著者
江本 精 立花 克郎 堀内 新司
出版者
国際医療福祉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

新たな癌化学療法の治療戦略であるメトロノミック化学療法は少量の抗癌剤を持続的に使用する方法であり、腫瘍血管内皮細胞をターゲットとする。我々はヒト子宮肉腫を対象として本療法の治療効果の増強を図る目的で、メトロノミック化学療法に低出力超音波照射を併用し、その相乗効果について検討した。抗癌剤は塩酸イリノテカンを使用した。子宮肉腫は人体に発生する腫瘍のなかでも最も悪性度の高い腫瘍の一つであるため、本研究には我々が樹立したヒト子宮肉腫株である FU-MMT-3 株を用いた。血管新生阻害作用の評価には circulating endothelial progenitor cells (CEP)を測定した。その結果、FU-MMT-3 株に対して in vitro 及び in vivo においてもメトロノミック投与量の塩酸イリノテカンに低出力超音波照射(2.0 w/cm,1 MHz, 4 分間週3回照射) を併用した治療群が最も腫瘍増殖抑制効果と血管新生阻害効果をもたらした。結論として、メトロノミック化学療法と低出力超音波照射の併用療法は新たな癌治療法として期待できうるものであることが示唆された。
著者
堀井 憲爾 和田 淳 SUNOTO M.A. SOEKART J. SIRAIT K.T. 河崎 善一郎 仲野 みのる 角 紳一 依田 正之 中村 光一 山部 長兵衛 鬼頭 幸生 SUNOTO M. E. SOEKARTO J. SIRAIT K. T. 堀井 憲爾
出版者
豊田工業高等専門学校
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1990

インドネシアは、11月から4月に至る雨期には、ほゞ連日の雷雨に見舞われ、年間雷雨日数は、多いところでは150日にも達する世界的な雷多発地帯の一つである。雷の特性は、わが国の夏形雷に近いと思われるが、高緯度のわが国の雷との比較研究は意義がある。一方、インドネシアの電力施設は、現在、急速な開発途上にあり、送配電システムの雷防護対策は、極めて重要な技術として,その基礎となる雷の研究が重視されている。雷の研究は、自然雷の観測と共に,人工的に雷を制御し、誘発させて、雷放電特性を詳細に解明するロケット誘雷実験が欠かせない。ロケット誘雷実験は、わが国において、本研究組織のメンバ-により十数年の実施経験がある完成された技術である。このメンバ-とインドネシア側の大学、研究所のメンバ-の共同によるロケット誘雷実験が、昭和64年度より開始されて、平成2年4月6日には、インドネシアではじめての誘雷に成功した。本年度のロケット誘雷実験は、昨年度に引続き,ジャカルタの南ボゴ-ル地区のプンチャ峠近くの国営グヌンマス茶園内で、平成3年12月19日から平成4年2月19日までの2ケ月間実施された。同地点は、標高が1400mあり、ジャカルタ平原を見下ろす絶好の実験地である。この茶園内の小山の頂上に9基の発射台を立て,地上電界の測定・監視により、雷雲の接近時に、直径0.2mmの接地されたスチ-ルワイヤ付きロケットを真上に向って発射した。ロケットは英国製の船舶用救命索発射用ロケットを利用し、約500mの高度に上昇する。上昇途中でロケットから上向きのリ-ダ放電が進展し、その直後にロケットに落雷が起り、ワイヤに沿って雷電流が流れ、ワイヤは爆発燃焼してア-ク放電となる。実験期間中に30回近くロケット発射の機会があったが、ロケット不良が多く、うち15回の正常飛行により6回の誘雷に成功した。電流値は、現在詳細解析中であるが、最大12KAに達し、電流の極性はわが国の夏雷と同じく、負が5回と多く,正が1回であった。地上電界は、針端コロナ電流で最大3μAに達し、10kV/mを越える強電界を示した。今回の実験での特記すべき結果は、わが国の実験でもこれまで観測されなかった,避雷針への誘雷に成功し、流し写真の撮影にも成功したことである。12月25日,17:30の最大ー12kAに達する雷放電の第1線が、ワイヤに沿って発射台へ放電した後、約0.5秒後の第2撃が,発射台より約4m離れた10mの高さの避雷針へ放電した。その後,0.06秒後の第3撃もやはり避雷針へ放電しており、避雷針の保護効果は、多重雷の後続電撃に対して極めて有効な場合があることが確認された。15回の発射のうち1回は、ロケットが上昇途中でワイヤが地上から切れ、雷雲と大地との間の空間にワイヤが張られるという珍しい状況となり、いわゆる雷雲内放電誘発の実験となったが、残念ながら誘電には成功しなかった。今後,この方式の実験を再挑戦する必要を認めた。また,1回は空間電界計を塔載したロケットを打上げたが、電界計の不調のため観測に失敗した。この他,インドネシア電力公社の援助により、実験場内に300mの試験用配電線を架設し、誘雷放電時にこの配電線に誘導されるサ-ジ電圧の観測の準備を進め、特に分圧測定システムの技術について指導を行った。今年度は、実験の開始時と中間段階で、日本側から計5名が実験に参加し、技術指導と共同観測を行ったが、ロケットの操作、デ-タの観測記録は,すべてインドネシア側の責任で実施され、この実験に関する技術移転はほゞ完了したと考えてよい。しかし、英国製ロケットの不良が多く、次回からはわが国のロケットを輸出する必要があり、また一部の高度測定技術(電流波形記録,電磁界変化記録など)については、来年度以降も引続き技術指導と援助が必要であり、これに沿った施策推進が望まれる。なお、次年度以降も、乏しい資金ではあるが、インドネシア側で実験を継続する意向があり、日本側もできる限りこれに協力する覚悟である。
著者
中野 公彦 大堀 真敬 山口 大助 山邉 茂之
出版者
Institute of Industrial Science The University of Tokyo
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.142-145, 2009

