著者
佐倉 緑
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

コオロギを用い、体表物質によって引き起こされるオス同士の闘争行動の発現に触角からの入力が関与することを明らかとした。また、脳内の一酸化窒素(NO)とオクトパミン(OA)シグナルの阻害により、敗者の攻撃行動の回復がそれぞれ促進、抑制されることがわかった。触角への体表物質の刺激により脳内でNOが増加すること、NOにより脳内のOA量が減少することから、体表物質-NO-OAというシグナル経路が脳内に存在すると結論づけられた。
著者
高倉 統一 荒木 誠之
出版者
熊本学園大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

1999年5月、日本社会保障法学会(於:早稲田大学)にて、本研究課題に関連するテーマ(イギリス社会福祉と個人情報開示請求権保護のスタンダード-法的基準と立場強化(エンパワーメント)の行為準則-)の学会報告をおこない、当該テーマについて日本社会保障法学会編『社会保障法第15号』に論文掲載した。今年度は、8月にイギリスの社会保障省を訪問し、2000年に制定された新立法の概要の聞取りと同10月にミルトン・キーンズのDe Montfort大学を訪れ、ソーシャルワーカー専門家養成課程における情報管理を含めた利用者権利擁護のヒアリングを行なってきた。その調査の一部は、2000年9月29日国際学術コンファレンス(第1セッション)に発表した。2001年、国内の調査を行い、国際比較として、個人情報保護制度の調査結果を報告書にまとめた。
著者
西川 元也 高倉 喜信
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

細胞を利用した治療法の効果増強を目的に、体外から投与した細胞の体内動態を精密に制御することのできる新規方法の開発を試みた。前年度までに確立した細胞の体内動態評価システムを用い、マウス線維芽細胞株NIH3T3の体内動態に及ぼす各種処置の影響について定量的に評価した。まず、投与経路・部位の影響について評価するために、細胞懸濁液を種々の臓器に注入し、その後の体内動態を経時的に追跡した。その結果、細胞の体内動態ならびに生存期間は投与部位に大きく依存することが示され、中でも脂肪組織や骨格筋に投与した場合に長期間生存することが明らかとなった。一方、マウスの全層皮膚欠損に対する細胞治療を目的とした検討では、NIH3T3細胞を損傷皮膚表面に滴下、あるいは近傍に皮内注射した場合には非常に速やかに消失した。また、GFPトランスジェニックマウス由来骨髄細胞を用いて同様の検討を行ったところ、骨髄細胞でも同様の傾向が認められた。このとき、静脈内投与でも損傷部位への集積が観察され、損傷が速やかに修復する傾向も認められた。組織内に注射により投与した場合には、投与された細胞近傍では血流が乏しく、酸素供給が不十分である可能性がある。低酸素条件下においては、低酸素誘導性因子HIF-1の安定化が生じたり、活性酸素生成が亢進することが報告されている。そこで、酸化ストレスの抑制を目的に、過酸化水素を消去するカタラーゼで細胞を処理したところ、移植後の残存細胞数が有意に増加した。従って、移植細胞の急激な消失を抑制するには、カタラーゼ誘導体などにより酸化ストレスを抑制することが有望であることが示された。
著者
倉掛 重精 中路 重之 熊江 隆
出版者
大分大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本研究計画は、別府大分毎日マラソン大会に参加した選手を対象者としている。平成17年の別府大分毎日マラソン大会は、2月6日に開催された。調査は大会当日のレース前とレース終了直後の2回行った。調査項目はアンケート、鼓膜温、体重、採尿および採血を行い、現在統計学的検討を行っている。そこで今年の対象者の結果ではなく、昨年度の結果について報告する。対象者41名の成績は、完走者29名、途中で棄権およびタイムオーバーのために関門を通過できず失格となった選手(以後非完走群)19であった。レース中の温熱環境条件は、風も強くなく、気温も好条件であった。選手の体重はレース後に2.1kg減少、途中で走るのを中止した非完走群でも1.7kgの減少で、完走した選手群は2.3kg減少が認められ、多量の発汗と血液の濃縮が示唆された。総蛋白値を用いて血液濃縮率を算出した。完走群の血液濃縮率は103.9%、非完走群では103.2%、全員の結果は103.7%の濃縮が認められ、発汗による体重の減少と血液の濃縮が認められた。完走群中には、レース後に脱水のために採尿できない選手がみられた。平成14年度の研究では、多量の発汗による脱水の影響したのか、血液生化学成分と尿中成分との間には、統計学的に有意の相関は認められなかった。完走した選手はレース後に筋逸脱酵素群の有意の増加が認められたが、尿中成分との間ではいずれの項目も有意の相関は認められなかった。そこで15年度は運動後に変動が見られる尿中ミオグロビンの項目を新たに加え、筋逸脱酵素群との関連について検討した。尿中ミオグロビンと筋逸脱酵素群は、いずれもレース後に有意の増加が認められた。そこで尿中ミオグロビンと筋逸脱酵素群との関連性について検討した。レース後のCKおよびLDHの値は、レース後の尿中ミオグロビン値と間で、それぞれ相関が認められた。そこでレース前後の変動について検討した。尿中ミオグロビンとGOT(r=0.347)、CK(r=0.684)、LDH(r=0.511)の間で、いずれもレース前後の差に相関が認められた。また発汗量が多く、レース後に脱水が認められ、発汗の影響を避けるため、レース後に水分を補給した選手を除いた完走群選手11名について検討した結果、CKと尿中ミオグロビンの間で高い相関(r=0.906)が認められた。これらの結果から尿中ミオグロビンが、筋逸脱酵素群の疲労評価の指標になりえる可能性を示唆しているものと考えた。平成16年度の調査においては、尿中ミオグロビンと筋逸脱酵素群の関連について、尿中ミオグロビンが疲労評価の指標となりえるか検討中である。
著者
橋本 和彦 倉持 智宏 木村 真人
出版者
工学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1995

