著者
岩本 珠美 平原 文子 金山 功 板倉 弘重
出版者
県立広島大学
雑誌
県立広島大学人間文化学部紀要 (ISSN:13467816)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.17-25, 2007

本研究では、キュウリエソを原料として麹菌で発酵させて作成した魚醤がラットの脂質代謝に及ぼす効果を検討した。Fisher-344系雄ラット7週齢、1群6匹ずつ4群を設けた。AIN-93G飼料組成を基本とした飼料を与えた群を対照(Cont)群とし、基本飼料+コレステロールを飼料とした群をChol-Cont群、基本飼料+コレステロール+粉末化した魚醤(FSPF)1%を飼料とした群をChol-F1群、基本飼料+コレステロール+FSPF3%を飼料とした群をChol-F3群とした。これらの飼料でラットを4週間飼育し、血清成分、肝臓中の脂質、トコフェロールについて検討した。その結果、体重増加量は、4群間で有意な差はみられなかった。血清脂質についてChol-Cont群とChol-F1群およびChol-F3群を比較検討したところ、血清総コレステロール(TC)値はChol-F1群、Chol-F3群で有意に高値を示し、魚醤の添加効果は認められなかった。血清トリグリセリド(TG)値はChol-F1群では、Chol-Cont群に比べ、有意の低い値であった。また、血清α-Toc値は、Chol-Cont群よりもChol-F1群、Chol-F3群で高い値を示した。さらに、肝臓中の脂質では、TG値はChol-Cont群、Chol-F1群、Chol-F3群の3群間で有意な差は認められなかった。今回の検討では、粉末化した魚醤の摂取により血清TG値の低下が認められたことから、キュウリエソを有効活用できる可能性のあることが示唆された。
著者
岸本 直人 倉島 敦子
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. RCS, 無線通信システム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.11, pp.33-37, 2003-04-10

従来,音声・映像サービスの主観品質評価試験を実施するには,専用設備を有する実験室と専任スタッフによる監督が必要であり,試験会場は限られ,試験日程の調整も必要であった.そこで,誰もが都合の良い場所・都合の良い時間帯で主観品質評価試験に参加できる環境を構築する目的で,被験者自身による簡易な操作だけで主観品質評価試験を実施できるPCツール(ポータブル主観品質評価ツール)を試作した.本稿では,試作ツールの特徴を紹介し,品質評価性能の検証結果について報告する.
著者
白倉 幸男 与謝野 有紀
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.2_37-2_54, 1991-11-01 (Released:2009-03-31)
参考文献数
7
被引用文献数
1

本研究では、Fararoの公理をもとに、階層認知と階層帰属意識の問題について数学的な定式化を行ない、理論展開する。ここでは、次の点を明らかにする。(1) 階層イメージの形成において、各人は自己の属するイメージ階層をもっとも少数派だと認知する。そして、自己の属する階層から離れるほど多数派になっていくと認知する。(2) また、次元もしくはランク数が増加するにつれて、ますます自己を少数派だと認知する。(3) イメージ階層分布は対称で上に凸である。(4) 階層システムにおいて次元数が増加するほど、階層帰属意識はより中レベルに集中する。(5) Fararoの公理を拡張し、スキャニング過程を一般化することによって、イメージ階層および客観階層における順位の一般式を明らかにする。(6) イメージ階層の順序の非保持性を「逆転現象」としてとらえ、その数理的なメカニズムを明らかにする。(7) そして、客観階層と主観的なイメージの間の乖離から生じる差異化と同質化のパラドキシカルな関係を明らかにする。
著者
竹元 伸之 小檜山 律 松浦 克彦 岡野 良 倉富 雄四郎
出版者
日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 : 日本気管支研究会雑誌 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.79-83, 1996-01-25

肺癌の気管支形成術後の吻合部狭窄に対し, バルーン拡張とNd-YAGレーザーを併用し良好な結果を得た。症例は57歳, 男性。左上大区入口部の扁平上皮癌に対し, ほぼ4/5周にわたる気管支楔状切除を伴う左上葉切除術を施行。術後46日目に吻合部が屈曲と肉芽増生および分泌物貯留によるほぼ完全な閉塞を来たし, それによる肺膿瘍・無気肺のため緊急入院となった。理学療法・抗生剤治療後, 高耐圧の血管拡張用バルーンを用いた拡張術を2回, その後Nd-YAGレーザーによる肉芽焼灼を3回(計3669J)施行し気道の開存をはかった。1ヵ月で肺膿瘍・無気肺は軽快し現在(術後18ヵ月)に至っており, 両者の併用は非常に有効であった。
著者
梅原 大祐 田野 哲 守倉 正博 杉山 隆利
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IN, 情報ネットワーク (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.276, pp.65-70, 2009-11-05

