石塚 亙 藤田 利光 中村 文子
出版者
和歌山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

1、実験工作キャラバン隊ボランティア団体「実験工作キャラバン隊」を組織し、地域の小中学校、教育委員会、子ども会等の要請に応じて出かけていき、実験工作教室を開いた。平成17〜18年度中の開催回数は51回、参加学生は延べ352人、教職員は延べ87人で、参加した児童生徒は1849人であった。この児童生徒数には、科学まつりや大学祭等、大きな催しの中の1つの出し物として参加した場合に指導した児童生徒数を含めていないので、学生達が実際に指導した児童生徒数は更に2000人程度増加すると思われる。活動の様子はホームページに公開した。また、レーザープリンタを使って実験工作の説明資料を作り参加児童生徒に配布した。参加した児童生徒の95%が「大変おもしろかった」または「おもしろかった」と答えており、子ども達に科学に親しむ場を提供する上で大きな成果があった。参加学生達も自分たちの「子どもを指導する力」、「子ども達との接し方」が向上したと感じており、教員養成の面でも大きな成果があった。また、いくつかの実験テーマを選び、その学問的基礎、実験方法、実験装置の作成方法、授業展開例、等をまとめたパンフレットを作り学生教育の充実を図った。2、サイエンス・ものづくり指導実習実験工作キャラバン隊の活動を、正規の教員養成カリキュラムに取り入れるため、平成17年度から「教科または教職」科目の1つとして「サイエンス・ものづくり指導実習」(通年集中、2単位)を開設している。平成17、18年度に携わった教員9人、受講生は合計27人であった。学生達は4月から7月の問に「実験工作キャラバン隊」の出向に参加し、実験工作教室を体験した。そして、11月から12月の間に小学校、中学校に出かけていき、各人5時間以上の理科実験やものづくりに関する授業を行った。学生達は、授業する力、子ども達と接する力、実験ものづくりの授業を企画する力等が向上したと評価している。最後に協力校の教諭とのシンポジウムを開き、この授業が学生の実践的指導力を付ける上で大変有効であることが分かった。
著者
砂田 徹也 関 直臣 中田 光貴 香嶋 俊裕 近藤 正章 天野 英晴 宇佐美 公良 中村 宏 並木 美太郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.35, pp.163-170, 2008-04-24
被引用文献数
6

本報告は,省電力化技術であるパワーゲーティングを細粒度に施した MIPS R3000 ベースの CPU チップ Geyser-0 に対して,その上で動作する OS の試作およびその OS を用いてシミュレーションによる電力評価を行う.細粒度は,ALU,SHIFT,MULT, DIV および CP0 のそれぞれを PG の対象とすることを意味する.試作した OS は,例外・割り込み管理機能,システムコール, タスク管理機能を備えており,タイマ割込みによるマルチタスクを実現する.試作 OS によって 4 種類のベンチマークプログラムをマルチタスクで動作させた際の電力評価を行った結果,総電力で平均約 50%,リーク電力で平均約 72%の消費電力削減を実現した.This paper describes prototype of OS for processor Geyser-0 based on MIPS R3000 with a fine grain power gating technique to reduce power consumption and evaluation of power by the simulations when running the OS. The processor has power gating units such as ALU, SHIFT, MULT, DIV, and CP0. The prototype OS has the exception management, the system call, and the task management, and its OS achieves the multitask by the timer interruption. As the results of evaluation running four benchmark program on the OS and the processor, 50% working power and 72% leakage power are reduced.

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著者
中村芳松 編
出版者
中村芳松
巻号頁・発行日
1895