合成ポリアミド(ナイロン)、特に単純な繰り返し単位をもつナイロンは、一般に自然環境下では分解しにくいと考えられている。機械的強度が強く人間生活に不可欠のナイロンに生分解性をもたせることができれば用途がさらに広がるはずである。本研究では、比較的構造の簡単な各種ナイロンの土壌中での分解性を検討した。まず、市販のα-ピロリドン(1)を高真空ライン中で精製し、そのアニオン重合により高分子量のナイロン4を得た。また双環ラクタム、8-オキサ-6-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-7-オン(2)からも糖基幹構造を主鎖にもつポリアミド(3)を合成した。合成したポリアミドおよび市販ナイロンから調製した膜を、名古屋大学の農学部付属農場の各種連用土壌中に埋没した。その結果堆肥を含む土壌中でナイロン4膜のみが特異的に迅速に分解消失した。一方、ポリアミド3は酸性土壌中で加水分解することがわかった。ついでナイロン4膜とナイロン6とのブレンド膜を作成し、同様にして土中埋没試験を行ったところ、堆肥を含む土壌中でナイロン4膜のみが特異的に迅速に分解消失した。また他の土壌(堆肥を全く含まない土壌、化学肥料含有土壌、クロレラ含有土壌など)中ではナイロン4膜もほとんど分解しなかった。堆肥のみではナイロン4膜はほとんど分解せず、土壌中の堆肥含有量には最適値があること、また畝の中心から採取した土壌より、畝から1m離れた土壌中の方がナイロン4膜が迅速に分解することもわかった。現在までに培養法により、堆肥を含む土壌中に生息する分解菌の1つを単離することに成功した。この成果を基に生分解性ナイロン開発に弾みがつくものと確信する。
著者
大倉 元宏
出版者
成蹊大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

