著者
向山 和孝 花木 宏修 中村 裕紀 境田 彰芳 岡田 憲司 伊藤 勉 菅田 淳 酒井 達雄
出版者
公益社団法人 日本材料学会
雑誌
材料 (ISSN:05145163)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.136-142, 2018-02-15 (Released:2018-02-20)
参考文献数
15
被引用文献数
3 2

A statistical estimation method of S-N curve for aluminum alloys using their static mechanical properties was proposed. Firstly, S-N data series for aluminum alloys were extracted from "Database on Fatigue Strength of Metallic Materials" published by the Society of Materials Science, Japan (JSMS) and semi-logarithmic curve model was applied as mathematical regression model based on the JSMS standard, "Standard Evaluation Method of Fatigue Reliability for Metallic Materials -Standard Regression Method of S-N Curves-". Secondly, correlations between each pair of regression parameters and static mechanical properties were investigated. Using these correlations, S-N curve for aluminum alloys could be predicted easily from the static mechanical properties. Moreover, using (1) the distribution of regression parameter D and (2) the distribution of fatigue strength at 107 cycles, the percent points for the predicted S-N curve was evaluated. As result, it was confirmed that over 70% of S-N data series of wrought aluminum alloys fall within the range of estimated interval between -3s and +3s, where s means a standard deviation for the parameter of D.
著者
佐渡 紀克 中村 保清 北 英夫
出版者
一般社団法人 日本結核・非結核性抗酸菌症学会
雑誌
結核 (ISSN:00229776)
巻号頁・発行日
vol.89, no.12, pp.821-824, 2014 (Released:2016-09-16)
参考文献数
11

〔目的〕肺非結核性抗酸菌(NTM)症による胸水貯留例の報告は少なく,またその頻度に対しての報告も少ない。そこで当院で経験した症例を報告する。〔対象〕2009年1月から2014年1月までに当院を受診した肺NTM症患者116人について検討した。〔結果〕NTMによる胸膜炎と診断した症例は7例,6.0%であった。7例中6例がMAC症で1例はM.abscessusであった。既往歴としては,潰瘍性大腸炎,ステロイド内服加療を受けている関節リウマチ,網膜色素変性症の患者がそれぞれ1例ずつみられた。胸水検査は7例で施行された。胸水の抗酸菌塗抹陽性例は認めなかったが,4例で抗酸菌培養陽性であり,その全例がMACであった。また7例中4例で胸水はリンパ球優位であった。胸水中ADA値の平均は86U/mlで,7例中5例でADAが50U/ml以上であった。5例においては気胸の合併を認めていた。胸水貯留を認めた7例中5例でNTMに対する抗菌薬による治療が行われ,その全例で胸水の減少,あるいは消失が認められた。〔結論〕NTM胸膜炎の実態を明らかにするため,さらなる症例の蓄積が必要である。
著者
澤井 恭兵 菅野 のぞみ 田口 裕大 柳内 充 櫻井 圭祐 深澤 雄一郎 中村 茂夫 高橋 俊司
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.158-162, 2017-03-25 (Released:2017-03-29)
参考文献数
4

培養継続中であった血液培養にグラム染色を行い,菌の染色性と形態から早期に侵襲性肺炎球菌感染症(invasive pneumococcal disease; IPD)を診断することができた症例を経験した。症例は60歳代男性。全身に紫斑が出現し,急激に全身状態が悪化した。培養継続中であった血液培養にグラム染色を行ったところグラム陽性双球菌が認められ,尿中肺炎球菌抗原検査と併せてIPDが早期に診断できた。しかし,全身状態が改善することなく永眠された。本症例から培養継続中である血液培養にグラム染色を行うことで,血液培養自動分析装置で陽性を示すよりも早期に原因菌を推測できることが示唆された。実施には課題もあるが,検討に値する方法であり,この方法を臨床に周知・啓蒙したい。
著者
中村 好志 江崎 秀男
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.108, no.1, pp.16-24, 2013 (Released:2017-12-21)
参考文献数
25

