著者
大口 敬 桑原 雅夫 鹿田 成則 片倉 正彦 吉井 稔雄 赤羽 弘和
出版者
東京都立大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2001

自動車の運転者の認知・挙動には様々な場面が想定されるが,本研究では道路における安全性評価・効率性評価(交通容量)に関連した道路線形・道路構造・周辺車両との関係性における速度感,距離感,および案内標識などの視認性を対象とする.こうした運転特性を分析・検討するために,これまで困難とされてきた室内実験手法による実証データの収集を可能とする室内実験システムを確立すること,その場合の実際の道路交通環境下における挙動との違い,相似関係を明確化し,実験結果の評価方法を確立することを目的としている.また,こうした実験による実証的検討を通して,運転者の認知・判断・挙動の特性を「リスク認知」という観点から整理・統合することを試みる.今年度は,東京都立大学に既設の動景観画像室内実験装置を用いて,交通事故が多発しているカーブ道路区間を対象に,熟練運転者と初心運転者によるカーブ走行特性が異なることを利用して,道路上の運転者からの模擬視界を生成する3次元CGモデルにより,交通安全施設の有無,施設のタイプ(ポストコーン,デリニエータ),設置形態と運用形態(高さ,設置頻度)の異なる条件を設定し,交通安全施設設置効果の実験的検証を行った.また,交差点信号機の下などによく設置される補助標識である名称標識に代えて,記号や色などによる認知しやすい補助標識と案内システムの併用による交差点案内システムの有効性検証の実験も行った.これらの実験を通して,視認開始距離における画像を表示するには,汎用のCG画像では画素の精度により限界があること,速度感の認知にはまだ課題が残されているものの,室内実験システムにより,こうしたドライバの認知挙動実験が一定の範囲で可能であることを明らかにした.
著者
久保 長生 嶋田 幸恵 田鹿 安彦 日山 博文 高倉 公朋
出版者
東京女子医科大学学会
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.291-292, 1995-03-25

第13回学内病理談話会 平成6年11月12日(土) 中央校舎1階会議室
著者
中辻 憲夫 小倉 淳郎 佐々木 裕之 塩田 邦郎 仲野 徹 松居 靖久
出版者
京都大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2003

当該特定領域研究は、発生生物学、実験動物学、遺伝学、分子生物学など多分野にまたがる学際的研究グループを形成しており、多様なバックグラウンドをもつ研究者による研究課題を推進してきた。平成19年度までに、極めて多くの研究成果が得られて優れた学術論文として発表されている。それと同時に、多様な組み合わせで各研究者の得意分野によるシナジーを生み出しながら、多くの共同研究が行われ成功してきた。平成20年度は、本総括班の活動の総仕上げとして、これら特定領域研究によって過去5年間に生み出されて研究成果のとりまとめを行うと同時に、研究成果報告書を作成した。なお、研究成果報告書の体裁に従って研究成果発表の詳細なリストなど報告資料として作成した報告書に加えて、研究成果を広く研究者コミュニティーに対する広報活動として周知させることを目的として、研究成果を読みやすい体裁で取りまとめた報告書も並行して作成し配布した。[連携研究者]独立行政法人理化学研究所・バイオリソースセンター 小倉淳郎 領域事務担当者としての連絡調整国立遺伝学研究所・総合遺伝研究系 佐々木裕之 ゲノム刷り込み研究の企画調整東京大学・農学生命科学研究科 塩田邦郎 エピジェネティクス研究の企画調整大阪大学・大学院生命機能研究科 仲野徹 生殖細胞特性研究の企画調整東北大学・加齢医学研究所 松居靖久 生殖細胞発生研究の企画調整
著者
戸倉 清一 田村 裕 浦上 忠 宮田 隆志 木船 紘爾 前田 睦浩
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

