著者
倉橋 正恵
出版者
立命館大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

世界最大規模を誇るボストン美術館浮世絵版画コレクションの中で、その大部分を占める歌川派役者絵のうち4850点を整理・考証・目録化した。さらに、コレクションのデータベースを構築し、当該館のHP上でのデータベース公開にデータを組み込む事によって世界的な浮世絵研究、歌舞伎研究の基礎を整え、今後の研究発展のための土台を築いた。
著者
羽倉 弘人 小泉 俊雄
出版者
千葉工業大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

1. 簡易空中写真測量法をを利用した風の観測システムの開発現地に於て地上付近の風の流れを3次元的に捉えるシステムとして簡易的な空中写真測量を用いて測定するシステムを開発した。このシステムは、トレ-サ-として放流した風船を2個の35ミリカメラによりステレオ撮影し、その流跡線を解析するものである。撮影装置を搭載するプラットホ-ムとして、カイト気球を用いて空中より写真撮影する方法と鉄塔を用いて斜め空中写真を撮影する方法の二つの方法を開発した。2. 風の流れの流跡線測定と解析上記の観測システムを用いて、JR京葉線新習志野駅前の千葉工業大学芝園キャンパスに於て、建物周辺気流の観測と平地における気流の観測を行った。その結果、建物付近の剥離流の存在などの気流の様子を自然風観測のデ-タとして確認した。3. 風の鉛直分布特性と地表面粗度との関係について。海岸都市部に位置するJR京葉線新習志野駅前の千葉工業大学芝園校地に於て、カイト気球を用いて高さ約400mまでの風の観測を行った。今回の観測では予定していた各方位の風向の風や、強風時の風を観測することが出来なかった事、また地表粗度の抽出に時間がかかりすぎ十分解析する事ができなかったが、粗度の効果は風速の違いによりその効果が異なるなどの結果が得られ、今後の問題点として残された。4. 山地の風の観測と解析富津市明鐘周辺に観測点を27点選定し、地上の風向、風速の現地観測を行った。そしてそのデ-タを用いて風に及ぼす地形の影響の様子を解析した。また、2次元の三角形地形模型を用いた風洞実験を行い、風に影響を及ぼすと考えられる主要な地形因子についてその効果を検討した。
著者
伊藤 清繁 大倉 浩嗣 田坂 修二
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IE, 画像工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.104, no.313, pp.37-42, 2004-09-09

本報告では,IEEE 802.11gによる音声・ビデオ伝送時にBluetooth干渉がメディア同期品質に及ぼす影響を実験により評価している.実験では,Bluetoothによる送信がIEEE 802.11gのアクセスポイント及びメディア受信端末に干渉可能な擬似電波伝播環境を構築する.そして,アクセスポイント及びメディア受信端末に送信するBluetooth干渉の電波強度を変化させた場合,音声・ビデオのメディア同期品質にどのような影響を及ぼすかを測定する.その結果,Bluetooth干渉が大きいほど再送パケットやCRC誤りパケットが増加することにより,メディア同期品質が低下することを示す.また,メディア同期制御を適用することにより,メディア同期品質を改善できる.
著者
安藤 耕平 禹 哲漢 大森 隆広 田尻 道彦 小倉 高志
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.23, no.6, pp.807-811, 2009-09-15 (Released:2009-12-14)
参考文献数
12
被引用文献数
1

症例は58歳,女性.人間ドックで胸部X線写真を撮影し,右自然気胸を指摘された.左自然気胸の手術歴があり,弟,長男,長女にも自然気胸の既往があった.胸部CT検査では両側に多発する肺嚢胞を認めた.顔面に線維毛包腫(fibrofolliculoma)を疑う病変と,線維性疣贅(acrochordon)を認めた.以上の所見から,Birt-Hogg-Dube症候群(以下,BHD症候群)を疑った.右気胸の根治を目的に手術を施行し,肺底部に今回の気胸の原因と思われる2cm大のブラを認め,これを胸腔鏡下に切除した.術後,BHD遺伝子の核酸配列解析を行い,BHD症候群と確定診断した.BHD症候群は,常染色体優性遺伝の皮膚疾患であり,多発肺嚢胞・自然気胸,腎細胞癌を合併することがある.気胸の家族歴があり,多発肺嚢胞を有する症例は,BHD症候群を疑う必要があると考えられた.
著者
佐藤 讓 前川 英己 朝倉 祝治 岡部 徹 山口 勉功
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2003