平成16年から2カ年にわたって視覚障害者用道路横断帯の最適幅と横断帯を構成する新しい突起体形状,およびその配置について検討した.さらに,視覚情報の得られない歩行における基本特性を調べ,横断帯の必要性を裏付けた.横断帯の幅に関しては大学構内の道路に幅30,40,50,60cm横断帯を各20m敷設し,目隠しを施した21〜23歳の晴眼大学生17名(男14,女3)を被験者として,歩行実験を行った.踏み外し歩数と歩きやすさ等の主観的応答から,30cm幅では狭すぎ,40cmより広い幅が一つの目安となると考えられた.横断帯を構成する突起体に関して,車輪を有する乗り物や歩行者に対してストレスが少ない突起(高さ5mm,底面と上面の直径それぞれ23.5,6mm;以下トライアングル型)を開発した.そして,それに連携して,点状横線部の両側に点状縦線を配するパターンを提案した.点状縦線の存在で,白杖による横断帯と足裏による道路面との境界部の検知性が高まることが予測される.このことを確かめるフィールド実験を実施したところ,点状縦線の効果を示唆する結果が得られた.さらに,道路横断帯の必要性の裏づけをとるために,視覚遮断直進歩行における周囲音の影響を調べた.周囲音条件として進路左右のスピーカから音圧の異なるホワイトノイズ(70,50dB,なし)を設定した.被験者には指定された手がかりを使って出発方向を決めた後,設定された周囲音条件下で直進歩行を求めた.被験者は13名の目隠しをした晴眼者であった.周囲音は直進時の歩行軌跡に有意な影響をもち,軌跡を音源とは反対側に偏軌させる.さらに音圧が高いと偏軌程度が強まることがわかった.道路横断は一般に直進歩行を求められるが,例えば視覚障害者が横断歩道を渡ろうとして,すぐ脇にエンジンのアイドリング音の高いトラックなどが止まっていれば,それとは逆の側に偏軌し,走行車両との干渉が危惧される.横断帯は直進歩行を維持するための有効な方法と考えられよう.

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著者
服部 淳 石原 昭 山口 繁 藤村 光夫 市川 博 堺 裕 藤倉 一郎 飯田 良直 乃木 道夫 三浦 勇 佐野 鎌田郎 臼田 多佳夫 外山 香澄
出版者
東京女子医科大学学会
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.151-151, 1963-04-25

第118回東京女子医科大学学会例会 昭和38年2月22日(金) 東京女子医大病院第一臨床講堂
著者
小倉 いずみ 林 以知郎 白川 恵子 竹内 美佳子
出版者
大東文化大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究の成果は二つあり、第一に、新大陸のアメリカでコネチカット植民地がいかに創設されたかを解明し、第二にトマス・フッカーの生涯と思想を解説した。コネチカット創設者のフッカーは、英国、オランダ、ボストン、ハートフォードと次々に移動したが、宗教者として正統派の会衆主義の教義を確立し、政治家として民主主義的なコネチカット基本法の制定に尽力した。本研究は思想家・宗教者としてのフッカーを、日本で初めて解明した。
著者
大津留 智恵子 石橋 章市朗 小西 秀樹 土倉 莞爾 廣川 嘉裕 安武 真隆
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

グローバル化によって多文化共生が現実となる社会において, 政治の周縁に置かれてきたマイノリティや若年層の政治参加意識と能力を高め, 民主政治を活性化する手がかりを, 多文化化の先行する社会との比較の中で検討した。マイノリティや若年層の政治参加にとって, 市民社会における政治的資源やその利用のためのネットワーク形成の重要性が確認された。また若年層の政治意識の調査からは, 政治的社会化において教育の果たす役割が認識できた。
著者
茂木 一司 福本 謹一 上田 信行 苅宿 俊文 刑部 育子 阿部 寿文 下原 美保 佐藤 優香 宮田 義郎 熊倉 敬聡
出版者
群馬大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

異文化理解・多文化共生の可能性を探る身体・メディア活用型プロジェクトの主要な成果は、(1)日本文化(美術)、身体を基礎にしたアート(学習)、障害児(者)のアート(学習)、プログラミング(cricket, scratch)による創造学習、などのワークショップの開発・実践・評価、(2)カフェ的な空間=オールナタティブスペースの創出と学びの検討、(3)ワークショップにおけるファシリテータ養成プログラムの開発とNPOの教育力の活用、の3点である。(1)では、異文化や多文化を単なる外国文化との交流だけでなく、障害のあるなしも含めた広い概念で捉え直し、日本文化(美術)を基盤にした(ワークショップ型学習には不可欠な)身体性を中心に据えたワークショップ(型学習)の開発・実践・評価を行い、それが表現性や協同性という特色によって、学びを創造的にし、(学校教育を含めた)現代の閉塞的な教育状況において非常に有効であることが実証できた。(2)(3)では、新しい学びの空間(学習環境のデザイン)をカフェという「ゆるやかにつどい語らう場」での学びがやはり現代教育にとって有効であることやワークショップという学びを支えるファシリテータに必要な資質の検討や育成のプログラムを作成した。
著者
麻生 武 吉良 尚子 倉中 晃子 覚前 未央 滝田 景子
出版者
奈良女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