発酵食品における機能性成分の研究は幅広く行われているが,発酵茶についての機能性成分の研究は,これまであまり知られていない。本解説では,お茶の発酵食品として,わが国では馴染みが少ない中国の黒茶について製法,種類,微生物,抗酸化性,機能性成分の面から研究成果をわかりやすく,興味深く紹介していただいた。また,大豆発酵食品の抗酸化能について,測定方法と機能性成分であるイソフラボンの変換の関連をわかりやすく解説していただいた。本解説の著者は,発酵による食品の機能性成分の生成には,まだまだ知られていない部分が多くあることを述べている。
著者
上田 真莉子 樫谷 悠也 稲山 由布子 伊藤 潤 清家 雅子 中村 幸子 日野 泰久 大原 毅 飯田 啓二
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.63-67, 2020-02-29 (Released:2020-02-29)
参考文献数
12

59歳男性.慢性膵炎,膵性糖尿病を指摘されインスリン頻回注射療法で加療されていた.意識障害で救急搬送となり,血糖値29 mg/dLの著明な低血糖が判明した.ブドウ糖の静脈投与により低血糖は改善したが意識障害は遷延し,第39日目に誤嚥性肺炎で永眠された.低血糖脳症は治療が遅れると不可逆的な意識障害や高次機能障害,麻痺などの神経学的後遺症を残し,死に至ることもある緊急症であり,注意する必要がある.
著者
中村 征樹
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.73, no.11, pp.476-479, 2023-11-01 (Released:2023-11-01)

市民が科学研究の一翼を担うシチズンサイエンスが,近年,科学研究の重要な潮流として台頭してきた。本稿ではシチズンサイエンスの概要を確認したうえで,多様なシチズンサイエンスの取り組みを理解するため,シチズンサイエンスを類型化しようとする取り組みを紹介する。そこでは,市民の関与のレベルや,プロジェクトに参加する市民と科学者の関係性といった観点から各種のシチズンサイエンスが位置づけられる。それを踏まえたうえで,本稿ではシチズンサイエンスの意義について検討する。
著者
中村 友美 鈴木 秀和 山川 信之 市川 清士
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2022年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.168, 2022 (Released:2022-03-28)

