著者
今堀 博
出版者
京都大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

一般に、側壁への共有結合による化学修飾は、パイ共役性を破壊し、単層カーボンナノチューブ(SWNT)の電子状態を大きく変化させることが知られている。一方で、我々はこれまでに、SWNT側壁へのエノラートアニオンの環化付加反応、いわゆるビンゲル反応による修飾は、SWNTの電子状態にほとんど変化を起こさないことを実験的に見出した。本研究では、密度汎関数(DFT)法を用いて、ビンゲル反応修飾により得られるSWNTの構造や電子状態を理論的に考察した。ここで、チューブ軸に対して付加した3員環面が垂直あるいは垂直により近いものをType 1、平行あるいはより平行に近いものをType 2として表記する。Type 1およびType 2の(8,8)SWNTに対して構造最適化を行ったところ、Type 2では反応した側壁上の2つの炭素間の距離が1.57Aであるのに対し、Type 1では2.23Aとなり、結合の切断が示唆された。また、(10,5)SWNTを用いた場合にも、同様にType 1の場合に結合の開裂を伴うことが示唆された。さらに、無修飾およびType 1、Type 2のSWNTモデルに対して電子構造の考察を行ったところ、(8,8)および(10,5)SWNTのいずれにおいても、Type 1では、軌道のエネルギーが無修飾の場合と比べてほとんど変化せず、チューブ全体に電子が非局在化していた。一方Type 2では、付加基付近への電子の局在化が見られ、軌道のエネルギーが無修飾と比べて大きく変化していることがわかった。以上の結果とビンゲル反応修飾後に電子状態が保持されるという実験結果を考え合わせると、実験ではType 1の立体配置での付加反応が優先的に進行したと考えられる。今回、理論的結果とあわせて考察することで、SWNTの側壁化学修飾における結合様式の推定を行うことができた。
著者
長谷川 真里 堀内 由樹子 佐渡 真紀子 鈴木 佳苗 坂元 章
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.105-108, 2006

本稿は,日本のテレビ番組の内容分析によって現在のメディア状況を明らかにし,メディア・リテラシー教育に必要な情報を得ることを目的としている.米国のNational Television Violence Study(1996-1998)をもとにコード化マニュアルとコード票を作成し,2003年と2004年の2時点,各1週間の中からフィクション番組を抽出し,向社会的行為にかかわるキャラクターの特徴について内容分析を行った.その結果,向社会的行為実行者はあまり魅力的なキャラクターとして描写されておらず,観察学習の促進要因は乏しかった.また,おおむね女性よりも男性の描写数が多く,現実との乖離も示唆された.最後に,悪人キャラクター,善悪複合キャラクターに対する報酬はほとんどなかった.
著者
堀越 哲美
出版者
一般社団法人日本建築学会
雑誌
建築雑誌 (ISSN:00038555)
巻号頁・発行日
vol.114, no.1445, 1999-10-20
著者
堀池 信夫
出版者
筑波大学哲学・思想学系
雑誌
哲学・思想論集 (ISSN:02867648)
巻号頁・発行日
no.29, pp.31-54, 2004-03-25 (Released:2013-12-18)

緒論 徐敬徳は李氏朝鮮初期の哲学者である。成宗の十九(二十)年(一四八九)誕生。字は可久、号は花潭、あるいは復斎。晩年に関城(ケソン)郊外の花潭に隠棲し、明宗の元年(一五四六)、五十八歳で卒した。 ...
著者
堀池 信夫
出版者
筑波大学哲学・思想学系
雑誌
哲学・思想論集 (ISSN:02867648)
巻号頁・発行日
no.29, pp.31-54, 2004-03-25