デジタルデバイドや不感地帯の解消を目的として無線中継局を用いた無線アクセスシステムが検討されている.前回の報告では,各無線ノードにCSMA(Carrier Sense Multiple Access)プロトコルを実装した2ホップ無線アクセスシステムにおいて,ネットワークコーディングを適用しない場合と適用した場合の双方において,中継ノードを介したエンドノード間が隠れノードでない場合とある場合のスループットを評価した.本稿では,中継ノードを介したエンドノード間が隠れノードである場合においてスループットに対するRTS/CTS(Request To Send/Clear To Send)の効果について検証する.RTS/CTSを導入したときのオーバーヘッドを評価するため,提案スループット解析モデルにIEEE802.11aのPPDU(PLCP Protocol Data Unit)フレーム構成,IFS(Interfame Space)時間及びスロットタイムを適用する.ここで,PLCPはPhysical Layer Convergence Protocolの略である.解析の結果,オーバーヘッドの増加にかかわらず,RTS/CTSとネットワークコーディングにより高いコーディングゲインが得られることを明らかにする.
著者
澤登 俊雄 村井 敏邦 前野 育三 福田 雅章 荒木 伸怡 斉藤 豊治 新倉 修
出版者
国学院大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1994

本研究は、主として、アメリカ、イギリス カナダ、ドイツ、フランス、北欧各国の少年司法制度、児童福祉制度における「こどもの権利保障」の内容につき、体系的に整理された詳細な「共同調査項目表」を作成し、それに基づいて調査・分析を行った。この「共同調査項目表」は、少年手続を審判前、審判段階、処分決定と処遇の3段階に分け、それぞれ少年の権利保障、適正手続の観点から有意義と思われる全25項目(さらに細項目は約225項目に分かれる)について調査する質問票であり、各質問番号を各国横断的に比較することで、明確に各国権利保障の状況の比較分析ができるよう工夫されている。これについて、最新の法令、判例、運用等を紹介したことはもちろん、これらでは十分に解明しえない諸点については、外国人研究者への直接質問等により正確を期した。これらの比較の上に立って、各段階、各国毎に、適正手続、国親思想、保護主義、刑罰主義、職権主義、当事者主義等の基本概念を縦軸に、「少年司法運営に関する国連最低基準規則」、「子ともの権利条約」等、子どもの権利保障を重視した諸々の国際準則が各国においてどのような影響を与えているかを横軸に、総括的なまとめを行った。その際、これらの知見が、日本法、とりわけいま問題となっている少年手続の基本構造をめぐる議論にどのような示唆を与えるものかを常に念頭に置いて分析したことはいうまでもない。詳細は今年中に発行を予定されている書物(「少年司法と適正手続」)に譲ることとするが、国際準則の影響下、全般的には子どもの権利保障が進みつつあるものの、各国固有の歴史的、政治的、社会的背景を反映し、各国における問題関心、権利保障の具体的な現れ方には、看過できない大きな相違があることが感じられた。
著者
齋藤 昇 秋田 美代 跡部 紘三 村田 勝夫 佐藤 勝幸 今倉 康宏
出版者
鳴門教育大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究は,教員養成大学大学院の開発途上国への設置に向けての学術調査研究を行うことを目的としている。学術調査の結果,次のことがらが明らかになった。1 ラオスの教育大臣,教育省教員養成局長から,ラオスへの大学院修士課程設置について,国として歓迎するとの意向を受けた。また,ラオス教育副大臣から,具体的な設置場所について提案があった。さらに,設置について鳴門教育大学への協力要請があった。2 ラオスの小・中・高等学校の学校制度は,5-3-3年制である。ラオスの教員養成学校卒業生の就学総年数は,14年間である。ラオス教育省は,中学校を4年制に改革する計画を立てている。3 ラオスの教員養成学校(8校)理数科教員の学力及び授業実践力は,かなり乏しい。ラオスの理数科教育の質を高めるためには,教員養成学校教員の質の向上が必要である。4 ラオスの教員養成学校の施設・設備,特に実験装置,実験器具・薬品類は,皆無に近い。大学院修士課程を設置する際には,それらの設備の充実が必要である。必要な設備の例を列挙した。5 ラオスの教員養成学校教員の学位取得状況は,修士が16%で,博士が0%である。また,教員養成学校教員の100%が修士課程の設置を希望している。6 ラオスの教員養成学校及びラオス国立大学教育学部のカリキュラムを調査し,それをもとにラオスに適する大学院修士課程理数科コースのカリキュラム案及び履修方法案を作成した。7 大学院修士課程のラオスへの設置に際して,タイのコンケン大学から連携協力の申し出があった。それに基づき,連携した場合のカリキュラム素案を作成した。
著者
矢倉 研二郎
出版者
阪南大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