カネミ油症事件を引き起こしたPCBや、ゴミ処理時に発生するダイオキシン等の有機ハロゲン化合物は、人体に有害で環境に深刻な影響を及ぼし、かつ処理困難である。本研究の目的はこれらをほぼ完全に分解することにある。有機ハロゲン化合物の処理で最も困難なものは、成分であるハロゲンを如何に効率よく無害な物質に変化させるかである。化学的に最も安定なハロゲン化合物はアルカリ金属等との無機塩である。そこで、これに最適な方法として塩基性の溶融塩による分解処理を選定した。本研究では、強塩基性の溶融塩としてKOH-K_2CO_3およびNaOH-Na_2CO_3混合塩を用い、これに被処理物の溶液とキャリアガスである模擬空気を混合して吹き込み、ガスクロマトグラフィー・マススペクトロメータ(MS/GC)を用いて排ガスの分析を行った。15年度においては四塩化炭素を対象にして、16年度においてはモノクロロ、ジクロロおよびトリクロロベンゼン等を対象として実験を行った。17年度においては、これらのクロロベンゼン類の確認実験を行うと共に、PCBの一種である4-4'ジクロロビフェニルベンゼンを対象として実験を行った。実験では試料を含む溶液をキャリアガス(模擬空気、酸素あるいは窒素)に混合して溶融塩中に吹き込んだ。これらの流量を独立のコントローラによって制御し、吹き込む混合物の流量・濃度を変化させた。トリクロロベンゼンおよび4-4'ジクロロビフェニルは常温で固体であるために溶媒に溶かし、比較的希薄な溶液とした。その結果、総ての化合物について700℃以下の低温で99.998%以上の分解効率を得た。またキャリアガスとして窒素用いた実験でも同程度の分解効率を得たが中間生成物が検出された。しかし、それらは何れも塩素を含まないものであり、CO_2やH_2Oまでの完全分解とは行かずとも無害化の観点からは有効であり、本方法のPCB分解処理への適用が有効であることが確認された。
著者
北西 允 清野 惇 倉持 孝司 豊田 博昭 植田 博 大熊 忠之 上谷 均 山田 浩 川内 つとむ 盧 雲 揚 磊 田 平安 廖 俊常 余 久隆 聶 天こん 呉 耀森 劉 澤貴 姚 登魁 魯 国棟 ちゅ 明れん 劉 永誉 胡 澤君 趙 長清 閻 培 つう 明理 吉川 栄一 市川 太一 安井 威興 大賀 祥充 石外 克喜 片岡 直樹 吉川 元 加藤 高 董 しん 杉田 憲治 高 紹先 上野 裕久 YANG Lei RYU Ini TAN Pinan RYU Zukui 楊 磊 聶 天貼
出版者
広島修道大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1989

1 政治・法意識の比較研究 広島修道大学法学部の新入生及び4年次生に対しては1989年4月、西南政法学院の学生に対しては同9月、アンケ-トによる異識調査を行なった。その後中国では意識調査ができなくなってしまったが、修道大学の新入生に対しては、同12月追跡調査を行なった。1991年度に追跡調査を行なうべく中国側と話合いを重ねたが、中国政府が意識調査を禁止しているとの情報もあり、遂に実現できなかったのは残念である。しかし、1度ではあるが中国の学生の政治・法意識の調査が行なえた意義は大きく、その後も中国で意識調査が行われないためかえってこの調査結果は貴重である。調査結果の分析は、修道大学の研究叢書として、来年3月までには発表すべく作業を進めている。2 日中法制度の比較研究 日中両国の研究分担者がそれぞれ個別に或は共同して研究し、各年度双方から5名づつ計30名が相手国を訪れ、裁判所、議会、市役所、大学のほか刑務所、登記所等も視察し、関係者に質疑を行ない、法施行の実態を見、まだ研究会をもった。そのほか、政法学院の楊磊研究員は1988年9月から2年間修道大学客員助教授、その後今月まで非常勤講師として、合計3年半、広島大学の片岡直樹研究員は1990年4月から政法学院に留学生として1年、ともに相手国の研究員と共同研究を行なって来た。3 研究成果の発表 10に記載のとおり、これまでの研究成果の1部は既に杉田憲治が3本、片岡直樹が1本、加藤高(楊磊と共沢)が1本、楊磊が1本、計6本の論文として発表しているが、更に全員の共同研究の成果としては、修道大学総合研究所発行の広島修道大学研究叢書として、1993年3月までに『日中学生の政治・法意識』、1994年3月までは『日中両国法制度の比較法学的・法社会学的研究』の2著を出す予定である。
著者
小川 眞里子 片倉 望 山岡 悦郎 伊東 祐之 久間 泰賢 遠山 敦 秋元 ひろと 斎藤 明
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

