著者
伊藤 毅志 杵渕 哲彦 藤井 叙人
雑誌
ゲームプログラミングワークショップ2014論文集
巻号頁・発行日
vol.2014, pp.196-201, 2014-10-31

人間はゲームをプレイするときにミスを犯す.人間がプレイするゲームでは,ミスを犯すことが織り込み済みであると言える.本報告では,ゲームにおけるヒューマンエラー(ミス)を分類し,その認知的なメカニズムのモデルを提案し,将棋を題材に検証を試みる.
著者
伊藤 修毅 朴 恵貞
出版者
日本福祉大学子ども発達学部
雑誌
日本福祉大学子ども発達学論集 = THE JOURNAL OF CHILD DEVELOPMENT (ISSN:18840140)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.57-62, 2017-01-31

本研究ノートは, 主に知的障害児・者を対象としたセクシュアリティ教育の変遷をまとめたものである. 資料を整理した結果により, 4 つの時代に区分した. 1 つ目は「黎明期」と呼べるもので, 山本直英が萌芽的実践を結集し, 1 冊の本を出版するに至った. この本の執筆者たちが, "人間と性" 教育研究協議会障害児サークルを結成し, 実践的研究を進めている. 2つ目は, 「第一次発展期」と呼べるもので, 世論にも後押しされ, 障害児・者のセクシュアリティ教育の実践が発展していった. 3 つ目の時期は, 「バックラッシュ期」と呼べるもので, 障害児へのセクシュアリティ教育を糸口とする教育内容への政治的介入から始まる. その後, 12 年にわたる法廷闘争の間は, 障害児・者への性教育実践の停滞期となった. 4 つ目の時期は「第二次発展期」と呼べるもので, 七生養護学校事件の最高裁判決後の時期である. 加えて, 障害者権利条約を批准したことも大きな影響を与えている.
著者
伊藤 理絵 本多 薫
出版者
日本生理人類学会
雑誌
日本生理人類学会誌 (ISSN:13423215)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.83-89, 2010
参考文献数
11

The purpose of this study is to examine how background music (BGM) influences the retrieval processes of pictures in memory. In this study, 9 subjects (4 males, 5 females) looked at three different pictures. Each picture was shown with a different piece of music playing in the background. None of the subjects knew that they would be asked about the music later. As a result, although the music was not consciously heard, the music itself has a factor that becomes associated with memory. Therefore, retrieval processes in memory are promoted by music. This indicates that humans use information that may not even be consciously identified to unify their confusing environment.
著者
大場 みち子 伊藤 恵 下郡 啓夫
雑誌
研究報告情報基礎とアクセス技術(IFAT)
巻号頁・発行日
vol.2015-IFAT-118, no.2, pp.1-4, 2015-03-23

我々は数学思考力を研くことでプログラミング力が向上できるとの着想から,プログラミングの思考過程の構造と数学の問題解決過程に相関があるとの仮説を立て,プログラミング力向上のための数学学習材の開発を目指している.また,数学学習教材の開発によりプログラミング力向上を目指すだけでなく,論理的文章作成力も同時に養成できると考えた.このためには,プログラミング思考過程での 「論理的思考力」 と 「論理的文章力作成」 に必要な 「論理的思考力」 の類似性を調べる必要がある.つぎに,類似性がある場合,この類似性と数学学習を行うことで転移される 「論理的思考力」 との相関を調べる必要がある.そこで,本稿ではプログラミング力と論理的文章作成力との類似性を分析する.両者の類似性を評価するために,初年次プログラミング教育科目の成績とレポート課題による論理的文章作成力との相関を分析し,プログラミング力と論理的思考力の関係を明らかにする.
著者
伊藤 剛 阿部 朋弥 宮川 歩夢
出版者
日本第四紀学会
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.105-116, 2020-10-01 (Released:2020-10-15)
参考文献数
68
被引用文献数
4

西三河平野南西部の油ヶ淵低地で採取したボーリング試料中の更新統下部の礫層に含まれるチャート礫及び珪質泥岩礫から放散虫化石を抽出した.チャートの中亜角礫からペルム紀放散虫を,中亜角礫~亜円礫から三畳紀放散虫を,中角礫からジュラ紀放散虫を得た.これらの礫の供給源は,調査地域南方の渥美半島に露出するジュラ紀付加体秩父テレーンである可能性が最も高い.そして,重力異常(ブーゲー異常)に基づくと渥美半島と西三河平野南西部の間に大きな基盤の隆起帯が無いと推定されることから,礫層の堆積時(約100~80万年前)には渥美半島から西三河平野南西部に礫を供給しうる水系が存在していたことが示唆される.
著者
伊藤 忠 鈴木 光久 川口 大輔 冨田 秀仁 則竹 耕治 杉浦 英志 佐野 明人
出版者
保健医療学学会
雑誌
保健医療学雑誌 (ISSN:21850399)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.136-144, 2020-10-01 (Released:2020-10-01)
参考文献数
26