緒論 徐敬徳は李氏朝鮮初期の哲学者である。成宗の十九(二十)年(一四八九)誕生。字は可久、号は花潭、あるいは復斎。晩年に関城(ケソン)郊外の花潭に隠棲し、明宗の元年(一五四六)、五十八歳で卒した。 ...
著者
堀坂 浩太郎
出版者
上智大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究は,2年間にわたりブラジル,アルゼンチン,ウルグアイ,チリ,ボリビアからなる南米部地域を対象に,「市場統合」の推進と補完的な関係にあるインフラ部門や通関システムなどの"物的統合"がどのような形で進展しているかとともに,その促進に影響を及ぼすと考えられる「地域公共財」的発想の観点を検証することを意図して行ったものである。「南米南部共同市場」(メルコスール)や南米地域インフラ統合計画」(IIRSA)がうたうエネルギー網や輸送網,通関制度などからなる,かなり幅広い分野の現地調査を行った。その成果を踏まえながら,本報告書では,調査期間中にボリビア新政府が天然ガスの「国有化宣言」を行う等,当初予期されなかった事態が発生したこともあり,事例研究として天然ガスを集中的に取り上げ,経済自由化、市場開放過程でのインフラ(ガスパイプライン網)の整備状況,ネオリベラリズムの反動ともいう形で発生した「エネルギー(天然ガス)危機」,その後の各国の対処法,および南米南部地域としての解決策の模索を取り上げた。その中で,天然ガスおよび同パイプラインは「非排除性」および「非競合性」からみて純然たる公共財(pure public goods)とはいえないものの,市場の原理には完全に任せずに,公益性を有した半、公共財と認識し,地域構成国が納得し遵守しえる規範づくりが早急に必要とされる点,およびそうした発想を再確認することによって初めて,安定した供給体制の確立に道が開かれる点を指摘した。世界的に天然資源の需給逼迫が言われるなかで,地域の方向性を検討する上で不可欠な視点の一端を示した研究といえる。
著者
堀合 文子
出版者
日本幼稚園協會
雑誌
幼兒の教育
巻号頁・発行日
vol.51, no.9, pp.5-12, 1952-09
著者
堀合 文子
出版者
日本幼稚園協會
雑誌
幼兒の教育
巻号頁・発行日
vol.52, no.8, pp.32-35, 1953-08
著者
堀 雅敏 金 東石 大西 裕満 佐藤 嘉伸 陳 延偉 富山 憲幸 岡田 俊之 東浦 圭佑
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

3次元 CT 画像から、腹部臓器の形態的特徴を大局的に取り扱うコンピュータ手法を開発した。本手法では、統計的形状モデルとサポートベクタマシンを応用した。本法の応用として、慢性肝障害における肝線維化を CT 画像から評価するシステムを構築し、その性能を確認した。本研究は、統計アトラスを用いて大局的な臓器形状変化を定量化する技術が、体幹部領域のコンピュータ支援診断に応用できる可能性を示した。
著者
西田 佳史 相澤 洋志 堀 俊夫 柿倉 正義
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
ロボティクス・メカトロニクス講演会講演概要集
巻号頁・発行日
vol.2002, 2002
被引用文献数
7

日常環境において人を中心とした情報処理サービスを提供するには, 日常活動を認識することが不可欠である。日常活動を認識するアプローチとして, 従来, 環境側に埋め込まれたセンサの情報を利用して, 人の活動を推定する手法が試みられてきた。本稿では, ホッチキス, パンチといったその空間的な位置や構成要素間の状態が変わる対象物をセンサ化し(センサライゼーション), これらの対象物型センサを用いることで人の日常活動を認識するシステムを提案する。また, 対象物センサ化システムを低コストで具現化できるシステムとして, 超音波センサを対象物に1つ以上取り付け, 日常環境中の多数の対象物をセンサ化するシステムについて述べ, このシステムを用いた日常活動の認識実験について報告する。
著者
築谷 朋典 妙中 義之 辻本 良信 堀口 祐憲
出版者
国立循環器病センター(研究所)
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究では,従来の血液ポンプには見られない多段延伸ポンプの設計・製作を行い,血液ポンプとしての実用性を実験的に検証することを行う.本年度は,単体のポンプで血球を破壊せずに高圧を発生することが可能な血液ポンプという新たな医学的ニーズを反映した要求仕様を決定しそれに基づいてポンプの設計を行った.仕様として,特に低流量・高圧力である条件を考え,平均流量3.0L/min,発生圧力500mmHgを基準とした.従来よりも高揚程型とするために,以下にあげる特徴をもつ要素の設計を行った.1.高揚程化のためのサクションボリュート入口流路2.高圧用のインペラ翼形状(羽根枚数,出口角)3.ラジアルスラスト軽減のためのダブルボリュート出口流路ついでこれらの基本仕様にもとづいてポンプの試作を行い,基本性能を満たしていることを確認し,内部流れに関して数値流体力学を使用した解析を行い,血球破壊,血液凝固の観点から以下に示す設計変更を行った.・ 羽根車へのフロントケーシングの付与・ ダブルボリュートケーシングと羽根の距離拡大・ 案内羽根にシュラウドを設置試作機については,ポンプ内部の漏れ流量拡大等の影響により,水力学的性能は若干低下しているがその影響は軽微である.数値計算に基づいて形状変更を施した結果,ポンプ効率を大きく損なうことなくポンプ内部での溶血に関わる高いせん断応力の領域を低減し,血栓形成に関わる淀み領域の解消に成功した.
著者
堀江 悟郎
出版者
関西大学
雑誌
環境科学特別研究
巻号頁・発行日
1985