運転者の行動を解析するために, ドライビングシミュレータを運転している被験者の脳波を計測し, PARAFAC法によって分析した.本手法は多チャンネルの時変スペクトラムを空間, 周波数, 時間の因子に分解するもので, 時間, 周波数のトポグラフィーが比較的容易に得られることから, 脳波解析の効率的な手法となることが期待されている.ドライビングシミュレータ内は脳波計測に適した環境ではないが, 運転している人のα, β波の活動を明確に示すことができた.[本要旨はPDFには含まれない]
著者
村田 浩一 仁位 亮介 由井 沙織 佐々木 絵美 石川 智史 佐藤 雪太 松井 晋 堀江 明香 赤谷 加奈 高木 昌興 澤邊 京子 津田 良夫
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.501-503, 2008-05-25
被引用文献数
2

南大東島に生息する野鳥4科4種183個体の血液原虫感染状況を調査した.そのうち3種109羽(59.6%)に血液原虫感染を認めた.ダイトウコノハズク30個体の末梢血液中に原虫を認めなかった.Haemoproteus sp.およびPlasmodium sp.感染がダイトウメジロ14羽(45.2%)に認められた.モズおよびスズメにPlasmodium spp.感染が認められ,感染個体比率はそれぞれ92.2%(94/102)と5%(1/20)であった.
著者
Viet Han Duc 堀田 健治 岡本 強一
出版者
The Society of Eco-Engineering
雑誌
Eco-Engineering (ISSN:13470485)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.45-52, 2004

Mekong Delta is a big rice production area and an important place in the socio-economic development of Vietnam. Especially, Dong Thap Muoi (DTM) shares large production area in Mekong delta. Although the floods happen every year, the people still live there. At present, in order to reduce flood damage, the Government proposes projects to build Flood Safety Zones (FSZ) in this area and in fact, some of them have already been constructed. However, there are many people who do not wish to relocate to these zones.<br>In order to define the above, a questionnaire survey on resident migration during floods, resident's attitudes about moving to FSZ was conducted. The survey indicated that the most of all households need to find a place to evacuate. The "main road" and "peoples' house" are the most common responses to the location of evacuation. It was found that 1 km to 5 km appear to be the maximum desirable distance to the field. Every year, resident spends over 1/5 of annual income for house repair. Environmental problems caused by water, such as skin disease, sanitary, drinking water supply during flood were also revieled.<br>Finally, based on the obtained results, points of consideration to the planning of FSZ were discussed.
著者
鳴川 英生 堀山 健治 林 邦夫
出版者
中京大学
雑誌
中京大学体育学論叢 (ISSN:02887339)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.15-25, 1985-01-18