1.はじめに 地下水は,上水道事業が広く普及された今日においても重要な水資源として多くの地域で利用されている。一方,人為的影響を伴った地下水は,沿岸に発達する生態系への影響などが問題視されている。琉球列島南部の八重山諸島東端に位置する石垣島白保地区の前面海域には,サンゴ礁をはじめとする貴重な自然環境が残っている。しかし,白保地区の地下水に関する詳しい報告は少ない。このような状況を踏まえ,本研究では,更新世の琉球石灰岩上に位置する白保地区を対象に水位変化および水質調査を行い,白保地区における現時点における地下水の諸特性を明らかにすることを目的とする。2.調査方法 水位観測は,汀線から内陸部にかけて調査測線を設定し,3地点にロガー(自記記録計)を設置した(図1)。データ取得期間は,2020年9月3日から約1年である。No.2は地面標高が確約していないため,データ解析にはNo.1およびNo.3を使用した。潮位データは,気象庁が観測および公開している1時間間隔実測潮位を使用した。また,測水調査は, 2020年9月10日~12日及び2021年9月6日に実施した。調査地点は,民家の井戸を対象に,2020年に14地点,2021年に10地点調査した。井戸の状況をふまえて地点数は異なっている。現地では気温,水温,EC(電気伝導度),地下水位を測定した。採水した試料は,駒澤大学地理学科の実験室で主要溶存成分の分析を行った。 3.結果および考察 1)地下水位の観測結果 今回得られた地下水位の観測結果では,潮汐変動の影響を顕著に受けていることが認められた(図2)。無降雨時の2020年9月17日~19日の範囲をみると,各地点とも潮位のピーク後に水位のピークを迎えていることが分かる。その時差は,無降雨時の満潮時にそれぞれNo.1およびNo.3で,約1時間,約2時間であり,干潮時は約2時間,約3時間であった。汀線からの距離によって時差が異なり,それぞれ満潮時と比べ干潮時の時差が大きいことが分かる。また,9月18日の水位の振幅は,潮位の振幅が1.84mの時にNo.1で0.83m,No.3で0.53mと内陸へいくほど小さくなる。2)水質調査結果 水質組成は,全体的にNa-Cl(アルカリ非炭酸塩)型を示した(図1)。海岸に近くになるほど,Na+,K+,Mg2+,Cl-,SO42-濃度が高くなり,内陸部になるとNa-Cl型ではあるが,全体に占めるCa2+とHCO3-濃度が沿岸付近よりも高くなり,海水の影響度が低くなることが判明した。しかし,汀線と平行に海水の影響度は低くならず,調査地点の北側と南側で異なる傾向を示した。調査地点の北側では,陸域の地下水中に多く含まれるCa2+・HCO3-・NO3-,南側では,Na+・K+・Mg2+・Cl-・SO42-が相対的により多く含まれていたが,海水とその影響がない地下水(石垣島鍾乳洞)のCl-濃度を用いた二成分混合モデルにより各井戸への海水の混合率を求めたところ,2020年の調査では約1~8%,2021年の調査では約3~22%であった。汀線からほぼ同距離であるが,北側と南側では,約2倍の差があることが分かった。潮汐による溶存成分量の変化は,大きく表れなかったものの,微量な変化は認められた。4.まとめ 本研究では,琉球列島南部の八重山諸島東端に位置する石垣島白保地区における地下水の水位変化及び水質調査を行った。その結果,地下水位は,潮位と位相差が生じているものの,潮汐と対応して周期的な変動をしていることが明らかとなった。水質調査の結果も兼ねて,井戸への直接的な塩水遡上はないものの,海水および地下水が地下内部で連続していると判断できる。
著者
日方 希保 諸橋 菜々穂 樽 舞帆 鈴木 雄祐 中村 智昭 竹田 正裕 桑山 岳人 白砂 孔明
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.127-134, 2021-12-24 (Released:2022-02-28)
参考文献数
13

ミナミコアリクイ(Tamandua tetradactyla)は異節上目有毛目アリクイ科コアリクイ属に分類される哺乳類の一種である。コアリクイの計画的繁殖には,基礎的な情報の蓄積による繁殖生理の解明が必要である。これまでミナミコアリクイの妊娠期間中の血中ホルモン変動に関しては,1個体で1回分の妊娠期間についての報告がされているが,同一個体で複数回の妊娠期間中のホルモン変動に関する報告は存在しない。本研究では,同一雌個体のミナミコアリクイに対して長期間における経時的な採血(約1回/週)を実施し,同一雌雄ペアで合計6回の妊娠期間における血漿中プロジェステロン(P4)またはエストラジオール-17β(E2)濃度の測定を実施した。全6回の妊娠期間中のP4濃度測定の結果から,妊娠期間は156.8±1.7日(152~164日)と推定された。各時期のP4濃度は,妊娠前では0.6±0.1 ng/ml,妊娠初期(妊娠開始~出産100日以上前)では13.2±1.8 ng/ml,妊娠中期(出産50~100日前)では28.1±4.3 ng/ml,妊娠後期(出産日~出産50日前)では48.2±11.8 ng/mlであった。出産後のP4濃度は0.4±0.1 ng/mlと出産前から急激に低下した。血漿中E2濃度は妊娠初期から出産日に向けて徐々に増加した。また,妊娠期間前後で6回の発情周期様の変動がみられ,P4濃度動態から発情周期は45.5±2.4日(37~52日)と推定された。以上から,ミナミコアリクイの同一ペアによる複数回の妊娠中における血漿中性ステロイドホルモン動態を明らかにした。また,妊娠初期でP4濃度上昇が継続的なE2濃度上昇よりも先行して観察されたことから,P4濃度の連続的な上昇を検出することによって早期の妊娠判定が可能であることが示唆された。
著者
香月 祥 田中 宏和 中村 啓信 岸本 泰士郎 狩野 芳伸
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第37回 (2023) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.4Xin150, 2023 (Released:2023-07-10)

