著者
佐藤 直 徳弘 航季 松野 孝平
出版者
日本プランクトン学会
雑誌
日本プランクトン学会報 (ISSN:03878961)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.11-17, 2022-02-25 (Released:2022-03-06)
参考文献数
45

Limacina helicina, a species of Pteropoda (Cuvier, 1804), plays an important role in the food web and carbon cycle in subpolar and polar regions. The presence of aragonite unsaturated water in the Pacific sector of the Arctic Ocean necessitates the need to examine damage caused by ocean acidification on species with aragonite shells. According to previous studies that examined the impact of acidification on shell-bearing species by employing incubation experiments, young stages (veligers and juveniles) are more vulnerable than adults. In the present study, vertical distribution of the young stages of L. helicina in the Arctic Ocean during autumn was observed to evaluate the effects of environmental factors on their distribution. Veligers and juveniles showed high abundances from the surface to 30 m depth in the basin regions around the Chukchi Plateau (Stations 39, 45, and 49) but were restricted to a depth of 20–30 m, overlying a strong halocline formed by the inflow of less saline water. Veligers were predominant in the basin regions, indicating that active reproduction occurred in September. Since adult females involved in reproduction were abundant in the shelf regions, their reproduction patterns varied with different periods and regions. Unsaturated aragonite waters and damaged shells were not observed in the study area, possibly due to dilution by sea ice melt water inflowing from the shelf regions. This study showed that the distribution of the young stages of L. helicina was predominantly concentrated in the upper 30 m of the basin due to stratification with a strong halocline in the shallow layers caused by the inflow of sea ice melt water.
著者
柴田 雅士 上嶋 健治 平盛 勝彦 遠藤 重厚 佐藤 紀夫 鈴木 知己 青木 英彦 鈴木 智之
出版者
The Japanese Society of Intensive Care Medicine
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.25-31, 1998-01-01 (Released:2009-03-27)
参考文献数
38

マグネシウム(Mg)は細胞内へのカルシウム(Ca)流入を抑制するCa拮抗物質で,インターロイキン6(IL-6)は臓器の侵襲程度を反映するサイトカインである。心筋梗塞症(AMI)急性期に硫酸Mgを投与し,再灌流障害を示唆する現象の抑制効果を検討した。再灌流療法施行患者連続22例を,再灌流療法前に硫酸Mg0.27mmol・kg-1を静脈内投与する群11例(Mg群)と非投与群11例(C群)とに無作為に割り付け,血中Mg2+濃度とIL-6を測定した。再灌流時の現象は再灌流不整脈,12誘導心電図上のST再上昇および胸痛の増悪とした。再灌流成功は20例(Mg群9例,C群11例)で,Mg群の平均血中Mg2+濃度は投与前0.39mmol・l-1から投与後1.04mmol・l-1に上昇した。再灌流不整脈の出現率はMg群がC群より有意に低く,ST再上昇度はMg群がC群より低い傾向にあった。血中IL-6ピーク値はMg群がC群より低かった。AMI急性期再灌流療法時の硫酸Mg投与は,虚血再灌流障害から心筋細胞を保護する可能性がある。
著者
佐藤 有紀 五十嵐 祐
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.93-100, 2017-12-25 (Released:2017-12-25)
参考文献数
37

This study investigated the effect of a player’s regulatory focus on his/her preference for cooperation and prosociality in a social dilemma situation. After the manipulation of regulatory focus, participants chose cooperation (remaining silent) or defection (betrayal) in simultaneous and sequential Prisoner’s Dilemma (PD) tasks based on a traditional scenario of prison sentence rewards. Participants in the prevention focus condition showed more defection than did those in the promotion focus and the control conditions. In the sequential PD task, a greater number of participants in the prevention focus condition used an egoistic strategy (i.e., consistent defection) as the second movers than did those in the promotion focus and the control conditions, who tended to use a conditional cooperation strategy. These findings suggest that prevention-focused players show a less strong preference for cooperation and behave more selfishly when the pay-off matrix is loss-framed.
著者
上野 千鶴子 盛山 和夫 松本 三和夫 吉野 耕作 武川 正吾 佐藤 健二
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