本研究は平成11年度から13年度の3年間のプログラムによって、「物語としての思想-東西の思想を物語の観点から読み直す-」をテーマに総勢10名を超えるメンバーの参加をもって始められた。参加者の専門は西洋、日本、インド、中国の思想分野にわたり、比較思想的探求を行う際の共通の切り口として「物語」という切り口は面白いのではないかと考えた。たしかに、物語は文字をもつ以前から口承の形で受け継がれてきており、人間存在と切り離しがたく普遍的に存在する。それにもかかわらず従来の哲学からは「物語」への取り組みの糸口が見出しにくく分担者は苦闘を強いられた。そうした中で、東北大学の野家啓一氏を招き講演会を開き、その成果を文字に起こして研究分担者がきちんと共有できたことは、各自の研究を進める上で大きな助けとなった。とくに今回の講演で示された科学的実在と物語の関係は大変示唆的であった。また東洋思想の観点からお話をしていただいた田辺和子氏の「原始仏教聖典の中の物語」は、先に述べたごとく「物語」がいかに本質的に人間存在と結び合ってきたものであるかを納得させるものであった。こうした経緯をへて各自が報告の作成に取り掛かり、桑原は野家氏の中心的テーマであった歴史の反実在論から説き起こしそれとキリスト教徒の問題に切り込み、武村は物語と哲学との比較という非常に興味深いテーマに行き着ついた。その他各自がこのユニークな研究の端緒をいかに完結させるかが今後の課題である。
著者
藤井 俊勝 麦倉 俊司 奥田 次郎 森 悦朗 鈴木 麻希 森 悦朗 鈴木 麻希 麦倉 俊司 奥田 次郎
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

ヒトの記憶については心理学的・神経科学的な研究が数多く行われてきていたが、記憶の間違い-つまり、記憶として想起はできるものの内容が正確ではない場合-のメカニズムについては不明な点が多い。本研究ではヒトの脳活動を間接的に測定することができる脳機能画像法と、脳損傷患者を対象とした神経心理学的研究によって、ヒトの脳でどのように誤った記憶情報が表象されるのかを検討した。記憶を司る内側側頭葉に対して、記憶を制御する前頭前野が影響を与えていることや、内側側頭葉と感覚情報を処理する感覚皮質の関連が明らかとなった。
著者
小野 智彦 小倉 恵 小沢 敏彦 林 良一郎 清野 清春 広瀬 晴三
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会総合大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.1996, no.1, 1996-03-11

三菱電機は、リニアライザを実装した節電機能付きグローバルスター搭載用の7GHz固体電力増幅器(C-SSPA)を開発した。以下に、その構成と主要性能について報告する。
著者
萬代 武史 猪狩 勝壽 田原 秀敏 芦野 隆一 守本 晃 浅倉 史興
出版者
大阪電気通信大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

