著者
山崎 愛理沙 中村 達朗 大森 啓介 村田 幸久
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.149, no.5, pp.204-207, 2017 (Released:2017-05-09)
参考文献数
11
被引用文献数
1

肥満細胞は免疫細胞の1つであり,顆粒を大量に含むその形態学的特徴からこの名がつけられた.この細胞は,ヒスタミンなどの炎症性物質を大量に放出(脱顆粒)することで,アレルギー性疾患の発症に関わる主な免疫細胞として長らく認識されてきた.しかし,近年研究が進み,肥満細胞は脱顆粒後に起こる種々のサイトカインやケモカイン産生・放出を通して,アレルギー性疾患以外の様々な疾患の発症や進行にも関与することが分かってきた.我々の研究室では,現在アレルギー疾患の他,創傷治癒,急性炎症,がんの発症や進行において,この肥満細胞が果たす役割の解析を進めている.特に肥満細胞が脱顆粒後に大量に産生する脂質メディエーターであるプロスタグランジンD2の役割について焦点をあてて研究を進めてきた.本稿ではその一部を紹介したい.
著者
永井 燈文 柴田 悦郎 中村 崇
出版者
一般社団法人 資源・素材学会
雑誌
Journal of MMIJ (ISSN:18816118)
巻号頁・発行日
vol.129, no.12, pp.694-700, 2014-12-01 (Released:2014-12-01)
参考文献数
19
被引用文献数
2 2

Platinum group metals(PGMs), such as rhodium(Rh) and ruthenium(Ru), are rare and unevenly distributed in the earth's crust. They are used in automobile catalytic converters and electronic equipment. The consumption of such rare resources is unsustainable; therefore, recycling technologies are needed. In this paper, the chemical properties and separation/recovery of Rh and Ru, and PGM smelting/refining technologies are reviewed. In PGM refining processes, Rh and Ru are converted into chloride complexes. To effectively separate each metal, operating conditions of the reaction have to be optimized. The valences of PGM chloro-complexes change with redox potential, and the distributions between chloro- and aquo- complexes vary with chloride ion concentration. The Ru and Os oxides are separated by distillation.
著者
佐藤 浩昭 中村 清香
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, pp.281-291, 2018-05-05 (Released:2018-06-07)
参考文献数
14
被引用文献数
4

MALDI-TOF-MSは高分子材料の化学構造解析に有力な手法であるが,ポリエチレンオキシド(PEO)系界面活性剤などのイオン化効率が高い成分が共存していると目的成分のピークが観測されにくくなるという課題があった.そこで水に難溶のトリヒドロキシアセトフェノンをマトリックスに用いて試料/マトリックス混合結晶を調製し,その上に水/メタノール混合液を滴下して速やかに吸引することにより,PEO系成分を選択的に除去できる簡便な前処理法を開発した.この方法を洗髪剤の成分分析に応用し,妨害成分であるPEO系アニオン性界面活性剤(ラウレス硫酸ナトリウム)を除去して,配合成分のピークが観測できるようになった.得られたマススペクトルをKendrick mass defect(KMD)プロットに変換して成分分布を二次元展開したところ,様々なPEO系非イオン性界面活性剤の組成分布やPEO-水添ヒマシ油の共重合組成分布を明らかにすることができた.また,紫外線硬化塗料に含まれるPEO系界面活性剤を除去して,ウレタンアクリル系成分の化学構造情報を得ることができた.本法は,工業製品の配合情報を簡便かつ詳細に得ることができるスクリーニング手法として有効であると思われる.
著者
中村 義男 辻 尚利 平 詔亨
出版者
JAPANESE SOCIETY OF VETERINARY SCIENCE
雑誌
Journal of Veterinary Medical Science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.1005-1007, 1994-10-15 (Released:2008-02-15)
参考文献数
9
被引用文献数
10 13

乳頭糞線虫感染幼虫(105/kg)を暴露したウサギはパテント感染成立後に食欲が激減し, 5羽中4羽が暴露後19-33日に死亡した. 衰弱進行期においでも異常心電図は認められなかった. 乳頭糞線虫の濃厚感染はウサギに食欲減退に基づく衰弱を起こすが, 心機能には直接影響を与えないことが示唆された.
著者
中村 俊
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.39, 1989-10-16
被引用文献数
1

