著者
芝山 幸久 坪井 康次 中野 弘一 筒井 末春
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.111-117, 1998-02-01
被引用文献数
1

心療内科のコンサルテーション・リエゾン活動の現状を調査解析し, 心療内科の専門性としての役割と位置づけを明らかにすることを試みた.対象は5年間に心療内科で入院治療した患者のうち, 他科からコンサルテーションの依頼を受け, 兼科で受けもった患者133例(26.8%)で, 5年間の患者数は一定していた.依頼科は内科が最も多く, 依頼理由は心因の関与の疑い, うつの治療要請などが多かった.治療介入としては心身相関の評価, 疾病に対する不安やうつの軽減, 治療者患者関係の調整などであった.兼科入院は心療内科の入院患者総数の1/4を占め, 依頼理由や治療内容から, コンサルテーション・リエゾン活動は心療内科の専門性の一つであることが確かめられた.
著者
谷口 奈央 廣藤 卓雄 中野 善夫
出版者
福岡歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

喫煙は、タバコのタールの臭いの他に、喫煙によって引き起こされる唾液分泌減少、舌苔付着促進、歯周疾患などにより、口臭に関係すると考えられる。口臭は主に舌苔に棲息する細菌によるアミノ酸代謝過程で発生し、舌苔はタバコの煙に直接曝露されるため、喫煙により舌苔細菌叢が受ける影響も口臭に関係すると推測される。本研究では、喫煙が唾液と舌苔の細菌叢に与える影響を、臨床的に健康な口腔環境を持つ若者を対象として調べた。福岡歯科大学口腔歯学部6年生50名(喫煙18名、非喫煙32名)を対象に唾液と舌苔を採取し、サンプルより抽出した細菌DNAから16S rRNA遺伝子をPCRによって増幅し、高速シーケンス解析法を用いて細菌叢解析をおこなった。その結果、菌叢の多様性解析では喫煙群と非喫煙群との間に有意な違いはみられなかった。一方、属レベルで比較解析をおこなったところ、喫煙群ではDialister属、Atopobium属など、口腔内の病的状態と関係する細菌が高い割合でみられた。ブリンクマン指数(1日喫煙本数×喫煙年数)との相関分析では、Selenomonas属、Bifidobacterium属が正の相関を示した。Selenomoas属は歯周炎など病的状態で多く分離される運動性桿菌である。Bifidobacterium属はタバコの主流煙が酸性であることから酸性環境下に強い菌の割合が多くなった可能性が示唆される。本研究で得た成果を国内の複数の学会で発表した。また、論文執筆ために過去の喫煙と口腔細菌叢に関する研究報告を収集したものを総説にまとめ投稿した。
著者
石川 日出志 七海 雅人 中野 泰 佐藤 信 平川 新 平川 南 千田 嘉博 川島 秀一 浅野 久枝 竹井 英文 八木 光則 安達 訓仁 宇部 則保 菅野 智則 斉藤 慶吏 佐藤 剛 菅原 弘樹 高橋 憲太郎 千葉 剛史 福井 淳一 室野 秀文 小谷 竜介 辻本 侑生 藤野 哲寛
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

気仙地域は、海・陸域の複合生態系が豊富な資源を生み出し、縄文時代から現代までそれらを活用した人類営為が展開した。本研究は、当地域の歴史文化を歴史・考古・民俗学の手法で研究し、地域の方々と行政に提供する。これは甚大な東日本大震災被害から復興する当地域の方々を支援する取組でもある。調査は多岐に亙る。考古学では、古代・中世の漁撈関係遺物・集落遺跡データの集成、被災地域石碑の所在調査、中世塚・板碑群調査、中世城館群の縄張図作成等。歴史学では、中世遺跡群と文献史料との比較、熊谷家近世文書群の調査、大島正隆論文の公開等。民俗学では横田・小友地区で民俗慣行の調査と実施。3か年市民向け報告会を開催した。
著者
谷口 義則 中野 繁
出版者
日本陸水学会
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.79-94, 2000-02-25 (Released:2009-06-12)
参考文献数
75
被引用文献数
1 3