これまでLi DMAc、蟻酸、これらより穏和な溶媒系(塩化カルシウム二水和物飽和メタノール)を見つけた。さらに、この溶媒系がキチンの脱アセチル化誘導体キトサン酢酸塩紡糸に際して凝固液になることも見つけたので溶解の機構についてカルシウム以外の他のイオンについても検討した。キチンの溶解挙動をさらに詳細に検討したところ、カルシウム、メタノール、水の組成がキチン溶解に大きく影響していることが判った。キチン溶液が延糸性を示すことから、メタノールとアセトンの混合溶液でを凝固浴としてキチン繊維の紡糸を行った。α-キチンの場合、0.1mm径の30穴ノズルを用い、新たに考案したV字型凝固浴に押し出し回転ローラーで巻き取った。繊維にはカルシウムが残存しているので、メタノール中で充分洗浄して脱カルシウム操作を行った後、風乾して直径約40μmのα-キチン繊維を得た。β-キチンの塩化カルシウム2水和物飽和メタノール溶液はα-キチン溶液よりも遙かに粘度が高いため、シングルノズルを用いさらにエアギャップを設けることで繊維化が可能であった。塩化カルシウム2水和物飽和メタノール溶液に溶解させたキチン溶液に水を加えた際に析出した物質は含水率が約96%と高度に膨潤したヒドロゲル状であった。また、キチン溶液にメタノールを加えることでもゲル状物質が得られた。しかしこの場合、ゲルを得るには水の場合よりも多くのメタノールを必要とし、さらに透析によるカルシウム除去に長期間かかることより、メタノール媒体中でキチンの溶解状態が異なることが示唆された。さらにキチンヒドロゲルからは容易にフィルムを調製することができた。これはバインダーを含まないキチン100%から成るフィルムであり、生体適合性、生体消化性に優れていることからバイオマテリアルとして有望であると考えられる。
著者
梶田 将司 小林 大祐 武田 一哉 板倉 文忠
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.337-345, 1997-05-01
被引用文献数
31

人間が音声として知覚する音がその他の音とどのように異なるのかを探求するため, 本研究では, ヒューマンスピーチライク(HSL)雑音を導入し, HSL雑音に含まれる音声的特徴を分析する。HSL雑音は, 複数の音声を加算的に重畳して作られるバブル雑音の一種で, その重畳回数に応じて音声的な信号から音声の長時間スペクトルを反映した定常雑音へと聴感は変化する。まず, この聴感上の変化を主観評価実験により定量化する。そして, HSL雑音に含まれる音声的特徴を振幅分布のガウス性, スペクトル微細構造の時間的変動性, スペクトル包絡の時間的変動性の三つの観点で分析した。その結果, HSL雑音の差分信号のガウス性及び, HSL雑音のスペクトル包絡の時間的変動が音声的特徴に大きく寄与していることが分かった。
著者
吉尾 卓 倉沢 和宏 出井 良明 岡本 完 廣畑 俊成 簑田 清次
出版者
自治医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

1.CNSループス出現頻度の検討(栃木県モデル)栃木県3医療機関で前向きに3年間、年度毎のSLE患者数、CNSループス発症頻度と症状内訳を調査研究した。SLE登録患者は開始時719例、終了時823例、栃木県人口に対するSLE患者有病率は0.041%であった。10年度12例、11年度16例、12年度15例がCNSループスの診断を受け、半数以上がSLE発症直後に出現し、症状内訳は約7割がループス精神病であった。2.CNS ループス診断に有用なCSFcytokine/chemokine (cy/ch)の検討SLE患者でCSFと血液採取が同時に行われた52例(CNSループス陽性群30例、陰性群22例)のCSFと血清の28種類cy/ch測定を行った。陽性群のCSFIL-6、IL-8、IP-10、MCP-1、G-CSF濃度が血清の各々に比較して高値を示し、陽性群と陰性群でのこれらCSF濃度比較検討では陽性群が有意に高値を示した。特にIL-6の有意差が最も大きく、CSF IL-6濃度測定がCNSループスの診断に最も有用で
著者
倉西 良一 岸本 亨 東城 幸治
出版者
千葉県立中央博物館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