無動力歩行支援機ACSIVE を活用した歩行練習が,脳性麻痺児の歩行機能に与える効果について検討することを目的とした.粗大運動能力分類システムのGMFCS レベルⅡの16 歳男児1 名を対象とした.ACSIVE を活用した歩行練習を,週5 日,1 日60 分,6 ヶ月間実施した.歩行計測には三次元動作解析装置を用いた.身体機能は,5-chair stand テスト(5CS),Timed Up & Go テスト(TUG),2 分間歩行テストを計測した.歩行練習の前後で歩幅と歩 行速度の増加が認められた.加えて,立脚期における股関節の最大伸展角度と,前遊脚期の股関節屈曲と足関節の底屈モーメント,足関節の産生パワーが増加 した.身体機能については,5CS,TUG,2 分間歩行距離が向上した.6 ヶ月間のACSIVE による歩行練習は,脳性麻痺児の歩行機能と身体機能の改善に有効であることが示唆された.
著者
葛谷 昌之 近藤 伸一 伊藤 幸祐 沢 崇史
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.121, no.4, pp.289-293, 2001-04-01 (Released:2002-09-27)
参考文献数
33
被引用文献数
1 1

The area of radiation exposure by the nuclear accident occurred at Tokai village in 1999 was estimated by the ESR measurement of 95 household sugar samples collected from the accident area. These samples were roughly classified into three types of sugar, fine white sugar, fine brown sugar and coarse brown sugar. The control fine white sugar showed no radical in the ESR spectrum, while those of fine brown sugar and coarse brown sugar showed the presence of a small amount of radicals. It was also shown that, among these three kinds of sugar, the radical concentration of fine white sugar sampled from wooden houses at the area similar to each other did not vary much with the samples, while those of fine brown sugar and coarse brown sugar varied to a considerable extent. Thus, the fine white sugar is considered to be more suitable for the estimation of the level of radiation exposure. The radical concentration of each fine white sugar sample was plotted against the distance from the site of the nuclear accident with a correction of the difference in the shielding effect between concrete houses and wooden houses. The samples obtained at more than 2 km north of the site of nuclear accident showed no ESR spectral signal to a detectable extent. On the other hand, the ESR spectra were observed from the samples obtained within 10 km south and 4 km west of the accident site. These results suggest that the radiation exposure by the contaminant blown by the northeast wind blowing on the day of the accident may occur at the south and west areas.
著者
伊藤 玄 古屋 康則 堀池 徳祐 向井 貴彦
出版者
一般社団法人 日本魚類学会
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.41-50, 2020-04-25 (Released:2020-05-02)
参考文献数
39

An examination of the genetic population structure of Cobitis minamorii tokaiensis in central Honshu Japan, based on mitochondrial DNA nucleotide sequences in the cytochrome b region, revealed that the subspecies is subdivided into three regions (West-Shizuoka, Mie, and Aichi-Gifu) on the evidence of haplotype distribution and pairwise Φst among populations. However, the phylogenetic analyses indicated that the haplotypes in the three regions belong to the same haplotype group, suggesting that C. m. tokaiensis dispersed following the interconnection of paleo-river systems within relatively recent geological time, and subsequently differentiated in several areas. Because of its genetic characteristics, the three regions are important for conservation of the subspecies’ genetic diversity.
著者
伊藤 毅志 松原 仁
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告ゲーム情報学(GI) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.64, pp.9-15, 2004-06-18
被引用文献数
6

将棋の熟達者は、どのように将棋を捉えているのだろうか?我々は、これまで、将棋を題材にして、伝統的な認知科学的手法で研究を行ってきた。その結果、棋力の違う被験者間で、認知的な違いが明らかになってきた。しかし、熟達者が具体的にどのようにその卓越したパフォーマンスを示すことができるのかは不明な点が多い。本研究では、将棋トッププロ棋士である羽生善治氏に対して行ったインタビューの発話データから、将棋の熟達者の思考過程、認知過程、学習過程について新しい知見を得ることができた。本稿では、その詳細について述べる。How does the expert player recognize Shogi? We have so far researched by the traditional cognitive science method on the theme of Shogi. As the result, the cognitive difference has become clear among the subjects from whom Shogi skill is different. However, it isn't clear how an expert player can show the advanced performance concretely. In this research, we could acquire some new knowledge about the thinking process, a cognitive process, and a learning process of the expert player of Shogi from the verbal data of the interview held to Mr. Yoshiharu Habu who is a top professional player of Shogi. We give the details in this paper.
著者
浅田 麻菜 伊藤 毅志
雑誌
研究報告ゲーム情報学(GI)
巻号頁・発行日
vol.2011-GI-26, no.7, pp.1-7, 2011-06-24