地球温暖化に伴う水温の上昇が,淡水魚類に及ぼす影響に関する研究は,主に1990年代に入ってから盛んに行われてきている。これらの研究の多くは,対象魚種の水温に対する生理反応データに基づく分布変化予測と生物エネルギーモデルを用いた個体群動態の予測に大別される。しかし,実際には,温暖化が淡水魚類に及ぼす影響は,温度上昇そのものだけでなく,他の局所的環境撹乱因子との複合効果などを通じてもたらされると考えられる。さらに,多くの場合,従来の温暖化の影響予測では,個体群の遺伝構造の変化,生活史の可塑的変化および捕食者一被食者関係や競争などといった生物問相互作用の変化を介した影響に関する議論が欠落している。そのため,温暖化に対する淡水魚類群集の反応に関して十分に適正な予測が未だ得られているとは言い難い。また,温暖化によってもたらされると予測される淡水魚類の絶滅や分布変化は,食物網や物質循環の動態など生態系の諸特性に波及的な効果を及ぼすものと考えられるが,このような視点からの研究も未だ行われていない。今後は,長期間の観測データの蓄積や大規模操作実験によって温暖化の影響をメカニスティックに解明することに主眼を置くこと,さらに多分野の研究者が相補的に共同しうる研究体制を構築することなどが必要と考えられる。
著者
白戸 由理 中野 和俊 中山 智博 大澤 眞木子
出版者
東京女子医科大学学会
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.83, pp.E91-97, 2013-01

【目的】,従来ミトコンドリア(Mt)は細胞外では培養不可能とされてきた。中野らはヒトの血小板とHela mitochondria-less (Rh0)を融合させたCybrid細胞を形質変換させ、Mtの性質を保ちながら核のない細胞株の分離・増殖に成功し、ミトコンドリア細胞(MitoCell)と命名した。MitoCellの生物学的特性を見いだすため、エネルギー代謝の検討を行った。,【対象・方法】, MitoCellの嫌気培養は嫌気培養キットでO2濃度を0.1%以下とし、CO2濃度が21%前後、温度は37℃で培養し光学顕微鏡にて観察した。次に、エネルギー代謝経路の検討のため、MitoCellのTCA回路のクエン酸合成酵素(CS)、リンゴ酸脱水素酵素(MDH)、サクシネート脱水素酵素(SDH)、イソクエン酸脱水素酵素(IDH)とピルビン酸脱水素酵素(PD)をウエスタンブロット法により解析した。さらに、MitoCellの電子伝達系酵素(ETE)活性とTCA回路の酵素活性と検討するため、Cybrid細胞を対照としてETEである複合体II+III、IVとCS活性を測定した。,【結果】,MitoCellでは嫌気的環境下でも4週間の観察で生存・増殖が認められた。ウエスタンブロット法ではMitoCellのCSのみが陽性、PD、MDH、IDH、SDHが陰性であった。酵素活性では、MitoCellは複合体II+III、IVの活性は保たれているがCS活性は欠損していた。,【考察】,MitoCellではTCA回路が好気的代謝経路として機能していない可能性が示唆され、嫌気的代謝経路の関与が推測された。MitoCellが真核細胞であるヒト細胞から形質変換したことを考えると、ヒトの核DNAには嫌気的代謝遺伝子が保存されていると推測され、嫌気的代謝経路が賦活化されたとも考えられる。臨床上がん細胞は体内において低酸素下で存在し嫌気的代謝の関与が示唆されている。MitoCellのエネルギー代謝経路の解明は、がん細胞の治療に繋がる可能性が考えられた。,【結論】MitoCellでは嫌気的環境下でも生存・増殖が認められ、低酸素下で存在し嫌気的代謝の関与が示唆されているがん細胞の性質と関連している可能性が示唆された。
著者
土井啓成 戸田智基 中野倫靖 後藤真孝 中村哲
雑誌
研究報告音楽情報科学(MUS)
巻号頁・発行日
vol.2012, no.5, pp.1-9, 2012-08-02

歌声の声質には,歌手の個人性が反映されており,他者の声質に自在に切り替えて歌うことは難しい.そこで我々は,歌声の声質を他者の歌声の声質へと自動変換することで,任意の声質での歌唱を実現する手法を提案し,歌唱という音楽表現の可能性を広げることを目指す.従来,統計的声質変換に基づく歌声声質変換が実現されていたが,提案手法では様々な声質に少ない負担で変換可能にするため,多対多固有声変換を導入する.これにより変換時に数秒程度の少量の無伴奏歌声さえあれば,任意の歌手の歌声から別の任意の歌手の歌声への声質変換が実現できる.しかし,その声質変換モデルの事前学習データとして,ある参照歌手の歌声と多くの事前収録目標歌手の歌声とのペアから構成されるパラレルデータセットが必要で,その歌声収録は困難であった.そこで提案手法では,歌唱表現を模倣できる歌声合成システム VocaListener を用いて目標歌手の歌声から参照歌手の歌声を生成することで,その学習データ構築を容易にする.実験結果から提案手法の有効性を確認した.