現状の機械翻訳システムは完全翻訳とは程遠い.商用化された機械翻訳システムの一つであるATLASIIの弱点を分析すると,以下のような点が挙げられる.1.慣用表現に弱い.2.複文重文に弱い.3.前編集,後編集が不可欠である.これに対して, ATLASIIはユーザカスタマイズ機構により,いくつかの補強をおこなっている.a.ユーザによる単語,熟語登録ができる.b.専用文法を選択すれば,語句解釈,表現が変えられる.c.多義語に対する訳語を学習させられる.しかし,登録できる熟語は,完全に同じ表記でないと使えない.専用文法そのものはユーザ登録できない.このカスタマイズ機構は,複文,重文にはほとんど無力である.ユーザカスタマイズ機構が十分でないために「いつも同じ前(後)編集ばかりする」という不満がでる.実際,ATLASIIは,技術文,特にマニュアル翻訳を実用化目標にしているが,このような文書は,定型的表現が多い上に,その分野特有の慣用表現も多い.上記の機構で救えない表現は,何度でも同じ誤訳をしてしまう.慣用的,定型的表現は,名詞を置き換えるだけで翻訳可能な場合が多い.そこで簡単な対訳テンプレート対により定型文を翻訳する機構が欲しくなる.これは,そのような機構をATLASIIに組み込む試みである.
著者
中村 良一 中原 元和 石井 紀明 上田 泰司 清水 千秋
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.45, no.6, pp.757-762, 1979-06-25 (Released:2008-02-29)
参考文献数
18
被引用文献数
3 1

The relations between the accumulation-elimination of radionuclides and the constituent materials of marine algae were studied to determine more precisely the mechanism of the radioactive contamination of marine organisms. This will increase the information about the behavior of radionuclides in marine organisms in relation to the environmental conditions (temperature, physico-chemical state of radioisotope, and so on) and the biological conditions (feeding habits, species, and so on). Eisenia contaminated by 137Cs and 106Ru-106Rh was fractionated by solvent extraction into 6 fractions. The largest portion of 137Cs was in the boiling water fraction; 106Ru-106Rh was most extracted by 24% KOH solution. Elution patterns by Sephadex G-100 gel-filtration of samples differed largely from each other, both among the 3 kinds of radionuclides and between the 2 species of the algae. Therefore, the accumulation of the radionuclides by the marine algae was proved to be not only due to a physical adsorption to the surface of the algae but also to the biological combining of the radionuclides with the constituents of the algae. Furthermore, it was found that radionuclides which combine with a few constituents of alga are not eliminated equally. This is considered to be useful for the physiological analysis of elimination curves.
著者
中村 文哉
出版者
山口県立大学
雑誌
山口県立大学学術情報 (ISSN:18826393)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.59-118, 2016-03-31

本稿の主題は、沖繩MTLが1930年代後半に為した営みを同時代的状況のもとに照射し、同組織が果たした役割とその意義を考察することにある。一章では、まず、沖繩MTLの会則が成立した過程を追い、同組織のミッションの所在を確認する。次に、そのミッションが依って立つ基盤を、1907年の「癩予防に関する法律」、及び1931年の「癩予防法」との関連、及び「日本MTL会則」との関連から照射し、同時代の沖縄社会に生きた病者たちの現実に向きあおうとした同組織のスタンスを示す。二章では、このようにして構成された沖繩MTLのミッションとスタンスが、如何なる活動を生み、その結果、如何なる現実が帰結したのかを、「沖繩MTL報告(書)」の刊行年次および記事と予算会計から追う。1号期は屋部の焼討事件と病者の鹿児島収容、2号期は会則成立、屋我地済井出住民との救護所をめぐる交渉、3号期は「沖繩MTL相談所」の開所と移管問題、4号期は国立移管と国頭愛楽園への信仰上の救済、納骨堂建設運動、5号期は納骨堂構築と国立移管の実現、といった出来事が生起した。沖繩MTLが同時代の沖縄社会において果たした役割は、沖縄社会における病者たちの厳しい現実に寄り添いながら、長年かなわなかった療養所構築により、多くの病者を救済する手段を構築した点において、沖縄救癩史の転換点を準備したことにある。In this paper, we consider on the social rescue for some crises with leprosy at 1930' Okinawa. Our theme concern to the social relevance between the society "Okinawa Mission to Lepers"(OMTL)and 1930's Okinawan Island. OMTL was organized at 13 May 1935 in Shu-ri Baptest Churche by some earinest relieffers ; Takeo HANASHIRO, Danziro HATTORI、Yoshio NOMACHI and others. ...
著者
深見 沙織 中村 崇仁 柳田 勝康 山田 慎悟 重村 隼人 伊藤 美香利 岩田 弘幸 朱宮 哲明 西村 直子 尾崎 隆男
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.96-103, 2011-07-30
参考文献数
12