駒の効き情報の視覚化が初心者の思考過程に与える影響について
著者
伊藤 光 平松 哲夫
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.79-85, 2017-06-20 (Released:2017-06-21)
参考文献数
13
被引用文献数
1

目的:睡眠障害の患者に対して,医師と薬剤師が協働でプロトコールに基づく薬物治療管理(Protocol-Based Pharmacotherapy Management:PBPM)を実施し,その効果と患者満足度を検証した.方法:不眠の訴えがあった患者21名に対し,医師の診察前に薬剤師が面談し情報収集を行い,プロトコールに基づき睡眠薬の必要性判断,処方提案や認知行動療法的アプローチなどを行った.介入3か月後に睡眠状況の変化をPSQI(Pittsburgh Sleep Quality Index),ISI(Insomnia Severity Inventory),ESS(Epworth Sleepiness Scale)で評価した.患者満足度の評価はCSQ-8J(日本語版Client Satisfaction Questionnaire8項目版)を用いた.結果:介入3カ月後の睡眠状況は,介入前PSQI:10.3±4.1,ISI:15.0±5.3,ESS:8.7±6.6に比して,介入後PSQI:7.2±2.7,ISI:8.3±4.3,ESS:6.2±5.5で,いずれも有意な改善を認めた.CSQ-8Jの平均スコアは25.5±3.1で高い満足度が得られた.重篤な有害事象の発現はなかった.結論:睡眠障害の患者に対するPBPMは,患者の不眠症状を改善させ患者満足度も高い.PBPMにより薬剤師が主体的に不眠治療に参画でき,患者個々の薬物療法の適正化に貢献できることが示唆された.
著者
髙田 久実子 蛯子 慶三 木村 容子 伊藤 隆
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.191-194, 2016
被引用文献数
2

近年,日本ではインターネット販売により,鍼灸師や医師以外の者が医家向けの管理医療機器を安易に購入し購入使用するケースも少なくない。プラスチックとシールが一体になった円皮鍼(以下パイオネックス<sup>®</sup>)は操作性がよく,これまでの報告では有害事象もテープによる皮膚炎程度で安全性が比較的高く広く普及している。今回,患者が貼付していたパイオネックス<sup>®</sup>を剥離した際にプラスチック部が破損し鍼先が身体に挿入されたままになり,伏鍼などの事故につながる可能性のあった事例を経験した。患者は自己判断で購入し長期間保管して使用期限を10ヵ月過ぎたパイオネックス<sup>®</sup>を約3週間貼付していた。プラスチックは性質上劣化をおこすものであり紫外線や水,衝撃などでも破損することがある。使用期限を守ることはもちろん,貼付期間が長くなると劣化が進む可能性があり,使用上の注意喚起が改めて必要と考え急ぎ報告する。
著者
河野 和明 羽成 隆司 伊藤 君男
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.95-101, 2015-11-20 (Released:2015-12-05)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

恋愛対象者に対する接触回避がどのように生じているかを分析した。大学生334名(男性126名,女性208名)が質問紙調査に参加した。調査では,恋愛対象者,同性友人,異性友人各1名を想起させ,8つの身体接触場面において,各人物との接触をどの程度回避したいかについて尋ねた。男女とも恋愛対象者に対しては,異性友人に比べて接触回避の程度を下げたが,この傾向は女性で顕著であった。女性は,異性友人に対して接触回避を高く保っているが,恋愛対象者に対しては大幅に回避を下げると考えられた。しかし,たとえ恋愛対象者であっても,恋愛対象者への接触回避は,同性友人への接触回避よりも低くならなかった。一方,男性は,同性友人,異性友人よりも,恋愛対象者への接触回避は低かった。接触回避が性的防衛の機能をもつ可能性が考察された。
著者
小山 真紀 柴山 明寛 平岡 守 荒川 宏 伊藤 三枝子 井上 透 村岡 治道
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.136-139, 2020 (Released:2020-04-25)
参考文献数
1