4つの研究を行った。1つは、夢をめぐる親子の会話の研究である。幼稚園児・小学校1年生・3年生の親子53組に夢について会話してもらった録音データを分析した。2つ目は、幼稚園児の夢理解についての研究である。年少・年中・年長計90名の夢理解に関して現象学的な研究を行った。3つ目は、大学生が覚えている一番幼いときの現実の記憶と夢の記憶に関する研究である。4つ目は、大学生の夢理解に関する研究である。それらを踏まえて夢を大切にする文化の創出の重要性を指摘した。
著者
三浦 宏文 小松 督 飯倉 省一 下山 勲 TADASHI Komatsu
出版者
東京大学
雑誌
試験研究(B)
巻号頁・発行日
1992

本研究は,宇宙機(宇宙ロボット,人工衛星など)の姿勢制御に関するものである.平成4年度は微小重力を模擬するために,剛体を6自由度で支える実験機構を設計し,作成した.平成5年度は主に垂直成分の微小重力模擬装置の制御について詳細な研究を行った.これまでは,微小重力を3次元的に模擬するのは難しいので,空気軸受けなどで2次元的な支持装置を作って実験するのが普通であった.そこで,本研究では,特別の創意工夫によって,3次元的に空中に浮遊する物体の模擬装置を開発した.姿勢についてはジンバルによって3方向に自由に,重心周りに回転できるような構造にし,重心の移動に関しては,水平方向には空気軸受けによって2次元の自由度を与え,垂直方向にはカウンタバランスを備えること(平成4年度)、およびロードセルを備えて加速度を検出してフィードバックをかけること(平成5年度)で重さをキャンセルした.空気軸受けのための空気は,ボンベを装置に搭載することによってチュウブによる外乱を防いだ.宇宙機の姿勢制御には,本研究ではまったく新しい方法を提案しようとしている.それは,宇宙機を複数個に分割し,それらをユニバーサルジョイントで結合し,このジョイントには内力が発生できるようなアクチュエータが備えられていて,相対運動を引き起こすことによって全体の姿勢を制御しようというものである.平成4年度は、おもにこの研究を行い、最終年の平成5年度はロードセルによる微小重力制御系についてのより実用を目指した研究を行い理論と実験の良い一致を見た.
著者
板倉 安正 稲葉 宏幸 澤田 豊明
出版者
滋賀大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

本研究の目的は、毎年多くの被害を出している土砂災害を軽減・防止するために音響法と映像法を組み合わせた新しい監視システムの開発を目指して、その可能性を検討し実用化への見通しを着けることである。3年間の研究を通して次の点を明らかにすることができた。(1)音響法としては、土砂移動に伴って発生する地中振動をマイクロフォン型音響センサによって捉える方式を提案し、これが他の振動センサに比べてS/N比が優れていることを明らかにした。さらに、これをオイル浸タイプにすると検知範囲が約2倍向上することを示し、その改良に努めた。(2)映像法としては、土石流のビデオ映像から市販のMPEGソフトを用いて画像の動ベクトルを抽出し、その変化の大きさから土石流の近接を知る方式を提案した。同じビデオ映像に計算機対話型空間フィルタ速度計測法を適用して土石流の流下速度を計測することに成功した。また、他の画像処理法として時空間勾配空間法や相関法を適用して、土石流表面速度の2次元速度ベクトルの推定にも成功し、精度の点で相関法の方が優れていることを示した。(3)音響法と映像法を組み合わせることによって、濃霧や豪雨で見えにくくなった映像法を音響法が補い、また、音響法では実体が明確でない点を映像法が補うという利点を生かすことができると期待される。実際の土石流によってこの利点を確認するまでには至らなかったが、具体的なシステムを提案することによって次の研究を展望することができた。(4)これらの成果を、海外調査結果と併せて、2001年11月スイスベルン市郊外のスイス国立水理・地理調査所で開催された土石流モニタリング技術のワークショップで発表して評価を得るとともに、これからの研究の見通しを得ることができた。
著者
安藤 雅孝 田部井 隆雄 渋谷 拓郎 大倉 敬宏 平原 和朗 鎌田 浩毅 石川 尚人
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1999