カンボジアの都市出稼ぎ労働者と農村世帯を対象とした調査で得たデータを分析した結果,農村の若者の都市への出稼ぎは、出会いの機会の提供を通じて他州出身者間の結婚を増やしており、その結果、そのまま出稼ぎ先や結婚相手の故郷に住むという形で、とくに零細農家の子どもの離村を促していることが明らかになった。親たちは,離村した子どもには農地を分与しないことが多いが,原則としては均分相続を志向しており,カンボジアでの農地細分化は今後も続くと予想される。
著者
武藤 三千夫 鹿島 享 水野 敬三郎 山川 武 稲次 敏郎 角倉 一朗
出版者
東京芸術大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1987

おしなべて美や芸術の現象を顧みるとき、その問題へのアプロ-チの切り口はきわめて多様であるが、我々は、《品質》という共通テ-マによってア-チストや公衆をも含めた芸術的な現象関係性に注目して、二年間にわたる各分野での実地調査を踏まえた理論的・歴史的研究を遂行した。そしてその研究成果としてそれぞれ以下のような知見をえた。すなわち、(1) 原理論的研究ー芸術と美的品質ーとして、ー武藤「美的質の開かれ」。(2) 比較文化論的研究として、ー稲次「都市景観における美的品質の評価要因」、松島「古代メソポタミヤの神像とその〈美〉について」、鹿島「文化形成体と美的品質ー楽器を画題とする絵についての一考察」、井村「趣味判断におけるアプリオリとハビトウスー美的構えの制度化をめぐってー」、佐藤「イギリスのチンツとウイリアム・モリス」。(3) 比較芸術学的個別研究ー各ジャンルにおける表現と美的品質ーとして、西洋音楽のばあいの角倉「音楽作品の受容における響きの質的趣味の変遷」(仮題)、西洋美術のばあいの永井「西洋美術における品質問題の諸相」、日本美術のばあいの山川「化政期江戸画壇の成立をめぐっての作品における質的差異」(仮題)、東洋美術のばあいの水野「関西方面諸寺に蔵する木彫仏のX線透過撮影などによる素材と表現」(仮題)。以上のように、各分担者の研究はそれぞれの立場からなされた多彩な研究となったが、それも文化が共通に有する質的なものの現れが歴史的・地理的にきわめて多様な差異として映るからであろう。しかし各立論は、根本において総合研究としての一貫性を十分に維持しえたと確信する。
著者
松島 文子 板倉 一枝 横山 弥枝
出版者
鳥取短期大学
雑誌
鳥取短期大学研究紀要 (ISSN:13463365)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.61-72, 2003-06-01
被引用文献数
1