河川の上流、特に源流部には独特な生物が棲息する。源流のみに生息する種は、生息地が局限されること、生物の環境要求がきびしいため地域個体群の絶滅が起こりやすい状況にある。このことから源流生息種は、国や地方自治体のレッドデータブックによく掲載されている。本研究では、河川の上流(源流)に生息する種の分布や生態の調査を行い基本的な知見を得ることを第一の目標とした。さらにカゲロウ、カワゲラ、トビケラといった水生昆虫の源流生息種について遺伝子解析を行い、個体群間の類縁度などから保全すべき個体群の推定を行った。河川上流に生息するさまざまな水生昆虫の中でもガガンボカゲロウ類、トワダカワゲラ類、ナガレトビケラ類のいくつかの種群の昆虫は河川源流域の冷たい湧水や細流のみに生息する。これまでに日本各地より採集された、ナガレトビケラ科12種、ガガンボカゲロウ2種、トワダカワゲラ科4種について遺伝子解析を行った。ガガンボカゲロウ属の2種は、全国で採集された個体群を比較したところ、地域固有の八プロタイプが多数認められた。これは生息環境が河川源流部に局限されること、成虫が活動的ではなく分散能力が低いことに起因すると考えられた。ガガンボカゲロウ属に関しては、地域間の遺伝子交流がほとんどないことから、それぞれの地域個体群が独立した存在であり、種レベルではなく地域ことに念入りな保全が望まれるごとが明らかとなった。これに対しトワダカワゲラは、成虫が無翅で飛翔力なく、分布が局所的であることなどから地域固有の遺伝子をもつ個体群が認識されるという仮説を持ってはいたが、本州から北海道にかけての個体群を解析したところ、個体群間の遺伝的変異は小さいことが明らかとなった。従来、原始的な形態をもつと考えられていたトワダカワゲラ科は、系統的にもそれほど古い昆虫ではなく、大陸起源であり朝鮮半島から日本に入り分布を広げ、種分化は比較的新しい時代に生じたと考えられた。ナガレトビケラ類は、解析できた地域個体群の数が少ないため種内の遺伝的変異の度合いはまだ解明の途上にあり、結果がまとまりしだい公開したいと考えている。
著者
倉田 聡
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

今年度は、まず社会保障制度における「社会連帯」の規範的意義を解明する作業を開始した。従来、社会保障制度において「社会連帯」が存在し、もしくは歴史的にも「社会連帯」を背景としてきたといわれる制度に「社会保険」がある。わが国の場合、「社会連帯」に最も親和的な制度は、健康保険法に規定された健康保険組合であり、その健康保険組合が抱える最大の問題が老人保健法に基づく老人保健拠出金制度である。昭和50年代半ばに誕生した老人保健制度は、昭和48年に成立した老人医療費無償化施策により財政困難に陥った市町村国保を被用者保険の保険者が財政的に支援する仕組みとして誕生した。通常、このような組織は、社会保険の保険者相互の助け合いシステムとして構想されるが、わが国の場合は諸般の事情からそのようなシステムとしては理解されにくいものとなってしまった。しかし、現在の医療制度改革論における老人保健拠出金制度の重みを考えるならば、やはり財政調整制度としての本質論すなわち助け合いという精神に立ち戻った検討が必要である。以上の点は、後掲の「老人保健拠出金制度の問題点と健康保険事業の可能性」論文において詳細に論じ、その趣旨および結論は厚生労働省の政策担当者からも非常に高い評価を得ている。そして、今年度は、この検討を受けて、さらに「社会連帯」論を社会福祉の領域にも拡張すべく、考察を深め、後掲の「社会連帯の在処(ありか)とその規範的意義」論文において、その総まとめを行った。すなわち社会福祉事業においても社会保険事業およびその財政調整制度としての老人保健事業と同様に、関係当事者間の相互扶助という側面が存在し、その相互扶助としての性格からくるさまざまな規範が重要であるとの結論に達した。最後に、今年度は、フィールドワーク的な研究として、前年度より引き続いて社会福祉法人「黎明会」での調査を行った。「黎明会」の設置する保育所について、利用家庭88に対し、アンケート調査を行い、55家庭より有効回答を得た。これらの調査結果は、近く発表する論文において十二分に活用する予定である。
著者
倉本 加代 青山 隆夫 中島 克佳 中村 幸一 小滝 一 伊賀 立二
出版者
日本医療薬学会
雑誌
病院薬学 (ISSN:03899098)
巻号頁・発行日
vol.23, no.6, pp.491-496, 1997-12-10
被引用文献数
2