1.複数のフックス型変数をもつ線形偏微分方程式(複数の超曲面で退化した偏微分方程式の典型)について,フックス型変数については正則で,その他の変数についてはジュヴレイクラスに属するという関数のクラスで大域的な解を構成する問題について,アルジェリアのMechab氏,Belarbi氏と協力して構成することに成功した.2.上記方程式に関する滑らかな零解の存在について,ある種の双曲性の仮定のもとで,1,2階の場合にはかなり一般な条件のもとで,また高階の場合には典型的な方程式について,存在を示すことができた.3.Blind Source Separationの問題(複数のソース信号が混じっている観測信号から元のソース信号を分離する)で,3つ以上のウェーブレットを用いる方法について,2つの場合との比較などを行い,有効性を確認することができた.また,信号差をもって混ざっている場合について,東京理科大の佐々木文夫教授との協力のもと,解析信号(analytic signal)になっているウェーブレット関数を用いた方法について,具体的なアルゴリズムの詳細,理論的な裏づけの考察、シミュレーションなどについて,ほぼ最終的な形が得られた.これらの結果は2008年度中に論文にまとめる予定である.4.信号のフーリエ像の「中心」,「幅」について,どのような定義がもっとも適切であるかという問題について,数学的観点およびウェーブレット解析の観点から考察を進め,特に「不確定性原理」の修正について部分的な結果と言いうる不等式が得られた.
著者
坂本 清 三浦 行矣 植田 健 馬場 理香 鎌倉 敏子 坂本 理絵子 岡部 正和 中尾 宣夫
出版者
公益社団法人 日本放射線技術学会
雑誌
日本放射線技術学会雑誌 (ISSN:03694305)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.539-545, 2006 (Released:2007-02-23)
参考文献数
12
被引用文献数
11 6

We examined the low contrast resolution of cone beam CT (CBCT) equipped with an indirect-type flat panel detector and compared it with a commercial CT unit (Robusto). In CBCT, the X-ray tube voltage of 110 kV was used, and in the Robusto, the usual 120 kV was used for examinations. The computed tomography dose index (CTDI) of the two systems was measured, and images scanned at about the same exposure to radiation were compared. The modulation transfer factors of the two systems were measured, and the convolution kernel that was the nearest to the characteristic of CBCT was chosen among kernels of the Robusto. A water phantom with a diameter of 200 mm was scanned, Wiener spectra were calculated, and signal-to-noise ratios were compared. The low contrast resolution phantom was scanned, and detectability and contrast-to-noise ratio (CNR) were measured. In addition, we placed diluted contrast medium into a phantom, scanned the phantom, and measured the detectability and CNR. When the X-ray irradiation condition of CBCT was 75 mAs at 110 kV, the equal dose of radioactivity in the Robusto was 50 mAs at 120 kV. In the low contrast resolution phantom, detectability was 8.7%mm in CBCT, and 9.4%mm in the Robusto. In the low contrast resolution evaluation phantom, CNR was 1.39 in CBCT, and 2.69 in the Robusto. With diluted contrast medium, CNR was 1.28 in CBCT, and 0.60 in the Robusto. CBCT was inferior to the Robusto in a low contrast resolution phantom, but CBCT was superior to the Robusto using diluted contrast medium. We found that CBCT was useful in examinations using contrast media.
著者
川瀬 博 井上 公 茂木 透 倉本 洋 山崎 文雄 吉嶺 充俊
出版者
九州大学
雑誌
特別研究促進費
巻号頁・発行日
2006

2006年5月27日インドネシアのジャワ島のマグニチュード(M)6.3の地震によって、死者は5,700名以上、倒壊家屋14万戸以上という大被害が生じた。今回の地震被害の特徴は、地震規模が小さい割には極めて大きな人的、物的被害が発生していることである。そこで本研究では、震源位置を含めた震源特性や地盤構造・地盤特性を明らかにし、構造物の耐震性や被害状況からこのような大きな被害を引き起こした原因を解明することを目的として研究を実施した。研究体制は大きく地震・地震動チーム、地盤構造チーム、被害概要・人的被害調査チーム、建築系調査チーム、土木系調査チームに別れ、現地調査および国内での解析作業を実施して検討に当たった。まず地震・地震動チームでは余震観測を実施して余震の発生域を同定するとともに、地震観測データを利用して、詳細な震源メカニズムを推定した。その結果震源域は被害集中地域の直下もしくはその西側と推定され、Opak断層にはつながらないことが指摘された。地盤構造については、地磁気・地電流法によって基盤形状を含めた堆積構造を明らかにするとともに、微動計測によって表層地盤構造を明らかにした。その結果、場所による被害の差は主に表層地盤構造にあることが指摘された。建築構造物に関しては、まず地震前後に撮影された衛星画像を用いたリモートセンシング技術により、広域被害分布を明らかにした。また建物の地震被害について、実際の施行実態や地盤状況などから分析を行い、特にRC造および煉瓦造のいくつかの建物について原位置での強度試験を行うなどして、建物の耐震性を詳細に調査した。また土木系構造物・地盤・ライフライン等の被害状況も調査しその被害原因について考察した。以上の検討結果から、今回の地震では最大でも震度6弱レベルでそれほど大きな入力ではなかったが構造物が脆弱なために大被害が生じたものと推察された。
著者
小倉 振一郎 佐藤 衆介 田中 繁史 菅原 英俊 松本 伸 阿部 國博 清水 俊郎 小寺 文
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.153-159, 2008-07-15