This study was designed to clarify the stroke control in tennis. Fifteen subjects participated in this study. Nine of them were skilled tennis players and the others were unskilled subjects. They stroked at the targets which areas were 1, 4 and 9 m^2 in forehand strokes and volleys. Stroking accuracy performance and grip strength were used as indices of stroke control. Stroke accuracy was determined by balls which was put accurately at the target. Grip strength was determined by using the special grip tensiometer. The results obtained in this study were summarized as follows ; 1) The higher accuracy were observed in the skilled subjects than in the unskilled in all strokes, forehand strokes and volleys. 2) The grip strength applied to the tennis racket grip was recorded in forehand and backhand volleys. For the skilled, grip strength was continued on increasing for a while after the moment of ball impact. The unskilled subjects, however, were showedd that grip strength was decreased immediately after the ball impact.
著者
岡室 博之 港 徹雄 三井 逸友 安田 武彦 高橋 美樹 堀 潔 原田 信行 本庄 裕司 福川 信也 土屋 隆一郎 加藤 雅俊 濱田 康行 村上 義昭 鈴木 正明 柴山 清彦 島田 弘 池内 健太 西村 淳一
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

2007年1月以降の新設法人企業に対して、2008年11月以来4回の継続アンケート調査を実施し、特に研究開発型の新規開業企業の創業者の属性や資金調達・雇用、研究開発への取り組みと技術成果・経営成果等について独自のデータセットを構築した。それに基づいて、新規開業企業の研究開発に対する創業者の人的資本の効果(資金調達、技術連携、イノベーション成果)を計量的に分析した。さらに、政府統計の匿名個票データを入手して自営開業について統計的分析を行い、アンケート調査に基づく分析を補完した。また、知的クラスターに関するアンケート調査と訪問調査を実施し、クラスター政策と新規開業・イノベーションの関連等を考察・分析し、国際比較を交えて関連政策の評価を行った。
著者
栗原 康輔 堀 浩樹 小早川 雄介 坪谷 尚季 岡村 聡 世古口 さやか 出口 隆生 駒田 美弘
出版者
特定非営利活動法人日本小児血液・がん学会
雑誌
小児がん : 小児悪性腫瘍研究会記録 (ISSN:03894525)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.68-72, 2010-02-25

三重大学附属病院小児科外来を受診している小児がん患者と家族を対象に地域密着型のサマーキャンプを実施した.本キャンプの特徴は,地域の学生ボランティアが主体的にキャンプを運営していることである.開催地が近く,費用が安いこと,週末を利用した開催であることから多くの家族の参加があった.実施後調査では,患者交流を通じて頑張る気持ちや前向きな気持ちが参加者に醸成されていた.
著者
掘江 未来 芦沢 真五 芦沢 真五 太田 浩 黒田 千晴 舘 昭 米澤 彰純 吉川 裕美子 堀江 未来
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

1.国内調査日本の高等教育機関における外国成績・資格評価の実態を明らかにするため、留学生受け入れ大規模校30校を対象に、質問紙調査及び訪問調査を行った。留学生入試に携わる教職員から得られたデータを分析した結果、日本では、留学生選抜において、外国成績評価のシステムは確立しておらず、個々の教職員の経験と知識によって書類が評価されていること、特に重視されているのは証明書の真偽検証であること、留学生選抜に教員が深く関与していることが明らかになった。2.アメリカ及びヨーロッパ諸国における調査及び関係機関におけるトレーニング受講NAFSA年次総会やEAIE年次総会に参加し、米国・欧州における外国成績・資格評価システムの基礎情報及び最新動向について情報を収集した。また、外国成績・資格評価を専門的に行う団体であるWES、AACRAO、NUFFICを訪問し、これらの機関における評価手法、成績・資格評価の専門家育成のプロセス、ならびにオンラインデータベースの開発のプロセス、運用状況について調査した。3.実務ワークショップ/研究シンポジウムの開催2006年3月、米国・イギリス・オランダから外国成績・資格評価の専門家を招き、日本の大学の入試担当職員に対し外国成績・資格評価の理論的な枠組みについての講義を実施し、議論を深めた。2006年7月、アメリカとヨーロッパから外国成績評価の専門家を招聘し、日本の高等教育機関で留学生選抜業務に携わる教職員を対象とした、外国成績・資格評価の実務ワークショップを開催した。2006年11月、本研究で得られた知見をもとに、米国・オランダから高等教育専門家を招き、日本における外国成績・資格評価のシステム化の可能性について議論した。
著者
小林 実夏 岩崎 基 堀口 美恵子
出版者
大妻女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