We studied the effects of various infusion containers materials on the fluid volumes, different infusion fluids and fluid concentrations of nartograstim (NT), a recombinant human granulocyte colony stimulating factor, on the adsorption of NT to containers, after adding NT preparations (Neu-up^&ltss;[O!R}> for injection 100) into infusion fluids. The NT concentrations in the infusion fluids after adding NT to containers were determined by a high-performance liquid chromatographic method or bioassay. When 1000 ng of NT was added to 500 ml physiological saline in glass containers (final concentration : 200 ng/ml), the residual rates in the fluids was to 89.5% immediately after addition, and thereafter decreased 73.3% at 6 hr and 59.1% at 24 hr. Similarly, when NT was added to the same solution in polypropylene containers, the residual rates was 74.2% immediately after adding, and 37.5% at 6 hr, and 27.8% at 24 hr. The results in the ethylenvinyl acetate and polyethylene containers were also similar to those in the polypropylene containers. No influence of the volumes (100 and 250 ml) or the kinds of fluids (physiological saline, 5% glucose solution and ringer lactate solution) on the residual rates of NT in fluids was observed. As the fluid concentrations of NT were higher, the residual rates were found to be larger within the range of 100- 1200 ng/ml. These decreases in the NT concentrations in the infusion fluids could be prevented almost completely by adding commercially available total-vitamin injections containing polysorbate surfactants.
著者
藤原 義弘 小島 茂明 溝田 智俊 牧 陽之助 藤倉 克則
出版者
日本貝類学会
雑誌
貝類学雑誌Venus : the Japanese journal of malacology (ISSN:00423580)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.307-316, 2000-12-31
被引用文献数
5

日本海溝の超深海域より採集したオトヒメハマグリ科ナラクシロウリガイCalyptogena fossajaponicaの共生細菌の性状を明らかにするため, 形態観察, 硫黄含有量および同位体組成分析, 分子系統解析を行った。透過型電子顕微鏡観察により, この二枚貝の鰓上皮細胞中に多数の細菌を確認した。また, この二枚貝の軟体部の硫黄含有量と硫黄同位体組成の解析により, 硫黄細菌の存在を示唆する結果を得た。更に, この細菌の16SリボソームRNA遺伝子配列を決定し, 系統解析を行ったところ, この細菌は深海の熱水噴出域, 冷水湧出域に生息する他のオトヒメハマグリ科二枚貝の共生硫黄細菌と近縁であった。この共生細菌はガラパゴスシロウリガイ, ナギナタシロウリガイおよびフロリダ海底崖産シロウリガイ類の1種の共生細菌と単系統群を形成した。これら4種の二枚貝は他の多くのシロウリガイ類に比べて大深度に分布していた。シロウリガイ類は種ごとに垂直分布が異なることが知られているが, このような垂直分布様式の違いはそれぞれの共生細菌の影響を受けているのかもしれない。
著者
寺倉 清之 池田 隆司 Boero Mauro
出版者
北海道大学低温科学研究所
雑誌
低温科学 (Low temperature science) (ISSN:18807593)
巻号頁・発行日
vol.64, pp.57-69, 2006-03-22

多様な状況下で多様な振る舞いを示す水の性質の解明は,長い研究の歴史にも拘らず,なお物理化学, 生物の主要な研究課題となっている.第一原理分子動力学法に基づく計算機シミュレーションによる 水の研究から,水の基本的性質,超臨界水の物理と化学,高圧下のメタンハイドレードなどについて 解説する.
著者
加藤 潤 佐藤 正治 倉本 昇一 松岡 浩一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会秋季大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.1994, no.1, 1994-09-26
被引用文献数
1