新しい「公共性」の概念をめぐって、公共社会学の理論的な構想を提示し、「自由」や「感情公共性」その応用や展開の可能性を示した。福祉とジェンダーについては定量および定性のふたつの調査を実施し、報告書を刊行した。その調査結果にもとづいて、福祉多元社会における公共性の価値意識を比較検討し、さらた具体的な実践の可能性を求めて、地域福祉、住民参加、協セクターの役割、福祉経営、ケアワークとジェンダー等について、経験データにもとづく分析をおこなった。ジェンダーと階層をめぐって、少子高齢社会と格差問題について、高齢者の格差、若年世代の格差、少子化対策とジェンダー公正の関係等についても、経験データにもとづいて、比較と検証をおこなった。福祉社会については、「自立」と「支援」のその理念をめぐって、その原理的な検討と歴史的な起源についても検討を加えた。文化と多元性の主題では、多文化主義と英語使用の問題、文化資源学における公共性、公共的な文化政策の実態と問題点について、研究を行ったほか、近代における宗教と政治の位置についてもアプローチした。また営利企業における公共性とは何かというテーマにも切り込んだ。環境については地球環境問題における「環境にやさしい」技術の関連を社会学的に分析し、新しい知見をもたらした。詳細は、科研費報告書『ジェンダー・福祉、環境、および多元主義に関する公共性の社会学的総合研究』を参照されたい。チームでとりくんだ4年間の成果にもとづき、現在東京大学出版会から『公共社会学の視座(仮題)』 (全3巻)をシリーズで年内に刊行するよう準備中である。
著者
佐藤 宏志 渡辺 仁 品部 耕二郎 小泉 淳
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.756, pp.21-31, 2004-03-20 (Released:2010-08-24)
参考文献数
11

ダクタイルセグメントは使用期間が最も長いものでは約37年あまりが経過したが, 二次覆工が行われない場合も多いため, その耐食性, 耐久性が問題になると考えられるが, その実態は従来ほとんど明らかにされていなかった. 本論文は, 供用中のダクタイルセグメントの腐食に関する継続的な調査結果を分析し, ダクタイルセグメントの耐久性を考察するものである. まず, セグメントの肉厚測定の方法およびその信頼性について述べ, 次に調査の内容およびその結果を述べる. この調査結果から, ダクタイルセグメントの主要肉厚は少なくとも24年間においてほとんど減少していないことがわかり, ダクタイルセグメントは現在のところ健全性を維持しており, 今後も長期間使用できると考えられる.
著者
吉田 光男 風間 一洋 佐藤 翔 桂井 麻里衣 大向 一輝
出版者
豊橋技術科学大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

現在の学術情報システムは,研究者の高度な専門性を前提とした画一的なシステムであり,それ以外の利用者の要求に応えられず,自ら利用範囲を狭めている。本研究の目的は,利用者の状況に応じ,多様な観点で学術情報を提示できる学術情報システムを実現することである。この実現のために,利用者の様々な探索要求に対応する新しい学術情報評価指標を複数開発した上で,利用者の行動履歴をもとに研究練度を推定し,利用者の研究練度に応じて複数の指標を自動的に統合する学術情報システムを構築する。
著者
平瀨 敏志 竹尾 直子 中村 政志 佐藤 奈由 松永 佳世子 谷口 裕章 太田 國隆
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.48-52, 2020 (Released:2020-02-12)
参考文献数
13

【背景】コチニール色素は赤色着色を目的に食品添加物として様々な食品に用いられている.一方で即時型アレルギーの原因物質として報告されているが,多くが成人女性発症である.今回,8歳男児にコチニールアレルギーを発症した症例を経験したので報告する.【現病歴・経過】幼少期よりアトピー性皮膚炎・気管支喘息・食物アレルギーがあった.7歳頃より2回原因不明のアナフィラキシーを起こしエピペンⓇを処方されている.8歳時に低アレルゲンコチニール入りのフランクフルトを初めて食べて冷汗・口腔内違和感・呼吸苦・全身に蕁麻疹が出現した.プリックテストではフランクフルトとコチニール色素(色価0.1・0.01)で2+と陽性,Immunoblotではコチニールの主要コンポーネントであるCC38Kに相当する分子量のタンパク質と約80~200kDaの高分子量領域のタンパク質でIgE抗体の結合を認めた.【考察】学童期男児に発症,低アレルゲンコチニールでアナフィラキシーを起こしたという意味で興味深い症例と考え報告した.
著者
武部 匡也 栗林 千聡 荒井 弘和 飯田 麻紗子 上田 紗津貴 竹森 啓子 佐藤 寛
出版者
日本摂食障害学会
雑誌
日本摂食障害学会雑誌 (ISSN:24360139)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.1-11, 2022-10-05 (Released:2022-10-14)
参考文献数
23