鳥取県内で食されている豆類について, 調理および豆加工品の利用状況, 食事での位置づけ, 伝統的料理の特徴と地域特性などに関するアンケート調査および聞き取り調査を行った. 調査の結果, 豆類ではだいず, あずき, グリンピース, さやいんげん, 豆加工品では木綿豆腐, 油揚げ, おから, 凍り豆腐などが日常食や行事食によく用いられていた. 自家栽培の豆の利用率が高く, 大豆は豆腐・味噌など伝統的な加工利用もみられた. 鳥取県の特色ある伝承料理, 郷土料理として, あずき雑煮, そらまめの粉ふき, そらまめの皮取り, 豆ようかん, こも豆腐, いただきなど地域に特有の調理文化が受け継がれていることが確認された.
著者
朝倉 昭
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.28, no.8, pp.438-443, 1972-08-01
著者
藪田 貫 浅倉 有子 菊池 慶子 青柳 周一 桑原 恵 沢山 美果子 曽根 ひろみ 岩田 みゆき 中野 節子
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究では通常の分担者による研究会の積み重ねという形を取らず、日本の各地で「江戸の女性史フォーラム」を順次開催し、地域の女性史研究の成果と資料に学ぶというスタイルで3年間、進めた。その結果、大阪(2005.7)徳島(2005.12)、鳥取(2006.5)、東京(2006.7)、福岡(2006.12)、金沢(2007.9)、京都(2007.11)の7ケ所で開催することができた。その成果は、いずれも報告書の形で公表されているが、地域に蓄積された女性史の成果の掘り起こしと交流に貢献できたと確信する。とくに藩制史料の中から奥女中を含め、武家の女性の発掘が進み、菊池(柳谷)・浅倉・桑原らが中心となって「藩社会の中の女性」が一つの新しい潮流となっている。また活発な研究活動は、国内外の学会発表という形でも結実した。国内では立教大学日本学研究所の公開シンポジュウム(2006.5)に沢山と藪田が、ジェンダー史学会・女性史総合研究会共催のシンポジュムには曽根ひろみ(協力者)が、それぞれパネリストして参加した。国際的な学術交流では、鳥取と京都のフォーラムにアメリカとオーストリアから研究者を招き、また藪田が、ケンブリッジ大学での研究会「江戸から明治の女性と読書」(2006.9)、ボストンでのアメリカ・アジア学会分科会「19世紀日本の売買春と政治」に報告者として参加した。研究課題としてあげた研究者の世代交代を進め、若手研究者を養成するという点では、若い大学院生のフォーラムへの参加も少なく、残念ながら十分な成果を挙げていない。また分担者の研究の成果にもムラがあり、地域的にもまたライフコースについても、均等に成果を上げるには至らなかった。反省点であり、今後の課題である。
著者
大賀 圭治 辻井 博 米倉 等 福井 清一 岩本 純明 松本 武祝
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

中部ジャワの「定点観測村」で、持続的農業発展の条件を明らかにするための詳細な調査を実施した。農家経済に関する基本的データ収集と同時に、農外労働市場、多様な金融制度、近年注目されている社会林業の制度と運用実態等についてデータ収集を行った。主な知見は以下の通りである。(1)農産物価格や資材価格など、農業を取り巻く環境変化に対する農家の反応は機敏である。また農家は、さまざまなリスク回避措置を経営内に組み込んでいる。(2)水田利用は集約的である。しかし地力循環という点で大きな問題をかかえている。(3)農家構成員の就業先選択は通説のように「無差別」ではない。また、農業部門における家族労働と雇用労働の質については完全に代替的ではないと見なされている。(4)農家の作付け農作物の選択基準においては、自給目的が強くでており、商品経済的観点は弱い。(5)親戚・隣人間での金銭的相互扶助に関しては、共同体規範の強い影響がうかがえる。(6)回転講への参加目的は、低所得層は貯蓄・融資、高所得層は隣人とのコミュニケーションにある。共通して返済率は高く、貧困層の生活水準の向上に貢献している。(7)沿岸丘陵部の天水依存地域では、持続的農業開発の条件はより厳しい。しかし、作物と林木とを巧みに組み合わせた持続的な生産方式が定着している。(8)多様な相互扶助組織がなお機能しており、ソーシャル・セーフティーネットとしての役割を果たしている。(9)国有林経営では、最終生産物を国と農家・農家グループが分収する新たな制度が導入され、農家に持続的な森林管理を動機づけるものと注目されている
著者
倉田 正一 重田 定義
出版者
公益社団法人日本産業衛生学会
雑誌
産業医学 (ISSN:00471879)
巻号頁・発行日
vol.3, no.9, pp.471-479, 1961-11

The Japanese "Kana" typewrite is going to be widely used in offices. But the arrangement of letters and numbers on the keyboard is not standardized among various manufactures. A study was made to determine the ideal arragement in the keyboard for maximum efficiency in man-machine system. On the side of machine, sizes of various keyboards, loads for each row as conferred by hands, and fingers were measured. And on the side of man, the physiological capacities of fingers were analyzed. Working area of fingers or motion of upper extramities related to typwriting, anatomical position of the finger phalanges, electromyogramm, tapping rate and compound reaction time were observed on skilled and unskilled typists. It is suggested from the analysis of the data secured in these investigations that keys of the "Kana" typewriter are not so arranged that the load of each finger is fitted to the physiological capabilities of the finger.
著者
伊達 章 倉田 耕治
出版者
宮崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