我々はこれまで、診断や疾患評価、音声とその文字起こしや音声・言語学的アノテーションが付与されたUNDERPIN大規模精神疾患会話コーパスを構築してきた。このコーパスを用いて、うつ病患者の分類実験を行った。分類の際は、健常者・軽症患者・中等度以上の患者・うつ病と診断されたことがあるがテストの評価値で症状のない患者の4分類を設定し、4分類のすべてのペア6つそれぞれで2値分類を行った。結果、軽症・中等度以上の重症度に応じた分類ができること、また現在の症状にかかわらずうつ病になった性質で分類可能であることを確認した。分類に貢献した特徴量の分析では、重症度ごとに異なる特徴量や共通している特徴量を確認できた。今後は、新しい特徴量を追加しての学習や、特徴のもととなった人手のアノテーションを自動付与するシステムを構築したい。
著者
柳澤 幸夫 松尾 善美 春藤 久人 直江 貢 中村 武司 堀内 宣昭
出版者
一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
雑誌
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌 (ISSN:13438441)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.75-80, 2012-04-30 (Released:2020-05-28)
参考文献数
20

近年,誤嚥性肺炎を予防するトレーニングとして,呼気筋トレーニング(expiratory muscle training:以下,EMT)が注目されている.EMT の効果としては,呼吸筋力や咳嗽能力の改善,ならびに嚥下機能への影響を示唆する報告が散見される.しかし,これらに関する報告はまだ少ない.今回われわれは,在宅療養中のパーキンソン病患者に対して,EMT を実施し,呼吸機能,咳嗽能力,呼吸筋力に加えて,口腔筋機能や質問紙を用いて摂食嚥下機能に関連する周辺症状に与える効果を明らかにすることを目的とした症例研究を実施した. 症例は64 歳の男性.診断名はパーキンソン病である.現在,病院神経内科に通院し,介護保険サービスを利用し,在宅療養中である.Hoehn & Yahr 分類はstage Ⅲで,Barthel index は65 点である.研究計画はA-B-A デザインとした.EMT はThreshold IMT(RESPIRONICS 社製)を用いて,トレーニング期間を4 週間とした.EMT の負荷設定は最大呼気筋力の30% とし,頻度は1 日15 分間2 回とした.評価項目は,呼吸機能,咳嗽能力,呼吸筋力の測定である.また,口腔筋機能,摂食嚥下機能についての評価も実施した. その結果,EMT 後に,呼吸機能では最大呼気流速と咳嗽時最大呼気流速が増加した.呼吸筋力では,最大呼気筋力,最大吸気筋力が増加した.口腔筋機能では,RSST はEMT 前後とも正常であった. 口唇閉鎖力は,平均4.82 N から5.61 N に上昇した.摂食嚥下質問紙では,体重減少,嚥下困難感,むせ,口腔外流出の各項目に変化が認められた. 本研究の結果,EMT は単に呼吸筋力増強のみではなく,咳嗽能力を向上させ,摂食嚥下機能また口腔筋機能にも影響を与え,患者の致死的原因となる誤嚥性肺炎の予防につながる可能性が示唆された.今後,データを蓄積し,EMT が嚥下機能へ及ぼす影響について,さらなる検討をする必要があると考えられる.
著者
杉浦 伸也 藤井 英太郎 藤田 聡 中村 真潮 伊藤 正明
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.45, no.SUPPL.3, pp.S3_86-S3_91, 2013 (Released:2015-01-09)
参考文献数
9