近年わが国では,食生活の変化に伴い子どもにおける肥満や生活習慣病の増加が起こっている。その解決策として,食育が必要と考えられている。この度われわれは,入院中の子どもとその保護者を対象に,食事を提供する医療従事者の立場で次のような食育の取り組みを開始した。栄養バランスが良く,子どもたちが好き嫌いなく食べられるように工夫した「お子様ランチ」という新メニューを創った。古来の季節行事の日の「お子様ランチ」には,わが国の季節に応じた食文化の紹介文を添えた。保護者に対して,食育の意義,献立に使用した食品の栄養素の解説,レシピ等を記載したパンフレットを週1回定期的に配布した。<br> また,この取り組みを評価するため,保護者に対し毎週1回アンケート調査を行なった。開始後3か月間のアンケート結果 (n=215,回収率87%) では,「お子様ランチ」の献立内容,盛付け,子どもの反応,パンフレットの内容の4項目全てで,「よい」という回答が過半数を占めた。食育に興味があるとの回答は93%であり,保護者の食育に対する関心は高かった。一方,子どもが好む食材のみを使用する傾向,外食が多い傾向等,食育上の問題点が見出された。<br> 入院期間中という短期間の取り組みであるが,保護者に子どもの食育を考える機会を提供できたと考える。今後もこの取り組みを継続し,子どもたちの食育に生かしていきたい。
著者
中村 光宏 成田 雄一郎 宮部 結城 松尾 幸憲 溝脇 尚志 則久 佳毅 高山 賢二 永田 靖 平岡 眞寛
出版者
一般社団法人 日本放射線腫瘍学会
雑誌
The Journal of JASTRO (ISSN:10409564)
巻号頁・発行日
vol.19, no.4, pp.263-271, 2007-12-25 (Released:2008-03-28)
参考文献数
27

【目的】本研究の目的は,四次元イメージング手法の 1 つで,放射線治療分野におけるターゲット動体評価で期待されている 4D-CTの物理学的評価を行うことである.【方法】4D-CTは外部から取得した撮影対象の呼吸信号と各寝台位置で連続的に取得したCT画像を関連付けることで構成される.呼吸信号はRPMシステム(Varian Medical Systems, Inc., Palo Alto, CA, USA)で取得し,模擬腫瘍ファントムを周期的に運動させるために三次元動体ファントムシステムを使用した.4D-CT画像解析を行うためのファントム実験を行い,画像上の体積,重心,形状及び平均CT値を測定した.CT画像上で模擬腫瘍ファントムを自動的に抽出するために,CT値で閾値を設定した.【結果】三次元動体ファントムシステムの周期やCT閾値をさまざまに変化させて解析を行った結果,画像上で測定される模擬腫瘍ファントムの体積や平均CT値はこれらのパラメータに大きく依存したが,重心変位や球形度への影響は非常に小さかった.4D-CT画像には,位相ずれが含まれていたが,そのずれは3D-CT画像よりも大きく軽減されていた.【結論】 4D-CT画像解析を行うためのファントム実験を行った.4D-CTを用いることで,放射線治療計画時における臓器の輪郭入力がより正確にできるだけでなく,これらの移動範囲も定量的に評価できるようになるため,その臨床的意義は大きい.
著者
中田 信昭 祷 史明 中村 夫左央 針原 重義 平山 幸雄 鈴木 陽 下内 昭 高鳥毛 敏雄
出版者
JAPANESE SOCIETY FOR TUBERCULOSIS
雑誌
結核 (ISSN:00229776)
巻号頁・発行日
vol.82, no.5, pp.455-458, 2007-05-15
被引用文献数
3

〔目的〕大阪社会医療センターは結核高罹患地域であるあいりん地域に位置し,日雇い労働者や野宿生活者を主な対象とする無料低額診療施設である。地域にある当院の外来受診者について結核検診を行い,結核有病状況を明らかにし,地域における役割を検討することを目的とした。〔対象と方法〕平成17年3月31日から18年6月15日に整形外科単科外来初診患者1,673人中検診同意者(検診受検群)538人(男性523人,女性15人)について胸部エックス線検査を行った。また同時期の内科受診者2,000人(内科受診群)を対照として分析した。〔結果〕検診受検群については要医療率2.4%(13人)であった。一方,内科受診群2,000人については要医療率4.3%(85人)であった。〔結論〕検診受検群の結核患者発見率2.4%は,平成16年度のあいりん地域での結核検診における患者発見率1.1~1 .8%とほぼ同水準,対照群のそれは約2倍高率であった。これらの結果から,結核蔓延地域にある当院には,受診者に対し結核検診をルーチン業務とするとともに,発見患者に対する精密検査および外来診療を行えるよう基盤整備を行い,行政,専門機関の支援を得て,この地域の結核対策に取り組んでいく必要があると考えられた。