1. 資源調査ランドサット5号のデータを使用して、都市内緑地の表面温度低下の程度などについて解析を行なった。解析に使用したデータは夏秋冬の3種とし、対象は都内緑地、新宿副都心、住宅地である。緑地分布と温度分布の両図を比較すると、夏季においては緑地と低温域とがきわめてよく一致している。緑地がほとんど存在しない中野区、豊島区の一部地域では特に温度の高い傾向がみられる。秋季と冬季についての解析によれば、夏から冬へ季節が移るのに伴い、温度分布と植生の相関が次第に小さくなる。また、森林の割合が同程度の場合は一ブロックの森林面積が大きいほど温度が低く、面積が同じであれば森林割合の大きいほど温度低下の傾向がある。以上のように緑地の温度低下の実態や、季節、植生の差などの影響が明らかとなった。ランドサットデータの熱赤外バンドの分析は熱環境調査に役立つ。2. 地表が土、コンクリート、芝生の3種および街路樹のある街路を含む市街地空間で、建物、地表面、樹木の表面温度と、地上1mの空間における熱放射環境の測定を行なった。表面温度の日変化は、枯芝、土、緑芝、コンクリートの順に較差が小さくなり、樹木の葉面は気温の変化とほぼ等しい。夜間の放射温度は相対的に囲われた空間ほど高い。樹木は、日射遮蔽と低い葉温による長波ふく射温度上昇の抑制により、草地は地表面温度の上昇抑制により、熱環境緩衝機能を有することが明らかとなった。3. 緑のある住宅内坪庭の熱環境を測定して気象台データおよび高層住宅ベランダのデータと比較解析を行なった。坪庭では、気温は昼夜間ともベランダより低く、湿度は昼間高く夜はほぼ等しい。屋内は、坪庭住宅では扇風機を、高層住宅では冷房機を使用しているため比較できない。申告によれば、通風のあるときは涼しく、通風がなければ冷房または扇風機に依存せざるを得ない状態である。
著者
窪田 幸子 曽我 亨 高倉 浩樹 内堀 基光 大村 敬一 杉藤 重信 丸山 淳子 PETRRSON Nicolas ALTMAN Jon
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、20 世紀末から力を持つようになった国際的なイデオロギーとしての「先住民」概念を視野に入れつつ、国際世論と国家の少数民族政策のもとで、少数者である当事者の人々が、どのように先住民としての自己のアイデンティティを構築していくのかをあきらかにすることを目的とするものである。その結果、先住民としてのアイデンティティを選び取る・選び取らないという選択の幅がみられる現状には、グローバリゼーション、なかでもネオリベラルな経済的影響が大きいことが明らかになった。最終年に開催したとりまとめの国際シンポジウムではこのスキームをベースとして、代表者、分担者そして海外研究協力者の全員が研究発表を行った。
著者
砂川 一郎 堀田 修三 沢田 秀穂
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会誌 (ISSN:03855090)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.3-35, 1983