アンテナ鉄塔のある無線中継所が直撃雷を受けると、雷サージ電流が導波管を通り無線装置に侵入し、無線装置が符号誤りなどの障害が発生することがある。このため装置には、コストと必要性のバランスを考えた耐雷性能が必要となる。耐雷性能の適当な目標値を設定するためには雷サージ電流の大きさとその発生頻度の関係が重要になるが、明確には示されていない。本報告は、通信装置に流入する雷サージ電流の発生頻度と電流波形を直撃雷の発生頻度や建物の伝達係数から推定方法を示した。
著者
小河 久朗 林崎 健一 黒倉 寿 佐野 光彦 馬場 治 堀之内 正博 小河 久志 KANGUWAN JUNTARASHOTE CHATCHAREE KAEWSURALIKHIT ANCHANA PRATHEP PRASART TONGUNUI
出版者
北里大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

津波後の水産資源は回復しつつあるが、大型海洋植物の植生回復が遅れたところでのイカ・カニ漁業への影響は大きく、資源と漁業の回復への植生の重要性が分かった。一方、津波後、沿岸漁業と沖合漁業間に新たな漁場競合問題が発生しており、援助の不平等性と重複がこの問題の複雑化の一因であった。津波後の水産資源や漁業の回復には、植生に重点を置いた環境修復や零細漁民への被害実態に即した公平な援助の重要性を示唆した
著者
深井 喜代子 前田 ひとみ 佐伯 由香 關戸 啓子 兵藤 好美 樅野 香苗 大倉 美穂
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究の目的は,看護ケア技術の科学的根拠を明らかにし,看護界におけるEvidence-Based Nursing(以下,EBN)推進の一役を担うことであった。清潔ケア,感染看護,寝床環境,食のケア,そして痛みのケアのそれぞれの領域において,ケア技術のエビデンスを探究する研究を遂行した結果,以下のことが明らかになった。1)39℃の湯を用いた10分間の片手の手浴は,事後に保温することによって1℃以上の両手の皮膚温上昇と温感が手浴後少なくとも30分間は保たれた。2)手浴終了後の薬用クリームの使用で保湿効果が持続し,皮膚の生理機能が維持された。3)学生の手洗い行動を習慣化させるには,行動化に向けた教育方法の検討が必要なことが分かった。4)シーツ素材の吸湿性が低いと,寝床気候の悪化を招来することが示唆された。5)ヒトの話声は,話の内容に係わらず,70dB以上の大きな声の場合,不快感や交感神経系の緊張を高めることが明らかになった。6)欠食は疲労の原因になるほか,やる気や精神状態の安定にも影響を及ぼすこと分かった。7)一側の手の手浴で反対側の手の実験的疼痛閾値が上昇することが明らかになった。8)看護行為で発生する様々な音のうち,比較的持続時間が長く,大きな音は鎮痛をもたらすが,一時的にストレス性の生体反応を引き起こすので,看護行為中の不用意な音の発生を避けるとともに,事前に音についての説明を行うべきであることが提案された。9)4基本味うち,甘味と酸味にpricking painに対する鎮痛効果があることが分かった。10)温罨法の鎮痛効果は,皮膚温38℃以上の加温で始めて現れることが,実験的に誘発したpricking painで証明された。
著者
石倉 智樹
出版者
国土技術政策総合研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