近年、わが国の養蚕業の衰退にともない遊休桑園が急速に増加している。その対策の一つとして、肉用牛による桑園の放牧利用が注目されている。桑は草食家畜に対して高蛋白かつ高消化性であることに加え、生産力が高いことから、飼料資源としてきわめて有用である。また、牛放牧による遊休桑園利用は、省力的に荒廃地の植生管理ができるほか、未利用資源が家畜生産に貢献するというメリットがある。電気牧柵による小規模放牧方式の導入により、省力的にかつ低コストで桑園の畜産的利用が可能である。すでに福島県では、電気牧柵による黒毛和種の放牧とマクロシードペレットを組み合わせることにより遊休桑園を牧草地化できることを実証している。宮城県においては、気仙沼・本吉地域一帯が、かつて東北地方の中でも福島県阿武隈地域、宮城県丸森地域と並んで養蚕業が盛んな地域であったことが知られている。しかし近年、遊休桑園が急速に増加し、荒廃化が急速に進行しているため、その対策が喫緊の課題となっている。こうした背景から、地域環境の保全および農林業の活性化を図るため、2005年秋に同地域内の南三陸町の遊休桑園において、黒毛和種の放牧が開始された。桑園放牧の普及にあたっては、桑の生産性と化学成分、ならびに放牧牛の行動、健全性といった基礎的知見の集積が不可欠であるが、こうした知見はこれまでにほとんど得られていない。そこで、南三陸町の遊休桑園における桑葉の現存量および化学成分、ならびに放牧牛の行動と血液性状からみた健全性について実証試験を行ったので報告する。
著者
神邊 靖光 生馬 寛信 新谷 恭明 竹下 喜久男 吉岡 栄 名倉 英三郎 橋本 昭彦 井原 政純 高木 靖文 阿部 崇慶 入江 宏
出版者
兵庫教育大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1988

幕末から明治維新を経て「学制」領布に至る間、幕藩体制下に設立された藩校と、明治初年の藩校・明治新政府の管轄下に設けられた諸学校と、の教育の目的・内容・方法の変化・相違点は学校の組織化にあるということを課題とし、この課題を実証的に解明すること、その過程に見出される教育の本質・属性の連続・非連続の問題も併せて考究することを意図してこの研究は進められた。藩校は江戸後期に急増するが、士道の振気と、藩財政の窮乏を打開するために儒教倫理にもとづく教育による人材の育成を目的として設立されたという点では、共通の課題を持っていた。しかし藩校の制度の定型はなく、また各藩の教育外条件は一様ではなかったので、250に及ぶ藩校は、250の様態をもっていた。更に洋学の受容、外圧という条件が加わると、学ぶべき洋学の選択、外圧の影響の強弱によって藩校は多様化を一層進めてゆくことになった。加えて幕末の国内情勢の二分化により、学校観も多様化した。幕末までの学校は、制度・組織を先例に倣って類似的に完結されていたが、外国の規制度に関する知識を直接に或は間接的に学ぶことによって、更に明治新政府の対藩政策によって学校改革の必要に迫られる。そのため伝統的な閉鎖的・個別的な性格から脱皮しなければならなくなり、自律的に或は他律的に共通性をもった相似的なものへと変化していった。このような経緯・動向が「学制」に示された、組織化を推進しようとする学校制度の実施を容易ならしめたのである。本研究は藩校教育を核として、幕末維新期の教育の各領域における組織化の過程を今後も継続してい くことになっている。平成2年3月、3年3月に、幕末維新期の学校調査、昌平坂学問所、5藩校、郷学校、数学教育、医学教育、お雇い教師に関する11編の報告を発表した。平成4年には、藩校、儒学教育、数学教育、芸道教育に関する報告をおこなう。