本研究では,防災ワークショップを通じたデータの収集とデータベース化,保管したデータの再利用法までを合わせて提案することで,恒常的にデータの収集と活用が可能な災害アーカイブの構築とその効果を検討する.対象とするデータは,主として位置情報付きの被災当時の写真と,対になる現時点での同じ場所の写真,被災時の手記などである.ワークショップは,現在のハザードマップとこれらのデータを用いて,地域の災害危険度を確認し,同様の災害が発生した場合の被災イメージを想起させる.被災経験者がいる場合には,より具体的な状況の記憶の継承を行う.最後に,今後の対策に向けた検討を行い,参加者間で共有する.これまでに,データベースの構築,ワークショップの構成と収集すべきデータの検討を行い,ワークショップを行うことで,災害記憶の継承と,より具体的な被災イメージの醸成と対策の検討が可能になることが示された.
著者
伊藤 良子
出版者
京都市立看護短期大学
雑誌
京都市立看護短期大学紀要 (ISSN:02861097)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.1-12, 2013-02-01

リズミカルアインライブング(独語:Rhythmishe Einreibung)は1900 年代初頭にスイス・ドイツを中心に発展したアントロポゾフィ-(シュタイナ-)医学・看護のケア技術の一つで「アロマオイルや軟膏を定型フォルムに添ってリズミカルにケアリングタッチで皮膚に塗擦するケア」である.ここではその歴史,理論的背景,手技の特徴,効果・適応,EBM,今後の可能性について概観した.アントロポゾフィ-(シュタイナ-)医学・看護は理論背景にルドルフ・シュタイナ-が提唱した世界観であるアントロポゾフィ-(邦訳:人智学)を持ち,西洋医学に基礎を置いた代替・補完療法として世界的に認知されている全人的医療モデルである.リズミカルアインライブングは「タッチの質,そこに存在していること,リズム,オイル,技術」についての5 つの特徴を持っている.その効果には熱生成促進,疼痛緩和,緊張・痙攣緩和,呼吸調整,血液・リンパ循環改善,可動性促進,消化活性化,組織栄養状態改善,創傷治癒促進,片頭痛緩和,覚醒- 睡眠の調整,健康感上昇,身体に関する明確な感覚,弛緩と沈静,信頼感・安心感の形成,意識の明瞭化・決断力強化・集中力強化などがある.加えてリズミカルアインライブングは「共に癒されるケア」「看護の質を耕すケア」「孤独を癒し愛を伝えるケア」としての可能性を持つケア技術でもある.
著者
伊藤 武士
出版者
一般社団法人 日本考古学協会
雑誌
日本考古学 (ISSN:13408488)
巻号頁・発行日
vol.7, no.10, pp.127-137, 2000-10-04 (Released:2009-02-16)
参考文献数
13

秋田県秋田市に所在する秋田城跡は,古代日本最北の城柵官衙遺跡である。律令国家により天平五年(733)に出羽柵として創建され,その後秋田城と改称された。8世紀前半から10世紀にかけて律令国家体制下における出羽国の行政及び軍事の拠点として蝦夷や移民の支配と統治を行った。奈良時代には出羽国府が置かれていたとされ,また近年は,日本海を通じた大陸の渤海国や北方地域との外交と交流の拠点としての役割も注目されている。秋田城跡では1972年以降秋田市教育委員会による継続調査が実施され,外郭区画施設及び政庁などの主要施設や実務官衙などの所在と変遷が確認され,城内外の利用状況も明らかになりつつある。近年の調査では,外交交流,行政,軍事などの面において,秋田城が城柵として果たした役割やその特質に関わる重要な成果があがっている。第63次調査では,鵜ノ木地区から上屋と優れた施設を伴う8世紀後半の水洗便所遺構が検出されている。便所遺構の寄生虫卵の分析から,ブタを常食とする大陸からの外来者が使用した可能性が指摘され,奈良時代に出羽に来航した渤海使や,外交拠点として秋田城が果たした役割との関連性が注目されている。第72次調査では,画期的内容の行政文書が漆紙文書として多数出土している。それらは,移民や蝦夷などの住民の把握と律令的支配を行うための死亡帳,戸籍,計帳様文書などであり,古代律令国家の城柵設置地域における地方行政制度や住民の構成と生活実態を知るうえで重要な成果となっている。また,第72次調査では,9世紀前半の非鉄製小札甲も出土している。平安時代前期の非鉄製小札甲の出土例や伝世品はなく,日本古代の甲の変遷を考えるうえで重要な成果となっている。漆紙文書や小札甲の出土は,秋田城が平安時代に行政と軍事の枢要機関として果たした役割を示唆している。秋田城跡の調査においては,今後も行政や軍事といった城柵としての基本的機能や役割を追究すると共に,最北の城柵としての特質についても解明していく必要がある。
著者
伊藤 重行 Shigeyuki ITOW
雑誌
札幌法学
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.197-211, 2010-06