- 著者
-
内田 直
- 出版者
- 早稲田大学
- 雑誌
- 挑戦的萌芽研究
- 巻号頁・発行日
- 2007
A.運動をするとよく眠れるようになる、B.運動をすると気分がスッキリする、という経験的によく知られている事実についての科学的根拠を明らかにすることが本研究の目的である。成果の一つは研究のポイントが非常に明確になったことである。即ち(運動の種類[有酸素,無酸素],運動の強度,運動する時間帯[朝,昼,夕方,就寝前])の全て組み合わせについて比較検討する必要がある。また運動強度が強すぎるとストレスによる効果で,睡眠に対して悪い効果がある可能性も考えられる。さらに、それらの効果は、脳は睡眠段階判定だけでは十分に明らかにできない可能性がある。これらを検証は非常に長い研究期間を要する課題であることが明らかになった。本研究で行ったことは1.5km自己ペース走後の睡眠の変化、2.睡眠直前の高強度無酸素運動による睡眠への影響、3.早朝の一過性有酸素運動の前頭葉機能に対する影響、の3つである。1.においては、若年成人を対象としたが,午後の昼寝を間に挟むことにより夜間睡眠の質を劣化させる工夫を行った。また、昼寝と夜間睡眠の間に5km走行を入れた条件により,その後の睡眠に対する影響を調べた。また、判定にコンピュータによる周波数分析を行った。その結果,視察判定では睡眠の変化を確認できなかったが,周波数分析により徐波周波数帯域の増加が確認された。2.では、高強度無酸素運動の睡眠への悪影響について予想したが,睡眠変数に変化はなかった。しかしながら、睡眠前半の有意な体温上昇、心拍数の上昇などがみとめられ、睡眠変数だけでなく身体的生理学指標を同時に用いることにより、有意な睡眠の変化が認められることが明らかになった。3.については、睡眠への影響でなく前頭葉機能に対する影響をみたが、一過性の前頭葉機能改善が認められるに留まった。