航空輸送サービス産業の生産活動において,空港という社会資本が不可欠である以上,空港容量が逼迫しボトルネック化することによって,生産効率性が低下することは不可避である.特にネットワークの中核をなす空港における容量制約は,効率的に生産量拡大が可能な地点における物理的な生産量制約となり,航空輸送サービス産業の成長を阻害する主要因となる.したがって,そのような空港における容量に余裕を持つこと自体が,経済学的な意味での生産効率性の向上をもたらすと言える.また,航空輸送サービスは,様々な産業の生産活動において派生需要として中間投入的に利用されるため,この生産性の向上の効果は航空輸送サービス産業のみならず,あらゆる産業の経済活動に波及すると考えられる.その結果,国民経済レベルでの大きな効果が生じると期待される.一般に用いられる(部分均衡的な)費用便益分析の手法や産業連関分析による経済効果手法では,事前にwith/withoutそれぞれのケースについて航空需要予測値を推定することが必要となる.このため,需要予測値が得られていなければ,経済効果計測を行うことができないという問題点を抱えている.したがって,航空需要予測値の有無に依存せず,空港整備による経済効果を直接推定する手法が望まれる.本研究は,空港の容量拡大による航空輸送サービスの生産性向上,およびその経済波及効果・便益を,需要予測値の有無に依存せず,評価する手法を構築した.その適用事例として,我が国の国内航空輸送ネットワークの中心的空港である羽田空港の容量拡大による,航空輸送サービス産業の生産性向上と経済効果を推定するモデルを同定した.さらに本研究は,羽田空港の整備が我が国経済に及ぼしてきた効果,再拡張事業等による将来の容量拡大がもたらす効果の定量的推定を行った.
著者
高倉 弘喜
出版者
京都大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1997

本研究では,データベースの主記憶常駐化を実現するために必要となる耐障害方式の開発について研究を行った。近年の計算機はノートパソコンでも数百メガバイトの主記憶を搭載可能であるが、現在主に利用されている二次記憶データベースではその高速性を十分に発揮できない。一方、主記憶には揮発性や電気的衝撃に弱いなどの問題点があるため、主記憶データベースを実現するには二次記憶と同等の耐障害能力を保証するバックアップシステムが必須になる。そこで、本研究では以下の点について研究を行った。1. 部分的主記憶データベースシステムの構築主記憶にデータベース全体を常駐,させる方式は前年度に提案したが、マルチメディアデータは極めて巨大であり、数ギガバイトの主記憶をもってしてもそのすべてを主記憶に常駐させることは不可能である。そこで、ホットスポットデータのみを主記憶に常駐させ、それ以外のデータは従来のシステムと同様に二次記憶に保存する部分的主記憶データベースを構築した。2. 部分的主記憶データベースシステムのバックアップ方式の開発部分的主記憶データベースシステムでは、主記憶データと二次記憶データとの間で検査点時刻が異なるためデータベース全体の一貫性維持が問題となる。そこで、前年度に提案した方式を部分力主記憶データベースシステム向きに拡張した。上記の方式を携帯型地理情報システムに実装し、映像情報をユーザインタフェースとして、GPSおよび姿勢センサーから得られた情報で地理情報を検索・追加・更新するシステムを試作し、携帯時の障害発生に対する有効性について検証を行った。
著者
住吉 太幹 松井 三枝 川崎 康弘 田仲 耕大 倉知 正佳
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

非定型抗精神病薬(AAPD)の統合失調症患者における認知機能各領域に対する効果の検討を行った。結果として、olanzapine(OLZ)あるいはperospirone単剤投与による治療を行った患者群では、注意機能やQOLを表す諸指標が改善した。5-HT_<1A>受容体への作用を示すziprasidone(AAPD)ならびにOLZの統合失調症患者における記憶の体制化に対する効果を検討した。方法として、語流暢性課題のひとつであるカテゴリー流暢性課題より得られる動物名から、多次元尺度法(Multidimensional Scaling, MDS)法により、長期意味記憶の体制化の度合いをcognitive mapへ変換することにより可視化し、各薬物による治療への切替えによる変化を検討した。結果として、各薬物による治療前には、MDS法による動物名の産出される順番に意味的なまとまりは認められなかった。一方、治療6週間後には、「野生性vs.家畜性」という意味的なまとまりが出現し、対象とした患者のQOLが有意に改善されることが見出された。OLZによる治療を受けた統合失調症患者における事象関連電位P300成分の変化を、Low Resolution Electromagnetic Tomography(LORETA)法を用いて解析した。その結果、健常者に認めるような側頭葉におけるP300発生源電流密度の左>右の側性が、OLZ投与前には認められなかったのが、治療後には明らかとなった。また、これらの患者において、言語学習記憶、QOLおよび精神病症状が治療後に改善した。以上の結果は、AAPDによる記憶機能の改善に、電気生理学的神経活動の脳画像的な変化が関与していることを初めて示すものである。