Diamonds have been found occassionally in the tails of dressing of stream tin deposits in Phuke, Phangnga and Takua Pa Areas, South Thailand. From a geological point of view, the occurrence of diamond in Thailand implies unique and important meanings, since in Thailand kimberlites have not been found so far and there is no continental shield (craton) area in which most diamonds and kimberlites of the world have been found. In spite of this importance, no detailed studies on diamond crystals from Thailand have been made so far, although there have been four reports on their occurrences. In the present study, detailed surface microtopographic observations have been made of 15 diamond crystals, which were collected during the past 20 years by a gem dealer in Phangnga at a tin deposit in a small island, Dog Mai, off Phangnga and Phuket, South Thailand. Crystals are colourless, pale yellow, pale green and pale brown in colour, from 0.1 to over 0.7 ct in weight, and are very much rounded, showing rounded octahedral, tetrahedral, hexa-octahedral, dodecahedroidal and elongated dodecahedroidal morphologies (Fig. 3, 4, Table 1). The rounded morphology indicates that the crystals have suffered severe dissolution, most probably during the ascension of crystals in kimberlite magma, not during the transportation on the Earth's surface. Surface microtopographs representing various degrees of dissolution have been observed, which include rounded hexa-octahedral and dod-ecahedroidal faces (Fig. 12-16), circular disk depressions, often superimposed, and similar necklace-like patterns (Fig. 16-19), net work patterns (Fig. 20), all of which appear on rounded surfaces, and trigons appearing on flat {111} faces. Among these, trigons attract a particular attention. On the (111) faces of one of these crystals, all varieties of trigon morphologies are observed (Fig. 23, 25), which include trigons having opposite orientation to the triangle of the octahedral face (negative trigon, NT type), truncated NT (NT' type), hexagon (H type), and those having the same orientation as the triangle of the octahedral face (positive type, PT type), and truncated PT (PT' type). Both point-bottomed (P type) and flat-bottomed (F type) trigons are seen in a ratio of ca. 24 : 1. Trigons so far observed on {111} faces of natural diamond crystals are exclusively NT type and its deviation, and neither PT type trigons nor co-existence of both PT and NT types have been reported. Recent experimental studies have shown that trigons are etch pits and their orientations and morphologies change depending on temperature and oxygen fugacity (Fig. 21). Therefore, the co-existence of both PT and NT types on one octahedral face observed in the present study is very unique and suggests a rather peculiar condition under which diamonds from Thailand have experienced dissolution. The distributions of different types (Table 2), sizes (Table 3, Fig.26), and inclination angles of side faces (Table 4, Fig. 28) of ca. 8000 trigons occurring on flat table area and narrow terrace area on one (111) face are measured. The results are analysed, using a concept of surface reconstruction model proposed for Si etch pits by van Enckevort and Giling (1978) (Fig. 31, 33,34) and phase diagram of orientations of trigons (Fg. 21) by Yamaoka et al. (1980). Based on this analysis, the dissolution history of the crystal is suggested, in which the effect of change of oxygen fugacity is stressed (Fig.35). It is suggested that diamonds in Thailand came from kimberlite magma, whose chemistry was slightly different from that of kimberlites in other localities. This is in harmony with geological peculiarity of diamond occurrence in Thailand.
著者
土江田 奈留美 中川 有加 土屋 円香 永森 久美子 小林 紀子 堀内 成子
出版者
聖路加看護大学
雑誌
聖路加看護大学紀要 (ISSN:02892863)
巻号頁・発行日
no.33, pp.85-92, 2007-03

本稿は,聖路加看護大学看護実践開発研究センター主催,日本助産学会東京支部中央区分会の後援により2004年9月に開設した,ルカ子母乳育児相談室の2年間の事業報告である。本事業の主な内容は,病院,助産院などで勤務経験がある助産師で,大学院生と教員による,地域での母乳育児支援である。毎週金曜日に来室相談および随時訪問相談を行っており,2年間での総相談者は母児54組,総相談件数は289件であった。そして,主な相談内容は,「母乳分泌量の不足」「乳房のトラブル」「断乳・卒乳」「吸わせ方や抱き方」「哺乳拒否」であった。また,利用者の感想は,「不安が解消された」「子育てに自信がついた」「また利用したい」などであった。そして今後のルカ子母乳相談室の役割として,以下の3点を継続,拡大していきたいと考えている。1.授乳期全期にわたり悩みが尽きない母親たちの支援を行う場2.資源が少ない地域への貢献の可能性3.病院だけでは補いきれない育児支援を継続していく場