画像,音声,自然言語,塩基配列などの大規模データに対し,確率モデルを構築し,認識,予測など確率推論を行なうことが,計算機性能の急速な向上に伴い可能になっている.ベイズ推論の本質の一つは,データを観測した後の事後確率分布の利用にあるが,その分布の構造については不明な点が多く,分布が奇妙な構造をもつことは十分考えられる.本研究では,事後確率分布から多数のサンプルを生成することで,事後確率分布の構造を反映した意味のある推定量を求める手法を開発した.単純な隠れマルコフモデル,格子型マルコフ確率場を用いて計算機実験をおこない,本手法の有効性を確認した.
著者
阿部 好一 黒坂 俊昭 塚田 康弘 上倉 庸敬 岡田 行雄
出版者
神戸学院女子短期大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1985

舞台における空間と時間について, その特色を明らかにし, 併せて現代演劇の独自性と将来への展望を考察した. 舞台の空間については, その一種の「曖昧さ」に着目した. たとえば映画では, カメラは対象を接写から遠景にいたるまで様々の距離において把えることが出来る. この事実は, 映画空間が観客の目にとって自由に縮小・拡大するのと同じ意味を持つ. 演劇の場合, 観客にとって舞台空間はつねに一定の大きさと形態をしか持てない. だから時にはストーリー展開に直接関係のない夾雑物まで観客の目にさらけだす. このことは舞台空間の不自由さと否定的に考えられているが, チェーホフやウェスカーの作品のある場面のように, 舞台上のふたつの人物群が互いに無関係な行動, 台詞をとることによって本来の意味以上の深い意味を表わすことがある. この「多義性」は極めて演劇的な表現である. と我々は考える. ついで舞台の時間については, その「流動性」に着目した. 映画に比べ演劇は, 時間の転換が不自由であると言われてきたが, 現代演劇では自由で柔軟な時間構造を持つようになってきている. それらは主として演出の技法によって試みられてきたが, 近年はシェーファーの『アマデウス』のように, ドラマトウルギーそのものに自由な流動性を持つものが現われている. その流動性は, ドラマに一種の「抽象性」をとりいれることによって保証されている, と我々は考える. 現代演劇にあらたな可能性をもたらすものは, 「再生された異化」であろう, と我々は推定する. 演劇のコミュニケーションは, 舞台上の人物相互のあいだに行なわれるものと, 舞台・客席のあいだに行なわれるものとの二重構造を示している. しかし実際の演劇の場では, 多くの観客はこの両者を混同し, 舞台上の人物に同化しがちである. だからこそブレヒトは「異化」が必要であると考えた. 現代演劇はこの異化を, あたらしい技法によって, 再活性化するのだ.
著者
倉田 玲
出版者
立命館大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

日本国憲法第15条第3項には「成年者による普通選挙を保障する」と明記されているが,公職選挙法第11条第1項には「次に掲げる者は,選挙権及び被選挙権を有しない」として,第2号に「禁錮以上の刑に処せられその執行を終るまでの者」を,第3号に「禁錮以上の刑に処せられその執行を受けることがなくなるまでの者(刑の執行猶予中の者を除く。)」が列記されており,ここに議会制民主主義の政治過程の根幹に関わる重大な憲法問題がある。この問題の本質を探るため,従来から日本の選挙法の理論と実務にモデルを提供してきたアメリカ合衆国の諸州における同種の問題の構造を実証的に検分してきた。現地の関連訴訟の書類など第1次資料を中心とした文書の収集と整理を進めたとともに,とりわけニュー・ジャージ州立ラトガース大学に設置されている2つの法科大学院の双方を訪問し,カムデン校の州憲法研究所とニューアーク校の憲法訴訟クリニックに属する研究者各位の協力を得て,裁判所に係属中の訴訟の関係者に対する聴取調査を含む現地調査を遂行したことにより,近年では市民的及び政治的権利に関する国際規約に基づく人権委員会の報告書(2006年9月15日),欧州安全保障協力機構の民主制度人権事務所の報告書(2007年3月9日),あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約に基づく人種差別撤廃委員会の報告書(2008年3月5日)など国際機関の文書によっても抜本的な是正が勧告されるまでになった同国における重罪犯の選挙権剥奪が,州権基調の連邦制度を固有の背景としつつ,それを共有しない日本の法制度にも通底する根源的な問題として,破廉恥罪という古典的な概念の歴史的な沿革に由来する要素を核心部分に内包していること解明した。また,現在の世界各国に類例をみないほど広範囲にわたって峻厳な剥奪の実態が看取される合衆国の諸州においては,この種の制度を運用する選挙実務の次元でもマイノリティ集団に属する有権者に対して差別的な効果を及ぼしている重大な過誤が多発していることを検知し,この点についても分析した。