[GPS観測]1.フィリピン諸島の南方の海域(モルッカ海)におけるプレート沈み込み様式を推定するために、インドネシア・スラウェシ島北東端のManadoとミンダナオ島中央のDavaoなど10カ所でGPS観測を行ない、これらの地域の変動速度を(傾斜角30度,固着域下限の深さ60km),南部では東傾斜モデル(傾斜角50度,固着域下限の深さ40km)が得られた。2.マコロード回廊周辺およびフィリピン断層沿いの14カ所でGPS観測を今年度も継続して行った。ユーラシアプレートに相対的な速度場を求めたところ、すべての観測点で西ないし北北西向きに5-9cm/yearの値が得られた。しかし、マコロード回廊の北側と南側ではユーラシアプレートに対する速度が系統的に異なり、マコロード回廊内および回廊の南側が、北側の地域に対して年間2cmの大きさで東ないし北東方向に変位していることが明らかになった。また、マコロード回廊内で2〜4×10E-7の南北ないし北北西-南南東方向の伸長成分が検出された。[地球年代学]フィリピン海溝での沈み込みの開始時期に制約を与えることを目的として,ルソン島ビコール半島の13の火山から37試料を採取し,そのK-Ar年代と化学組成の測定を行った.その結果,ビコール半島のフィリピン火山弧の活動は約7Maにまでさかのぼることが分かった.本研究のデータとSajona et al.(1993,1994)のデータをあわせてみると,沈み込みが北から南へ伝播したというモデルと調和的である.また,パラワンブロックの衝突時期が8-9Maと推定されていることと今回のデータは矛盾しない.[火山地質]1991年ピナツボ山噴火時に形成された火砕流堆積物に対して残留磁化の段階熱消磁実験を行った。結果、ある地点の試料は320-440℃まで温度領域で方向が類似する安定な磁化成分が検出された。これは、火砕流中央部が定着時に最大その温度まで上昇したこと示唆する。また、別の地点の試料のほとんどはマグネタイトのキュリー温度(580℃)までの温度領域で認められる類似した方向をもつ安定な一つの磁化成分を示した。このことは、その温度以上に最下部が上昇していた可能性を示す。
著者
大倉 敬宏
出版者
京都大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
2000

マコロード回廊周辺およびフィリピン断層沿いの14カ所で1996年4月から2000年9月までに行われた10回のGPSキャンペーン観測に関して、そのデータ収集および整理を行なった。これらのデータおよびフィリピン内外のIGS観測点のGPSデータをBernese Ver. 4を用いて解析し、ユーラシアプレートに相対的な速度場を求めた。その結果、すべての観測点で西ないし北北西向きに5-9cm/yearの値が得られた。しかし、マコロード回廊の北側と南側ではユーラシアプレートに対する速度が系統的に異なり、マコロード回廊内および回廊の南側が、北側の地域に対して年間2cmの大きさで東ないし北東方向に変位していることが明らかになった。また、マコロード回廊内で2〜4×10E-7の南北ないし北北西-南南東方向の伸長成分が検出された。また、マコロード回廊内の回転成分は反時計回りに0.2-0.4マイクロラジアン/yearであり、この値も周辺より若干大きめであった。この0.2-0.4マイクロラジアン/yearという値は古地磁気学的手法により得られた、過去200万年のブロック回転運動(最大40度)の平均回転速度とほぼ等しい。求められた伸長成分や回転成分がマコロード回廊の生成時から連続するものであるとすると、マコロード回廊の生成には、約2Maにフィリピン海プレートの沈み込み様式がかわったことでパラワンブロックとフィリピン島弧の再衝突がおこったことが密接に関係していると考えられる。
著者
倉橋 弘
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.23-27, 1992
被引用文献数
2

大英自然史博物館所蔵のマレーシア産のショウジョウクロバエ属Dexopollenia Townsendの標本を調べる機会を得た。その中にサバ州(北ボルネオ)キナバル山で採集された1新種を発見したので, ここにDexopollenia wyatti sp. nov.サバショウジョウクロバエ(新称)と命名し記載した。また, ハワイのビショップ博物館の標本中にも本種の1雌を見つけたのでパラタイプに含めた。本種は体全体が橙黄色で胸背にカールした金髪を装い, 前胸側板剛毛をもたないのが特徴である。作成した東洋区産9種への検索表に示した外部形態のほか, 雄の外部生殖器の特徴により近縁のD. testacea Townsend, 1917アッサムショウジョウクロバエ(新称)から区別される。アッサムショウジョウクロバエの外部生殖器の形態についてはこれまで知られていなかったので, 本新種との比較のため今回はじめて図示された。