症例は36歳, 男性. 動悸を主訴に近医を受診した. 12誘導心電図にデルタ波はなく, ホルター心電図で心拍数150/分のlong RP'頻拍を認めた. 心臓電気生理学的検査で再現性をもって周期454msの頻拍が誘発された. 頻拍中の心房最早期興奮部位は左側壁で, 頻拍中にヒス束が不応期の時相に右室から加えた期外刺激にて早期心房補足現象が認められた. 頻拍中の室房伝導時間は220msと長く, 頻拍中の右室頻回刺激 (周期400ms) にて, 室房伝導にWenckebach blockを認めた. 以上の所見から本頻拍は左側壁に存在するslow Kent束を逆行性伝導とする房室回帰性頻拍と診断した. 同部位に対する通電にて副伝導路の離断に成功した. Slow Kentを介した房室回帰性頻拍の 1例を経験したため報告する.
著者
田中 大祐 加賀谷 重浩 中村 省吾 酒徳 昭宏
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

富山県の立山浄土山山頂付近と富山大学屋上の2地点で採取した大気試料中の細菌群集と真核生物群集の特徴をPCR-DGGE法で比較した。その結果,立山と富山大学屋上の2地点の細菌群集構造は大きく異なっていると考えられたが,真核生物群集構造は類似している可能性が示された。また,大気から単離した赤色色素産生細菌3株は,紫外線(UV-B,UV-C),乾燥,過酸化水素などの環境ストレスに対して耐性を示し,大気環境中での生存に適した性質を持っていると考えられた。
著者
神野 慎治 中村 吉孝 菅野 貴浩 金子 哲夫 木ノ内 俊
出版者
日本酪農科学会
雑誌
ミルクサイエンス (ISSN:13430289)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.63-69, 2014 (Released:2014-08-12)
参考文献数
31
被引用文献数
1

1/2-6 ヵ月齢の完全人工栄養児のエネルギー,たんぱく質および微量栄養素の摂取量を算出し,評価した。2006-2007年に33,642名の乳児を対象とした発育・哺乳量に関する全国横断調査を実施し,578名の 6 ヵ月齢までの完全人工栄養児の栄養摂取量を評価した。1 日の平均哺乳量は,1/2-1, 1-2, 2-3, 3-4, 4-5,および 5-6 ヵ月齢でそれぞれ819, 834, 869, 864, 869,および928 mL であった。調粉 A 哺乳児のエネルギー摂取量(1-2 ヵ月齢で128 kcal/kg/日,5-6 ヵ月齢で84 kcal/kg/日)は,FAO が示している人工栄養児の推定エネルギー必要量と同水準であった。たんぱく質の摂取量およびビオチン・セレン・ヨウ素以外の微量栄養素の摂取量は,日本人の食事摂取基準で示されている目安量を各月齢とも上回っていた。ビタミン A およびビタミン D の摂取量は,日本人の食事摂取基準で示されている耐容上限量を各月齢とも下回っていた。我々は前報で,これらの完全人工栄養児の発育が 6 ヵ月齢まで母乳栄養児と同等であることを確認している。以上のことから,今回評価対象とした完全人工栄養児のエネルギー摂取量は推定エネルギー必要量との比較による評価において過不足のない量に保たれていること,および各栄養素の摂取量については,ビオチン・セレン・ヨウ素以外は,日本人の食事摂取基準に対して過不足がないことが示された。
著者
飯坂 正樹 五十嵐 智生 兼宗 進 中村 めぐみ 内田 卓
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.64, no.11, pp.d92-d105, 2023-10-15

日本におけるIT人材の不足と国際競争力の低下はIT教育の遅れに起因している.この課題を受けて学校におけるプログラミング・情報教育の必修化がなされたが,プログラミング能力の客観的評価・可視化が困難であることから教育現場では適切な指導を行うことが難しい.そこで本稿では子どもたちのプログラミング能力の定着度実地検証を行った結果から,プログラミング教育の量や質の差によるプログラミング能力定着度の違いについて述べるとともに,今後学校や大学,プログラミングスクール等で効果的な指導を行う上での汎用的かつ有用な情報を提供する.
著者
中村 昌人 清野 宗一郎 藤本 健太郎 小暮 禎祥 弓田 冴 小川 慶太 岩永 光巨 中川 美由貴 藤原 希彩子 神崎 洋彰 興梠 慧輔 井上 将法 小林 和史 叶川 直哉 近藤 孝行 小笠原 定久 中川 良 中本 晋吾 室山 良介 加藤 順 加藤 直也
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.64, no.10, pp.517-520, 2023-10-01 (Released:2023-10-12)
参考文献数
5