はじめに:大学生アスリートにおける摂食障害の有病率を推定することを目的とした。対象と方法:体育系部活動に所属する大学生442名を対象に,EDDS-DSM-5 version日本語版を用いて有病率を算出した。結果:何らかの摂食障害の診断に該当した者の比率は,全体で7.0%(男性で3.9%,女性で12.3%)となった。競技種目別では,男性が格技系(13.3%),球技系(3.5%),標的系(3.4%)の順で,女性では審美系(17.4%),標的系(14.3%),記録系(10.0%)の順で有病率が高かった。考察:本研究の意義は,本邦における男性アスリートの有病率を明らかにした点,リスクが高い競技種目を明らかにした点にある。結語:本研究は,本邦の大学生アスリートにおいて,男女ともに一定数の摂食障害を抱えている可能性のある者が存在すること,そしてリスクの高い競技種目の特性を踏まえた支援の必要性を示唆した。
著者
佐藤 惣之助[作詞]
出版者
キングレコード
巻号頁・発行日
1943-11
著者
宮崎 有紀子 佐藤 由美 大野 絢子
出版者
The Kitakanto Medical Society
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.261-266, 2002-07-01 (Released:2009-10-21)
参考文献数
16

【背景・目的】室内環境の清潔保持は, 健康な生活を営むために重要である.その方策を立てるため, 室内の塵埃量やダニ抗原量の季節変動, 床材の種類とコナダニ(ダニ)数, 適切な塵埃除去等を検討した.【対象と方法】室内の塵埃量とダニ抗原量の測定は, 電気掃除機及びACAREX testによって行い, 塵埃中のダニ数測定は実体顕微鏡によって行った.【結果】室内塵埃量は冬季から春季にかけて増加し, 塵埃中のダニ抗原量は秋期に増加した.ダニは絨毯敷き詰めの部屋に多くみられ, 板敷きでも清掃しない部屋には多かった.電気掃除機による塵埃除去効率は, 床材の種類で大きく異なり, また掃除機の使用法が塵埃除去効率をあげるために重要と思われた.【結語】室内の清潔を保つためには, 塵埃やダニ抗原量を減らすことが重要である.今回得られたデータを活用した環境整備マニュアルを作成し, 学生や地域住民に対する環境整備教育に使用する予定である.
著者
岡田 重文 森川 尚威 佐藤 幸男 土屋 武彦 酒井 一夫 二階堂 修
出版者
京都大学
雑誌
エネルギー特別研究(核融合)
巻号頁・発行日
1985

本計画研究は、トリチウム各種化学形の中、ヒトに最も取り込まれ易く、障害の主役と考えられるトリチウム水に絞り、それによる障害の研究をヒトを念頭におきながら推進しようとするもので、本年度は3ケ年計画の第2年度となる。1.トリチウム安全取り扱い法:トリチウム実験においてインベントリィ(回収トリチウム/使用トリチウム比)を取るには手間がかかるが、システムさえ作ればルーチンで行え、トリチウムのR工管理の鼎ともなる。トリチウム水の廃棄は、コンクリート・バーミキュライトによる固化法を開発し始めた。2.障害のメカニズムの研究:トリチウム水による細胞死のRBEはDNAの修復不能切断で説明できそうである。ハムスター胚細胞のがん化及びそのRBEは、染色体異常中の染色体異数性(トリソミイ、モノソミイ)と関連を示している。低濃度トリチウムによる前処理はハムスター細胞を放射線誘発SCE、小核形成に対し修復系を活性化し低抗性にする。マウス個体ではトリチウム水前処理により、免疫能の増加が見られた。3.RBE:ヒト細胞;繊維芽細胞、1.4,甲状線細胞、1.7-2,末梢血淋巴球では線量率依存性を示し1.8-4以上。個体のRBEについては雌マウスで、卵母細胞が線量率依存性を示し1.1-3以上、胞胚形成、胎盤形成及び胎児形成の障害のRBEはいづれも約1、ラットの奇形発生では、1.3-3以上。4.進捗中の研究・マウスのトリチウム水およびガンマ線による発癌実験では早期に胸線型淋巴性白血病が発生、後期になると9種類以上の固形腫瘍が見つかっている。放射線治療患者で末梢血中で、赤血球系幹細胞BFU-Eの減少が見出され、これは将来ヒト障害のモニターとなるかもしれない。