若年者から高齢者までを対象に調査研究を行い、詳細に検討した結果、いずれの年代でも摂取食品数が少ない群ではBMIが25以上の肥満者の割合、朝食を欠食する者の割合が高かった。中高年齢者を対象とした調査では、摂取食品数の少ない群では食事摂取基準の推定平均必要量を摂取していない者の割合が高かった。また、摂取食品数が多い群では血清β-カロテン値や総コレステロール、HLDコレステロールのレベルが高く、γ-GTPのレベルが低かった。本研究により、食事の多様性は生活習慣、栄養素摂取量、生体指標、臨床検査値と関連することが明らかになったことから、特に中高年齢者の健康維持、疾病予防に寄与することが示唆される
著者
小堀 孝之 野瀬 正照 三船 温尚 武笠 朗 清水 克朗 横田 勝 戸津 圭之介
出版者
富山大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

江戸末期の武生大仏は胎内に入って調査でき分鋳技法が多用されたことが解明できた。その他の江戸大仏は胎内に入れないことから、外部調査だけでは組み立て法が分鋳か鋳接か断定できず報告書作成が滞った。そのため、平成19年度は内部観察用ファイバースコープを隙間から挿入し、九品寺大仏、瀧泉寺大日如来像の胎内調査を行った。前者は分鋳と鋳接、後者は鋳接で組み上げたことが判明した。また、吉祥寺大仏は垂下した裳先の裏面観察によりその鋳接の具体が解明できた。次に、江戸中期の大型大仏の法華経寺大仏胎内へ入って調査を行った。偶然にも雨天直後に胎内に入り、接合部分から胎内への雨水の染み込みが見られるものの、冬期であっても陽光を受け短時間で乾燥することが分かった。また、蓮台との隙間から風が内部に入り乾燥を速めていた。目視観察ではあるが、青銅内部にまで及ぶ深刻な腐食の進行は無いと判断できた。今年度、背中の扉から胎内へ入れたもの2体、扉から頭を入れられたもの2体(観音寺大仏、芳全寺大仏)、ファイバー観察したもの2体、隙間から覗いたもの2体(駒形大仏、御代の大仏)で、これらによって分鋳、鋳接の外面痕跡が明らかになった。これらの内部観察と結果の援用によって、組み立て法がおおむね確定できるものに、分鋳と鋳接が1体(九品寺大仏)、分鋳が1体(観音寺大仏)、主に分鋳でパーツを作り鋳接で組み上げたものが1体(武生大仏)、鋳接が14体(瀧泉寺大日如来、天王寺大仏、宝龍寺大仏、西迎寺阿弥陀如来、駒形大仏、品川寺地蔵菩薩座像、円福寺大仏、法華経寺大仏、吉祥寺大仏、宇都宮大仏、芳全寺阿弥陀如来、光明寺不動明王、御代の大仏、鎌ヶ谷大仏)であった。胎内調査では内部に及ぶ腐食が認められるものはなかった。首の固定に不安なものがあり、調査によって複数通りの固定方法が解明しており、それを基に今後の修理を的確に行うことができると考えている。
著者
片山 泰之 井上 明弘 堀籠 博亮
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.132, no.3, pp.181-188, 2008 (Released:2008-09-12)
参考文献数
20
被引用文献数
2 1

インスリン デテミル(遺伝子組換え)(販売名:レベミル®注300フレックスペン®,レベミル®注300,以下「デテミル」)は,脂肪鎖を付加しアルブミンとの結合を利用することにより,作用の持続化を図った新規持効型溶解インスリンアナログ注射製剤である.非臨床試験では,デテミルはヒトインスリンの分子薬理学的作用を有することが示された.また,NPH(neutral protamine Hagedorn)ヒトインスリン(以下「NPH」)よりも緩徐で持効型の薬理作用を有することが示唆された.デテミルとヒトインスリンの代謝パターンは類似していると考えられ,ヒトインスリンとデテミルの間に安全性に影響するような差異は認められなかった.臨床試験では,デテミルは,NPHと比較して,よりピークが少なく,より長時間(24時間)に渡り効果が持続することが確認された.国内における第III相臨床試験は,1型および2型糖尿病患者を対象としたBasal-Bolus療法,小児1型糖尿病患者を対象としたBasal-Bolus療法,2型糖尿病患者を対象とした経口血糖降下剤との1日1回併用治療の3試験が実施され,NPHに対する非劣性,空腹時血糖の低下,空腹時血糖値の個体内変動の減少,夜間低血糖の減少といった特徴が認められた.さらに,既存のインスリン治療では得られない体重増加抑制効果が認められたため,大いに臨床的メリットが期待される新規インスリンアナログ製剤である.