A questionnaire survey of medical institutions Chiba Prefecture, Japan, specializing in liver diseases was conducted. This study aimed to provide an overview of the current hepatitis virus tests situations and measures taken to link test-positive individuals to specialists. The positivity rate in these institutions was high, with 2.2% for hepatitis C antibody (HCVAb) and 0.9% for hepatitis B surface antigen (HBsAg). Although many institutions (70%) had been employing linking measures, the consultation rate with hepatologists was low, with 7.6% and 14.3% for HCVAb- and for HBsAg-positive cases, respectively. Only half of the institutions disclosed that their measures were working well. These data suggested the importance of improving the system for determining test-positive individuals and promoting hepatologist consultation.
著者
船引 彩子 中村 絵美 田代 崇 林崎 涼 亀田 純孝
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2023年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.251, 2023 (Released:2023-04-06)

1. 北海道の湿原開拓 北海道南部,渡島管内山越郡長万部町に位置する静狩湿原は,太平洋(内浦湾)に面した海岸平野に形成された湿原で,北海道の低地に発達する高層湿原の南限とされている.当地では戦後の食糧増産を目的に進められた開拓により,200ha以上の面積の高層湿原を含む,1950haの湿地が失われた.本稿では静狩湿原の戦後開拓とその後の変化について,静狩湿原の開拓が進められた時代背景や気象条件,具体的な戸数や生業の変化,近隣自治体との比較から,論考を行った. 2. 北海道における戦後開拓と酪農 戦後における北海道の開拓地で,その後の離農や酪農への転換などの過程が調べられた研究例は多い.道東の根釧地区では1932年の大冷害をきっかけとして乳牛飼育が普及し始めた.道北の日本海側に位置する上サロベツ原野では戦後の緊急入植後,1950~1965年に冷害による離農の増加と酪農専業への転換が進み,第二次世界大戦後の酪農振興法(1954)も乳牛頭数を増大させている.3. 静狩湿原の気候 長万部町が面する内浦湾では,夏にオホーツク海高気圧の影響を受け,やませによる冷夏となり,海霧が発生することも多い.気象庁のデータによると、長万部町の夏季(6〜8月)の月平均日照時間は道東で酪農のさかんな別海町よりはわずかに長いが,米作りのさかんな道央の岩見沢市,ジャガイモ生産のさかんな道東の帯広市などより短い. また同じ道南地域においても,長万部町は日本海側に近い自治体より日照時間が少ない傾向がある. 長万部町に隣接し,同じく内浦湾に面する八雲町では,早くに水稲栽培を試みたが失敗しており,その理由の一つに夏季の海霧による日照不足が挙げられている(安田,1964). 冷涼な気候の道東や道北では農地開発が盛んに行われず,湿原面積の減少が道央や南西部ほどではなかったとされる.しかし本研究で対象とする静狩湿原の場合,緯度が低い道南地域の中では比較的冷涼な気候であるが,農地開拓のために湿原の9割以上が失われており,個別のケースとして検討する必要がある.4. 開拓地の集約と酪農への転換 静狩地区では戦後の開拓当初,一戸当たり7.5haの土地をあてがわれ,100戸以上が入植した.当初は稲作やジャガイモの栽培を想定していたが,現在は50ha以上の農地を持つ2戸の農家が酪農に従事している. その理由としては近隣で第一次世界大戦後から酪農先進地域であった八雲の影響も強いが,長万部町の気候が冷涼で稲作や畑作が難しかったこと,開拓地での離農者の増加や農用地転売が一戸当たりの農業経営面積拡大につながり,農家戸数が減少したことなどが挙げられる.